もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)

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四章 ゴミ拾いと流行り病

45 信頼関係

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冒険者の傍での毛皮修復師のお仕事は、程よいおこずかい稼ぎとなっている。
あんなに見るも無惨と言った死体から、僕のゴミ拾いを通すだけで今にも動き出しそうなモンスターの毛皮が取れるのだから。

「まるで魔法だな。こんな布切れからここまでの再現力。また頼むぜ?」

ちょっとしたお小遣い稼ぎのつもりが、冒険者ギルドの解体師から、防具屋さんまで引っ張りだこ。

バックに商業ギルドがついてるから信頼度も高く、基本仕事に忠実な人ばかりなので僕のスキルが色んな人の役に立ってるっとわかって嬉しくなる。

そこでお金を手に入れてもあまり使わない僕に、トラネが尋ねてきた。

「ルークはさぁ、そんなにお金貯めて何か使う予定あるの?」
「え?」
「あたし達と違って直接戦闘しないから消耗品も出ないでしょ? だからあたし達ほど稼がなくても良いのに、いっぱい稼ぐからどうしてかなーって?」

確かに他の人から見たら不思議に思えるのかもしれないね。
僕は基本的にサポーターで、テイマーだ。
戦闘ではあまり役に立たず、ロキ達が頑張った後にお世話するだけ。
ブラッシングやミルク、餌やりくらいで対してお金は使わない。

でも、これだけは言える。

「僕はまだ子供だけど、ずっと子供ではいられないからかな?」
「それってどう言う意味?」
「考えるまでもない。ルークは俺たちと同じで早く大人になりたいんだ。ソロになっても食っていけるように今のうちから活動資金を稼いでるんじゃないか?」
「え、ルークパーティ辞めちゃうの?」

トラネがプロフェンをぎゅっと抱きしめた。
僕がいるからプロフェンがついてくるぐらいに思ってるからね、この子。

お世話クエストを撤廃した今、ブリーダーズのメンバーでもない限りロキ達のお世話ができない。
受付のお姉さんからパーティ加入申請が溢れるほど来てる遠小言をもらったばかり。
プロフェンと別れるかもしれないと聞いて焦っているのが見えた。
だからそのことは訂正する。

「今すぐにどうこうしようとは思ってないんだ。でも兄さんはね、若いうちから信用を稼いでおけば困った時に助けてくれるって言ってた。今の僕はまだ兄さんに助けられてばかり。だから兄さんが安心して見送ってくれるようにしてるだけだよ。貯めたお金は……この子達に使ってあげたいな」

ロキはふわふわで艶のある毛並みを昔以上に気に入ってくれている。最初は戦うのに邪魔だって文句言ってたのに。今は僕を誇るように相手を憐れむようになった。まるで昔の自分に言い聞かせるような憐憫を添えて打ち倒した相手に別れを告げている。

昔は返り血に塗れても笑って、むしろ喜んでいた。
けど今は汚れることを疎ましく感じている。
今日もピンク色の腹巻きは返り血一つつかずにふわふわの毛並みを維持していた。

僕の努力がこうして形になっている。
兄さんは十分誇れることだって言ってくれた。
だから僕は、ロキやまだ見ぬたくさんのモンスターともっとわかりあっていきたい。そのためにもお金は必要だ。

その他にもインフのお世話要求回数が増えてるので地味に散財してるんだけどね。まだスペシャル足り得ない、とかなんとか言ってルエンザが羨むくらいのお世話を要求してくる。

きっとこれが九尾の本性なんだろうね。
自分が一番じゃなきゃダメだって周囲を振り回すの。
でもお世話で住んでるうちはまだ良いよね。
僕のお小遣いで事足りるから。

あれこれ欲しいって言い出したらみんなで止めようと思う。
今ですらちょっと不満出てきてるからね。

僕のお世話は魔力付与が乗る。
ブラッシングではノミの除去、毛並みの艶めき。そして身体能力の向上。

ブリーダーズでのお世話と一線を画す。
誰もが僕にお世話を頼む状況下。
それをインフが独占してる状態だ。

分体でもお世話してるけど、本体の僕に比べて魔力付与の出力が落ちるからツヤに差が出るんだって。
される側じゃないとわからないことが多いのだ。

「まぁ、この子達の人気があたし達の人気に響くからね!」

ふんす、と鼻息を荒くするトラネ。
それだと僕達はオマケみたいじゃない。

「痛いところをつくな。それに負けないように俺たちも成長していくぞ?」
「だね、プロフェンちゃんが本気出さなくて良いくらいに成長しないと。うぉお、燃えてきたー!」

一人燃え上がるトラネ。
それを見てインフィが微笑む。

「仲がいいのね」
「そりゃ、同じ志を持つ者同士。手を組んでるからね」
「志?」

そんな曖昧なものを信じてるの? とでも言いたげな冷たい視線。

「インフィがルエンザに送る気持ちと一緒だよ」
「なにそれ」

理解できないと言うように口先を尖らせる。
この子は妹思いであることをひた隠しにしてるようだけど、僕をはじめトラネやキサムにもバレてるあたり隠し事が下手くそだ。
他者を騙してきたことがないので、あらゆることが稚拙なんだけど、それはあえて茶化さず慣れて貰う事を心がけている。

わかってるからって態度を取ると憤慨するのまでセットなんだよね。

そんな子に、自分以上にモンスター思いだと聞いて負けられないって感情が浮いたのか、対抗するように語調を強める。

「ふん、あたしとルエンザのコンビに勝てると思ってるの?」
「気持ちだけなら負けないよ」
「ああ!」
「もちろん!」

相手が九尾だって知らないから二人は挑発するように言葉をかける。僕の場合、それを知ってて勝負しようと思ったのは……

やっぱりお世話するだけで簡単に靡くって知ってるからだろうなぁ。この子、見た目以上にチョロいんだ。
それを隠すように強気な態度とってるけどね。

『あんな狐共に俺とあるじの最強タッグが負けるわけない!』
『あたしとキサムだって兄ちゃんに負けないぞー!』
『僕ちトラネちゃんも負けないもん!』

なんだかインフィを皮切りにこっちでも熱い視線が交錯している。
このやりとりがきっかけで翌日からソニン達の声が聞こえてるんじゃないかってくらいトラネ&キサムのコンビネーションに磨きがかかり、インフィ&ルエンザコンビが悔しがっていたのが新鮮だった。

負け惜しみに『本気の力さえ使えたら消し炭にしてやるのに、悔しー』って本気で悔しがってたけど絶対にやめてね?
その日は宥めるのにすごく時間がかかったよ。

でもその日からインフィは人間を見下さない発言が増えたように思う。仲間という括りを使いたがり、他者に貶められたら庇うようになった。

この子もちょっとづつ成長してるね。

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