もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)

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四章 ゴミ拾いと流行り病

44 新たなブリーダー

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商人デビューとは別に、僕たちは普通に冒険者としてもやっていく。
ここ数日は九尾が出たりと慌ただしく冒険も出来ていなかったからね。
しかし採取場所の文字通りの消滅。
同時に冒険者ギルド側では迷い込んだハンターラビットを死んだこととして処理。九尾もどこかに潜んでいるとして夜間の外出を僕たちに禁じた。

その鬱憤を晴らすべくというか、ロキが獣魔として参戦した。
だがそこで問題が起こる。
ただでさえブリーダーズはソニンとプロフェンと言うタッグがいる。ここにロキとルエンザが入ると一人余る。
勿論世話人が、と言う意味だ。僕たちはブリーダーズ。冒険者でありながらテイムモンスターの世話人。
世話人がテイムモンスターを余らせることなどあってはならないんだ。だからここでもう一人信用できる仲間が必要だった。

そこで僕は人化できる伝手があることを思い出した。

『は? あたしに人化しろって? 嫌よ』

九尾のインフにお願いしたらひどく嫌がられた。
ルエンザの世話をさせようと願ってもダメっぽい。
理由を聞いたら『あたしだってお世話して貰いたいのに! ルエンザばかりずるい!』と言うことだった。
ただの我儘である。

伝承では積極的に人化して悪事を働く悪逆非道だって話なのに、お世話され生活から抜け出せなくなってるんだよね。
そんなに身だしなみを整えられる環境を手放せないか。

ならばここは別の手で落とすしかない。

「実は、今までのお世話だと不足している部分があると気がついたんです」
『それがなに?』
「そのスペシャルな体験を先着一名で募集しててそれをインフにも体験させてあげようかなって」
『スペシャルなお世話? ルエンザやムカつくウサギ達、デカブツも未体験のお世話だと言うの?』
「そう、一番最初の子はいつもはロキかソニンだった。でも、今回人化を引き受けてくれるのなら、その枠にインフを入れてあげて良いかなって考えてる」
『ふぅん、枠に入れるだけ?』
「それだけじゃ不服?」
『一番じゃなきゃ嫌』
「じゃあ引き受けてくれたなら一番にしてあげる」
『乗ったわ。その代わりそのスペシャルなお世話はアタシだけにしなさい? 他の奴はダメよ?』
「しょうがないなぁ」

と言うやり取りで見事引き入れた。
まだ幼い個体だったのか、ちょうど僕くらいの年齢の少女が、トラネとキサムの前で居心地悪そうにしている。
人間携帯の時の彼女はインフィと名乗った。
全く違う名前だと誰だかわからなくなるそうだ。
冒険者ギルドでは三属性の魔法を扱えると言う触れ込みで驚嘆されていた。

ギルドマスターには九尾の分体であることを仄めかしたらすごく難しい顔をしていた。普通に三尾で災害級だからだ。
それの分体でも駆け出しとして扱うには手に余る。

僕の持ち込み素材を商業ギルドとシェアした事で悩みの種を消化したコエンさんは、新たな悩みの種が舞い込んだことに落ち込んだが、飲み込んだ。

それで分体ならオッケーとお墨付きをもらった。
本体は身を隠してることになってるからね。僕は口裏を合わせるようにして許可を勝ち取った。

「インフィよ。今日からよろしく頼むわ」
「あたしはトラネ。プロフェンの世話人よ」
「俺はキサム。今日からソニンの世話をすることになった」
「僕はルーク。新人のロキは僕がお世話するよ」
「じゃあ、あたしがこの子を世話すれば良いのね?」

インフィはルエンザを大切そうに抱きかかえ、冷たそうな第一印象を霧散させる。
ルエンザを抱える彼女は優しい顔立ちをしていたからだ。
他人と接してこなかったからこその距離感だと理解したトラネ&キサムは、改めてよろしくと握手を交わした。

そんなわけで僕達の冒険の舞台は採取以外にも伸びるようになる。採取の他に商業ギルドの入会で僕へモンスターとの戦闘による毛皮の入手クエストが回ってくるようになったためだ。
それに伴ってランクもFから一気にDに上がり、戦闘もこなさなくてはいけなくなった。

インフィの参戦は僕達にとって非常に心強いものとなった。

「ごめん、そらした」
「インフィ!」
「平気よ、あたしにはこの子がついてくれている」

トラネの射撃を逃れたグレートボアが、詠唱中で無防備なインフィへと迫る。
しかしここへルエンザが噛みつき攻撃で怯ませ、そこに詠唱が間に合った。

「エアカッター」

不可視の風の刃が怯んだグレートボアをズタズタにする。
ミンチより酷い。切れ味が良すぎるんだよね、この魔法。
普通ならこんな状態の毛皮は売れないのだけど、僕はモンスターの毛を採取して分体で生み出すだけなので楽ちんだ。
討伐部位だけ残して、あとはゴミとして拾っちゃう。

「ひゅう、相変わらずえげつない威力だな」
「もうあたし要らないんじゃない?」
「詠唱はどうしても必要だから、トラネにはいつも助けられてる」
「だってよ?」
「うへへ」

インフィのお世辞にトラネは満更でもなさそうにフニャッと笑う。
こんな笑み、プロフェンに向ける以外で見たことない。

「ロキもお疲れ様」
『もっと骨のある相手はいないのか? 物足りん!』

本体より弱体化してるのに蛮族すぎるよ、この子。
それだけ頼りにしてくれてるってことだろうけど、前に前に出ていくから、今ならソニンの気持ちが痛いほどわかった。

僕がロキの中にいた時はここまで酷いとか思わなかったもんね。
いつもお疲れ様、とソニンも撫でてあげた。
キサムが今は俺が世話人だが? と睨んでくる。

最初は押し付けられたって顔してたのに、すっかり相棒として絆を育んでるようだった。良かったね、ソニン。僕以外に世話を焼いてくれる子がいてくれて。

まぁギルドのクエストを撤去したからそれが他者への牽制に使えるのかもしれないけど。
今やブリーダーズはもふもふ人気も含めてギルドから注目を浴びていた。
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