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四章 ゴミ拾いと流行り病
43 商業ギルドへの紹介
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僕の能力を話してから数日後。
改めてこの話を引き受けたいと冒険者ギルド側から連絡を受けた。
そしてそのついでに商業ギルドの登録も済ませてこいと必要資金と、それ以外のアイテムももらった。
「それって疲労回復ドリンクを売れって言ってます?」
「別にそれを売りに出す必要はない。ただ、商売って言うのは何が売れるかわからないもんでな。例えば一見して使えないような代物にも価値がつくから面白い。そして坊やのスキルはそう言ったものを拾い上げる素質がある。冒険者をする以外でこの先きっと生きてくる。悪い話じゃないはずだ」
ギルドマスターさんがお父さんのような顔で諭してくる。
血の繋がりはない。どちらかと迷惑をかけまくっている悪い子供なのに、なんかすごい優しい。
「よくはわかりませんが、冒険者以外でお金を稼ぐ手段ができるのは嬉しいですね。雨季に入ると稼げなくなると兄さんも嘆いてました」
僕がそんな話をすると、なぜか両肩に手を置かれ、首を横に振られる。
「いいかい、坊や。人には向き不向きというのがある。あいにくと君のお兄さん、アスターには目利きの力がない。低いのではなく、全くない。素養0と言ってもいい! その分の知識なんだがどうも偏ってるように思う」
ひどい言われようだ。
ギルドからそんなふうに言われるなんて何したのさ、兄さん。
「それはそれとして、商業ギルドに商標登録しておくのは悪い事じゃない。むしろこちらの商品を勝手に売り出されたりしないように守るためのものでもある」
そこでようやくこの話の終着点が見えた。
つまり毛皮の生産者として僕を登録するつもりなんだ。
でもどうやって言い訳するつもりなんだろう。
毛皮って動物の死体から綺麗に剥ぎ取るものだと思うけど。
馬鹿正直に僕は死体を作れますとでも言うつもりなのかな?
「あの、それをして僕は冒険者として不自由になりませんか?」
「これはあまり知られてないが、意外と冒険者と商業で二足の草鞋を履いてる人は多いよ。特に雨季が長く続くこの街じゃ珍しくもない。それに、向こうにも君の凄さをぜひ教えたくてね。ああ、安心してくれ。向こうのマスターとは仲良くさせてもらってるよ」
最後まで笑顔で押し切られ、気がつけば僕は商業ギルドの応接間へとギルドマスターさんと一緒にやってきていた。
「突然の連絡で何事かと思ったら、新人の売り出し?」
「開口一番嫌味を言うな、ザイム」
「今の私の立場は商業ギルドのマスターです。いつまでもプライベート以外で兄貴面するのはやめてもらえませんか? コエン兄さん」
「あの、突然のお呼び出し申し訳ありません。僕としても急に連れてこられたので話が全く見えておらず、つまりこれは一体どう言う状況なんでしょうか?」
向こう側のお偉いさんがやってきた時、突然罵り合いが始まったので、身を縮こまらせて話に入っていくと、
「おお、そうだった。この子、ルークと言うんだが面白いスキルを持ってるんだ。それを先に商標登録しておこうと思ってな。ここのギルドは国にとらわれない自由な商売をしている、そうだったな?」
「当たり前じゃないか。貴族だろうと無理な要求をしてきても突っぱねるよ。そういう法律のもと、私達は抜擢されたはずだ」
まるで僕にその情報を教えるかのようなやり取り。
優しいね。
「それでな、早速この子の能力を商標登録して欲しいんだが。ルーク、あれを出してくれ」
あれってどれだろう?
思い当たるのは毛皮。若しくは毛糸。
どれかを言ってくれなきゃ出しようがない。
なんとなくわかるだろう、って目をされたので一番懐が痛まないハンターラビットの純白羽毛を取り出した。
「これは! これをどこで手に入れた?」
「まず最初にこいつの能力を教えとく。【ゴミ拾い】このスキル名に聞き覚えはあるか?」
「いや、無い。そんなことをわざわざ聞いてくるってことは冒険者ギルド側も未発見って事ですよね?」
「そうだ。じゃあルーク、この毛皮をどうやって手に入れたか教えてやってくれ」
言っちゃって良いんだろうか?
僕は懇切丁寧に教えるべくまず最初の段階でゴミの選択肢にモンスターの毛を集めることを語る。
そこに割り込む形でコエンさんが補足を入れてくれる。
それで話が通じてしまった。
僕のスキルの1割も説明が終わってないうちにだ。
毛を集める。モンスターを実際に倒す。その毛皮に不足分のモンスターの毛を生やす。はじめっから嘘のオンパレードだ。
だが、これは僕を守るための嘘だと後からわかった。
実際にモンスターの毛皮がないとここまで綺麗な状態に持っていけないと言う前提条件を設けてくれたのだ。
僕は毛皮を作る能力者ではなく、毛皮を修復する能力者として紹介された。
「素晴らしい! じゃあ君がいるだけで見るも無惨なボロボロのゴミですら売り物になってしまうんだな?」
「前提条件としてそのモンスターの毛を取得する必要はありますが」
「十分だ。しかしこの純白の毛、どこで手に入れてるんだ?」
「最近消滅した近隣の雑木林あったろ?」
「ああ、そんなこともあったな。材木業の奴が怒鳴り込んできたぞ。商売が台無しだってな。街の土地の木を勝手に切り倒して売ってた奴にはお帰り願ったが、そこで入手したと?」
「僕はまだ駆け出し冒険者なので、採取クエストぐらいしかさせてもらえなかったんですが。なぜかそこらへんで抜け毛がいっぱい落ちてまして」
「それを拾ったと、ふむ」
「で、ここからが本題だ」
「この子の能力以外にまだあるのか?」
「九尾が出た」
「!」
先ほどまでコエンさんを言い負かして得意顔だったザイムさんの顔がみるみるうちに凍りつく。
「さっきも坊やが言ったように、多分どこかから流れてきたハンターラビットがそいつと戦った。あの雑木林の惨状はその形跡じゃないかと言われてる」
「傾国級が戦ってあの程度で済みますか?」
「痛み分けってところだろうな。ハンターラビットの方は死体で見つかったが、九尾の方も左足が打ち捨てられていた。ひどい状況だったが」
コエンさんが僕の背中をポンと叩く。
ああ、ここで出せってことかな? 一本毛を抜いて、と。
左足くらいをイメージして、こんな感じかな?
「えと、これくらいしか再現出来ませんでしたが」
「傾国級の毛皮だって!?」
「声が大きいぞ、ザイム」
「いや、だって一体どれくらいの値打ちになると思ってるんだ!?」
「そこから先はお前の仕事だろう? 商業ギルドマスター。もう九尾発見の報告は済ませてる。ハンターラビットを打ち負かして身を隠したってな」
「そこで私がこれを出す訳だ。国中がひっくり返るぞ?」
「だからこの子を守ってくれ」
「ああ、実際にどうやって入手したのか金持ちどもが騒ぎ出す。ルークくんと言ったか?」
「はい」
ザイムさんは冷たい顔を可能な限り優しくしながら、僕に商業ギルドライセンスの手続きを促した。
必要な項目は名前と年齢。そしてどんな商材を扱うか。そこに毛糸と書き込むと、これまたザイムさんが目を見張る。
「この毛糸というのはなんだ?」
「えと、回収した毛から毛糸を作れます」
「植毛以外にも一本の糸にまでできてしまうのか!?」
「拾った毛の量にもよりますが」
「いや、十分貴重だ。毛皮にするよりもそっちの方が貴重まである。用途が段違いだ」
「な、この子は凄いだろう?」
「久しぶりに会うなりとんでもない爆弾を持ってきて。私を胃痛で殺すつもりですか?」
「なぁに兄弟じゃないか。シェアしようと思ってな」
「だが、私にとってもメリットがある。良いでしょう、それくらいの痛み、快く引き受けます」
こうして僕の商人としての歩みが始まった。
痛みが治るように疲労回復ドリンクを提供したら、頻繁に卸してくれって懇願されたのはびっくりしたけどね?
効果が持たないから売り物にできませんよと言ったら、欲しがる人はたくさんいる。むしろギルド職員は毎日欲しがるからそれを配りにきてくれって言われたので通うことになった。
冒険者ギルドで貰ってるより随分多いけど、こんなに貰っちゃって良いのかなぁ?
改めてこの話を引き受けたいと冒険者ギルド側から連絡を受けた。
そしてそのついでに商業ギルドの登録も済ませてこいと必要資金と、それ以外のアイテムももらった。
「それって疲労回復ドリンクを売れって言ってます?」
「別にそれを売りに出す必要はない。ただ、商売って言うのは何が売れるかわからないもんでな。例えば一見して使えないような代物にも価値がつくから面白い。そして坊やのスキルはそう言ったものを拾い上げる素質がある。冒険者をする以外でこの先きっと生きてくる。悪い話じゃないはずだ」
ギルドマスターさんがお父さんのような顔で諭してくる。
血の繋がりはない。どちらかと迷惑をかけまくっている悪い子供なのに、なんかすごい優しい。
「よくはわかりませんが、冒険者以外でお金を稼ぐ手段ができるのは嬉しいですね。雨季に入ると稼げなくなると兄さんも嘆いてました」
僕がそんな話をすると、なぜか両肩に手を置かれ、首を横に振られる。
「いいかい、坊や。人には向き不向きというのがある。あいにくと君のお兄さん、アスターには目利きの力がない。低いのではなく、全くない。素養0と言ってもいい! その分の知識なんだがどうも偏ってるように思う」
ひどい言われようだ。
ギルドからそんなふうに言われるなんて何したのさ、兄さん。
「それはそれとして、商業ギルドに商標登録しておくのは悪い事じゃない。むしろこちらの商品を勝手に売り出されたりしないように守るためのものでもある」
そこでようやくこの話の終着点が見えた。
つまり毛皮の生産者として僕を登録するつもりなんだ。
でもどうやって言い訳するつもりなんだろう。
毛皮って動物の死体から綺麗に剥ぎ取るものだと思うけど。
馬鹿正直に僕は死体を作れますとでも言うつもりなのかな?
「あの、それをして僕は冒険者として不自由になりませんか?」
「これはあまり知られてないが、意外と冒険者と商業で二足の草鞋を履いてる人は多いよ。特に雨季が長く続くこの街じゃ珍しくもない。それに、向こうにも君の凄さをぜひ教えたくてね。ああ、安心してくれ。向こうのマスターとは仲良くさせてもらってるよ」
最後まで笑顔で押し切られ、気がつけば僕は商業ギルドの応接間へとギルドマスターさんと一緒にやってきていた。
「突然の連絡で何事かと思ったら、新人の売り出し?」
「開口一番嫌味を言うな、ザイム」
「今の私の立場は商業ギルドのマスターです。いつまでもプライベート以外で兄貴面するのはやめてもらえませんか? コエン兄さん」
「あの、突然のお呼び出し申し訳ありません。僕としても急に連れてこられたので話が全く見えておらず、つまりこれは一体どう言う状況なんでしょうか?」
向こう側のお偉いさんがやってきた時、突然罵り合いが始まったので、身を縮こまらせて話に入っていくと、
「おお、そうだった。この子、ルークと言うんだが面白いスキルを持ってるんだ。それを先に商標登録しておこうと思ってな。ここのギルドは国にとらわれない自由な商売をしている、そうだったな?」
「当たり前じゃないか。貴族だろうと無理な要求をしてきても突っぱねるよ。そういう法律のもと、私達は抜擢されたはずだ」
まるで僕にその情報を教えるかのようなやり取り。
優しいね。
「それでな、早速この子の能力を商標登録して欲しいんだが。ルーク、あれを出してくれ」
あれってどれだろう?
思い当たるのは毛皮。若しくは毛糸。
どれかを言ってくれなきゃ出しようがない。
なんとなくわかるだろう、って目をされたので一番懐が痛まないハンターラビットの純白羽毛を取り出した。
「これは! これをどこで手に入れた?」
「まず最初にこいつの能力を教えとく。【ゴミ拾い】このスキル名に聞き覚えはあるか?」
「いや、無い。そんなことをわざわざ聞いてくるってことは冒険者ギルド側も未発見って事ですよね?」
「そうだ。じゃあルーク、この毛皮をどうやって手に入れたか教えてやってくれ」
言っちゃって良いんだろうか?
僕は懇切丁寧に教えるべくまず最初の段階でゴミの選択肢にモンスターの毛を集めることを語る。
そこに割り込む形でコエンさんが補足を入れてくれる。
それで話が通じてしまった。
僕のスキルの1割も説明が終わってないうちにだ。
毛を集める。モンスターを実際に倒す。その毛皮に不足分のモンスターの毛を生やす。はじめっから嘘のオンパレードだ。
だが、これは僕を守るための嘘だと後からわかった。
実際にモンスターの毛皮がないとここまで綺麗な状態に持っていけないと言う前提条件を設けてくれたのだ。
僕は毛皮を作る能力者ではなく、毛皮を修復する能力者として紹介された。
「素晴らしい! じゃあ君がいるだけで見るも無惨なボロボロのゴミですら売り物になってしまうんだな?」
「前提条件としてそのモンスターの毛を取得する必要はありますが」
「十分だ。しかしこの純白の毛、どこで手に入れてるんだ?」
「最近消滅した近隣の雑木林あったろ?」
「ああ、そんなこともあったな。材木業の奴が怒鳴り込んできたぞ。商売が台無しだってな。街の土地の木を勝手に切り倒して売ってた奴にはお帰り願ったが、そこで入手したと?」
「僕はまだ駆け出し冒険者なので、採取クエストぐらいしかさせてもらえなかったんですが。なぜかそこらへんで抜け毛がいっぱい落ちてまして」
「それを拾ったと、ふむ」
「で、ここからが本題だ」
「この子の能力以外にまだあるのか?」
「九尾が出た」
「!」
先ほどまでコエンさんを言い負かして得意顔だったザイムさんの顔がみるみるうちに凍りつく。
「さっきも坊やが言ったように、多分どこかから流れてきたハンターラビットがそいつと戦った。あの雑木林の惨状はその形跡じゃないかと言われてる」
「傾国級が戦ってあの程度で済みますか?」
「痛み分けってところだろうな。ハンターラビットの方は死体で見つかったが、九尾の方も左足が打ち捨てられていた。ひどい状況だったが」
コエンさんが僕の背中をポンと叩く。
ああ、ここで出せってことかな? 一本毛を抜いて、と。
左足くらいをイメージして、こんな感じかな?
「えと、これくらいしか再現出来ませんでしたが」
「傾国級の毛皮だって!?」
「声が大きいぞ、ザイム」
「いや、だって一体どれくらいの値打ちになると思ってるんだ!?」
「そこから先はお前の仕事だろう? 商業ギルドマスター。もう九尾発見の報告は済ませてる。ハンターラビットを打ち負かして身を隠したってな」
「そこで私がこれを出す訳だ。国中がひっくり返るぞ?」
「だからこの子を守ってくれ」
「ああ、実際にどうやって入手したのか金持ちどもが騒ぎ出す。ルークくんと言ったか?」
「はい」
ザイムさんは冷たい顔を可能な限り優しくしながら、僕に商業ギルドライセンスの手続きを促した。
必要な項目は名前と年齢。そしてどんな商材を扱うか。そこに毛糸と書き込むと、これまたザイムさんが目を見張る。
「この毛糸というのはなんだ?」
「えと、回収した毛から毛糸を作れます」
「植毛以外にも一本の糸にまでできてしまうのか!?」
「拾った毛の量にもよりますが」
「いや、十分貴重だ。毛皮にするよりもそっちの方が貴重まである。用途が段違いだ」
「な、この子は凄いだろう?」
「久しぶりに会うなりとんでもない爆弾を持ってきて。私を胃痛で殺すつもりですか?」
「なぁに兄弟じゃないか。シェアしようと思ってな」
「だが、私にとってもメリットがある。良いでしょう、それくらいの痛み、快く引き受けます」
こうして僕の商人としての歩みが始まった。
痛みが治るように疲労回復ドリンクを提供したら、頻繁に卸してくれって懇願されたのはびっくりしたけどね?
効果が持たないから売り物にできませんよと言ったら、欲しがる人はたくさんいる。むしろギルド職員は毎日欲しがるからそれを配りにきてくれって言われたので通うことになった。
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