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三章 ゴミ拾いともふもふ融合

42 スキル報告

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「で、これが例の傾国級か。もう完全に手懐けたのか?」

ここはギルドの談話室。
僕は新しい獣魔契約をするべくギルドに赴いていた。
バスケットにはインフがすやすやと眠っている。
ピンク色の腹巻きにはキツネのシルエットが描かれており、満更でもなさそうにお世話されている。
ソニンの時もそうだったけど、あの暴れん坊がお世話ひとつでここまで懐くのだから魔力付与ってモンスターを骨抜きにするスキルだと思った。

「完全にとは行きませんが。それと新しいスキルも取得しましたのでそれの報告も兼ねてます」
「新スキル? わざわざ報告なんてしなくていいぞ?」

スキルは秘匿にしとくぐらいで丁度いい。
明け透けにし過ぎれば侮られるからあんまり言いふらすのはよろしくないなんて言われる。

「いえ、多分ギルドにご迷惑をおかけするので事前に知ってもらおうかと」
「待て、そんなにやばいスキルなのか?」
「あまり表に出せない類ですね」
「わかった。箝口令を敷いておけばいいんだな?」
「そんな感じでお願いします」

室内は僕とギルドマスターの二人だけ。
いつもなら兄さんやオレノーさんにも一緒に居て貰うけど、今日は僕だけで進めておく必要があった。

いい加減一人で報告くらいしたいというのもあった。
もちろん問題があれば助けてもらうつもりだ。

「まずは一つめ、融合です」
「それの何がやばいんだ? 字面的に見ればスキルとスキルを合わせるぐらいだろう?」

そんなのは珍しくもなんともないと言った。

「いえ、融合するのは僕の変身先です」
「ロキ以外にも変身先が増えたって事か?」
「なぜかお世話してたらソニンやプロフェンにも変身可能になりましたね」
「OH……」

ギルドマスターさんが天を仰いで顔に手を置く。
今紹介した他に、新しくルエンザ……四尾のシルバーフォックスも増えたけど、これはまだ発表しなくていいかな?

「まずは一つ目の変身先を見せますね。変身」

僕はパワータイプのメガトンラビットへと変身した。
流石にディフェンスタイプへの変身はギルド内では控える。
サイズがやばいからね。
可能なのはもう一つ、スピードタイプくらいだ。

「なんだ、その禍々しい気配は! ハンターラビットどころじゃないぞ?」
「これが融合先、メガトンラビットになります」
「聞いたことはないな」
「九尾状態のこの子にパワーで優ってましたね」
「待て。傾国とやり合って勝ったのか?」
「パワーの面では圧倒してましたね。防御はてんでダメですが」
「なら傾国クラスなのか? ハンターラビットの進化先の可能性もあるか……確かにこれは表に出せそうもないな」
「他にはスピードタイプとディフェンスタイプ。スピードタイプはマッハラビット。これは見せた方が早いでしょう、変身」
「即座に変身可能なのか、便利だな」
「そうでなければやられています。とにかく攻撃が激しかったので」
「よく生きて帰ったと褒めるべきだな」
「それは散々兄さんから頂きました」

同時に説教もくらったけど。

「最期にディフェンスタイプですが、サイズ的に変身はしない方が良さそうです」
「念のために聞くが、種族はなんだ?」
「キングベヒーモスです」
「やっぱりか」
「予想してたんですか?」

腕を組み、難しい顔をするギルドマスターさん。

「ツインヘッドベヒーモスは古代遺跡の門番と言っただろう?」
「ええ」
「キングベヒーモスは最奥で待ち構える宝物この番人なんだ。そしてその強さは計測不能ときている」
「それをぶっ飛ばしたロキって何者なんでしょうね?」
「絶対うちの管轄以外で変身するなよ? いい加減庇いきれん」
「オレノーさんでも無理ですかね?」
「むしろそれを出汁に帝国が動く。絶対にやめてくれ」
「了解です」

ビシッと敬礼をする。
見よう見まねだ。僕は軍属してないので格好だけだ。

「で、これはまだ序盤でして」
「まだあるのか」

これ以上頭痛の種を持ってこないでくれ、と顔に書いてある。

「実はこの子、インフから取れた体毛で取得したスキルが結構問題児でして」
「勿体ぶらずに話してくれ。どうせ面倒ごとの類だろ?」
「じゃあ話します。実は僕、自分の髪の毛を媒体に分体が作れるようになるまして」
「シルバーフォックスの固有スキルか。十分問題だがそれだけか?」
「ああ、ええと。実はそれでこんなものもできるようになったことをご報告させていただきます」

僕は髪の毛を一本抜く。
そして【分体】スキルを発動し、そこに一つの毛皮を作り出す。
それは純白のハンターラビットの毛皮だった。
つい最近大国コローナのオークションで大金を得たアレだ。

対象を動かさなければ操作も要らず、どっちみち体を作る過程で肉体を構築するので、それの毛皮のみを綺麗に切り出した状態で作り上げた。

「ついに禁忌のスキルにまで手を染めたか」
「本来はこうやってロキを生み出すのが通常用途ですが……」
『おう、こっちでは初めてだったな?』

ミニマムサイズのロキが、僕の分体を操作してぴょこぴょこ動く。ソニンより目つきが鋭く、ちょっとイタズラ小僧っぽい顔立ちをしている。
なお、僕には声が聞こえるがギルドマスターさんにはキュッキュッーぐらいしか聞こえてない。

「そしてこっちが新しく契約した子です」

もう一本引っこ抜いて、ルエンザを作り出す。
僕の分体なので、本体よりスペックは劣るが僕のスキルを共有してる時点で弱くはない。

死ぬと髪の毛に戻るくらいのデメリットしかないのだ。
入ってる魂は、分体の効果が切れたら僕の元に帰ってくる。
なお、分体に限り僕のゴミ拾いの効果範囲外でも自由に活動可能だ。

「つまり?」
「冒険者としての生活も、お金稼ぎとしても安泰ってことです」
「相手を騙してるって自覚なしなのが怖いな」
「騙してるんですかねぇ?」
「だって傷つければ髪の毛に戻るんだろう?」
「いえ、戻りませんけど?」
「は?」

再びギルドマスターさんが目を丸くした。

「いや、だってさっき今」
「確かに僕が魂を付与して活動する時、絶命したら髪の毛に戻ると言いました」
「そうだろう?」
「でも毛皮って最初から死んでるじゃないですか」
「死んでるのか、これ?」
「筋肉とかないですよね? それを動かすエネルギーもなんもないので、ボロボロにしたってこのままです。なんだったら僕の髪一本でこのタイプの毛皮なら二十枚は作れますよ?」
「じゃあ、ボディを作るより毛皮を作る方が効率が良かったりするのか」
「そうなりますね。それと、作れるのは当然ロキのものだけとは限りません」

そう言って、ツインヘッドベヒーモスと九尾のキツネの毛皮を取り出す。

「さぁ、ギルドはこれをいくらで買い取ってくれますか?」
「ちょっと待ってくれ。今ここで判断できない。少し時間をくれ」

そう言って、僕のスキルを概ね有効的に受け取ってくれたギルド側。
そして同時に冒険者としての僕、お世話する僕と何人かの分体を作る。
宿でお世話するだけの僕は、表に出せないロキやソニン、プロフェン、ルエンザ、インフをあやす。

冒険者の僕は、さらに分体のソニンとプロフェンを作り出してブリーダーズを率いた。

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