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三章 ゴミ拾いともふもふ融合
41 九尾の狐
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ただそこにあるのは怒り。
自分でも何をしてるのかわからない。
ただ、全てが憎く。
どうしようもないほどに自分が愚かだと気付かされていた。
『ルエンザ、貴女の分まであたしは生きる。でも、私は一人じゃそんなに強くないのよ。だから貴女の無念、私が晴らすわ』
妹の魂が憑依した気分。
口調までが妹になり、優越感さえ漂ってくる。
あぁ、なんて幸せな気分。
でも、どうしようもないくらいに人間が憎い。
何もかもぶち壊したい。
その前に、あの生意気なウサギはどこに行ったのかしら?
周囲を見回すも、ズタボロにながらも魔法の的になっていたハンターラビットが急に気配すら消していた。
『待たせたね』
そこへ現れる異形。
いいや、かろうじてハンターラビットの面影はある。
ただ、口調もそうだがあまりにも先ほどとはかけ離れた身体能力に目を見張った。
◇
『姉さん!』
『残念だけど君の声は彼女に届いてないみたいだ。君を失ったばかりで情緒が不安定みたい』
『どうすればいいの?』
『乱暴だけど、少し懲らしめる。何か弱点とかある?』
『姉さんのあんな姿見たことない。尻尾が八本……いえ、九本目が生えたわ。あんなに魔力に満たされて羨ましいくらいよ』
ルエンザと名乗る妹分のシルバーフォックスは、姉であるインフのことを心配すると同時に嫉妬していた。
シルバーフォックスにとって九尾は一つの到達点。
傾国級へと至ることが種族の悲願。
そこにいち早く辿り着いたことが羨ましいんだそうだ。
うん、それよりも先に対処法を教えてくれると嬉しいかな?
それはそれとして恐れていた事態が起きた。
尻尾が九本。インフが九尾へと至ってしまったのだ。
『なんだこれは!? 一体どういうことだ!』
『ロキ、うるさい』
『そうよ、乱暴ウサギ!』
『兄ちゃん、無事でよかった』
『ボスぅ、一人で戦うなんてやめてよぉ』
『なんでここでソニンやプロフェンまで居るんだ? あと妙な狐の気配までするぞ?』
『話はあと、来るよ?』
融合した事で僕は自分の体を取り戻した。
おかげで心の住人は騒がしく、賑やかだ。
ロキなんて特に状況を全く掴めてないので状況説明を求めてきたよね。
尻尾の一つ一つに魔法の奔流。
一発一発が山をも砕く威力が高められてる。
『ここは、僕に任せて!』
プロフェンが前に出る。変身がディフェンスタイプに勝手に置き換わる。まるで一緒に戦ってるみたいだ。
ううん、一緒に戦ってるんだ。意識は僕のまま、自分の得意分野を手伝ってくれてる感覚に近い。
『なに!?』
すべての魔法を受け止めて、なお無傷で立ち上がるプロフェン。
インフは忌々しげに僕を見た。
『全て命中したはず。なんで立ち上がる?』
『そうする必要があったから。次はこちらからいくよ!』
『俺の番だなぁ!?』
『兄ちゃんは下がってて、ここはあたしの番だってぇの!』
ロキを押し除けるように、ソニンが前に出る。
連打がダメなら一撃を大きくすればいいという割とパワー思考の巨大な魔法を、ソニンは恐るべきスピードで回避した。
僕は回避すると同時に魔力を毛糸に変換して地面から魔法に突き刺し、養分抽出を試みる。
成功。
使用回数を減らす暴挙だったけど、うまいこと成功してよかった。肉体の制御は任せる形になっちゃうけど、ゴミ拾いのフィールド内なら僕の出番はあるからね!
『兄ちゃん、今のなに? あの大きな魔法の塊が消えちゃったよ!?』
『今度から魔法は僕に任せて。ソニンは前に集中、いい?』
『後で絶対やり方教えてね?』
『もちろんだよ』
教えても覚えられるかはわからないけど、せっかく教わる気になったんだ。教えるのは吝かじゃない。
『ソニン、変われ。魔法さえなんとかなれば俺の敵じゃない』
『そうやって一人でカッコつけようとするー』
『ボス! ここはみんなで戦うところだよ?』
『プロフェン迄……言うようになったじゃねぇか! じゃあお前ら、俺について来い。あるじもサポート頼むぜ?』
初めて僕の事を半身でも、魂の同居人でもなくあるじなんて呼ぶロキ。絆レベルはとっくにマックスだった。
でも、心のどこかで上下関係は下に位置した。
それが今、上に置き換わった。
腕前を認められたんだ。
『任せて!』
僕はようやくこの場で一つの仕事を任せられる役目を得ていた。
お世話役から、主人として。
◇
流れが変わった?
インフが攻勢なのは今も変わらず。
ただ、向こう側に勢いがついた。
魔法もあらかた掻き消されている。
おかしい。
ただ相手は極端に頑丈で、極端に足が早く、極端に力が強い。
まるで一つの個体ではないみたい。
ああ、尻尾が増えても手数が全然足りない。
もっと、もっと欲しい。
ルエンザ、貴女がいれば状況は変わったのかしら?
いつもなら答えてくれる相手がいない状況にどうにも落ち着かない。ああ、全て壊れて仕舞えばいいのに。
インフは破滅的な思考を持ちながら、破壊衝動を抑えきれずに暴れ出す。
既に雑木林は更地へと至り、近隣住民は警戒態勢を敷いている。
魔力の本流が二度、三度と地盤を揺らしたのが原因だ。
地震。
最初の揺れは小さく。
しかし次第に大きく住民の不安を揺さぶるものとなっていた。
もう誰にも止められない破壊衝動。
ただ何度それをぶつけても乗り越えてくる相手にいい加減ウンザリしてるのも事実だ。
『いい加減倒れなさい! 邪魔よ!』
巨大な岩盤が宙に浮く。
それが目障りなウサギに覆い被さった時、やっと気持ちが晴れ渡る瞬間……絶命したはずの妹の声が聞こえた。
『姉さん! もう辞めて!』
『ルエンザ? どこに居るの?』
最初は幻聴かと思ったが、声をした方を向けばそこは先程憎いウサギに岩盤を押し付けた場所からだった。
その岩盤が持ち上がる。
魔法で持ち上げたのではない。
膂力で押し留め、這い出てきた。
『姉さん!』
『そこに居るのね、ルエンザ!』
今、出してあげるから。
インフの暴力的な魔力が練り上げ、回転が加わり螺旋の力が風穴を開けるべく鋭く構えられる。
『砕け散れ!』
『くっ糸が弾かれて吸収できない!』
『あるじ、下がってて!』
『プロフェン!』
ガードタイプで前に出たプロフェンが、ガードしきれずに腕に大穴を開ける。
『捕まえたぜぇ?』
痛みに耐えながらもロキが口角を上げた。
遠距離型が至近距離を得意とするタイプに肉弾戦を仕掛けてきた。
この時点で勝負は予め決まっていた。
『今までの分、万倍にして返してやんぜ。歯ぁ食いしばれ!』
パワータイプのロキが、力を込めた右ストレートで九尾へと致命のダメージを与える。
体をくの字に折りたたむ強打。
魔法の壁を何艘も打ち砕き、見事昏倒させることに成功させる。
ここから先は僕達じゃない、ルエンザの出番だった。
変身後、死んだはずの肉体が復元されたことにルエンザは心底驚いている。
『これは……?』
『僕の変身対象を君に変えた。効果は一時間。お姉さんとの別れを済ませておいで』
それだけ言ってさっきまで騒がしかった気配が消える。
『姉さん、姉さん』
四尾の狐は、自分の後を追おうとする哀れな姉の顔をぺろぺろ舐めながら懺悔の言葉を並べていた。
楽しかった思い出、苦しかった思い出。
生きていればそれなりにある。
囚われのみだった頃、姉の提案で一緒に人間の屋敷から逃げ出した時は胸が踊った。そこから先は完全に手探り。
餌はずっと人間が用意してくれたものを口にしていたから、初めての狩猟は失敗ばかり。
インフが囮になって、ルエンザが魔法で仕留めるようになったのはこの頃からだったか。
思い出話に花を咲かせていると、ようやく寝坊助の姉が起きた。
『ルエンザ、ルエンザなの?』
『そうよ。最期にひとこと言いにきたの』
『最期だなんて言わないで、ずっと一緒にいなさい!』
『無茶言わないでよ。こちとら五体不満足で即死だったのよ? 魔力は姉さんが根こそぎ持ってくし……でも、私に会いたかったらまたこの森に来て。生意気なウサギと共に待ってるわ』
『どうして?』
そんな嫌なやつと一緒に居るの?
『姉さん、私ね──』
ルエンザのもたらした言葉がインフへと突き刺さる。
──人間と契約した。
その人間はいっぱい迷惑かけたにも関わらず、自分を大切に扱ってくれると言う約束をしたと、だから一緒に飼われないかと言う提案を聞いて妹は汚されてしまったとインフは思い至る。
『くれぐれも早まらないでよ? あの人は元の飼い主と違う。私達を見世物にしない。飼われてやってもいいって自分で決めたの。それに、今この状態でいられるのはあの人間のおかげ』
『どういうこと?』
『ごめんね、姉さん。もう時間だから、また明日』
そう言って妹の姿はかき消えた。
インフは妹にもう一度会いたい一心で言われた通りの場所で傷を癒やし続けた。
眠りについたまま、四回目の朝日が昇る頃、その人間は再び現れた。
当時インフが雑魚と断言した人間からは、妹の気配がした。
再び妹と出会った時、信じられないくらい艶々の毛並みに若干嫉妬したのを覚えている。
後のことは、ご想像にお任せするわ。
それがインフの捨て台詞となった。
自分でも何をしてるのかわからない。
ただ、全てが憎く。
どうしようもないほどに自分が愚かだと気付かされていた。
『ルエンザ、貴女の分まであたしは生きる。でも、私は一人じゃそんなに強くないのよ。だから貴女の無念、私が晴らすわ』
妹の魂が憑依した気分。
口調までが妹になり、優越感さえ漂ってくる。
あぁ、なんて幸せな気分。
でも、どうしようもないくらいに人間が憎い。
何もかもぶち壊したい。
その前に、あの生意気なウサギはどこに行ったのかしら?
周囲を見回すも、ズタボロにながらも魔法の的になっていたハンターラビットが急に気配すら消していた。
『待たせたね』
そこへ現れる異形。
いいや、かろうじてハンターラビットの面影はある。
ただ、口調もそうだがあまりにも先ほどとはかけ離れた身体能力に目を見張った。
◇
『姉さん!』
『残念だけど君の声は彼女に届いてないみたいだ。君を失ったばかりで情緒が不安定みたい』
『どうすればいいの?』
『乱暴だけど、少し懲らしめる。何か弱点とかある?』
『姉さんのあんな姿見たことない。尻尾が八本……いえ、九本目が生えたわ。あんなに魔力に満たされて羨ましいくらいよ』
ルエンザと名乗る妹分のシルバーフォックスは、姉であるインフのことを心配すると同時に嫉妬していた。
シルバーフォックスにとって九尾は一つの到達点。
傾国級へと至ることが種族の悲願。
そこにいち早く辿り着いたことが羨ましいんだそうだ。
うん、それよりも先に対処法を教えてくれると嬉しいかな?
それはそれとして恐れていた事態が起きた。
尻尾が九本。インフが九尾へと至ってしまったのだ。
『なんだこれは!? 一体どういうことだ!』
『ロキ、うるさい』
『そうよ、乱暴ウサギ!』
『兄ちゃん、無事でよかった』
『ボスぅ、一人で戦うなんてやめてよぉ』
『なんでここでソニンやプロフェンまで居るんだ? あと妙な狐の気配までするぞ?』
『話はあと、来るよ?』
融合した事で僕は自分の体を取り戻した。
おかげで心の住人は騒がしく、賑やかだ。
ロキなんて特に状況を全く掴めてないので状況説明を求めてきたよね。
尻尾の一つ一つに魔法の奔流。
一発一発が山をも砕く威力が高められてる。
『ここは、僕に任せて!』
プロフェンが前に出る。変身がディフェンスタイプに勝手に置き換わる。まるで一緒に戦ってるみたいだ。
ううん、一緒に戦ってるんだ。意識は僕のまま、自分の得意分野を手伝ってくれてる感覚に近い。
『なに!?』
すべての魔法を受け止めて、なお無傷で立ち上がるプロフェン。
インフは忌々しげに僕を見た。
『全て命中したはず。なんで立ち上がる?』
『そうする必要があったから。次はこちらからいくよ!』
『俺の番だなぁ!?』
『兄ちゃんは下がってて、ここはあたしの番だってぇの!』
ロキを押し除けるように、ソニンが前に出る。
連打がダメなら一撃を大きくすればいいという割とパワー思考の巨大な魔法を、ソニンは恐るべきスピードで回避した。
僕は回避すると同時に魔力を毛糸に変換して地面から魔法に突き刺し、養分抽出を試みる。
成功。
使用回数を減らす暴挙だったけど、うまいこと成功してよかった。肉体の制御は任せる形になっちゃうけど、ゴミ拾いのフィールド内なら僕の出番はあるからね!
『兄ちゃん、今のなに? あの大きな魔法の塊が消えちゃったよ!?』
『今度から魔法は僕に任せて。ソニンは前に集中、いい?』
『後で絶対やり方教えてね?』
『もちろんだよ』
教えても覚えられるかはわからないけど、せっかく教わる気になったんだ。教えるのは吝かじゃない。
『ソニン、変われ。魔法さえなんとかなれば俺の敵じゃない』
『そうやって一人でカッコつけようとするー』
『ボス! ここはみんなで戦うところだよ?』
『プロフェン迄……言うようになったじゃねぇか! じゃあお前ら、俺について来い。あるじもサポート頼むぜ?』
初めて僕の事を半身でも、魂の同居人でもなくあるじなんて呼ぶロキ。絆レベルはとっくにマックスだった。
でも、心のどこかで上下関係は下に位置した。
それが今、上に置き換わった。
腕前を認められたんだ。
『任せて!』
僕はようやくこの場で一つの仕事を任せられる役目を得ていた。
お世話役から、主人として。
◇
流れが変わった?
インフが攻勢なのは今も変わらず。
ただ、向こう側に勢いがついた。
魔法もあらかた掻き消されている。
おかしい。
ただ相手は極端に頑丈で、極端に足が早く、極端に力が強い。
まるで一つの個体ではないみたい。
ああ、尻尾が増えても手数が全然足りない。
もっと、もっと欲しい。
ルエンザ、貴女がいれば状況は変わったのかしら?
いつもなら答えてくれる相手がいない状況にどうにも落ち着かない。ああ、全て壊れて仕舞えばいいのに。
インフは破滅的な思考を持ちながら、破壊衝動を抑えきれずに暴れ出す。
既に雑木林は更地へと至り、近隣住民は警戒態勢を敷いている。
魔力の本流が二度、三度と地盤を揺らしたのが原因だ。
地震。
最初の揺れは小さく。
しかし次第に大きく住民の不安を揺さぶるものとなっていた。
もう誰にも止められない破壊衝動。
ただ何度それをぶつけても乗り越えてくる相手にいい加減ウンザリしてるのも事実だ。
『いい加減倒れなさい! 邪魔よ!』
巨大な岩盤が宙に浮く。
それが目障りなウサギに覆い被さった時、やっと気持ちが晴れ渡る瞬間……絶命したはずの妹の声が聞こえた。
『姉さん! もう辞めて!』
『ルエンザ? どこに居るの?』
最初は幻聴かと思ったが、声をした方を向けばそこは先程憎いウサギに岩盤を押し付けた場所からだった。
その岩盤が持ち上がる。
魔法で持ち上げたのではない。
膂力で押し留め、這い出てきた。
『姉さん!』
『そこに居るのね、ルエンザ!』
今、出してあげるから。
インフの暴力的な魔力が練り上げ、回転が加わり螺旋の力が風穴を開けるべく鋭く構えられる。
『砕け散れ!』
『くっ糸が弾かれて吸収できない!』
『あるじ、下がってて!』
『プロフェン!』
ガードタイプで前に出たプロフェンが、ガードしきれずに腕に大穴を開ける。
『捕まえたぜぇ?』
痛みに耐えながらもロキが口角を上げた。
遠距離型が至近距離を得意とするタイプに肉弾戦を仕掛けてきた。
この時点で勝負は予め決まっていた。
『今までの分、万倍にして返してやんぜ。歯ぁ食いしばれ!』
パワータイプのロキが、力を込めた右ストレートで九尾へと致命のダメージを与える。
体をくの字に折りたたむ強打。
魔法の壁を何艘も打ち砕き、見事昏倒させることに成功させる。
ここから先は僕達じゃない、ルエンザの出番だった。
変身後、死んだはずの肉体が復元されたことにルエンザは心底驚いている。
『これは……?』
『僕の変身対象を君に変えた。効果は一時間。お姉さんとの別れを済ませておいで』
それだけ言ってさっきまで騒がしかった気配が消える。
『姉さん、姉さん』
四尾の狐は、自分の後を追おうとする哀れな姉の顔をぺろぺろ舐めながら懺悔の言葉を並べていた。
楽しかった思い出、苦しかった思い出。
生きていればそれなりにある。
囚われのみだった頃、姉の提案で一緒に人間の屋敷から逃げ出した時は胸が踊った。そこから先は完全に手探り。
餌はずっと人間が用意してくれたものを口にしていたから、初めての狩猟は失敗ばかり。
インフが囮になって、ルエンザが魔法で仕留めるようになったのはこの頃からだったか。
思い出話に花を咲かせていると、ようやく寝坊助の姉が起きた。
『ルエンザ、ルエンザなの?』
『そうよ。最期にひとこと言いにきたの』
『最期だなんて言わないで、ずっと一緒にいなさい!』
『無茶言わないでよ。こちとら五体不満足で即死だったのよ? 魔力は姉さんが根こそぎ持ってくし……でも、私に会いたかったらまたこの森に来て。生意気なウサギと共に待ってるわ』
『どうして?』
そんな嫌なやつと一緒に居るの?
『姉さん、私ね──』
ルエンザのもたらした言葉がインフへと突き刺さる。
──人間と契約した。
その人間はいっぱい迷惑かけたにも関わらず、自分を大切に扱ってくれると言う約束をしたと、だから一緒に飼われないかと言う提案を聞いて妹は汚されてしまったとインフは思い至る。
『くれぐれも早まらないでよ? あの人は元の飼い主と違う。私達を見世物にしない。飼われてやってもいいって自分で決めたの。それに、今この状態でいられるのはあの人間のおかげ』
『どういうこと?』
『ごめんね、姉さん。もう時間だから、また明日』
そう言って妹の姿はかき消えた。
インフは妹にもう一度会いたい一心で言われた通りの場所で傷を癒やし続けた。
眠りについたまま、四回目の朝日が昇る頃、その人間は再び現れた。
当時インフが雑魚と断言した人間からは、妹の気配がした。
再び妹と出会った時、信じられないくらい艶々の毛並みに若干嫉妬したのを覚えている。
後のことは、ご想像にお任せするわ。
それがインフの捨て台詞となった。
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