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二章 ゴミ拾いともふもふ生活

30 新しい家族

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ブラッシングをしている。
先日ロキから新しく舎弟にしたモンスターが居ると夜分遅くに叩き起こされて保護されたモンスターだ。
真っ赤なたてがみを持つ双頭の獅子。
今は僕の腕の中で温めたミルクをちゅうちゅう吸っている。

頭が二つある以外は猫のようだ。
ブラッシングしてやれば気持ちよさそうにくぁーっっとあくびした。手足をバタバタさせて身じろぎした後、ケプッとゲップした。

見上げるほどの巨体も、僕の『伸縮』で一抱え出来るほどのサイズとなった。
新しい子の名前はプロフェンとした。
ソニンを姉と慕う、甘えん坊だ。
普段は図体がでかいが、ここでは小さくしたので新しい境地に至ってるらしい。
生まれながらに大きかったから、小さい自分が新鮮なようだ。

僕からブラッシングを奪った相手としてプロフェンに嫉妬むき出しだ。近づくなりポフポフとしたパンチや蹴り、頭突きなどを喰らわしている。若干浮遊させてるので踏ん張りが効かず、本来の力を出せずにいる。
意外なところで役に立ったな、浮遊。

「兄さん、ソニンのブラッシングしてあげて。僕はプロフェンのお世話してあげなくちゃいけないから」
「それはクエストか?」

兄さんがいつになく真面目な顔で聞いてくる。
確かに僕は今兄さんに物のついでのように任せようとした。
しかし兄さんはタダでやると仕事がハンパになる。
世話するならしっかりしたい。しかし本格的にやるなら資金投資が必要だ。だから任せるならクエストを挟んでくれと言った。

「うん、夕飯は僕が奢るよ。だからお願い」
「聞いたか? ミキリー」
「ああ、ばっちりさ」

兄さんがニンマリと笑い、手をワキワキとさせる。
ミキリーさんに至ってはブラシと毛玉を入れておく桶を用意している。すっかりあやす気満々だ。

「そうやって。本当はお世話したくてたまらなかったくせに。無償でやってあげたらいいじゃないですか」
「ばかやろー、ストックお前。確かにオレたちはお世話したくて仕方なかった。そうさ、ずっとソニンを抱っこさせてもらいたかったよ。でもなぁ、お世話に夢中になりすぎて仕事が手につかなくなる! だが、それを仕事にしちまえば両得だろうが!」
「威張ることですか?」

ストックさんのツッコミは華麗にスルーされた。
そして当のソニンと言えば、

『暑苦しい』

兄さん達からの熱量がすごいと、落ち着かないようだ。





「これはどう見てもツインヘッドベヒーモスだが、相違ないか?」

ギルドマスターさんが新しい獣魔契約の際に、プロフェンに向かってそう尋ねた。
その真っ赤なたてがみは珍しいが、双頭の時点で隠しきれない大物オーラが出てるらしい。

本来は山林に収まる図体ではないのだが……と僕の手の中でミルクを吸う姿を見てすっかり厳つい表情を崩している。

「僕の新しい獣魔にするには無理がありましたか?」
「くぅん?」
「見た目は子犬みたいだな。サイズが小さくなると何とも可愛らしくなるモノだ」
「実際は見上げるほどの巨体ですね。しゃがんでも森の木より大きいです」
「だろうな」

ギルドマスターさんが眉間を揉み込み、僕の護衛を買って出てくれているオレノーさんへ目配せする。

「一度ハンターラビットを見逃してる。だがこれは流石に見過ごせないよな?」
「珍しいたてがみ。欲しがるコレクターはいくらでもいるでしょう」
「討伐隊を出せと言っても何人死ぬか分からんぞ?」
「じゃあ、見なかったことにしましょう」

オレノーさんは両手を上げた。
ギルドマスターさんは役に立たん奴め、と第二王子を扱き下ろす。

「どちらにせよ、見なかったことにすれば面倒ごとにならなくて済むか。日中はそのサイズで過ごしてくれるのか?」
「それは、はい。ソニンと一緒にバスケットで寝てもらいます」
「ちなみに坊やのスキルの範囲は?」
「今ですと、このギルドの中くらいならギリギリ効果は届きます」
「持ち出されたらアウト、か。オレノー、引き続き頼めるか?」
「護衛対象がどっちか分からなくなるが、引き受けよう。その代わりバレたら一蓮托生だぜ?」
「分かってる。はぁ、次から次へと面倒ごとが舞い込んできて頭が痛くなるな」
「そう言うな。坊やのお陰で大事にならずにすんでるんだ」
「その坊やがいちばんの頭痛の種なんだがな」
「そこは大人が責任を取ればいいのさ」
「それもそうだ」

オレノーさんとギルドマスターさんがすっかり話し込んでしまった。
僕としても迷惑かけるつもりはないので、新しいマスコットとしてプロフェンを売り出して行かなきゃね。

さぁて、忙しくなるぞー。
談話室からプロフェンを連れて戻ると、ソニンをお世話してる兄さん達を囲うように冒険者達が賑わっていた。
兄さんの腕の中で満更でもなさそうにニンジンを与えられている。

良かったね、ソニン。みんなから愛されて。
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