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二章 ゴミ拾いともふもふ生活
28 夜の森散策
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怪しい男が近隣のモンスターとどんな関わりがあるのか、僕達はオレノーさんを連れて夜の森の創作を始めた。
「いつ見てもサイズ詐欺だよなぁ、ソニンは」
『まぁ、子供とはいえハンターラビットなので』
「坊やもギルドで見せた姿とサイズが違うんだよ……」
オレノーさんはソニンと僕を見て、普段ギルドでふにゃふにゃしてる方を思い浮かべて顔手を当てた。
そこは伸縮スキルの力だよね。
『担ぎます。オレノーさんは僕の背中に。僕の匂いをつけてればそうそう狙われないと思いますので。僕とソニンはこの近隣をナワバリにしてますから、匂いで怖気付いて襲って来ませんよ。安全は保証します』
「夜のモンスターが怯えるって、普段どんな方法で間引いてるのか聞くのが怖いな」
『そこは秘密です』
文句はロキに言って。僕に言われても困る。
『ソニン、昼間の人間の匂いを感じたモンスターの匂いを追って』
『兄ちゃんも知ってるやつだよ。むしろ率先して「気に入らん」って突っかかって行ってるもん』
『それってブラックベアーとかそう言うの?』
『それそれ!』
実物は知らないけど、ここら辺にはいない個体がどこかで流れ込んできてるのかな?
『ロキは何が気に食わなかったんだろう? ソニンは知ってる?』
『さぁ? 兄ちゃんは気分で喧嘩売るから』
なんて迷惑な。まぁだから人類から敵対視されてるんだけど。
なんだかんだソニンは懐いてくれたけど、ロキは奔放だからね。
夜は好きにしていいよってほどほどに息抜きさせてなきゃいつ爆発するかわからない爆弾だ。
ソニンも同じ。一緒に暮らしてくれてるけど、モンスターと人間は根本的に違うんだって思い知らされる。
『と、確かに変な匂い』
嗅覚に強く訴える不思議な匂い。
なんだろうこれ、妙にムカムカする。ロキの感情が表に出て来たのかな?
「止まれ、あの場所に小屋がある」
オレノーさんが肩を叩き、僕は初めてその場所に小屋があると気がついた。
『見えなかった』
「多分幻術の類だ。俺はそれを見抜く魔道具を持っている。さっきから妙に頭痛がするだろう?」
『それがムカつきの原因かな? 変な匂いも混ざってる。胸を掻きむしりたくなるほどの不快感があるんです』
「匂いなんてするか? いや、今の坊やはハンターラビットの嗅覚を有しているのか。匂いまではわからんが、幻術は行使する際に様々なモンスターの血を使う。それが原因じゃないのか? 角が上がれば上がるほど効果が上がるんだそうだ。ここに仕掛けられたものがなんのモンスターの血を使ってるかは分からんが、気になる部分はそこだろう」
そうなのかな?
ただよく分からないモヤモヤがいつまでも胸の中に残った。
『兄ちゃん、あの人間だ!』
ソニンが木の上から小屋を見下ろす位置に陣取り、小屋から出てくる一人の男が出てくるのを察知した。
「何か持ってるな」
『嫌な匂いが増した』
男の手元にはモンスターの心臓が握られていた。
心臓単品なのに、ドクドクと脈打っている。
そこに懐から取り出した薬品を蓋をとって振りかける。
するとそれはブラックベアーへと変貌した。
「……密輸か」
『密輸ですか?』
「ああ、あの男は内側に意識を寄せてるうちに、あの街周辺の生態系を壊すように働きかけていたんだ」
『何のために?』
「モンスターの密輸、放し飼いの理由なんて戦争以外ないだろう。こうやってなんてことのない小さな街をモンスターの飼育場にして、本隊への補給路を断つんだ。それをされると攻めも守りもガタガタになる」
思ったより大きい事件だったみたいだ。
狙ってるのはオレノーさんどころか帝国を根本から切り崩すためのものだった。
それを知らず知らずのうちとは言え、僕が台無しにしていたと。
悪いことしちゃったとは思わない。
だってそれを許したら僕達が食べるのも困っちゃうからね。
『花粉もその布石だったと?』
「モンスターを密かに森に持ち込むためのものだろうな」
『薬師の格好をしてたのは?』
「モンスターの心臓も薬の素材として使われるからな。大量に持ち込んでも関所を通りやすいんだ」
全部計画的に行われているんだ。
『それで、どうするんです?』
「取り敢えずは泳がせておく」
『放置でいいんですか?』
「だってあのモンスターは坊や達にとっては縄張り争いをするライバルだろう? 放っておいても駆逐される。違うか?」
違わない。何だったら僕がいるだけで花粉の流入も防げる。
「だったら放置して相手にたっぷり金を使わせればいい。戦争ってのは土地や資源を奪う為にやるもんだが、金がなくなったら出来なくなるからな。だから奪った先で補給するんだ。もちろんそこでも金は使う。兵を養うのに金はいくらでも必要だ」
『じゃあ放っておけば相手の国は勝手に自滅するってこと?』
「そうしてくれると助かるが、また違う方向で何か仕掛けてくるだろう。それまでの時間を先延ばしにして、こっちはそれに備えておくことができるんだ」
話が難しくてよく分からないけど、つまり何もしなくていいってことだけはわかった。
調査は早々に打ち切られ、オレノーさんをギルドに送ってから僕もロキに体を明け渡した。
ふぁ~いっぱい頭使ったから眠いや。おやすみなさーい。
あとはロキにお任せして、僕は意識を沈めた。
◇
一方その頃、医者風の男は頭を抱えて叫んでいた。
「聞いていませんよ! 何でこんなところに災害級のモンスターが住んでるんですか!? あぁ! せっかく持ち込んだブラックベアーが! アースドラゴンが! サンドローパーが! 目の前で食いちぎられていくぅうう!」
それは男にとってまさしく悪夢のようだった。
だが頭痛の種こそ生れども、作戦の中止は出来なかった。
何せ六年の月日を費やしているのだ。
花粉で意識を逸らしてる間に準備は着々地進んでいるのだ。
薬を売って得た金を資金に、いくらでも建て直せる筈だった。
「は? 薬は必要ない。だってみなさんあんなに苦しそうに……あれ?」
再びギルドに赴くと、そこでは日常が訪れたようにクエストに意識を割く冒険者達。
雨季に乗じて花粉を水路に混入させたのにもかかわらず、まるで気にしてないとばかりに仕事に励んでいる。
白衣の男コンドーロは、眼鏡の位置をずらし、これは不味いですよぉ、と繰り返しギルドを後にした。
「いつ見てもサイズ詐欺だよなぁ、ソニンは」
『まぁ、子供とはいえハンターラビットなので』
「坊やもギルドで見せた姿とサイズが違うんだよ……」
オレノーさんはソニンと僕を見て、普段ギルドでふにゃふにゃしてる方を思い浮かべて顔手を当てた。
そこは伸縮スキルの力だよね。
『担ぎます。オレノーさんは僕の背中に。僕の匂いをつけてればそうそう狙われないと思いますので。僕とソニンはこの近隣をナワバリにしてますから、匂いで怖気付いて襲って来ませんよ。安全は保証します』
「夜のモンスターが怯えるって、普段どんな方法で間引いてるのか聞くのが怖いな」
『そこは秘密です』
文句はロキに言って。僕に言われても困る。
『ソニン、昼間の人間の匂いを感じたモンスターの匂いを追って』
『兄ちゃんも知ってるやつだよ。むしろ率先して「気に入らん」って突っかかって行ってるもん』
『それってブラックベアーとかそう言うの?』
『それそれ!』
実物は知らないけど、ここら辺にはいない個体がどこかで流れ込んできてるのかな?
『ロキは何が気に食わなかったんだろう? ソニンは知ってる?』
『さぁ? 兄ちゃんは気分で喧嘩売るから』
なんて迷惑な。まぁだから人類から敵対視されてるんだけど。
なんだかんだソニンは懐いてくれたけど、ロキは奔放だからね。
夜は好きにしていいよってほどほどに息抜きさせてなきゃいつ爆発するかわからない爆弾だ。
ソニンも同じ。一緒に暮らしてくれてるけど、モンスターと人間は根本的に違うんだって思い知らされる。
『と、確かに変な匂い』
嗅覚に強く訴える不思議な匂い。
なんだろうこれ、妙にムカムカする。ロキの感情が表に出て来たのかな?
「止まれ、あの場所に小屋がある」
オレノーさんが肩を叩き、僕は初めてその場所に小屋があると気がついた。
『見えなかった』
「多分幻術の類だ。俺はそれを見抜く魔道具を持っている。さっきから妙に頭痛がするだろう?」
『それがムカつきの原因かな? 変な匂いも混ざってる。胸を掻きむしりたくなるほどの不快感があるんです』
「匂いなんてするか? いや、今の坊やはハンターラビットの嗅覚を有しているのか。匂いまではわからんが、幻術は行使する際に様々なモンスターの血を使う。それが原因じゃないのか? 角が上がれば上がるほど効果が上がるんだそうだ。ここに仕掛けられたものがなんのモンスターの血を使ってるかは分からんが、気になる部分はそこだろう」
そうなのかな?
ただよく分からないモヤモヤがいつまでも胸の中に残った。
『兄ちゃん、あの人間だ!』
ソニンが木の上から小屋を見下ろす位置に陣取り、小屋から出てくる一人の男が出てくるのを察知した。
「何か持ってるな」
『嫌な匂いが増した』
男の手元にはモンスターの心臓が握られていた。
心臓単品なのに、ドクドクと脈打っている。
そこに懐から取り出した薬品を蓋をとって振りかける。
するとそれはブラックベアーへと変貌した。
「……密輸か」
『密輸ですか?』
「ああ、あの男は内側に意識を寄せてるうちに、あの街周辺の生態系を壊すように働きかけていたんだ」
『何のために?』
「モンスターの密輸、放し飼いの理由なんて戦争以外ないだろう。こうやってなんてことのない小さな街をモンスターの飼育場にして、本隊への補給路を断つんだ。それをされると攻めも守りもガタガタになる」
思ったより大きい事件だったみたいだ。
狙ってるのはオレノーさんどころか帝国を根本から切り崩すためのものだった。
それを知らず知らずのうちとは言え、僕が台無しにしていたと。
悪いことしちゃったとは思わない。
だってそれを許したら僕達が食べるのも困っちゃうからね。
『花粉もその布石だったと?』
「モンスターを密かに森に持ち込むためのものだろうな」
『薬師の格好をしてたのは?』
「モンスターの心臓も薬の素材として使われるからな。大量に持ち込んでも関所を通りやすいんだ」
全部計画的に行われているんだ。
『それで、どうするんです?』
「取り敢えずは泳がせておく」
『放置でいいんですか?』
「だってあのモンスターは坊や達にとっては縄張り争いをするライバルだろう? 放っておいても駆逐される。違うか?」
違わない。何だったら僕がいるだけで花粉の流入も防げる。
「だったら放置して相手にたっぷり金を使わせればいい。戦争ってのは土地や資源を奪う為にやるもんだが、金がなくなったら出来なくなるからな。だから奪った先で補給するんだ。もちろんそこでも金は使う。兵を養うのに金はいくらでも必要だ」
『じゃあ放っておけば相手の国は勝手に自滅するってこと?』
「そうしてくれると助かるが、また違う方向で何か仕掛けてくるだろう。それまでの時間を先延ばしにして、こっちはそれに備えておくことができるんだ」
話が難しくてよく分からないけど、つまり何もしなくていいってことだけはわかった。
調査は早々に打ち切られ、オレノーさんをギルドに送ってから僕もロキに体を明け渡した。
ふぁ~いっぱい頭使ったから眠いや。おやすみなさーい。
あとはロキにお任せして、僕は意識を沈めた。
◇
一方その頃、医者風の男は頭を抱えて叫んでいた。
「聞いていませんよ! 何でこんなところに災害級のモンスターが住んでるんですか!? あぁ! せっかく持ち込んだブラックベアーが! アースドラゴンが! サンドローパーが! 目の前で食いちぎられていくぅうう!」
それは男にとってまさしく悪夢のようだった。
だが頭痛の種こそ生れども、作戦の中止は出来なかった。
何せ六年の月日を費やしているのだ。
花粉で意識を逸らしてる間に準備は着々地進んでいるのだ。
薬を売って得た金を資金に、いくらでも建て直せる筈だった。
「は? 薬は必要ない。だってみなさんあんなに苦しそうに……あれ?」
再びギルドに赴くと、そこでは日常が訪れたようにクエストに意識を割く冒険者達。
雨季に乗じて花粉を水路に混入させたのにもかかわらず、まるで気にしてないとばかりに仕事に励んでいる。
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