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二章 ゴミ拾いともふもふ生活
17 スキル【疲労抽出】/助けを求める声
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ザムさんの所でお手伝いを終えると、シャワーサービスの時間がやってくる。その時に現れた条件達成の合図。
それが【疲労抽出】と言うものだった。スキルの由来は老廃物から。
これが根枯らし蟲由来の【養分抽出】と違う点があるとするなら、対象から直接奪うのではなく、何かに付与させる事で効力を発揮するタイプのものと言うことだろう。
要はシャワーサービスとは似て非なるモノなのだ。
ザムさんの所で入手したスコア☆が程よく貯まっていたのでSスコア★に変換して獲得する。
僕は新しいサービスを考えつつ、お姉さんたちにシャワーサービスを施した。
もし兄さんが帰ってきたら試してみたい。
僕は弱いのであまり遠くに行けないけど、強い兄さんたちは頻繁に出稼ぎに行く。僕のいない所で損益を出してないか心配だ。
宿に帰れば夕飯が待っている。宿屋の女将さんに挨拶して、今日は頂くことを宣言する。普段は外で食べて帰ってくるのでこっちで食べることは稀だった。兄さんが遠征に行ったことを示せば納得してくれた。
そこで気がついたんだけど、随分とお疲れの様だった。
僕はコップの水に【疲労抽出】の成分を付与して、女将さんに渡した。
「いつもありがとうございます。たまにはゆっくり休んでくださいね、倒れられたら僕も困りますんで」
「ありがとうね、坊や。他の連中なんて飯の良し悪ししか言わないんだよ。全く、サービスだからって出されて当たり前って考えのやつが多くて困るよ」
そう言って僕の手渡したお水をごくごく飲んだ。
すると、手元のコップと僕を順に見て目を驚愕に見開く。
「何をしたんだい? さっきまでの疲れや身体中ベトベトになってた嫌な気分が全部吹っ飛んだよ?」
「実はスキルが成長して新しいのが生えたんです。女将さんにはちょっと実験に付き合ってもらって」
「本当に、なんて良い子なんだろうね。あんた、アスターの馬鹿に捨てられたらウチに来な!」
「えっえっ」
むぎゅっと抱きしめられて僕は息ができなくなった。
前は柔らかいのに、力強い腕力の方でガッチリと掴まれる。逃げ出すことなんて非力の僕には不可能だ。
「く、くるしいです……」
「おっと、悪い悪い。あたしとしたことがついうっかりしちまったよ」
「ふぅ、大変な目に遭いました」
「本当にごめん、悪気はないんだけどあんまりに感激しちまってね。それとこっちからお願いしたいんだけど、さっき見たいのはまた頼めるのかい?」
「まだ肉体にどんな影響が出るのかもわからないので、頻繁には無理ですが」
「こっちは大助かりだよ。それじゃあまたね。注文がはいっちまった!」
そう言って女将さんは厨房の奥に引っ込んだ。
パワフルだなぁ。母さんはほとんど外に出歩くことはなかった。
妹たちも着飾っては自分をよく見せることばかり。
街に降りてきてからいろんな価値観が覆されてきた。
家の外は危険がいっぱいで、その危険と向き合ってる人々は非常に豪快でパワフルな生活を送っている。
僕もこの界隈で生きていくんだ。
今は兄さんの庇護下にあるけど、いつかきっと。
自分一人で困難に立ち向かわなくちゃいけない時が来る。
そして、たった一人の時にやっておく事はまだまだあった。
『変身』
あの子と同じ毛色の個体。
もし誰かに見つかったらまずい事になる。
だから扉の前にベッドを運ぶ。変身後の肉体ならでは、できる芸等だ。
窓は事前にぴっちりと閉めておいた。
この姿を誰かに見られないように。
「うん、まぁ変な感覚だよね」
声帯は僕のもの。背は随分と縮んだのもあって視界は低い。
けど力は漲っていた。
でもこの姿になって聞こえる幻聴がある。
『──助けて、お兄ちゃん。助けて』
人の声では聞き取れないような耳鳴りに混ざって、そんな思念が届くのだ。
これは人の声? それとももっと別の?
それを確かめる手段は今の僕にない。
けれど、日に日に声の主は弱っていく。
命の危機に瀕しているんじゃないのか?
でも相手が人間である可能性は限りなく低い。
なんせ、その声が届くのがこのボディに変身してからなのだ。
最悪の可能性を紐解く。
もしかして、あの個体は同族、あるいは自分より劣る相手を保護していたのではないか? それが果たせずにボアに数の暴力で負け、帰りを待つ者が飢えに瀕しているとすれば辻褄が合う。
それで助けを求めて苦しんでるとしたら?
いてもたってもいられなくなる。だってそれは……僕と同じ境遇だから。
もし僕の兄さんが同じ立場になったらどうする?
冒険者はいつ死んでもおかしくないくらいに命が安い職業だ。
絶対に大丈夫だと頭は理解している。
それでも、頭のどこかで見捨てておけなかった。
変身の解除を待ち、僕は散歩と言って外に出る。
街の外に出るのは門番の前を通る必要があった。
けど、夜中に子供を一人外に出してくれるほど門番のお兄さんは寛容ではない。
何せ気になる相手がハンターラビットの可能性が非常に高いからだ。もし、兄の方の個体と同様の毛色だった場合。
捕まえられてその肉体を切り刻まれる。だから見つかるわけにはいかなかった。
だから強行突破をした。
ハンターラビットの脚力なら、街の塀を乗り越えられる。
この街がハンターラビットを恐れるポイントはそこだ。
相手はジャンプするだけでこの街に簡単に侵入できる。
だから討伐隊を組んででも対処する。
だから僕は一旦水路に入ってから変身する。
泥水を被り、ヘドロを纏ってから空を飛んだ。
変身中はゴミ拾いスキルが使えなくなってて助かった。
だって普段の状態でかぶっても拾い上げちゃうからね。
十分後、ヘドロ共々ニオイを消滅させた僕は、手土産にボアを仕留めて声の聞こえる場所へと急いだ。
案の定そこには一匹の痩せこけたハンターラビットがいた。
栄養失調で今にも死にそうなその姿を見て『遅くなってすまない』と、僕以外の感情が湧き上がった。
やっぱりあの子はこの子のお兄さんだったんだ。
ボアのをもぐもぐ食べてる姿をもっと見ていたかったけど、もう変身が解ける。
変身が解けたら僕はか弱い一般人。
ハンターラビットにとっては餌だ。
だから別れたくないと言う気持ちに蓋をして、そそくさと逃げ出した。
<獣神化/ラビットの絆LVが上昇した>
<変身時間中、脚力・腕力向上。変身時間を+20分延長>
帰宅中、何か出てきた。
それよりも問題は、どうやって門番を越えることだよなぁ。
まだ夜更け。
交代時間はまだまだ先だった。
それが【疲労抽出】と言うものだった。スキルの由来は老廃物から。
これが根枯らし蟲由来の【養分抽出】と違う点があるとするなら、対象から直接奪うのではなく、何かに付与させる事で効力を発揮するタイプのものと言うことだろう。
要はシャワーサービスとは似て非なるモノなのだ。
ザムさんの所で入手したスコア☆が程よく貯まっていたのでSスコア★に変換して獲得する。
僕は新しいサービスを考えつつ、お姉さんたちにシャワーサービスを施した。
もし兄さんが帰ってきたら試してみたい。
僕は弱いのであまり遠くに行けないけど、強い兄さんたちは頻繁に出稼ぎに行く。僕のいない所で損益を出してないか心配だ。
宿に帰れば夕飯が待っている。宿屋の女将さんに挨拶して、今日は頂くことを宣言する。普段は外で食べて帰ってくるのでこっちで食べることは稀だった。兄さんが遠征に行ったことを示せば納得してくれた。
そこで気がついたんだけど、随分とお疲れの様だった。
僕はコップの水に【疲労抽出】の成分を付与して、女将さんに渡した。
「いつもありがとうございます。たまにはゆっくり休んでくださいね、倒れられたら僕も困りますんで」
「ありがとうね、坊や。他の連中なんて飯の良し悪ししか言わないんだよ。全く、サービスだからって出されて当たり前って考えのやつが多くて困るよ」
そう言って僕の手渡したお水をごくごく飲んだ。
すると、手元のコップと僕を順に見て目を驚愕に見開く。
「何をしたんだい? さっきまでの疲れや身体中ベトベトになってた嫌な気分が全部吹っ飛んだよ?」
「実はスキルが成長して新しいのが生えたんです。女将さんにはちょっと実験に付き合ってもらって」
「本当に、なんて良い子なんだろうね。あんた、アスターの馬鹿に捨てられたらウチに来な!」
「えっえっ」
むぎゅっと抱きしめられて僕は息ができなくなった。
前は柔らかいのに、力強い腕力の方でガッチリと掴まれる。逃げ出すことなんて非力の僕には不可能だ。
「く、くるしいです……」
「おっと、悪い悪い。あたしとしたことがついうっかりしちまったよ」
「ふぅ、大変な目に遭いました」
「本当にごめん、悪気はないんだけどあんまりに感激しちまってね。それとこっちからお願いしたいんだけど、さっき見たいのはまた頼めるのかい?」
「まだ肉体にどんな影響が出るのかもわからないので、頻繁には無理ですが」
「こっちは大助かりだよ。それじゃあまたね。注文がはいっちまった!」
そう言って女将さんは厨房の奥に引っ込んだ。
パワフルだなぁ。母さんはほとんど外に出歩くことはなかった。
妹たちも着飾っては自分をよく見せることばかり。
街に降りてきてからいろんな価値観が覆されてきた。
家の外は危険がいっぱいで、その危険と向き合ってる人々は非常に豪快でパワフルな生活を送っている。
僕もこの界隈で生きていくんだ。
今は兄さんの庇護下にあるけど、いつかきっと。
自分一人で困難に立ち向かわなくちゃいけない時が来る。
そして、たった一人の時にやっておく事はまだまだあった。
『変身』
あの子と同じ毛色の個体。
もし誰かに見つかったらまずい事になる。
だから扉の前にベッドを運ぶ。変身後の肉体ならでは、できる芸等だ。
窓は事前にぴっちりと閉めておいた。
この姿を誰かに見られないように。
「うん、まぁ変な感覚だよね」
声帯は僕のもの。背は随分と縮んだのもあって視界は低い。
けど力は漲っていた。
でもこの姿になって聞こえる幻聴がある。
『──助けて、お兄ちゃん。助けて』
人の声では聞き取れないような耳鳴りに混ざって、そんな思念が届くのだ。
これは人の声? それとももっと別の?
それを確かめる手段は今の僕にない。
けれど、日に日に声の主は弱っていく。
命の危機に瀕しているんじゃないのか?
でも相手が人間である可能性は限りなく低い。
なんせ、その声が届くのがこのボディに変身してからなのだ。
最悪の可能性を紐解く。
もしかして、あの個体は同族、あるいは自分より劣る相手を保護していたのではないか? それが果たせずにボアに数の暴力で負け、帰りを待つ者が飢えに瀕しているとすれば辻褄が合う。
それで助けを求めて苦しんでるとしたら?
いてもたってもいられなくなる。だってそれは……僕と同じ境遇だから。
もし僕の兄さんが同じ立場になったらどうする?
冒険者はいつ死んでもおかしくないくらいに命が安い職業だ。
絶対に大丈夫だと頭は理解している。
それでも、頭のどこかで見捨てておけなかった。
変身の解除を待ち、僕は散歩と言って外に出る。
街の外に出るのは門番の前を通る必要があった。
けど、夜中に子供を一人外に出してくれるほど門番のお兄さんは寛容ではない。
何せ気になる相手がハンターラビットの可能性が非常に高いからだ。もし、兄の方の個体と同様の毛色だった場合。
捕まえられてその肉体を切り刻まれる。だから見つかるわけにはいかなかった。
だから強行突破をした。
ハンターラビットの脚力なら、街の塀を乗り越えられる。
この街がハンターラビットを恐れるポイントはそこだ。
相手はジャンプするだけでこの街に簡単に侵入できる。
だから討伐隊を組んででも対処する。
だから僕は一旦水路に入ってから変身する。
泥水を被り、ヘドロを纏ってから空を飛んだ。
変身中はゴミ拾いスキルが使えなくなってて助かった。
だって普段の状態でかぶっても拾い上げちゃうからね。
十分後、ヘドロ共々ニオイを消滅させた僕は、手土産にボアを仕留めて声の聞こえる場所へと急いだ。
案の定そこには一匹の痩せこけたハンターラビットがいた。
栄養失調で今にも死にそうなその姿を見て『遅くなってすまない』と、僕以外の感情が湧き上がった。
やっぱりあの子はこの子のお兄さんだったんだ。
ボアのをもぐもぐ食べてる姿をもっと見ていたかったけど、もう変身が解ける。
変身が解けたら僕はか弱い一般人。
ハンターラビットにとっては餌だ。
だから別れたくないと言う気持ちに蓋をして、そそくさと逃げ出した。
<獣神化/ラビットの絆LVが上昇した>
<変身時間中、脚力・腕力向上。変身時間を+20分延長>
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