上 下
16 / 88
一章 ゴミ拾いと冒険者生活

16 スキル【養分抽出】

しおりを挟む
変身はさておき、新しく手に入ったSスコア★の検証をしていく。
今の所抽出が可能と言う文字が浮かび上がった時のみ使用可能なSスコア★。
通常のスコア☆と違って、ゴミ拾い以外の何かが手に入るのは間違いない。
問題は何が原因で抽出が可能かと言う点だ。

それが判明しない事には無駄にスコア☆を溶かし続ける事になる。
分かっていることは、ゴミ拾い以外のスキルを獲得するには抽出をする他なく、そのスコアを稼ぐにはゴミを拾う必要があると言うことだった。

「おはよう、ルーク」

兄さんが起き抜けに念入りに頭を触ってくる。どうもウサ耳がまだ生えてないかの確認をしているかの様だ。
この姿を見て間違えるのならまだ寝ぼけているんだな。
僕は無言で兄さんのベッドから掛け布団を捲った。

基本硬いベッドの上で掛け布団は薄い布が一枚の宿だけど。
朝方は少し肌寒い。

「バカやってないで、朝ごはん貰いに行こ」
「なんだよ、ちゃんと戻ってるか確認しただけじゃないか」
「ふーんだ」

ひと足先に階下へ降りて、朝食を二人分用意する。
代金は後払いだ。食べた時にお金を払うのがここの宿での基本。
別に食べなくても大丈夫な様に宿とは別料金となっていた。

「お、さんきゅ」
「ついでにね。今日は冷める前に来て偉い」
「朝方は寒くて布団が恋しいんだよ。ふぁ~~」
「お行儀が悪いよ?」
「本当に、どっちが兄ちゃんか分かんないよ、アスター」
「うるへー」

水を汲んできた宿屋の女将さんが僕たちのテーブルにコップを二つ置いた。基本的にセルフサービスだけど、誰かに声をかけるついでに持ってきてくれる時があるのだ。
朝食は硬いパンに野菜クズが浮いた塩味の効いたスープ。そして野菜を炒めたものが出てくる。パンはそのまま噛み付くには硬すぎるから、よく揉んでから千切って食べる。スープに浸して柔らかくする手法もあるけど、僕はちょっと苦手だ。

食事を終えると、それぞれの場所へ。
今日は採取はお休み。兄さんも遠征に出るからと僕の方でも予定を見合わせた。一人で行ってもいいけど、今はボアの気が立ってるので奥地にまで行けないとの事で、狩場が封印されてるんだって。僕の薬草採取のチップだけで食い繋ぐのは兄さんにとってプライドが傷つく事らしく、もっと誇れる兄になって帰ってくる。そう言って旅立って行った。

受付でネーネさんと挨拶を交わし、今日の分のクエストを受け取っておく。申請依頼ではなく、受注依頼の方だ。
クエスト帰りにちょっとしたシャワー感覚で僕のゴミ拾いをアテにしてくる女性客が多いのだ。

時間は夕方に集中してるので、それまではザムさんのところでお手伝いが基本業務となった。

「お、来たな坊主」
「今日もお願いします」
「待ってたぜ。早速だが選別から始めてくれ」
「また雑草混じりですか?」
「お前さんほど目利きが良いわけじゃないんだ」

僕はにっこり笑った。
目利きどころかズルである。
ゴミ拾いはスキルを発動する際に、一度獲得した設定を置き換えることができる。何も考えずに作動すると、全部乗る。
だからお手伝いする時は集中する必要があった。

「雑草は拾っちゃって良いんですか?」
「甘いのは残してくれ。ポーションに使えるレシピが回ってきた」
「新レシピです?」
「そんなもんだ。ノーマルポーションより効果は落ちるが、安価で買えて駆け出し冒険者の強い味方らしい」
「回復量の高さを競い合ってるのかと思ってました」
「売り手も高い商品だけ売ってりゃ良いってもんじゃないからな」
「なるほどー」

雑談混じりにニガミ草を除去。
コストが増えてないことを考えると、この中にニガミ草はなかったみたいだ。
更にポイゾ菜を設定して除去。
ザザム草、キリキ草、イキリ草も含めて除去。
コストが増えないことを確認して眉を顰める。

「どうだ?」
「これまた凄い精度で持ってきましたね。でも根枯らし蟲だけはついてるので拾っちゃいますね」
「助かる」
「いえいえー」

シュッと拾い上げてスコア☆が加算される。
これでこの中のはアマイ草、またはヒリング草となる。
ここから先はプロの仕事だ。僕は見分けることはできず、排除することしかできない。

<条件達成:根枯らし蟲を10000匹獲得!>

<スキル/養分抽出を獲得可能>

ん? なんか急に出た。

<養分抽出>
 必要Sスコア★1
 手を触れた対象から養分を抽出する
 取り込んだ養分はストックされ、別のスキルによって合成、加工が可能。

なんか凄いスキル来た。これを★1で獲得しちゃって良いの?

Sスコア★は丁度2あったから獲得しちゃう。
もしかしたら僕はSスコア★でポーションとか作れる様になるかもしれないと、そんな予感がしていた。
なんの確証もなく、そうだったら良いなと期待を胸に膨らませた。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

みうちゃんは今日も元気に配信中!〜ダンジョンで配信者ごっこをしてたら伝説になってた〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
過保護すぎる最強お兄ちゃんが、余命いくばくかの妹の夢を全力で応援! 妹に配信が『やらせ』だとバレないようにお兄ちゃんの暗躍が始まる! 【大丈夫、ただの幼女だよ!(APP20)】

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...