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一章 ゴミ拾いと冒険者生活
13 怪我をした子ウサギ
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帰る道中、何やら随分と森が騒がしい。
「おい、随分と森の獣達が警戒してないか?」
「これは何かの前触れね。ストック、索敵をお願い」
「アイアイマム」
ストックさんが何やら敬礼し、そしてその場でワンドを地面に置く。詠唱と同時に魔法陣が足元に現れる。
それが大きく広がると。真ん中に四つの緑色が光り、元いた場所に一際大きく光る赤い何かが映り込んだ。
続いて四つの緑色を取り囲む様に複数の赤色が点灯する。
チッとミキリーさんの舌打ちが聞こえた。
「囲まれてるじゃないの。一体いつから狙われてた?」
「ほら、オレの勘は冴え渡ってるだろ? あのまま進んでたら主にご対面もありえた」
「どちらにせよ、気付かぬうちに領域に入っていたのは確かです。この森の主はなんでしたか……」
「ジャイアントボアだったろ?」
ストックさんの質問に、兄さんが答えるも。
妙だね、とミキリーさんが一蹴した。
「ボアってこんなに群れるのかい? まるでウルフみたいだ」
「確かに妙だな」
「あれ! 前の方で誰か襲われてる」
帰り道からすこし外れた雑木林の中で、強い衝撃が何度も起きた。そこには大量のボアが順番で突撃を繰り返す様子が見て取れた。
まるで魔法の弾丸の様に時間を置いて突撃をするボア達。
狙いは僕たちじゃなくて、この子ウサギみたいだ。
「あれはハンターラビットか。なんでこんな場所に?」
「おおかた山の方から逃げてきたんだろうね」
「逃げる? あの山間の王が?」
「きっと変わり者だったんだろ。毛色が少し違うからな。あいつらにとって毛色は誇りだ。純白に輝きすぎてるってだけで除け者にされたんじゃねーか?」
「それで新しい餌場を求めて降りてきたか。ここに居付かれたら溜まったものじゃないな」
「だが、ここの主はそれを許さなかった?」
「だろうな、オレ達はその隙に安全に帰れるってわけだ。気が立ったボア相手にしてたら命がいくつあっても足りねぇや」
兄さん達はそのまま帰る算段を立てている。
まるで疫病神の様にその子うさぎを見ていた。
前を歩く兄さん達。
僕はその場に踏みとどまってじっとあの子うさぎを見ていた。
後ろについてきてないことに気がついた兄さんは。小走りで僕のところに来て宥めてくる。
「ルーク、あれは凶暴なウサギだ。決して情で助ける様な奴じゃない」
「でも、あの子困ってる!」
「確かに今は劣勢だ。でも、第一種災害モンスターに認定されてるだけあって凶暴だ。あいつは確かに今リンチされてるかもしれない。でもな、同様にボアがあれだけ気が立ってるってことは、何匹も被害に遭ってるからなんだ。オレ達が間に入ったって何も解決しない。死体が四つ増えるだけだ」
「でも!」
「確かに思うところはあるよな、お前と同様生まれた場所を追い出され、一人前になろうと必死に頑張ってる。でもあいつとオレ達は生まれも育ちも生き方すら違うんだ。あいつに手を差し伸べたって、お前を餌ぐらいにしか思ってない連中だ。わかってくれ、ルーク」
「わかったよ」
僕は気が立ったボアに何回も追突されては傷を負う子うさぎを背に、逃げる様にギルドへ帰った。
いっぱいお金を手に入れた。冒険者としての生き方を兄さんに教えてもらった。
でも、心のどこかであの白うさぎのことが忘れきれなかった。
「おい、随分と森の獣達が警戒してないか?」
「これは何かの前触れね。ストック、索敵をお願い」
「アイアイマム」
ストックさんが何やら敬礼し、そしてその場でワンドを地面に置く。詠唱と同時に魔法陣が足元に現れる。
それが大きく広がると。真ん中に四つの緑色が光り、元いた場所に一際大きく光る赤い何かが映り込んだ。
続いて四つの緑色を取り囲む様に複数の赤色が点灯する。
チッとミキリーさんの舌打ちが聞こえた。
「囲まれてるじゃないの。一体いつから狙われてた?」
「ほら、オレの勘は冴え渡ってるだろ? あのまま進んでたら主にご対面もありえた」
「どちらにせよ、気付かぬうちに領域に入っていたのは確かです。この森の主はなんでしたか……」
「ジャイアントボアだったろ?」
ストックさんの質問に、兄さんが答えるも。
妙だね、とミキリーさんが一蹴した。
「ボアってこんなに群れるのかい? まるでウルフみたいだ」
「確かに妙だな」
「あれ! 前の方で誰か襲われてる」
帰り道からすこし外れた雑木林の中で、強い衝撃が何度も起きた。そこには大量のボアが順番で突撃を繰り返す様子が見て取れた。
まるで魔法の弾丸の様に時間を置いて突撃をするボア達。
狙いは僕たちじゃなくて、この子ウサギみたいだ。
「あれはハンターラビットか。なんでこんな場所に?」
「おおかた山の方から逃げてきたんだろうね」
「逃げる? あの山間の王が?」
「きっと変わり者だったんだろ。毛色が少し違うからな。あいつらにとって毛色は誇りだ。純白に輝きすぎてるってだけで除け者にされたんじゃねーか?」
「それで新しい餌場を求めて降りてきたか。ここに居付かれたら溜まったものじゃないな」
「だが、ここの主はそれを許さなかった?」
「だろうな、オレ達はその隙に安全に帰れるってわけだ。気が立ったボア相手にしてたら命がいくつあっても足りねぇや」
兄さん達はそのまま帰る算段を立てている。
まるで疫病神の様にその子うさぎを見ていた。
前を歩く兄さん達。
僕はその場に踏みとどまってじっとあの子うさぎを見ていた。
後ろについてきてないことに気がついた兄さんは。小走りで僕のところに来て宥めてくる。
「ルーク、あれは凶暴なウサギだ。決して情で助ける様な奴じゃない」
「でも、あの子困ってる!」
「確かに今は劣勢だ。でも、第一種災害モンスターに認定されてるだけあって凶暴だ。あいつは確かに今リンチされてるかもしれない。でもな、同様にボアがあれだけ気が立ってるってことは、何匹も被害に遭ってるからなんだ。オレ達が間に入ったって何も解決しない。死体が四つ増えるだけだ」
「でも!」
「確かに思うところはあるよな、お前と同様生まれた場所を追い出され、一人前になろうと必死に頑張ってる。でもあいつとオレ達は生まれも育ちも生き方すら違うんだ。あいつに手を差し伸べたって、お前を餌ぐらいにしか思ってない連中だ。わかってくれ、ルーク」
「わかったよ」
僕は気が立ったボアに何回も追突されては傷を負う子うさぎを背に、逃げる様にギルドへ帰った。
いっぱいお金を手に入れた。冒険者としての生き方を兄さんに教えてもらった。
でも、心のどこかであの白うさぎのことが忘れきれなかった。
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