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一章 ゴミ拾いと冒険者生活

10 ランクアップ

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水路掃除を終え、匂いを見事に取り去った僕に色んなオファーが舞い込んだ。

基本的には女性冒険者からの探索中の匂い消しだ。
場所によっては、敢えてモンスターの匂いをつけて仲間だと誤認させる時もあるらしいけど、クエストを終えたらその臭いを落とすのに数日を費やすから落として欲しいのだそうだ。

僕はスコアが稼げるから良いけど、色々勘違いしてないかな?
水路掃除の匂いとモンスターの匂いって根本的に違うよね?

老廃物って観点で一緒なのかな?
取り敢えずスコア次第で可能であれば許可する形にした。

自分でも分かってることだけど、ゴミ拾いは万能ではないのだ。

「実際、汗の匂いとか気にする人は多いのよ? 特に女性はそれを隠すために香水を買い込むもの」
「じゃあ僕のスキルで最終的にお金が浮くと?」
「そこに回す分のお金がルーク君に舞い込む可能性を考えたら、どう?」

悪くはないけど、いっぺんにまとめて欲しいかな?

「オールタイムは受け付けられないので、夕方~夜になる間なら引き受けましょう。その代わり、それを仕事の一つに加えますので、日に受ける仕事は二つに絞られますけど良いですか?」
「もう一声!」
「僕の体は一つしかないんですよ? ザムさんからもお呼ばれしてるし、本当はそこも仕事に含めて一つに絞りたいところなんですが、仕事に含めないでおいてるんです」
「それなら仕方ないかー。ザムさんの仕事如何でギルドの運営が左右されるとこあるから。ルーク君が来てから廃棄物0で余計なお金かからなくなったし、それ以上を求めちゃダメね」
「そうしてくれると助かります。そもそも僕はまだGランクですし」
「そうよねー、有能だから勘違いしてたわ。ルーク君、まだ10歳だものね、大人の冒険者相手に商売できるほど大人じゃなかったわ。反省」

ネーネさんは壁に手をつけ下を向き、反省のポーズを取る。
その状態のまま、グリンと首だけをこちらに寄せ、何かを思い出したかの様に道具を持ってきた。

「ルーク君、ライセンス出して」
「えっと、はい」
「ヨイショお!」

するとネーネさんは僕の手から奪い取ったライセンスに何かスタンプの様なものを押すではないか。
すると光が漏れ、それが消え去る頃には全く違う色、文字が描かれていた。これが噂に聞くランクアップ?

僕のライセンスはGからFになっていた。

「あの、こういうのって勝手にやっちゃって良かったんですか? 僕まだライセンス受け取って三日目ですけど」
「私の権限ならG~Dはつけられるわ! 流石にC~はギルドマスターの許可が必要になるけどね!」
「はぇ~、そうなんですね~。でもどうして急に?」
「これもこっちの都合なんだけど、外向けの仕事を任せるに値したと判断したからかな? 本当はもっと引き受けてほしいクエストはあるんだけど、それは最悪駆け出し冒険者でも出来る!」
「僕も駆け出し冒険者ですけど?」

ネーネさんはチッチッチと言いながら人差し指を左右に振った。

「ルーク君は駆け出し冒険者から逸脱してるわ。まずはザムさんからお墨付きをもらった。そして礼儀正しく、ショウさんからも優秀なサポーターとして認められている。そんな子をいつまでもGランクに置いていたら、私の目は節穴かと逆にお小言を貰うほどよ?」
「ネーネさんが怒られちゃうから僕のランクを上げたと?」
「それ以外にもあるんだけどね、Gランクって他者との信用関係を築けるかの部分を見定める試用期間だから、クエスト発注者から認められたら即座に昇格出来るのよ」

そうだったんだ。

「今回は水路の管理人から褒められたからOKって事ですか?」
「そうね。クエスト外でザムさんに褒められてたから、本当はクエスト前に上げちゃおうと思ったんだけど、例外を作るとそれを乗り越えてきた冒険者達が煩くて」
「だから水路クエストだったんですね」
「あれをクリアしたとしないでは箔のつき方が違うわ。そしてあなたのスキルなら?」
「キツイ匂いも拭き取れる?」
「体臭で悩んでる女性の強い味方になってくれると思ったの」

水路掃除を誰もやりたがらない理由はそこにある様だ。
匂いが取れず、数日他のクエストが受けられない。
でもそこから帰還した僕は極めて清潔、臭くない。
だから受け入れられるそうだよ?

「それで、Fランクになるとどんな仕事が受けられるんですか?」
「外での仕事が一部受け取れるわ」
「やっと外に!」
「外と言っても街からは目と鼻の先。森の浅いところでのヒール草採取。でも当然、怖いモンスターも出てくる。一人で行くのはおすすめしないわね。パーティを組んで行きなさい」
「僕、この街初めてなんですけど?」
「何言ってるの、ルーク君には強力な助っ人が居るじゃない?」

あ、アスター兄さん。

「兄さんなら引き受けてくれますかね?」
「むしろ率先して手を上げるわよ。どう、応募する?」
「お願いします」

こうして僕は街の外のクエストにも行けることになった。
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