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一章 ゴミ拾いと冒険者生活

7 自立への第一歩

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「おはよう、兄さん」
「おはよう、ルーク。今日もお前は元気だな、ふあぁー」

大きなあくびをした後、頭に手を置かれる。兄さんなりの挨拶なのだろう。

「今日はどんなクエストを受けに行くの?」
「お、気になるか? 実はなー」
「うんうん」

随分と間を開けた後、実は今日は休みで買い物をする予定だと言う。そこで僕に鑑定をして欲しいと言ってきた。
僕の方は逆に予定があって、ゴミ拾いの能力で解決して欲しいことがわんさかあるのだとネーネさんから帰る際に言付けされていた。

「そうなんだ、僕は昨日の今日で受けて欲しいクエストがあるって言われてて」
「お、稼いできたのは知ってたが、ギルドから随分な気に入られようじゃないか!」

頭を撫でる手に力が入る。なでなでというよりぐりぐりだ。

「痛いよ兄さん!」
「悪い、俺が先に目をつけたんだぞーって嫉妬してた」
「もう、僕は兄さんに拾ってもらわなかったら路頭に迷ってたんだし、兄さんを優先するに決まってるよ。ギルドのみんなは優しいけど、ちょっとだけ目が怖いから。それにクエストを選ぶ立場にあるのは冒険者の方なんだよね?」

冒険者になる時に兄に言われたセリフだ。

「そりゃ自分で食っていける様になってからだ。ランクが低いうちに恩を売っていけ。あとで世話してやった事を散々恩に着せてからわがままが言える様になる」
「じゃあ、受けたほうがいい?」
「受けたほうがいいが、仕事は3つまでだな」
「それ以上やっちゃいけない理由は?」
「先に自分の限界がどれくらいであるか知るべきだ。最初は三つまでって決めておけば、ギルド側も無理強いしてこない。冒険者になったからには自立しなきゃならねぇ。今は俺が面倒見てるが、ずっとそばにはいられねぇからな」
「そうだね、じゃあ早く自立できる様になって、兄さんにうんと楽させてあげる」
「楽しみに待ってるよ」

朝食を終えたあと、ギルドまで一緒に歩き入り口前で別れた。
まだ僕の事を守る様に周囲に目を見晴らす兄さん。
僕はまだこの街に住んで日が浅いから、子供がどうしてこんなところに? って目で見られる。

この町で兄さんは顔が利くからその弟だって言えばある程度は理解してくれる。けど、全く知らない人から見たら弟と名乗ってるだけのコバンザメだって思われてるのも事実だ。

だから僕は一日でも早く自立できる様に冒険者ギルドの門を叩く。

「おはようございます!」

先輩冒険者さん達が入り口を開けた僕を一斉に睨むのだけはまだ慣れないけど、

「いらっしゃい、ルーク君。待ってたわ」

ネーネさんから歓迎されて、ようやく僕は落ち着けた。
知り合いが増えるのって嬉しい。
だからこそ僕は仕事を覚えて顔を売らなきゃ、と思った。

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