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一章 ゴミ拾いと冒険者生活

3 採取って難しい

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詳しく話を聞くと、今回の問題点は明確にヒリング草だと判断できる『目利き』が出来る人が居らず、うろ覚えで採取したもんだから予想した報酬を大きく下回ったらしい。

ヒリング草とポイズ菜はよく似ており、判断するには葉の形が丸みを帯びているか、微妙に尖っているか見極めねばならない。
素人目にはどちらも同じように見えるため、すごく扱いの難しいクエストとも言われていた。

そして査定額で大きな差を放つ。
ポイズ菜は一束40ゼニスなのに対し、ヒリング草は一束300ゼニス。差は大凡八倍である。

「兄さん、僕ヒリング草の特徴覚えておこうか?」

僕に出来るのはそれくらいだ。そう思って提案したのだが。

「悪い、言ってなかったな。お前はクエストには連れてかない」
「え、どうして?」
「まぁ、そうよね。道中危険でモンスターの対抗手段もなし。簡単に死ぬ未来が見える。そんで、こいつはあんたを大切に思ってる」

ミキリー・ハッシャさんがグラスを傾けながら代弁してくれた。それは残念。

「ゴミは大量に出るから居てくれたら助かるというのも本音です」

ストック・ナインさんがパーティ内の愚痴をこぼす。居てほしい反面、戦力不足だから連れて行けない。ついていくには自分の身は自分で守らなくちゃいけないんだ。

「余計なこと言うな。弟の面倒はオレが持つって話だろ?」
「実際の所、どんなスキルを与えられたんだい? それくらい知っても別にバチは当たんないだろ?」
「そうですよ、せっかくウチのパーティで面倒見るんです。別のクエストを案内するにも、得意分野は聞いておいて損はありません。ミキリー様は大変賢くてらっしゃる」
「テメェ! あたしに喧嘩売ってんのか、ストック!」
「滅相もございません。口より先に手が出るお嬢様にしては明暗だと同意しただけです」
「やめろ、お前ら! 弟の前で。オレの株がみるみる下がるだろ!」

兄さんは今まで築き上げた地位が、下がってると思ってるけど。
外の世界で働いて、僕たちの食生活に大きく貢献してくれた。そんな兄さんを誰がみっともないと思うだろうか?

それと同時に僕の方でもスキルの説明をする。
ゴミ拾いの能力は、まず拾うゴミの設定から始まる。
拾う対象を選択し、コストを稼ぐ事で選択肢が増えていくようだ。初期段階で選べるゴミは多くない。
埃、カビなどだ。
設定したらあとは勝手に拾ってくれる。僕が手を伸ばした範囲に効果が適用されるみたい。

そう話すと、兄さん達は深く考え込む。
僕はそわそわしながら答えをまった。

「取り敢えず、宿に戻ろうぜ。アルコールが回っちまってうまく考えがまとまらねぇ」
「お嬢様の仰る通り、これは難しい問題です。ですが選べるゴミの選択肢によっては、化ける可能性もございます」
「本当か、ストック!」
「すべてはルークさんのスキル次第ですよ、アスターさん」
「そりゃそうだがよ、でも、道はあるんだな? 良かった、本当に良かった」

兄さんは僕の問題を自分のことのように向き合ってくれた。
この恩には報いたいな。

案内された宿は埃が溜まっていた。兄さん達はしょっちゅう遠征しており、掃除の類は料金に含まれていないとのことだ。僕は早速ゴミに埃を選択して室内をうろうろした。

思った通り、スコアが上がった。
これが本当に強くなるのか微妙だが、今はストックさんの言い分を信じる他なかった。
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