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一章 ゴミ拾いと冒険者生活

2 冒険者入門

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「はい、これがあなたのライセンスよ。無くしちゃダメよ?」
「ありがとうございます」

受け取った一枚のカードには地位を示すランクと、直近の依頼、依頼の成功数、失敗数などが記されている。
僕はまだ一度も仕事をしてないのでまっさらだ。

「本当にアスターさんの弟さんなんですか?」
「オレに似ずにまっすぐ育ってくれたんだけど、スキルがなぁ」

ライセンスをじっと見てたら、真上からそんな会話が聞こえた。
僕の授かったスキル。ゴミ拾いについての話題だ。
父さんから見限られたスキルである、ここでも見放されたらと思ったら身が強張る思いだ。

「ゴミ拾い、ですか」
「珍しいスキルなんですか?」
「聞いたことはないわね」

やっぱり誰も使い方がわからないんだ。読んで字の如くゴミを拾うだけなんだろうか。

「まぁ、そこは追々な。今日は半日歩き通しで疲れたろ? 飯を奢ってやる」
「いいの?」
「ここは兄ちゃんに任してくれ。ミキリー達は酒場か?」
「そうですね、今の時間でしたら」
「じゃあ夜分遅くに邪魔したな。明日から弟のことは頼むわ!」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

受付のお姉さんに会釈をして、ギルドを出ると酒場に向かう。
そこで酒場の一番騒がしい場所にズンズン向かう兄さん。

「ミキリー!」
「アスター? どうしてここに。実家に報告しに行ったんじゃないの……そこの子はどこから攫ってきたんだい」

開口一番失礼な物言い。これが今の兄さんの仲間?
ムッとしていると、僕の頭に分厚い革手袋が置かれた。

「ミキリー、こいつは弟だよ。オレに似ずにまっすぐに育ったんだが、スキル関連で親父とぶつかっちまった。しばらくうちで預かるからよ、よろしく頼むわ」
「ルークと言います。よろしくお願いします」
「アスター、これがお前と血が繋がってっるって聞いて誰が信じるんだ?」
「本当だって、あーもう。確かにオレは出来が悪いよ! だからこそ弟にいい顔したいんだ。頼むよ!」

兄さんはその場で跪くと床におでこをくっつけるほどに頭を何度も下げる。僕もその横で同様に頭を下げた。
お姉さんとお兄さんは、顔を見合わせて肩を竦めた。

「しょうがないね、リーダーの頼みだ」
「良いのか!」
「その分、弟の食い扶持はお前の財布から出すんだな。割り勘の申請は受け付けないぜ?」
「ちょ、それとこれとは話が違う」
「いいや、違わないね。ただでさえ今回のクエストは、失敗だった」
「失敗? 納品で何か弾かれたか」
「あんたがヒリング草だって言って聞かなかった半分くらいポイズ菜だったって話聞く?」
「やめろ、酔ってないのに吐きそうだ」

どうやら完璧に見える兄さんにも苦手分野があるみたいだ。
その日は兄さんにご馳走になりながら、なんとか役にたつ道を探した。

 

 




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