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【朗報】猫人メイドがやってきた
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この場所にキャンプを立てて三週間。
そろそろ街のカレーがなくなる頃だし、戻るかと憶測を立てたところで獣人達の動きが活発になった。
僕たちはのんびりとキャンプをしながらその様子を眺めていた。
兵士に連れられてきたのは人骨のアクセサリーを身に纏った少女とお姉さんだった。
趣味の悪さからして、カースヴェルトの一員だろう。
「すまないがアキト、こいつらの飯も賄ってくれないだろうか?」
「まぁいいですよ。今更一人増えたところで問題ありませんし」
僕はあっさり了承し、ぐるぐるまきにされ、猿轡をかまされてる少女の口部分の拘束を解いた。
「貴殿、アキトとそう名乗ったな?」
「え、うん?」
なんだろう。妙におばあちゃん言葉を操る人だ。
「カースヴェルトの魔大将の前で真名を語るとは愚か。その魂掌握してくれようぞ、怨!」
女の子が口早に何かをしようと捲し立てた。
しかし何も起こらない。
「ごめんねー、今は君たちの食べ物は何がいいか決めかねているところで。遊んでる暇はないかな?」
「なんでワシの傀儡術が効かんのじゃ!」
「むー、むー!」
「おじさん、この人、割と放っておくのヤバい人たちなんじゃ?」
「どうなんだろうね? 僕たちに任せたってことは対処できるって意味で頼ってきたと思うんだけど。とりあえずミオ」
「うん、結界だね?」
「これから料理を作るからね。どうせならその人達も入れちゃおう」
「そういう意図もあったのかな?」
「多分ね」
少女達は結界と聞いて何やら小声で話し合っている。
また何か企んでるのかな?
まぁどっちでもいいや。
「うーん、いい香りー」
「ミオはすっかりこれが好きになったみたいだね」
「だってフレッツェンで食べられるケーキって言ったらこれくらいしかないもん」
ケーキと言ったってホットケーキだ。
なんと木の実を炒ってそのままかき混ぜてたらバターになった。
しかも発酵バターのような風味を持つ。
木の実から取れるバターなのに濃厚でコクがある不思議なバターである。
案の定、水で希釈したら牛乳になった。
脂肪分が高く、栄養も豊富な牛乳だ。
加工次第ではヨーグルトと生クリームも夢じゃない。
ちょっとこの場で加工するのは無理なので、お店に戻ってから色々実験してみたい所存である。
卵はあるんだよね。
みんな生では食べないだけで。
僕たちは今更お腹も壊さないってことで生で食べるけど。
すき焼きにはやっぱり生卵が合うよね!
問題はすき焼きに行く前に醤油の代わりになるものを探さなきゃって感じ。
砂糖の代わりになるのはとっくに見つけてるんだけど、醤油の代わりがないんだ、これが。
ダイゴとマサキのコンビが生成したアルミのフライパンとフライ返しでひとつづつホットケーキを仕上げていく。
皿の上に煙を上げていく一品を覗き込みながら、少女が口を開いた。
「これはワシ達の分もあるのか?」
「一応用意はしてるつもりだよ。ただ、これは毒物が強くてお勧めしないけどね」
またもやヒソヒソと内緒話をし始めた。
毒って聞いてビビったのかな?
人骨をアクセサリーにしてるくらいだから常識は通用しないと思ってたけど、どうやらこっちの方が一枚上手だったらしい。
「ソースはご自由に、召し上がれ」
「わーい」
一番最初にミオが手をつける。
純銀製のフォークとナイフを扱い、口に運んでいく。
あまりにも美味しそうに食べるもんだから、少女達も黙っていられなくなったみたい。
「ワシらの分はまだか? 多少の毒素ぐらいは解除するゆえ」
「うーん、僕らの考える毒素と、あなた達の考える毒素の程度が違うので無理はしないほうがいいと思いますよ?」
「あ、おじさん! コーヒークッキーとかどう?」
「クッキーか。あれをバターに見立てて、砂糖、卵、ミルクもあるならいけるか? 麦を多めに使うが……しかしオーブンがないぞ?」
「それっぽいのなら僕たちが作りますよ。ね、大ちゃん?」
「おうよ!」
じゃあ決まり。
僕たちは潤菜、木の実、果実を使ってクッキーを作り始めた。
おおよそクッキーを作るのに不向きな食材があるって?
味がクッキーならいいんだよ、見た目に文句を言ってたらフレッツェンで生き残れないぜ?
しかし、材料は加工していくうちに次第にクッキーっぽい形になっていく。
焼き上げれば、ほんのりとコーヒーの香りがするクッキーだ。
熱いうちは香りがそこまでしないが、それはバターなんかの風味が強く出るからだな。
粗熱を冷まし、捕虜の猿轡を外してから一枚ずつ口に放り込んでやる。
今回のクッキーは自白効果のある杏仁豆腐や水饅頭のパワーアップ版。
まぁ、自白はさせずに隷属化させちゃうやつなんだけどさ。その上でクッキーのことしか考えられなくなる思考誘導Ⅴ、魅了Ⅲ、傀儡Ⅱのおまけ付きだ。
毒素の介助がどれほどのものかお手並み拝見と意向じゃないか。
実はホットケーキはそれらに加えて自白効果がついていたのだが、こっちは澪の好物になっちゃったのであればあるだけミオが食う。
ちょっと来客向けに作るとすぐにミオが「自分も自分も」アピールをしてくるようになって困るのだ。
「美味しい、美味しい」
「こんなに美味しいものがこの世界にあったのですね」
「恐るべし、フレッツェン。蛮族の住まう地として侮りすぎていたか?」
だなんて盛り上がっている。よほど貧しい食生活を送ってきていたのだろう。
かわいそうに。
「いや、なんか勘違いしてるけど、フレッツェンはいまだに蛮族に相応しい飯を食ってるぜ?」
「そうそう、僕たちが文化的な暮らしをしてるのは多分異なる世界からやってきた勇者? だからだと思うよ」
「勇者じゃと?」
「うん、まぁ」
「フレッツェンも勇者を呼んだというのか。では、やはり我らが滅ぼされかけたのは勇者の力だとでもいうのか?」
「滅ぼされかけた? 誰に?」
「ふむ? お主らではないのか? 我らカースヴェルトに侵攻作戦を仕掛けてきたのは」
「いえ、全く。僕たちここでキャンプしてただけです」
「うん、なんなら僕たちはここでフレンダさん達のご飯しか作ってないよ」
「そうだよ、勇者だからって戦力と考えたらダメなんだからね!」
「え、違うのか? ワシはてっきり……」
「僕たちが特に恨みもないあなた達の土地に侵攻しに行ったと思った?」
「そう思っておる」
「僕たちは普段フレッツェンにお世話になってます。それは認めましょう。しかしこの森にきたのは、頻繁にあなた方からちょっかいをかけられているという報告があって、自衛のために調査に来てたんですよ。むしろこっちが侵攻をかけられてたと思ってるんですが、そこはどう思います?」
「むぅ、それを言い出されるとワシらも強くは言えんな」
自覚はあるのに「自分たちは攻められた!」とか言ってたのか、この子は。
倫理観ガバガバなのかな?
襲われる覚悟もなく他国に侵入してはちょっかいかけてたと。
親の顔が見てみたい好き勝手具合だ。
「僕たちはあなた達からの脅威に備えてはいますけど、大々的にあなた方に喧嘩を売ったりはしてないんですよね、そこはお間違えなく」
「疑って悪かったのじゃ。許してほしい」
「許す、許さないは食事係の僕に言われてもって感じですね。獣王国の王様の直々に頭を下げて沙汰をもらってください。それよりクッキー焼き上がりましたけど、おかわり入ります?」
「いただこう」
こうして人骨アクセサリー少女とお姉さんはフレッツェンの捕虜となった。
お城に帰って尋問中に王様を傀儡にしようと思ったけど、これも不発。
二人は何故か僕たちのお店の家事手伝いとして寄越されることになった。
「そ、その…今更虫のいい話じゃと思うが、今日からよろしゅう頼む」
「もうこの国にはちょっかい出しませんので、何卒」
「とは言ってもねぇ。うちのお店ってそこかしこに毒物あるから。店員をやるにしたってある程度の耐性を持つのが必要不可欠なんだけど。王様はなんて?」
「店主殿にフレンドになってもらえと」
何を考えているんだか。
「流石にいきなりは無理かな? まずは雑用を与えるから、その仕事の向き合い具合で見ていくよ。ひとまずはそれでいい?」
「食事さえあればなんでもしますので!」
「お願いします」
と、いうことでうちに二人のお手伝いさんがやってきた。
どういうわけか王様からの信頼を勝ち取っている。
僕の能力のことまで知っているふうだったし、どうもきな臭い。
さーて、僕はどう動こうかな?
とりあえず猫耳つけてくれる?
匿う上でこれは必須条件だ。
猫人として扱わなければ、街の住民からよくない視線を引きつけることになるからね。
よーし、これで男女バランスもちょうど良くなったな!
女子の世話はミオ、君に任せた!
あとでホットケーキ奢るから、と付け加えたら二つ返事で引き受けてくれた。
ちょろい。
────────────────────────────
<データベース>
向井明人 / ムーン=ライト 23 男
Ability:解析
Stock:1
Friend:5
ーーーーシークレットーーーーーーーーー
Death:8【獲得済み濃縮複合デバフ拡散】
Kill :100,000,000【deathによる被害】
獲得耐性10ごとにStock+1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<獲得耐性:94>
ーーーーー肉体異常ーーーーー
麻痺毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
神経毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
致死毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
腐敗毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
全身麻痺_Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
石化 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
吐血 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
昏睡 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
溺水 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
氷結 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
感電 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
裂傷 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
重圧 _Ⅴ
酩酊 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
心臓麻痺_Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
ーーーーー精神異常ーーーーー
幻覚 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
魅了 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
思考誘導_Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
混乱 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
自白 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
隷属化 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
呪毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
夢中 _Ⅰ_Ⅱ
傀儡 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
支配 _Ⅰ
ーーーーーーーーー悶絶必死デバフレシピーーーーーーー
カレー【全身麻痺Ⅲ、神経毒Ⅳ、思考誘導Ⅱ、致死毒Ⅲ】
エビチリ【致死毒Ⅳ、腐敗毒Ⅳ、吐血Ⅲ】
チャーハン【幻覚Ⅲ、全身麻痺Ⅲ、自白Ⅲ】
マンゴープリン【隷属化Ⅲ、魅了Ⅲ、思考誘導Ⅱ】
杏仁豆腐【自白Ⅲ】
羊羹【致死毒Ⅳ、石化Ⅲ、吐血Ⅲ、思考誘導Ⅲ】
抹茶【全身麻痺Ⅳ、腐敗毒Ⅲ、致死毒Ⅱ】
水饅頭【思考誘導Ⅲ、自白Ⅲ、全身麻痺Ⅱ、魅了Ⅲ】
紫芋羊羹【夢中Ⅱ、吐血Ⅲ】
紫芋チップス【夢中Ⅰ】
極上栗甘露煮【吐血Ⅴ、呪毒Ⅲ、魅了Ⅴ、隷属化Ⅳ】
めんつゆ【吐血Ⅴ、心臓麻痺Ⅱ、腐敗毒Ⅴ】
コーヒー【傀儡Ⅲ、魅了Ⅲ、隷属化Ⅲ】
コーヒークッキー【思考誘導Ⅴ、傀儡Ⅲ、魅了Ⅴ、隷属化Ⅳ】
ホットケーキ【傀儡Ⅲ、思考誘導Ⅴ、魅了Ⅴ、自白Ⅴ】
そろそろ街のカレーがなくなる頃だし、戻るかと憶測を立てたところで獣人達の動きが活発になった。
僕たちはのんびりとキャンプをしながらその様子を眺めていた。
兵士に連れられてきたのは人骨のアクセサリーを身に纏った少女とお姉さんだった。
趣味の悪さからして、カースヴェルトの一員だろう。
「すまないがアキト、こいつらの飯も賄ってくれないだろうか?」
「まぁいいですよ。今更一人増えたところで問題ありませんし」
僕はあっさり了承し、ぐるぐるまきにされ、猿轡をかまされてる少女の口部分の拘束を解いた。
「貴殿、アキトとそう名乗ったな?」
「え、うん?」
なんだろう。妙におばあちゃん言葉を操る人だ。
「カースヴェルトの魔大将の前で真名を語るとは愚か。その魂掌握してくれようぞ、怨!」
女の子が口早に何かをしようと捲し立てた。
しかし何も起こらない。
「ごめんねー、今は君たちの食べ物は何がいいか決めかねているところで。遊んでる暇はないかな?」
「なんでワシの傀儡術が効かんのじゃ!」
「むー、むー!」
「おじさん、この人、割と放っておくのヤバい人たちなんじゃ?」
「どうなんだろうね? 僕たちに任せたってことは対処できるって意味で頼ってきたと思うんだけど。とりあえずミオ」
「うん、結界だね?」
「これから料理を作るからね。どうせならその人達も入れちゃおう」
「そういう意図もあったのかな?」
「多分ね」
少女達は結界と聞いて何やら小声で話し合っている。
また何か企んでるのかな?
まぁどっちでもいいや。
「うーん、いい香りー」
「ミオはすっかりこれが好きになったみたいだね」
「だってフレッツェンで食べられるケーキって言ったらこれくらいしかないもん」
ケーキと言ったってホットケーキだ。
なんと木の実を炒ってそのままかき混ぜてたらバターになった。
しかも発酵バターのような風味を持つ。
木の実から取れるバターなのに濃厚でコクがある不思議なバターである。
案の定、水で希釈したら牛乳になった。
脂肪分が高く、栄養も豊富な牛乳だ。
加工次第ではヨーグルトと生クリームも夢じゃない。
ちょっとこの場で加工するのは無理なので、お店に戻ってから色々実験してみたい所存である。
卵はあるんだよね。
みんな生では食べないだけで。
僕たちは今更お腹も壊さないってことで生で食べるけど。
すき焼きにはやっぱり生卵が合うよね!
問題はすき焼きに行く前に醤油の代わりになるものを探さなきゃって感じ。
砂糖の代わりになるのはとっくに見つけてるんだけど、醤油の代わりがないんだ、これが。
ダイゴとマサキのコンビが生成したアルミのフライパンとフライ返しでひとつづつホットケーキを仕上げていく。
皿の上に煙を上げていく一品を覗き込みながら、少女が口を開いた。
「これはワシ達の分もあるのか?」
「一応用意はしてるつもりだよ。ただ、これは毒物が強くてお勧めしないけどね」
またもやヒソヒソと内緒話をし始めた。
毒って聞いてビビったのかな?
人骨をアクセサリーにしてるくらいだから常識は通用しないと思ってたけど、どうやらこっちの方が一枚上手だったらしい。
「ソースはご自由に、召し上がれ」
「わーい」
一番最初にミオが手をつける。
純銀製のフォークとナイフを扱い、口に運んでいく。
あまりにも美味しそうに食べるもんだから、少女達も黙っていられなくなったみたい。
「ワシらの分はまだか? 多少の毒素ぐらいは解除するゆえ」
「うーん、僕らの考える毒素と、あなた達の考える毒素の程度が違うので無理はしないほうがいいと思いますよ?」
「あ、おじさん! コーヒークッキーとかどう?」
「クッキーか。あれをバターに見立てて、砂糖、卵、ミルクもあるならいけるか? 麦を多めに使うが……しかしオーブンがないぞ?」
「それっぽいのなら僕たちが作りますよ。ね、大ちゃん?」
「おうよ!」
じゃあ決まり。
僕たちは潤菜、木の実、果実を使ってクッキーを作り始めた。
おおよそクッキーを作るのに不向きな食材があるって?
味がクッキーならいいんだよ、見た目に文句を言ってたらフレッツェンで生き残れないぜ?
しかし、材料は加工していくうちに次第にクッキーっぽい形になっていく。
焼き上げれば、ほんのりとコーヒーの香りがするクッキーだ。
熱いうちは香りがそこまでしないが、それはバターなんかの風味が強く出るからだな。
粗熱を冷まし、捕虜の猿轡を外してから一枚ずつ口に放り込んでやる。
今回のクッキーは自白効果のある杏仁豆腐や水饅頭のパワーアップ版。
まぁ、自白はさせずに隷属化させちゃうやつなんだけどさ。その上でクッキーのことしか考えられなくなる思考誘導Ⅴ、魅了Ⅲ、傀儡Ⅱのおまけ付きだ。
毒素の介助がどれほどのものかお手並み拝見と意向じゃないか。
実はホットケーキはそれらに加えて自白効果がついていたのだが、こっちは澪の好物になっちゃったのであればあるだけミオが食う。
ちょっと来客向けに作るとすぐにミオが「自分も自分も」アピールをしてくるようになって困るのだ。
「美味しい、美味しい」
「こんなに美味しいものがこの世界にあったのですね」
「恐るべし、フレッツェン。蛮族の住まう地として侮りすぎていたか?」
だなんて盛り上がっている。よほど貧しい食生活を送ってきていたのだろう。
かわいそうに。
「いや、なんか勘違いしてるけど、フレッツェンはいまだに蛮族に相応しい飯を食ってるぜ?」
「そうそう、僕たちが文化的な暮らしをしてるのは多分異なる世界からやってきた勇者? だからだと思うよ」
「勇者じゃと?」
「うん、まぁ」
「フレッツェンも勇者を呼んだというのか。では、やはり我らが滅ぼされかけたのは勇者の力だとでもいうのか?」
「滅ぼされかけた? 誰に?」
「ふむ? お主らではないのか? 我らカースヴェルトに侵攻作戦を仕掛けてきたのは」
「いえ、全く。僕たちここでキャンプしてただけです」
「うん、なんなら僕たちはここでフレンダさん達のご飯しか作ってないよ」
「そうだよ、勇者だからって戦力と考えたらダメなんだからね!」
「え、違うのか? ワシはてっきり……」
「僕たちが特に恨みもないあなた達の土地に侵攻しに行ったと思った?」
「そう思っておる」
「僕たちは普段フレッツェンにお世話になってます。それは認めましょう。しかしこの森にきたのは、頻繁にあなた方からちょっかいをかけられているという報告があって、自衛のために調査に来てたんですよ。むしろこっちが侵攻をかけられてたと思ってるんですが、そこはどう思います?」
「むぅ、それを言い出されるとワシらも強くは言えんな」
自覚はあるのに「自分たちは攻められた!」とか言ってたのか、この子は。
倫理観ガバガバなのかな?
襲われる覚悟もなく他国に侵入してはちょっかいかけてたと。
親の顔が見てみたい好き勝手具合だ。
「僕たちはあなた達からの脅威に備えてはいますけど、大々的にあなた方に喧嘩を売ったりはしてないんですよね、そこはお間違えなく」
「疑って悪かったのじゃ。許してほしい」
「許す、許さないは食事係の僕に言われてもって感じですね。獣王国の王様の直々に頭を下げて沙汰をもらってください。それよりクッキー焼き上がりましたけど、おかわり入ります?」
「いただこう」
こうして人骨アクセサリー少女とお姉さんはフレッツェンの捕虜となった。
お城に帰って尋問中に王様を傀儡にしようと思ったけど、これも不発。
二人は何故か僕たちのお店の家事手伝いとして寄越されることになった。
「そ、その…今更虫のいい話じゃと思うが、今日からよろしゅう頼む」
「もうこの国にはちょっかい出しませんので、何卒」
「とは言ってもねぇ。うちのお店ってそこかしこに毒物あるから。店員をやるにしたってある程度の耐性を持つのが必要不可欠なんだけど。王様はなんて?」
「店主殿にフレンドになってもらえと」
何を考えているんだか。
「流石にいきなりは無理かな? まずは雑用を与えるから、その仕事の向き合い具合で見ていくよ。ひとまずはそれでいい?」
「食事さえあればなんでもしますので!」
「お願いします」
と、いうことでうちに二人のお手伝いさんがやってきた。
どういうわけか王様からの信頼を勝ち取っている。
僕の能力のことまで知っているふうだったし、どうもきな臭い。
さーて、僕はどう動こうかな?
とりあえず猫耳つけてくれる?
匿う上でこれは必須条件だ。
猫人として扱わなければ、街の住民からよくない視線を引きつけることになるからね。
よーし、これで男女バランスもちょうど良くなったな!
女子の世話はミオ、君に任せた!
あとでホットケーキ奢るから、と付け加えたら二つ返事で引き受けてくれた。
ちょろい。
────────────────────────────
<データベース>
向井明人 / ムーン=ライト 23 男
Ability:解析
Stock:1
Friend:5
ーーーーシークレットーーーーーーーーー
Death:8【獲得済み濃縮複合デバフ拡散】
Kill :100,000,000【deathによる被害】
獲得耐性10ごとにStock+1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<獲得耐性:94>
ーーーーー肉体異常ーーーーー
麻痺毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
神経毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
致死毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
腐敗毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
全身麻痺_Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
石化 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
吐血 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
昏睡 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
溺水 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
氷結 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
感電 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
裂傷 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
重圧 _Ⅴ
酩酊 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
心臓麻痺_Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
ーーーーー精神異常ーーーーー
幻覚 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
魅了 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
思考誘導_Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
混乱 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
自白 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ_Ⅴ
隷属化 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
呪毒 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ
夢中 _Ⅰ_Ⅱ
傀儡 _Ⅰ_Ⅱ_Ⅲ_Ⅳ
支配 _Ⅰ
ーーーーーーーーー悶絶必死デバフレシピーーーーーーー
カレー【全身麻痺Ⅲ、神経毒Ⅳ、思考誘導Ⅱ、致死毒Ⅲ】
エビチリ【致死毒Ⅳ、腐敗毒Ⅳ、吐血Ⅲ】
チャーハン【幻覚Ⅲ、全身麻痺Ⅲ、自白Ⅲ】
マンゴープリン【隷属化Ⅲ、魅了Ⅲ、思考誘導Ⅱ】
杏仁豆腐【自白Ⅲ】
羊羹【致死毒Ⅳ、石化Ⅲ、吐血Ⅲ、思考誘導Ⅲ】
抹茶【全身麻痺Ⅳ、腐敗毒Ⅲ、致死毒Ⅱ】
水饅頭【思考誘導Ⅲ、自白Ⅲ、全身麻痺Ⅱ、魅了Ⅲ】
紫芋羊羹【夢中Ⅱ、吐血Ⅲ】
紫芋チップス【夢中Ⅰ】
極上栗甘露煮【吐血Ⅴ、呪毒Ⅲ、魅了Ⅴ、隷属化Ⅳ】
めんつゆ【吐血Ⅴ、心臓麻痺Ⅱ、腐敗毒Ⅴ】
コーヒー【傀儡Ⅲ、魅了Ⅲ、隷属化Ⅲ】
コーヒークッキー【思考誘導Ⅴ、傀儡Ⅲ、魅了Ⅴ、隷属化Ⅳ】
ホットケーキ【傀儡Ⅲ、思考誘導Ⅴ、魅了Ⅴ、自白Ⅴ】
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