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【朗報】燃え上がるカレーブーム
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出禁を解いた翌日から、我が物顔で店に入ってきたのは、ベアードではなくプーネの方だった。
一応、僕の方から擦り寄った形ではあるが、君たちからの反省の声は一切聞いてないんだが、どのツラさげて来店なされたんだろうね。
本当に、親の顔が見てみたいものだ。
しかし僕にこっ酷くやられた記憶は残っているのか、僕ではなく、新人の猫人勇者に相談に乗ってもらっているらしい。
こいつ、意外と賢いのかもしれない。
しかし僕とて同じ轍は踏まない。
離れに置いてた倉庫は撤去し、店に拡張させてやったもんね。
やはり頼るべきは細かい仕事が大好きなマサキと工具店の息子のダイゴのおかげだろう。
ミオは基本食い物で釣れるので、味方に引き入れて後押しさせれば二人は割と僕のいうことを聞いてくれる。
そんなわけで熊人の娘プーネは例の舌足らずな掛け声でたちまちさん勇者からの人気を勝ち誇っていた。
いやね、そのあどけなさで人気取るのはわからなくも無いんだよ。
でも今の僕にはあざとく感じちゃうんだよね。
それを知らないから少年たちは受け入れられてるんだけどさ。
「おにーたん、おねーたん。あのね、あのね」
「うんうん、どうしたのかなー?」
「あたちね、こういうお道具がほちいの」
そこでは終始笑顔で溢れていた。
ニコニコ ニコニコ。
甥っ子や姪っ子と遊ぶおじさん、おばさんのような表情で距離感を測っている。
それを曲解して、形にして、僕のところに持ってくるのが今の流れになっている。
「と、いうわけで新しい仕事の話なんですが」
「まぁ、今度は盗まなくなったからヨシとしよう」
盗まないというより、盗める場所を無くしたという方が正解か。
前までの僕は建築知識に理解がなかったから、壊すのも立て直すのも難しかった。
しかし今僕の手元にはダイゴがいる。
マサキがいる。
ミオは特に何もしないが、僕の味方になって二人の少年をけしかける役割を持っている。
「前まではなんのお伺いもせずに盗んでたの?」
「ひどいもんだったぞ? 毒物には一切手をつけないのに、毒じゃ無いとわかったら毎日それを持って行った。あれだけごっちゃりしていた倉庫が空になる勢いだ。何度言っても盗むのをやめなくてな。親の教育はどうなってるんだと何度も怒り心頭になったわけさ」
「ちがうの! パパは強者は弱者を守るのが務めだから当然の権利だって。だから後で謝れば大丈夫だって」
謝りにも来ないやつが何か言ってら。
「プーネちゃんはおじさんに借りた後ちゃんと頭を下げたのかなー?」
いいぞミオ。もっと追い込んでやれ。
ミオはこうやって優しく追い込むのが得意だ。
僕がやると少し嫌味な感じになっちゃうからね。
フレンダさんも言ってたが、どうも僕は性格が悪いらしい。
「それは、ちてないの」
さっきまではっきり喋ってたのに、急に舌足らずになるのなんなの?
やっぱりこれ演技だな。
幼いフリをしてるんだ。
「それはしてないプーネちゃんが悪いよ。おじさんは意固地になっちゃって、嫌悪感を抱いてるけど、ちゃんと謝れば普通に協力してくれるから。ね? お姉ちゃんと一緒に謝ろ? そうしたらおじさんもきっと許してくれるよ」
「ほんと? おにーたんゆるちてくれる?」
ミオは僕のことを頑なにおじさんというのに、プーネだけはおにーたんと言ってくれる。
この差よ。
そういえばこの子だけが僕をお兄さん扱いしてくれるんだよな。
そう思ったら、なんかイライラしてる気分もおさまってきたような気もする。
我ながら現金な考えだこと。
「ごめんなさいしたらな」
「ごえんなたい!」
「ヨシ」
「よくできましたねー」
ぱちぱちぱちとミオ。
プーネは照れ笑いしながら、にっこり微笑んだ。
子供はこれだけで罪が帳消しになるからずるい。
社会に出たらこれだけじゃ許されないんだからな!
「それで、どんなのを作って欲しいんだ?」
「実はね」
発注書はミオが書きまとめたものがあるが、それは横に置いて僕が直接聞くことにしてる。
こうするのは他人の話を全く信用してないわけではなく、人によって受け取り方がちがうためである。
せっかく注文している客がいるのに、自分で聞かなくてどうするという見解だ。
プーネが語った内容を掻い摘めば、要は虫刺されを防ぐタイプの服が欲しいのだとか。
熊人といえど、頭の上の耳と尻尾以外は一般的な人間と一緒。
ちょっとぽっちゃり目の彼女は、厚手で虫に刺されないタイプの服が欲しいと言ってきた。
その上で動きの邪魔をせずに、視界の確保もできるやつという注文だ。
続いてミオの発注書を見る。
どう考えても厚手の要素はなく、可愛いワンピースに、可愛い虫除けのポーチの考案だ。
確かにこれならプーネの可愛さを全面に引き立てるだろうが、ミオはこの子が戦闘民族であるという事実を知らないのだろう。
こんな背丈でベアードに混ざって狩りの訓練をしていると聞いた時は卒倒しそうになったものだ。
そして目の当たりにした窃盗の手際。
これは見た目に騙されてはいけないものだとも。
「そうか、今まで来ていた服などはあるか?」
「おようふく? これだけど」
プーネは今までワンピースで狩猟をしているらしいことを明かした。
まじかよ。ミオの発注書が最適解なのか?
僕はもっとこう、ゴワゴワしたやつがいいのかと思ってたけど。
と、まぁ女の子なんだから多少のオシャレはしたいのか。
「その格好で虫から肌を守りたいは無理があるでしょ」
「でもー」
「おじさん、なんとかならないですか?」
「蚊取り線香みたいなのか、虫除けジェルみたいなのがあればいいんだけど」
「虫がどういったものかわからないとな」
「いっそカレーパウダーつけるとか? ほら、あれって猛毒だし」
「使用者が中毒で死ぬことを考えれば効率的だけど、自殺を進めてるのと一緒だが、それでもするか?」
「ジェルにカレースパイスを塗るとかどうです?」
「うーん。じゃあセットに騎士団に下ろしてる福神漬けゼリーをつけて」
「お、それいいね」
そんなこんなでカレー風味の虫除けスプレーが完成した。
事前に福神漬けゼリーを食して無いと中毒になること請け合い。
しかし虫や獣を中毒死させることが可能で、プーネを皮切りにうちの主力商品の一つになった。
あいつがそこら辺でカレーの匂いを振り撒いたおかげで、うちの商品が売れた。
その噂がフレンダさんの耳にまで届いたもんだからさぁ大変。
今度は騎士団むけに大量生産に準じてるってわけ。
それとは別の部屋でカレーを作りつつ。
フレッツェンのカレーブームはまだまだ続きそうだなと思わせる商品だった。
そんなこんなで数日後。
毒虫除けスプレー(カレー風味)は魔物を捉えるトラップに早変わりするなど驚きの発展を見せた。
曰く、最初にこれで下味をつけておけば、カレーにした時の馴染みが早いとかなんとか。
獣人というのはどいつもこいつも怖いもの知らずなのか?
「なぜかこちらの想定してない発展具合を見せてますね、カレー商品」
「まぁな。何せあのカレーは獣人の特性を引っ張り上げるのに一役買ってるそうだから」
「え?」
ダイゴが驚いたような顔をする。
「まぁそんな顔をするのもわからなくはないよ」
僕たちにとって懐かしい故郷の味は、しかし異世界においては猛毒。
彼らがカレーを食す理由は食べて美味しいからではない。
もう一つの理由があることを述べた。
「実はな、獣人はここぞという時に火事場の馬鹿力を狙って出せる種族のようでな。しかしトリガーとなるのが実際のところなってみないとわからないというものなんだ」
「それがカレーを食べることで引っ張り出せる?」
「そのようだ。俗にいうスーパーモードをな、子供のうちから鍛えることができる。だからフレッツェンでカレーがもてはやされているのさ。大人から子供までカレー大好きな理由って、意外とそんなもんだぞ?」
「美味しいだけが理由じゃなかったんだ」
「そりゃそうだろ。普通に食えば猛毒だ。好き好んで食う方がどうかしてるよ」
ちなみに、一般人が食せば即死である。
第一発見者はよく食おうと思ったよな。
僕だが。
むしろ毒を好んで口にする、僕じゃなきゃこの味の組み合わせを見つけ出すのに相当の年数をかけただろうな。
その日はエビの味がするキノコをチリソースがけにして食べた。
なんだかんだ、みんなこれが好きなんだよね。
僕の中ではカレーの次にこれが来ると思ってるんだけど、お互いに強力な毒と硫黄のもあり、中和策が取れてないので売り込めずにいる。
カレーの福神漬け的なポジションが見出せないのだ。
ただし自白剤入りの杏仁豆腐は、国が一定個数まとめてお買い上げいただくことがる。
何に使ってるのか聞きたいが、多分フレンダさんがおやつに食べてるんだな。
僕の分を催促するくらいの好物だったろうし。
きっとそうに違いない!
一応、僕の方から擦り寄った形ではあるが、君たちからの反省の声は一切聞いてないんだが、どのツラさげて来店なされたんだろうね。
本当に、親の顔が見てみたいものだ。
しかし僕にこっ酷くやられた記憶は残っているのか、僕ではなく、新人の猫人勇者に相談に乗ってもらっているらしい。
こいつ、意外と賢いのかもしれない。
しかし僕とて同じ轍は踏まない。
離れに置いてた倉庫は撤去し、店に拡張させてやったもんね。
やはり頼るべきは細かい仕事が大好きなマサキと工具店の息子のダイゴのおかげだろう。
ミオは基本食い物で釣れるので、味方に引き入れて後押しさせれば二人は割と僕のいうことを聞いてくれる。
そんなわけで熊人の娘プーネは例の舌足らずな掛け声でたちまちさん勇者からの人気を勝ち誇っていた。
いやね、そのあどけなさで人気取るのはわからなくも無いんだよ。
でも今の僕にはあざとく感じちゃうんだよね。
それを知らないから少年たちは受け入れられてるんだけどさ。
「おにーたん、おねーたん。あのね、あのね」
「うんうん、どうしたのかなー?」
「あたちね、こういうお道具がほちいの」
そこでは終始笑顔で溢れていた。
ニコニコ ニコニコ。
甥っ子や姪っ子と遊ぶおじさん、おばさんのような表情で距離感を測っている。
それを曲解して、形にして、僕のところに持ってくるのが今の流れになっている。
「と、いうわけで新しい仕事の話なんですが」
「まぁ、今度は盗まなくなったからヨシとしよう」
盗まないというより、盗める場所を無くしたという方が正解か。
前までの僕は建築知識に理解がなかったから、壊すのも立て直すのも難しかった。
しかし今僕の手元にはダイゴがいる。
マサキがいる。
ミオは特に何もしないが、僕の味方になって二人の少年をけしかける役割を持っている。
「前まではなんのお伺いもせずに盗んでたの?」
「ひどいもんだったぞ? 毒物には一切手をつけないのに、毒じゃ無いとわかったら毎日それを持って行った。あれだけごっちゃりしていた倉庫が空になる勢いだ。何度言っても盗むのをやめなくてな。親の教育はどうなってるんだと何度も怒り心頭になったわけさ」
「ちがうの! パパは強者は弱者を守るのが務めだから当然の権利だって。だから後で謝れば大丈夫だって」
謝りにも来ないやつが何か言ってら。
「プーネちゃんはおじさんに借りた後ちゃんと頭を下げたのかなー?」
いいぞミオ。もっと追い込んでやれ。
ミオはこうやって優しく追い込むのが得意だ。
僕がやると少し嫌味な感じになっちゃうからね。
フレンダさんも言ってたが、どうも僕は性格が悪いらしい。
「それは、ちてないの」
さっきまではっきり喋ってたのに、急に舌足らずになるのなんなの?
やっぱりこれ演技だな。
幼いフリをしてるんだ。
「それはしてないプーネちゃんが悪いよ。おじさんは意固地になっちゃって、嫌悪感を抱いてるけど、ちゃんと謝れば普通に協力してくれるから。ね? お姉ちゃんと一緒に謝ろ? そうしたらおじさんもきっと許してくれるよ」
「ほんと? おにーたんゆるちてくれる?」
ミオは僕のことを頑なにおじさんというのに、プーネだけはおにーたんと言ってくれる。
この差よ。
そういえばこの子だけが僕をお兄さん扱いしてくれるんだよな。
そう思ったら、なんかイライラしてる気分もおさまってきたような気もする。
我ながら現金な考えだこと。
「ごめんなさいしたらな」
「ごえんなたい!」
「ヨシ」
「よくできましたねー」
ぱちぱちぱちとミオ。
プーネは照れ笑いしながら、にっこり微笑んだ。
子供はこれだけで罪が帳消しになるからずるい。
社会に出たらこれだけじゃ許されないんだからな!
「それで、どんなのを作って欲しいんだ?」
「実はね」
発注書はミオが書きまとめたものがあるが、それは横に置いて僕が直接聞くことにしてる。
こうするのは他人の話を全く信用してないわけではなく、人によって受け取り方がちがうためである。
せっかく注文している客がいるのに、自分で聞かなくてどうするという見解だ。
プーネが語った内容を掻い摘めば、要は虫刺されを防ぐタイプの服が欲しいのだとか。
熊人といえど、頭の上の耳と尻尾以外は一般的な人間と一緒。
ちょっとぽっちゃり目の彼女は、厚手で虫に刺されないタイプの服が欲しいと言ってきた。
その上で動きの邪魔をせずに、視界の確保もできるやつという注文だ。
続いてミオの発注書を見る。
どう考えても厚手の要素はなく、可愛いワンピースに、可愛い虫除けのポーチの考案だ。
確かにこれならプーネの可愛さを全面に引き立てるだろうが、ミオはこの子が戦闘民族であるという事実を知らないのだろう。
こんな背丈でベアードに混ざって狩りの訓練をしていると聞いた時は卒倒しそうになったものだ。
そして目の当たりにした窃盗の手際。
これは見た目に騙されてはいけないものだとも。
「そうか、今まで来ていた服などはあるか?」
「おようふく? これだけど」
プーネは今までワンピースで狩猟をしているらしいことを明かした。
まじかよ。ミオの発注書が最適解なのか?
僕はもっとこう、ゴワゴワしたやつがいいのかと思ってたけど。
と、まぁ女の子なんだから多少のオシャレはしたいのか。
「その格好で虫から肌を守りたいは無理があるでしょ」
「でもー」
「おじさん、なんとかならないですか?」
「蚊取り線香みたいなのか、虫除けジェルみたいなのがあればいいんだけど」
「虫がどういったものかわからないとな」
「いっそカレーパウダーつけるとか? ほら、あれって猛毒だし」
「使用者が中毒で死ぬことを考えれば効率的だけど、自殺を進めてるのと一緒だが、それでもするか?」
「ジェルにカレースパイスを塗るとかどうです?」
「うーん。じゃあセットに騎士団に下ろしてる福神漬けゼリーをつけて」
「お、それいいね」
そんなこんなでカレー風味の虫除けスプレーが完成した。
事前に福神漬けゼリーを食して無いと中毒になること請け合い。
しかし虫や獣を中毒死させることが可能で、プーネを皮切りにうちの主力商品の一つになった。
あいつがそこら辺でカレーの匂いを振り撒いたおかげで、うちの商品が売れた。
その噂がフレンダさんの耳にまで届いたもんだからさぁ大変。
今度は騎士団むけに大量生産に準じてるってわけ。
それとは別の部屋でカレーを作りつつ。
フレッツェンのカレーブームはまだまだ続きそうだなと思わせる商品だった。
そんなこんなで数日後。
毒虫除けスプレー(カレー風味)は魔物を捉えるトラップに早変わりするなど驚きの発展を見せた。
曰く、最初にこれで下味をつけておけば、カレーにした時の馴染みが早いとかなんとか。
獣人というのはどいつもこいつも怖いもの知らずなのか?
「なぜかこちらの想定してない発展具合を見せてますね、カレー商品」
「まぁな。何せあのカレーは獣人の特性を引っ張り上げるのに一役買ってるそうだから」
「え?」
ダイゴが驚いたような顔をする。
「まぁそんな顔をするのもわからなくはないよ」
僕たちにとって懐かしい故郷の味は、しかし異世界においては猛毒。
彼らがカレーを食す理由は食べて美味しいからではない。
もう一つの理由があることを述べた。
「実はな、獣人はここぞという時に火事場の馬鹿力を狙って出せる種族のようでな。しかしトリガーとなるのが実際のところなってみないとわからないというものなんだ」
「それがカレーを食べることで引っ張り出せる?」
「そのようだ。俗にいうスーパーモードをな、子供のうちから鍛えることができる。だからフレッツェンでカレーがもてはやされているのさ。大人から子供までカレー大好きな理由って、意外とそんなもんだぞ?」
「美味しいだけが理由じゃなかったんだ」
「そりゃそうだろ。普通に食えば猛毒だ。好き好んで食う方がどうかしてるよ」
ちなみに、一般人が食せば即死である。
第一発見者はよく食おうと思ったよな。
僕だが。
むしろ毒を好んで口にする、僕じゃなきゃこの味の組み合わせを見つけ出すのに相当の年数をかけただろうな。
その日はエビの味がするキノコをチリソースがけにして食べた。
なんだかんだ、みんなこれが好きなんだよね。
僕の中ではカレーの次にこれが来ると思ってるんだけど、お互いに強力な毒と硫黄のもあり、中和策が取れてないので売り込めずにいる。
カレーの福神漬け的なポジションが見出せないのだ。
ただし自白剤入りの杏仁豆腐は、国が一定個数まとめてお買い上げいただくことがる。
何に使ってるのか聞きたいが、多分フレンダさんがおやつに食べてるんだな。
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きっとそうに違いない!
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