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【朗報】僕の蘊蓄は子供受けがいい
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調査を終えたら拠点に戻り、報告する。
本国に直接持って行かない理由は、単純に本国までの距離がありすぎること。
ここはゼラチナスとの国境に程近い森の中。
領地的にはフレッツェルの玄関口だが、警戒すべきはゼラチナスのみに能わず。
西に『人とか動物の死体大好きな』カースヴェルト。
南に『ジャイアニズムを掲げる』ゼラチナス。
そして北に『有翼人種以外を下に見る頭の回るタイプの害獣』ウインディア。
言わずもがな、他国から最も攻め入られやすい国なのである。
ここを落とせば他国への侵入も容易く、広大な土地は植民地にうってつけ!
と、まぁ隣国はそう思ってるわけだけど、それを寸前で食い止めてるのが我らが獣人国の精鋭、フレッツェル獣人騎士団というわけだ。
その中でも紅一点の我らが団長、フレンダ率いる魔法騎士団は精鋭中の精鋭!
動物的直感も働き、さらには魔道に精通している騎士団の中でもエリート中のエリートと噂の部隊なのである。
とはいえ、全く問題がないわけでもない。
「ただいま戻った。皆、変わりはないか!」
「第一班、変わりありません!」
「第二班、こちらはよその国から逃げ出した避難民を預かってます」
「またカースヴェルトの被害に遭う村が出たか」
「そのようです」
「被害の規模はどのくらいか」
「重体の患者が30名。それ以外は女子供が多く」
「備蓄が不安か」
「ええ、このまま増えていけば我々含めて共倒れです。奴らはそれが狙いなのでしょう。隊長の優しさにつけ込んだ……」
隊員の一人が僕をじっと見る。
そう、これこそがこの部隊の抱える問題。
こいつら、揃いも揃ってフレンダさんのガチ恋勢、いわゆるユニコーンなのだ。
男所帯に女性が一人。
まぁオタサーの姫? とまでは行かないが、勘違いする隊員は多くてね。
相手の処女性を信じ込み、近づく害虫を抹殺すべく疑いをかけては殺す、おっかない連中なのだ。
僕はフレンダさんのお気に入りという理由だけで彼らに目の敵にされている。
尤も、飼い主とペットみたいな関係だけど。
この人たちって脳筋だからさ、考える頭がないんだ。
だから『むかつく→殺す!』になっちゃうんだよね。
僕的にうまく立ち回ってるつもりだけど、誰もそれを察してくれないから苦労の連続なんだ。
「そのような疑いの眼差しを向けるのはやめてくれ。アキトはこう見えて優秀な調査隊員だ。我々のように力ずくでしか物事を解決できない種族の欠点を補ってくれている。彼の『解析』に我々は何度も助けられてきた。違うか?」
「それでも、よく思ってない連中も多いんですよ。あの耳なしを。敵国の人間というだけで身近に置くことを警戒している同胞も多いです」
耳なし、というのは獣人から見た人間のことを指す。
動物の耳を持たないからそういうのだそうだ。
うるせーよ、生まれついての特徴なんだから仕方ないだろ?
「オレが可愛がっているからと嫉妬したか。確かにあいつは力も弱く、体力もない。我々獣人に比べたら劣る存在。そう見るやつも少なくはない」
「でしたら!」
「だが、この任務においてあいつ以上の働きをしてる奴を俺は知らない。お前たちは毒物を前に突っ込んでいけるか? 死を覚悟して、前のめりに毒を喰らいにいけるか? それを無視すれば我が国は毒に蝕まれ、近くない将来滅亡するだろう。だがあの男は、アキトはそれに真っ向から立ち向かい、それを手中に収める」
「でもそれはあいつの能力だからで!」
「ああ、そうだな。それがアキトの能力だ。だが、貴様に同じ能力が芽生えたとして、その道を望んで進めるか? それとこれは別の話だ。貴様が思うよりもずっとな。それでも進めるというならこいつを食ってみろ」
フレンダは齧りかけのリンゴを地面に投げ捨てた。
それには微弱だが『腹痛』を引き起こす毒素が含まれている。
皮に毒素があるので皮を剥いて、それから食すのが作法だ。
「これは?」
「あいつがまだなんの耐性も持ってない頃に手をつけた毒林檎だ。舌先に強い痺れ、身体中を覆う不快感、溢れ出す便意、そして腹痛。これらを知ってなお、好んで食せる覚悟があるか?」
「ふん、こんなもの!」
部下の一人が勇猛果敢に一齧り。
僕も食べられたからと、自分に食べられないはずはないと思い込んだまではいいが……
最初の頃は威勢は良かったが、次第に表情が青くなって、ついには泡を吐いて倒れてしまった。
「あーらら。微弱毒だからと侮ってかかるからいけない。これの美味しい食べ方は、まず最初に皮を剥く。次にタネを取り、そして頭痛を引き起こす花の蜜を足し、さらにはこの触ったら手が焼け爛れるキノコを砕いてまぶしていただくのが通なんだ。こんな風にさ」
アーン、と大口を開けて、ペロリといただく。
「うーん、デリシャス。やはり毒には猛毒を掛け合わせるのがベストチョイスだ。でもみんなに配膳できないのが悔やまれるな」
そんな風に毒料理を絶賛するすぐ横で、フレンダさんが僕を絶賛する言葉を……
「こいつはな、バカなんだ。掛け値なしのな。状態異常の耐性がある? だからなんだ。耐性はあるだろうが一度口にして苦い体験を受けた食べ物を、普通のやつは二度と身近に置こうとは思わない。だがこいつは置く。それどころか嬉々として他の毒物と合わせて食べる。生粋の毒ジャンキーだ。こんなやつでもなければ、あの忌々しいカースヴェルトの企みを退けることなど到底不可能だ」
かけちゃくれなかった。
なんなら罵倒である。
ひどくない?
「ちなみに、こいつの能力の本懐は毒物の分解だけにあらず。このリンゴ、耐性なくして食べるにはどうしたらいい?」
あ、一応挽回の機会はくれるのね?
こういうデレを見せてくれるから僕はストレスを溜めずにいけるのだ。
なんだかんだで彼女の手のひらの上なんだよね。
僕も彼らも。
「そうですねぇ、まずこいつの毒素は皮にある。皮を剥いて食べるだけでも毒は緩和される」
「だが、それだけでは不十分だろう? 毒を一切負うことなくうまく食べる方法だ」
「そういうことだったら、まずはこいつを流水で洗う。皮の表面上にも毒素は含まれていますからね」
「それだけか?」
「無論違いますよ。洗ってからこうやって皮ごとすりおろす! 確かに皮に毒素は含まれていますが、こいつは果肉や果汁と合わさると一気に無毒化するんです。だったら噛めば無毒化するんですが、そうならないのはこの果汁が非常に曲者で。これが単体でほとんど渋くて食えたもんじゃない。大体の人はこれを序盤に吐き出してしまいます。あとはご想像通り、毒素に負けて体に毒が蝕まれる。さっき運ばれた人のようになるというわけです。と、こいつは結構根気のいる作業ですが、美味しくいただくというのならそう言ってられない一手間。はい、どうぞ」
すりおろしたリンゴジュースをコップに注いで隊員に渡す。
これなら安全に飲める! と自信を持ってお勧めするが、なかなか受け取ってくれない。
先ほどお仲間一人を昏倒させたジュース、さぞかし怖かろう。
「う、むぅ」
「要らないなら俺がいただくぞ?」
「あ!」
フレンダさんが横合いからそれをかっぱらい、一気に喉奥に流し込む。
僕のフレンドなので平然としているが、飲み切った後動かなくなった。
おかしいな?
「おい、貴様、やはりあれには毒物が仕込まれてたんじゃないだろうな?」
「入ってませんてば!」
疑いの眼差しはますます強くなる一方。
これだからガチ恋勢は。
僕を抹殺したい奴らで集まっている。
ゼラチナスと違うのは、唯一の権力者が僕を気に入ってくれているということくらいか。
「美味い。驚いた。あの渋みと酸味だけしか取り柄がないと言われた毒林檎が、こうも化けるか」
「でしょう? こいつは全ての要素を組み合わせて、ようやく旨みに辿り着く。まぁそれを知らないで食うと毒林檎側の思う壺なんですが」
「だからすりおろしたのか」
「それが一番手っ取り早かったので」
「もう一杯いただけるだろうか?」
「いえ、毒物の持ち込みは硬く禁じられてますので。手持ちを持ち合わせておりません」
これ以上の提供は軍規違反に当たると白状し、それを叶えるために軍法を捻じ曲げなければいけないと申し出た。
「これだけの旨み、そして解毒法を知っておきながら活用しない手はない! 急ぎこの拠点の名物とせよ! その際の監督役はアキト、貴様に任せる!」
「承知いたしました」
と、いうわけで僕は毒物取り扱いの許可をいただいたわけである。
それからというものの、カースヴェルトから襲撃された街や村の避難民、主に子供達から大絶賛をいただくに至る。
「にいたん、にいたん! あのおいちいじゅーちゅ、ちょーらい!」
子供達が仲良さげに手を組んで僕の場所へとやってくる。
ここには多くの町や村人の難民が集まっている。
大人への仕事はたくさんあるが、女子供向けの仕事は主に僕のところへ来る。
雑務などをたくさん任されているから、そのお手伝いだ。
「すいません、今日もお願いします」
少し遅れてお腹の大きなお母さんがやってくる。
背中には子どもをおぶって、まぁ随分と子沢山だこと。
「ええ、まずは簡単な仕事から始めましょう」
テーブルの前には簡単な作業道具。
それなりに賢い子ども以外には触らせてはいけない毒物ばかりを扱っている。
そして直接さわればかぶれてしまうものばかりなので手袋をはめてもらっている。
「そして神聖な儀式の前には精神統一を図るためのお水です」
この水がポイント。
万が一にも中毒に陥ってはことなので、ここで仮フレンド登録をする。
少し毒林檎の果汁を入れてあるので子供達にも人気だ。
「ほら、あなたたちも飲みなさい」
「わーい」
これで安全の確保はよし。
ここから行うのは毒と毒を掛け合わせて作る、安全安心な料理のお作法だ。
まぁそれでも危険はつきものなので、こうやって仮フレンド登録をするわけだ。
フレンド登録しちゃうのが楽なんだけど、ずっとここに住むわけでもないし、難民って増えるものだからね。
本国に直接持って行かない理由は、単純に本国までの距離がありすぎること。
ここはゼラチナスとの国境に程近い森の中。
領地的にはフレッツェルの玄関口だが、警戒すべきはゼラチナスのみに能わず。
西に『人とか動物の死体大好きな』カースヴェルト。
南に『ジャイアニズムを掲げる』ゼラチナス。
そして北に『有翼人種以外を下に見る頭の回るタイプの害獣』ウインディア。
言わずもがな、他国から最も攻め入られやすい国なのである。
ここを落とせば他国への侵入も容易く、広大な土地は植民地にうってつけ!
と、まぁ隣国はそう思ってるわけだけど、それを寸前で食い止めてるのが我らが獣人国の精鋭、フレッツェル獣人騎士団というわけだ。
その中でも紅一点の我らが団長、フレンダ率いる魔法騎士団は精鋭中の精鋭!
動物的直感も働き、さらには魔道に精通している騎士団の中でもエリート中のエリートと噂の部隊なのである。
とはいえ、全く問題がないわけでもない。
「ただいま戻った。皆、変わりはないか!」
「第一班、変わりありません!」
「第二班、こちらはよその国から逃げ出した避難民を預かってます」
「またカースヴェルトの被害に遭う村が出たか」
「そのようです」
「被害の規模はどのくらいか」
「重体の患者が30名。それ以外は女子供が多く」
「備蓄が不安か」
「ええ、このまま増えていけば我々含めて共倒れです。奴らはそれが狙いなのでしょう。隊長の優しさにつけ込んだ……」
隊員の一人が僕をじっと見る。
そう、これこそがこの部隊の抱える問題。
こいつら、揃いも揃ってフレンダさんのガチ恋勢、いわゆるユニコーンなのだ。
男所帯に女性が一人。
まぁオタサーの姫? とまでは行かないが、勘違いする隊員は多くてね。
相手の処女性を信じ込み、近づく害虫を抹殺すべく疑いをかけては殺す、おっかない連中なのだ。
僕はフレンダさんのお気に入りという理由だけで彼らに目の敵にされている。
尤も、飼い主とペットみたいな関係だけど。
この人たちって脳筋だからさ、考える頭がないんだ。
だから『むかつく→殺す!』になっちゃうんだよね。
僕的にうまく立ち回ってるつもりだけど、誰もそれを察してくれないから苦労の連続なんだ。
「そのような疑いの眼差しを向けるのはやめてくれ。アキトはこう見えて優秀な調査隊員だ。我々のように力ずくでしか物事を解決できない種族の欠点を補ってくれている。彼の『解析』に我々は何度も助けられてきた。違うか?」
「それでも、よく思ってない連中も多いんですよ。あの耳なしを。敵国の人間というだけで身近に置くことを警戒している同胞も多いです」
耳なし、というのは獣人から見た人間のことを指す。
動物の耳を持たないからそういうのだそうだ。
うるせーよ、生まれついての特徴なんだから仕方ないだろ?
「オレが可愛がっているからと嫉妬したか。確かにあいつは力も弱く、体力もない。我々獣人に比べたら劣る存在。そう見るやつも少なくはない」
「でしたら!」
「だが、この任務においてあいつ以上の働きをしてる奴を俺は知らない。お前たちは毒物を前に突っ込んでいけるか? 死を覚悟して、前のめりに毒を喰らいにいけるか? それを無視すれば我が国は毒に蝕まれ、近くない将来滅亡するだろう。だがあの男は、アキトはそれに真っ向から立ち向かい、それを手中に収める」
「でもそれはあいつの能力だからで!」
「ああ、そうだな。それがアキトの能力だ。だが、貴様に同じ能力が芽生えたとして、その道を望んで進めるか? それとこれは別の話だ。貴様が思うよりもずっとな。それでも進めるというならこいつを食ってみろ」
フレンダは齧りかけのリンゴを地面に投げ捨てた。
それには微弱だが『腹痛』を引き起こす毒素が含まれている。
皮に毒素があるので皮を剥いて、それから食すのが作法だ。
「これは?」
「あいつがまだなんの耐性も持ってない頃に手をつけた毒林檎だ。舌先に強い痺れ、身体中を覆う不快感、溢れ出す便意、そして腹痛。これらを知ってなお、好んで食せる覚悟があるか?」
「ふん、こんなもの!」
部下の一人が勇猛果敢に一齧り。
僕も食べられたからと、自分に食べられないはずはないと思い込んだまではいいが……
最初の頃は威勢は良かったが、次第に表情が青くなって、ついには泡を吐いて倒れてしまった。
「あーらら。微弱毒だからと侮ってかかるからいけない。これの美味しい食べ方は、まず最初に皮を剥く。次にタネを取り、そして頭痛を引き起こす花の蜜を足し、さらにはこの触ったら手が焼け爛れるキノコを砕いてまぶしていただくのが通なんだ。こんな風にさ」
アーン、と大口を開けて、ペロリといただく。
「うーん、デリシャス。やはり毒には猛毒を掛け合わせるのがベストチョイスだ。でもみんなに配膳できないのが悔やまれるな」
そんな風に毒料理を絶賛するすぐ横で、フレンダさんが僕を絶賛する言葉を……
「こいつはな、バカなんだ。掛け値なしのな。状態異常の耐性がある? だからなんだ。耐性はあるだろうが一度口にして苦い体験を受けた食べ物を、普通のやつは二度と身近に置こうとは思わない。だがこいつは置く。それどころか嬉々として他の毒物と合わせて食べる。生粋の毒ジャンキーだ。こんなやつでもなければ、あの忌々しいカースヴェルトの企みを退けることなど到底不可能だ」
かけちゃくれなかった。
なんなら罵倒である。
ひどくない?
「ちなみに、こいつの能力の本懐は毒物の分解だけにあらず。このリンゴ、耐性なくして食べるにはどうしたらいい?」
あ、一応挽回の機会はくれるのね?
こういうデレを見せてくれるから僕はストレスを溜めずにいけるのだ。
なんだかんだで彼女の手のひらの上なんだよね。
僕も彼らも。
「そうですねぇ、まずこいつの毒素は皮にある。皮を剥いて食べるだけでも毒は緩和される」
「だが、それだけでは不十分だろう? 毒を一切負うことなくうまく食べる方法だ」
「そういうことだったら、まずはこいつを流水で洗う。皮の表面上にも毒素は含まれていますからね」
「それだけか?」
「無論違いますよ。洗ってからこうやって皮ごとすりおろす! 確かに皮に毒素は含まれていますが、こいつは果肉や果汁と合わさると一気に無毒化するんです。だったら噛めば無毒化するんですが、そうならないのはこの果汁が非常に曲者で。これが単体でほとんど渋くて食えたもんじゃない。大体の人はこれを序盤に吐き出してしまいます。あとはご想像通り、毒素に負けて体に毒が蝕まれる。さっき運ばれた人のようになるというわけです。と、こいつは結構根気のいる作業ですが、美味しくいただくというのならそう言ってられない一手間。はい、どうぞ」
すりおろしたリンゴジュースをコップに注いで隊員に渡す。
これなら安全に飲める! と自信を持ってお勧めするが、なかなか受け取ってくれない。
先ほどお仲間一人を昏倒させたジュース、さぞかし怖かろう。
「う、むぅ」
「要らないなら俺がいただくぞ?」
「あ!」
フレンダさんが横合いからそれをかっぱらい、一気に喉奥に流し込む。
僕のフレンドなので平然としているが、飲み切った後動かなくなった。
おかしいな?
「おい、貴様、やはりあれには毒物が仕込まれてたんじゃないだろうな?」
「入ってませんてば!」
疑いの眼差しはますます強くなる一方。
これだからガチ恋勢は。
僕を抹殺したい奴らで集まっている。
ゼラチナスと違うのは、唯一の権力者が僕を気に入ってくれているということくらいか。
「美味い。驚いた。あの渋みと酸味だけしか取り柄がないと言われた毒林檎が、こうも化けるか」
「でしょう? こいつは全ての要素を組み合わせて、ようやく旨みに辿り着く。まぁそれを知らないで食うと毒林檎側の思う壺なんですが」
「だからすりおろしたのか」
「それが一番手っ取り早かったので」
「もう一杯いただけるだろうか?」
「いえ、毒物の持ち込みは硬く禁じられてますので。手持ちを持ち合わせておりません」
これ以上の提供は軍規違反に当たると白状し、それを叶えるために軍法を捻じ曲げなければいけないと申し出た。
「これだけの旨み、そして解毒法を知っておきながら活用しない手はない! 急ぎこの拠点の名物とせよ! その際の監督役はアキト、貴様に任せる!」
「承知いたしました」
と、いうわけで僕は毒物取り扱いの許可をいただいたわけである。
それからというものの、カースヴェルトから襲撃された街や村の避難民、主に子供達から大絶賛をいただくに至る。
「にいたん、にいたん! あのおいちいじゅーちゅ、ちょーらい!」
子供達が仲良さげに手を組んで僕の場所へとやってくる。
ここには多くの町や村人の難民が集まっている。
大人への仕事はたくさんあるが、女子供向けの仕事は主に僕のところへ来る。
雑務などをたくさん任されているから、そのお手伝いだ。
「すいません、今日もお願いします」
少し遅れてお腹の大きなお母さんがやってくる。
背中には子どもをおぶって、まぁ随分と子沢山だこと。
「ええ、まずは簡単な仕事から始めましょう」
テーブルの前には簡単な作業道具。
それなりに賢い子ども以外には触らせてはいけない毒物ばかりを扱っている。
そして直接さわればかぶれてしまうものばかりなので手袋をはめてもらっている。
「そして神聖な儀式の前には精神統一を図るためのお水です」
この水がポイント。
万が一にも中毒に陥ってはことなので、ここで仮フレンド登録をする。
少し毒林檎の果汁を入れてあるので子供達にも人気だ。
「ほら、あなたたちも飲みなさい」
「わーい」
これで安全の確保はよし。
ここから行うのは毒と毒を掛け合わせて作る、安全安心な料理のお作法だ。
まぁそれでも危険はつきものなので、こうやって仮フレンド登録をするわけだ。
フレンド登録しちゃうのが楽なんだけど、ずっとここに住むわけでもないし、難民って増えるものだからね。
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