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【悲報】僕の能力弱すぎ問題
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ポーン!
【状態異常:麻痺毒 Ⅰを検知しました】
解析中………10%……50%……70%……100%解析完了!
【状態異常耐性:麻痺毒 Ⅰを獲得しました】
<獲得耐性>
『麻痺毒 Ⅰ』
徹夜明けの頭に、そんな音が響いた。
おかしいな、僕は会社にいるはずなのに。
どうしてゲームなんて起動してるんだ?
もしかしてこれは夢?
夢の中でまでゲームしてるなんて、僕らしいといえば僕らしいか。
今は少しでも脳を休ませなきゃいけないのに、何やってんだか。
それがおおよそ五つ貯まった頃、肩を揺らされる感覚。
どこか遠くから大声で叫ばれている。
おかしいな、普段なら誰かの足を引っ張るのに夢中な連中が、今日に限って友情でも思い出したのか? タイムカードの時間に間に合わせようとしている?
今更僕に恩を売ってどうするつもりなのか。
だがやめておけ。今日の僕は手負の獣。
睡眠を邪魔されたら暴れ出すぞ!
だが僕は心の中では勇敢でも、実行できずにいるチキンだ。
ここは一つ穏便に狸寝入りの術で誤魔化すとしよう。
「ううん……あと五分」
僕は思わず会社の同僚に懇願するようにもう少し寝かせてくれと寝言で答えた。
「……さん、おっさん! 起きろ! 後がつかえてんだよ!」
ポーン!
【状態異常:思考誘導 Ⅰを検知しました】
解析中………10%……50%……70%……100%解析完了!
【状態異常耐性:思考誘導 Ⅰを獲得しました】
<獲得耐性>
『麻痺毒 Ⅰ』『幻覚 Ⅰ』『魅了 Ⅰ』『戦意高揚 Ⅰ』『混乱 Ⅰ』『思考誘導 Ⅰ』
「まだ眠いんだ、少しゆっくりさせてくれよ。って、ここどこ?」
渋々起き上がり、大あくび。
少し脳に空気が入ったのが良かったのだろう。
僕の灰色の脳細胞は瞬時にここが昨日サビ残を実行した弊社ではないことに気がついた。
「俺たちは異世界に召喚されたんだ!」
「またまたぁ」
「本当に召喚されたんですよ! さぁ、おじさんも能力を開示してください!」
僕の周りにいるのは高校生ぐらいの男女だ。
まるで熱に浮かされる様に高揚し、興奮を隠せない様子。
本当に召喚されてるんなら、もっと恐慌状態に陥っててもおかしくない。
やっぱりさっきからうるさいあの電子音に何か仕掛けがあるんだろうか?
「なんかステータス! っていえば出る系?」
「なんだ、あんたもそっちの知識はあるのか」
話が早いとばかりに高校生が好色を示す。
「ない、といえば嘘になるな。あまり詳しくはないんだけど。しかし変だな。心の中で叫んでも特に目的のものが出てこない様な気がする」
ステータス。数字の羅列が並ぶ例のゲーム的要素だ。
「おっさん、俺たちに巻き込まれた系か?」
やけに軽い感じで、若者たちが僕に接してくる。
流石に僕だって怒るんだぞ?
なんだ、初対面を前にいきなり失礼じゃないか。
「おい」
「なんだよ」
「さっきからおっさん、おっさんと。もしかしてそれは僕に言ってるのか?」
「他に誰がいるんだ?」
見渡す限りではなんか並んでる兵士とか?
「なるほど。取り敢えず自己紹介から始めようか、クソガキ供」
クソガキ、と呼ばれて怒りを露わにする学生達。
「おいおい、人の事はおっさんと呼び捨てにしておいて。自分たちだけは尊重されると思っていたのか? 取り敢えず握手だ。握手して名乗る。それで対等になれる。社会常識だぞ?」
「そんなもの、ここじゃ気にしなくていーんだよ、クソ雑魚おっさん!」
「クソ雑魚とは名乗る前から随分とイキってるね」
よほど当たりの能力を獲得したのだろう。
まるでレアアイテムを入手したときのようなイキリ散らかし具合だ。
「なるほど、当たりを引いたか。で、僕の能力をハズレと決め込んで見下しに来たのか? 程度が知れる」
たかがステータスに重要な数値が示されてないぐらいで?
語るに落ちたな。
「それで、勇者様、お話は終わりましたか?」
勇者。僕たちをそう呼ぶ少女は、顔色を伺うように少年たちを贔屓する。
なぜか、僕をあまり良くないように扱いながらだ。
ステータスが見えないといった情報だけで切り捨てに来たのかな?
「ああ、ライム姫。このおっさん無能だってよ」
「おっさん言うな、クソガキ」
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
ライム姫と呼ばれた少女が、僕に狙いを定める。
すると脳内に僕を夢から目覚めさせたあの音がまた鳴った。
ポーン!
【状態異常:自白Ⅰを検知しました】
解析中………10%……50%……
何というか、見たまんま。
相手に自分の能力を曝け出したくてたまらない気持ちになる。
沈黙している僕に、姫はどこか不満げだ。
すぐに効力が発動するタイプのデバフだったか?
だが僕の高いネットリテラシーで本名を名乗ったら危ないと言う勘が働き、すぐに偽名を思いつく。
「僕はライト。ムーン=ライト」
「ムーン=ライト様ですのね」
ニコリ。ライム姫は微笑み。
そして同時に強めの状態異常がかけられた。
ポーン!
【状態異常:隷属化 Ⅱを検知しました】
解析中………10%……
なるほどね。こうやって学生たちを手駒にしてきたのか。
最初っからこの召喚の目的が兵の獲得に準じているのであれば、合点がいく。
勇者様って持ち上げておけば学生たちは気分はいいからね。
社会人は殿様扱いしておけばいい。
そう考えると僕らってちょろくね?
「うん、そんな感じ。それで、こっちのボンクラどもの名前は?」
「あの、ムーン=ライト様?」
「どうしました、姫?」
何で僕には勇者様って呼ばないのさ。
「獲得した能力の提示をしていただけませんか?」
「え、嫌だけど?」
「今、なんと?」
「え、嫌だって。何で今日会ったばかりの他人にプライバシーを暴露しなきゃいけないのさ。仮に僕の身分が低いとしたって、出会ってすぐの人に心開けるわけないじゃん。頭大丈夫?」
そんなの社会人なら守って当たり前のことじゃないか。
親元を離れたら、自分で守らなきゃ誰も守ってくれないんだぞ?
それともここなら自分には権力があるから、言うことを聞いてくれると思ったのか?
さすが犯罪者様は、自意識が過剰でいらっしゃる。
「おい、おっさん! 姫様の前で不敬だぞ!」
「ガキ、難しい言葉を知ってるな。そう言う君こそ、元の世界に帰せって心配する方が先でしょ? 何で誘拐犯の言葉に従ってるのさ」
「誘拐? 何を言ってるの? 私たちはこの世界の勇者として選ばれた存在なのよ、おじさん」
「だからおじさん言うな、ガキども。僕はまだ23だ」
成人してまだ三年しか経ってないペーペーだぞ。
社会人として駆け出しもいいところだ。
おっさん枠に入れるなんて酷いじゃないか。
それを認めたら君たちも五年後はおっさんだぞ。
それとも自分たちはそうならないって理屈で動いてるんだろうか?
だったらその時になったらたっぷり煽ってやろうと思う。
「二十歳越えればおっさんだろ!」
「あたしたちまだピチピチの十代だから! キャハハ」
「お控えください勇者様。ムーン=ライト様もお疲れのようなのです」
「あと五分寝かせて。そうしたら不安な気持ちも拭えると思うから」
ちょっとだけ、こいつらに付き従ってもいいかな?
だなんて思ったのは僕のコレクター欲がちょっとだけ食指を動かされただけだ。
だって僕の能力は、開示するにはあまりにも脆弱だったから。
<異能:解析>
効果1:効果/状態/状態異常を検知する
効果2:検知した効果/状態/状態異常を解析する
※状態異常解析中は常に状態異常にかかりっぱなしになっている。
※抵抗はできない。
効果3:100%解析した状態異常の耐性を得る
効果4:フレンドを作ることで状態異常の耐性を自分以外にも広めることができる
※握手することで限定的なフレンド状態になれる(一時間)
効果5:一定数の耐性を獲得することで残機が増える
<獲得耐性:8>
<フレンド:0/10>
<残機:0>
何だろうか、このあんまりにもあんまりな能力は。
役に立つかどうかと言われたら、限定的な状況すぎるし、力こそ正義な場所では生きてけなさそう、と言う感想しか湧いてこないな。
僕はとりあえずここに長居することで耐性を獲得し、残機を増やす方向で生存戦略を図ろうと思った。
【状態異常:麻痺毒 Ⅰを検知しました】
解析中………10%……50%……70%……100%解析完了!
【状態異常耐性:麻痺毒 Ⅰを獲得しました】
<獲得耐性>
『麻痺毒 Ⅰ』
徹夜明けの頭に、そんな音が響いた。
おかしいな、僕は会社にいるはずなのに。
どうしてゲームなんて起動してるんだ?
もしかしてこれは夢?
夢の中でまでゲームしてるなんて、僕らしいといえば僕らしいか。
今は少しでも脳を休ませなきゃいけないのに、何やってんだか。
それがおおよそ五つ貯まった頃、肩を揺らされる感覚。
どこか遠くから大声で叫ばれている。
おかしいな、普段なら誰かの足を引っ張るのに夢中な連中が、今日に限って友情でも思い出したのか? タイムカードの時間に間に合わせようとしている?
今更僕に恩を売ってどうするつもりなのか。
だがやめておけ。今日の僕は手負の獣。
睡眠を邪魔されたら暴れ出すぞ!
だが僕は心の中では勇敢でも、実行できずにいるチキンだ。
ここは一つ穏便に狸寝入りの術で誤魔化すとしよう。
「ううん……あと五分」
僕は思わず会社の同僚に懇願するようにもう少し寝かせてくれと寝言で答えた。
「……さん、おっさん! 起きろ! 後がつかえてんだよ!」
ポーン!
【状態異常:思考誘導 Ⅰを検知しました】
解析中………10%……50%……70%……100%解析完了!
【状態異常耐性:思考誘導 Ⅰを獲得しました】
<獲得耐性>
『麻痺毒 Ⅰ』『幻覚 Ⅰ』『魅了 Ⅰ』『戦意高揚 Ⅰ』『混乱 Ⅰ』『思考誘導 Ⅰ』
「まだ眠いんだ、少しゆっくりさせてくれよ。って、ここどこ?」
渋々起き上がり、大あくび。
少し脳に空気が入ったのが良かったのだろう。
僕の灰色の脳細胞は瞬時にここが昨日サビ残を実行した弊社ではないことに気がついた。
「俺たちは異世界に召喚されたんだ!」
「またまたぁ」
「本当に召喚されたんですよ! さぁ、おじさんも能力を開示してください!」
僕の周りにいるのは高校生ぐらいの男女だ。
まるで熱に浮かされる様に高揚し、興奮を隠せない様子。
本当に召喚されてるんなら、もっと恐慌状態に陥っててもおかしくない。
やっぱりさっきからうるさいあの電子音に何か仕掛けがあるんだろうか?
「なんかステータス! っていえば出る系?」
「なんだ、あんたもそっちの知識はあるのか」
話が早いとばかりに高校生が好色を示す。
「ない、といえば嘘になるな。あまり詳しくはないんだけど。しかし変だな。心の中で叫んでも特に目的のものが出てこない様な気がする」
ステータス。数字の羅列が並ぶ例のゲーム的要素だ。
「おっさん、俺たちに巻き込まれた系か?」
やけに軽い感じで、若者たちが僕に接してくる。
流石に僕だって怒るんだぞ?
なんだ、初対面を前にいきなり失礼じゃないか。
「おい」
「なんだよ」
「さっきからおっさん、おっさんと。もしかしてそれは僕に言ってるのか?」
「他に誰がいるんだ?」
見渡す限りではなんか並んでる兵士とか?
「なるほど。取り敢えず自己紹介から始めようか、クソガキ供」
クソガキ、と呼ばれて怒りを露わにする学生達。
「おいおい、人の事はおっさんと呼び捨てにしておいて。自分たちだけは尊重されると思っていたのか? 取り敢えず握手だ。握手して名乗る。それで対等になれる。社会常識だぞ?」
「そんなもの、ここじゃ気にしなくていーんだよ、クソ雑魚おっさん!」
「クソ雑魚とは名乗る前から随分とイキってるね」
よほど当たりの能力を獲得したのだろう。
まるでレアアイテムを入手したときのようなイキリ散らかし具合だ。
「なるほど、当たりを引いたか。で、僕の能力をハズレと決め込んで見下しに来たのか? 程度が知れる」
たかがステータスに重要な数値が示されてないぐらいで?
語るに落ちたな。
「それで、勇者様、お話は終わりましたか?」
勇者。僕たちをそう呼ぶ少女は、顔色を伺うように少年たちを贔屓する。
なぜか、僕をあまり良くないように扱いながらだ。
ステータスが見えないといった情報だけで切り捨てに来たのかな?
「ああ、ライム姫。このおっさん無能だってよ」
「おっさん言うな、クソガキ」
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
ライム姫と呼ばれた少女が、僕に狙いを定める。
すると脳内に僕を夢から目覚めさせたあの音がまた鳴った。
ポーン!
【状態異常:自白Ⅰを検知しました】
解析中………10%……50%……
何というか、見たまんま。
相手に自分の能力を曝け出したくてたまらない気持ちになる。
沈黙している僕に、姫はどこか不満げだ。
すぐに効力が発動するタイプのデバフだったか?
だが僕の高いネットリテラシーで本名を名乗ったら危ないと言う勘が働き、すぐに偽名を思いつく。
「僕はライト。ムーン=ライト」
「ムーン=ライト様ですのね」
ニコリ。ライム姫は微笑み。
そして同時に強めの状態異常がかけられた。
ポーン!
【状態異常:隷属化 Ⅱを検知しました】
解析中………10%……
なるほどね。こうやって学生たちを手駒にしてきたのか。
最初っからこの召喚の目的が兵の獲得に準じているのであれば、合点がいく。
勇者様って持ち上げておけば学生たちは気分はいいからね。
社会人は殿様扱いしておけばいい。
そう考えると僕らってちょろくね?
「うん、そんな感じ。それで、こっちのボンクラどもの名前は?」
「あの、ムーン=ライト様?」
「どうしました、姫?」
何で僕には勇者様って呼ばないのさ。
「獲得した能力の提示をしていただけませんか?」
「え、嫌だけど?」
「今、なんと?」
「え、嫌だって。何で今日会ったばかりの他人にプライバシーを暴露しなきゃいけないのさ。仮に僕の身分が低いとしたって、出会ってすぐの人に心開けるわけないじゃん。頭大丈夫?」
そんなの社会人なら守って当たり前のことじゃないか。
親元を離れたら、自分で守らなきゃ誰も守ってくれないんだぞ?
それともここなら自分には権力があるから、言うことを聞いてくれると思ったのか?
さすが犯罪者様は、自意識が過剰でいらっしゃる。
「おい、おっさん! 姫様の前で不敬だぞ!」
「ガキ、難しい言葉を知ってるな。そう言う君こそ、元の世界に帰せって心配する方が先でしょ? 何で誘拐犯の言葉に従ってるのさ」
「誘拐? 何を言ってるの? 私たちはこの世界の勇者として選ばれた存在なのよ、おじさん」
「だからおじさん言うな、ガキども。僕はまだ23だ」
成人してまだ三年しか経ってないペーペーだぞ。
社会人として駆け出しもいいところだ。
おっさん枠に入れるなんて酷いじゃないか。
それを認めたら君たちも五年後はおっさんだぞ。
それとも自分たちはそうならないって理屈で動いてるんだろうか?
だったらその時になったらたっぷり煽ってやろうと思う。
「二十歳越えればおっさんだろ!」
「あたしたちまだピチピチの十代だから! キャハハ」
「お控えください勇者様。ムーン=ライト様もお疲れのようなのです」
「あと五分寝かせて。そうしたら不安な気持ちも拭えると思うから」
ちょっとだけ、こいつらに付き従ってもいいかな?
だなんて思ったのは僕のコレクター欲がちょっとだけ食指を動かされただけだ。
だって僕の能力は、開示するにはあまりにも脆弱だったから。
<異能:解析>
効果1:効果/状態/状態異常を検知する
効果2:検知した効果/状態/状態異常を解析する
※状態異常解析中は常に状態異常にかかりっぱなしになっている。
※抵抗はできない。
効果3:100%解析した状態異常の耐性を得る
効果4:フレンドを作ることで状態異常の耐性を自分以外にも広めることができる
※握手することで限定的なフレンド状態になれる(一時間)
効果5:一定数の耐性を獲得することで残機が増える
<獲得耐性:8>
<フレンド:0/10>
<残機:0>
何だろうか、このあんまりにもあんまりな能力は。
役に立つかどうかと言われたら、限定的な状況すぎるし、力こそ正義な場所では生きてけなさそう、と言う感想しか湧いてこないな。
僕はとりあえずここに長居することで耐性を獲得し、残機を増やす方向で生存戦略を図ろうと思った。
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