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本編
32.仲良し三人組
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それはある日の午後のこと。
トールが外出中で暇を持て余していたアリシアが姿見の前で髪飾りを選んでいる時に来客の知らせがあった。
見持ちの硬いアリシアにわざわざ会いにくる人物なんて片手で数える程度しかいない。その来訪者はノックの後アリシアの返事を待たずに入室して来た。誰であろう、マリアンヌである。
「あら、今日はトールはいらっしゃらないのね」
残念、と部屋主の顔を見ずに落胆する姿を見て何をしにきたのかアリシアは容易に想像することができた。
「伝言ならわたくしから伝えておきますが?」
「あ、良いのよ。どうせ大したものじゃないし。日傘をね、武器に使えないかと考えていたのよ」
「日傘を?」
アリシアはマリーを胡乱な瞳で見つめた。
姉のトールもおかしな発想をするが、マリーの素っ頓狂さも他に類を見ない。
「おかしいかしら?」
「お姉様からすれば普通、なのでしょうが一般的ではありませんわね」
ピシャリと会話を切り落とす。
アリシアの声色は冷ややかだ。
「アリシアは一般的な思想に拘りすぎではなくて?」
「どういう意味かしら?」
嘲笑するように、マリーは口元を押さえる。
アリシアの気配が冷え込むのを見ても口撃は止まらない。
「冗談よ。トールという一般的からあまりにかけ離れた存在と一緒に居るのに未だにそんなところに拘っているのがおかしかったの」
そう告げるマリーの口調は何処か白々しい。
良い任されたのが悔しいのか、アリシアは唇を尖らせてそっぽを向いた。
「ほらほらー、図星なんじゃないの。せっかくの美貌が台無しよ? あら、髪飾りを選んでいたのね? 私が選んであげるわよ。どれどれー?」
素早い動作でマリーはご機嫌取りを開始する。
こう言った気遣いが出来るからアリシアはマリーを憎みきれない。
もっと太々しいやつだったら痛めつけて終わりにできるのに、それもままならなかった。
「はい、完成!」
姿見に写るアリシアは絵本から抜け出してきたような幻想的な色かを纏っていた。ストレートに伸ばしたブロンドの髪にダークブラウンのリボンがアクセントになったカチューシャだ。
それがマリーの選んだ今日のアリシアに合うと思って見繕った。
アリシアも自分にこんなものが似合うだなんて想像もしていなかったが、勧められてこういうのもアリなんだと自分の魅力の引き出し方を教わった気持ちでいた。
「私だと似合わないけど、アリシアだとすごく合うのよねー、不思議だわ」
「それならばきっとお姉さまに似合うわね」
アリシアは得心したように頷くが、マリーから言わせてみれば、それは無謀と言いたげだった。
「トールはどうかしら? あの子にリボンは似合わない気がするわ」
マリーの指摘に不本意ながらも納得せざるを得ないアリシア。
普段から見惚れている姉だが、可愛いというよりは美しい、神々しいのだ。そんな人物に確かにリボンはチープな気がした。
素材が姉の美貌に追いつけないのだ。
特にフィルターがかかりまくったアリシアにとってトールとは天からの遣い、それよりも更に格上の女神に匹敵する存在なのである。
確かに見た目は愛くるしいが、時折見せる氷のような冷たさがミステリアスさを醸し出す。
そんな姉の姿を思い浮かべて、今日もアリシアは鏡の前でため息をついた。
「はぁ、おしゃれって難しいわ」
「貴女が言うと嫌味よ?」
「お姉様も同じことを仰るの。どうしてかしら?」
「ハイハイ、持って生まれたものの余裕ね。ま、私は負けたと思ってませんが」
「マリーの言ってることはわかりませんわ。私なんてお姉様に比べればまだまだですもの」
「貴女の姉依存は病気ね。いい加減姉離れしたらどうなの?」
そう言われると黙っていられないアリシア。
「マリーはどうしてそこまでわたくしに突っかかって来るのかしら?」
「どうしてって分からない?」
「分かりませんわ?」
問われた質問にノータイムでさらりと答えるアリシアに、マリーはこめかみに青筋を浮かべながら答えを口にした。
「貴女自身もう十分に強いのに、それに気が付かずに、いつまで経っても姉様姉様とべったり! そんな貴女に負け続けてる私は一体なんですの!?」
ムキーッとハンカチを噛んで悔しがるマリーに、アリシアの返す言葉はとても冷ややかだった。
「そんなものは与えられた力の上で努力もせずに胡座をかいていたものの負け犬の遠吠えでしてよ? そんな相手に勝ったところでなんの自信になりましょうか?」
「私これでも同期の令嬢の中ではトップのマジックキャスターなのですわよ?」
「それは世界を知らないだけですわ。お姉様と比べたら雲泥の差。負けたところで圧倒的過ぎて悔しいとすら思えない。今はただその力の一片を味わい、理解して自分のものにするのが唯一の鍛錬。それ以外の事象など有象無象に過ぎませんわ」
「もうやだ、この姉妹。言ってることが無茶苦茶よ! もうあんた達二人で魔王でも倒せるのじゃなくて?」
「お姉様なら可能でしょうね! わたくしではお荷物になってしまいますわ」
「その謎の信頼感は何処から来るのよ!」
そんなこんなで罵り合いながらも、不思議と仲がいいのはトールがマリーを気に入っているからである。
アリシアには持ってないその発想力。
そして力を手にするためにはガムシャラになれる前のめりな集中力がトールのお気に入りポイントである。
それがちょっとだけ悔しいアリシアだった。
「そう言えばトールは何処言ったのよ?」
「さぁ? 朝起きたらベッドがもぬけの殻でしたの。わたくしも寂しい思いをしてるのですわ」
途端に力が抜けたようにふにゃふにゃとなるアリシア。
今日の分の姉からのエネルギーを摂取してないからこうなったと言わんばかりにベッドに倒れ伏す。
マリーという来客が居ようとアリシアには関係ないのだ。
「あんたねぇ、良い加減にしなさいよ!」
「あ~~世界が揺れていますわ~~」
マリーはアリシアの肩を掴んで揺らす。
この風景を見た使用人は「今日もお嬢様方が戯れているわ」と微笑ましく思う事だろう。しかしこの二人の戦闘能力は見た目からは想像できないほど高い事を使用人達は知らない。
アリシアvsマリアンヌ
魔道具あり、近接格闘ありでの対戦記録は
1275戦1270勝5敗。
この5敗こそがマリーがアリシアからもぎ取った勝率である。
マリーは弱いわけではない。
実際に学園に入れば注目されるくらいには有能なのだ。
対してアリシアが学園に入ればどうか?
錬金術師は帝国でその地位が見直されてきているとは言え、閉鎖的な学園ではまだまだ下に見られる事だろう。
確実に名前を売る事なく埋もれていく。それがマリーには悔しくてたまらないのだ。
だからマリーは常々アリシアに口を酸っぱくして姉離れをしろと言っていた。
学園に入るのはもう来年まで迫っている。
トールが学園に入っても学ぶものは何もないと聞いてマリーは思わず納得してしまったぐらいだ。
きっと学園の先生がこぞってトールに教えを乞う様子がありありと想像できた。行ったら行ったで確実にパニックになる。
そういう意味では学園という小さな世界に収まり切る人物ではない。
だからこそ一日トールと出会えてないだけでぶーたれてる社交界の華をシャキッとさせるのがマリーの仕事になっていた。
普段はクールなくせして、姉がいないだけでこの世の終わりみたいな顔をするこの娘を一端の貴族令嬢に仕上げなければならないのだ。辛い。
「しっかし、あんたもおかしいけどトールの強さはもう意味不明よね」
「お姉様は一般の常識で測れる存在ではないのですわ」
「なんの話?」
「お姉様!」
「おわっと!」
音もなく現れたトールに、アリシアは目を輝かせて抱きついた。
その素早さときたらさっきまでのふにゃふにゃ具合が嘘の様に俊敏だ。
「で、なんの話?」
アリシアがトールに抱きついてエネルギーを補給している様はいつ見ても過剰なスキンシップであろう。
しかしトールはそんなアリシアにも動じず、マリーに聞き返していた。慣れとは恐ろしい。
「アリシアのトールへの依存度のお話でしてよ」
「あぁ、それね。まぁ仕方ないんじゃない? 貴族令嬢は嫁に行く運命だし。今のうちだけだよ、僕に懐いてくれてるのは」
遅かれ早かれ散り散りになるとトールは述べる。
それを言われたら身も蓋もないとマリーは引き攣った笑みを浮かべた。
「わたくしお姉様と結婚しますわ!」
「ハイハイ。帝王様が許可してくれたらね?」
「お姉様の素晴らしさを念書に認めて送ります!」
「程々にね?」
トールは妹の暴走を止めることはしない。
無理だというには簡単だが、やらずに無理だと教えたくはなかったのだ。そもそものトールの教えは無理だと思ってるうちは無理と一般常識を覆す理論から始まる。
だからやりたい様にやらせる方針なのである。
やって無理だったら諦めるかな、という狙いもあるのだ。
ちなみにマリーはトールと魔法ありきの勝負をした時、対峙した瞬間に死を覚悟した。
厳密には何回も殺された上で蘇生されたのである。
それによって挑もうという気持ちがポッキリと折れてしまったのだ。
そういう意味では未だに向かい続けるアリシアのガッツが心底羨ましいと思ってる。
「あんたは妹が婚約者でも良いの?」
「ん~~?」
それとなく聞いてみるマリーだったが、トールは満更でもない笑みを返していた。
似たもの姉妹かよ!
マリーが胸中で毒吐いてしまうのも無理からぬことだった。
トールが外出中で暇を持て余していたアリシアが姿見の前で髪飾りを選んでいる時に来客の知らせがあった。
見持ちの硬いアリシアにわざわざ会いにくる人物なんて片手で数える程度しかいない。その来訪者はノックの後アリシアの返事を待たずに入室して来た。誰であろう、マリアンヌである。
「あら、今日はトールはいらっしゃらないのね」
残念、と部屋主の顔を見ずに落胆する姿を見て何をしにきたのかアリシアは容易に想像することができた。
「伝言ならわたくしから伝えておきますが?」
「あ、良いのよ。どうせ大したものじゃないし。日傘をね、武器に使えないかと考えていたのよ」
「日傘を?」
アリシアはマリーを胡乱な瞳で見つめた。
姉のトールもおかしな発想をするが、マリーの素っ頓狂さも他に類を見ない。
「おかしいかしら?」
「お姉様からすれば普通、なのでしょうが一般的ではありませんわね」
ピシャリと会話を切り落とす。
アリシアの声色は冷ややかだ。
「アリシアは一般的な思想に拘りすぎではなくて?」
「どういう意味かしら?」
嘲笑するように、マリーは口元を押さえる。
アリシアの気配が冷え込むのを見ても口撃は止まらない。
「冗談よ。トールという一般的からあまりにかけ離れた存在と一緒に居るのに未だにそんなところに拘っているのがおかしかったの」
そう告げるマリーの口調は何処か白々しい。
良い任されたのが悔しいのか、アリシアは唇を尖らせてそっぽを向いた。
「ほらほらー、図星なんじゃないの。せっかくの美貌が台無しよ? あら、髪飾りを選んでいたのね? 私が選んであげるわよ。どれどれー?」
素早い動作でマリーはご機嫌取りを開始する。
こう言った気遣いが出来るからアリシアはマリーを憎みきれない。
もっと太々しいやつだったら痛めつけて終わりにできるのに、それもままならなかった。
「はい、完成!」
姿見に写るアリシアは絵本から抜け出してきたような幻想的な色かを纏っていた。ストレートに伸ばしたブロンドの髪にダークブラウンのリボンがアクセントになったカチューシャだ。
それがマリーの選んだ今日のアリシアに合うと思って見繕った。
アリシアも自分にこんなものが似合うだなんて想像もしていなかったが、勧められてこういうのもアリなんだと自分の魅力の引き出し方を教わった気持ちでいた。
「私だと似合わないけど、アリシアだとすごく合うのよねー、不思議だわ」
「それならばきっとお姉さまに似合うわね」
アリシアは得心したように頷くが、マリーから言わせてみれば、それは無謀と言いたげだった。
「トールはどうかしら? あの子にリボンは似合わない気がするわ」
マリーの指摘に不本意ながらも納得せざるを得ないアリシア。
普段から見惚れている姉だが、可愛いというよりは美しい、神々しいのだ。そんな人物に確かにリボンはチープな気がした。
素材が姉の美貌に追いつけないのだ。
特にフィルターがかかりまくったアリシアにとってトールとは天からの遣い、それよりも更に格上の女神に匹敵する存在なのである。
確かに見た目は愛くるしいが、時折見せる氷のような冷たさがミステリアスさを醸し出す。
そんな姉の姿を思い浮かべて、今日もアリシアは鏡の前でため息をついた。
「はぁ、おしゃれって難しいわ」
「貴女が言うと嫌味よ?」
「お姉様も同じことを仰るの。どうしてかしら?」
「ハイハイ、持って生まれたものの余裕ね。ま、私は負けたと思ってませんが」
「マリーの言ってることはわかりませんわ。私なんてお姉様に比べればまだまだですもの」
「貴女の姉依存は病気ね。いい加減姉離れしたらどうなの?」
そう言われると黙っていられないアリシア。
「マリーはどうしてそこまでわたくしに突っかかって来るのかしら?」
「どうしてって分からない?」
「分かりませんわ?」
問われた質問にノータイムでさらりと答えるアリシアに、マリーはこめかみに青筋を浮かべながら答えを口にした。
「貴女自身もう十分に強いのに、それに気が付かずに、いつまで経っても姉様姉様とべったり! そんな貴女に負け続けてる私は一体なんですの!?」
ムキーッとハンカチを噛んで悔しがるマリーに、アリシアの返す言葉はとても冷ややかだった。
「そんなものは与えられた力の上で努力もせずに胡座をかいていたものの負け犬の遠吠えでしてよ? そんな相手に勝ったところでなんの自信になりましょうか?」
「私これでも同期の令嬢の中ではトップのマジックキャスターなのですわよ?」
「それは世界を知らないだけですわ。お姉様と比べたら雲泥の差。負けたところで圧倒的過ぎて悔しいとすら思えない。今はただその力の一片を味わい、理解して自分のものにするのが唯一の鍛錬。それ以外の事象など有象無象に過ぎませんわ」
「もうやだ、この姉妹。言ってることが無茶苦茶よ! もうあんた達二人で魔王でも倒せるのじゃなくて?」
「お姉様なら可能でしょうね! わたくしではお荷物になってしまいますわ」
「その謎の信頼感は何処から来るのよ!」
そんなこんなで罵り合いながらも、不思議と仲がいいのはトールがマリーを気に入っているからである。
アリシアには持ってないその発想力。
そして力を手にするためにはガムシャラになれる前のめりな集中力がトールのお気に入りポイントである。
それがちょっとだけ悔しいアリシアだった。
「そう言えばトールは何処言ったのよ?」
「さぁ? 朝起きたらベッドがもぬけの殻でしたの。わたくしも寂しい思いをしてるのですわ」
途端に力が抜けたようにふにゃふにゃとなるアリシア。
今日の分の姉からのエネルギーを摂取してないからこうなったと言わんばかりにベッドに倒れ伏す。
マリーという来客が居ようとアリシアには関係ないのだ。
「あんたねぇ、良い加減にしなさいよ!」
「あ~~世界が揺れていますわ~~」
マリーはアリシアの肩を掴んで揺らす。
この風景を見た使用人は「今日もお嬢様方が戯れているわ」と微笑ましく思う事だろう。しかしこの二人の戦闘能力は見た目からは想像できないほど高い事を使用人達は知らない。
アリシアvsマリアンヌ
魔道具あり、近接格闘ありでの対戦記録は
1275戦1270勝5敗。
この5敗こそがマリーがアリシアからもぎ取った勝率である。
マリーは弱いわけではない。
実際に学園に入れば注目されるくらいには有能なのだ。
対してアリシアが学園に入ればどうか?
錬金術師は帝国でその地位が見直されてきているとは言え、閉鎖的な学園ではまだまだ下に見られる事だろう。
確実に名前を売る事なく埋もれていく。それがマリーには悔しくてたまらないのだ。
だからマリーは常々アリシアに口を酸っぱくして姉離れをしろと言っていた。
学園に入るのはもう来年まで迫っている。
トールが学園に入っても学ぶものは何もないと聞いてマリーは思わず納得してしまったぐらいだ。
きっと学園の先生がこぞってトールに教えを乞う様子がありありと想像できた。行ったら行ったで確実にパニックになる。
そういう意味では学園という小さな世界に収まり切る人物ではない。
だからこそ一日トールと出会えてないだけでぶーたれてる社交界の華をシャキッとさせるのがマリーの仕事になっていた。
普段はクールなくせして、姉がいないだけでこの世の終わりみたいな顔をするこの娘を一端の貴族令嬢に仕上げなければならないのだ。辛い。
「しっかし、あんたもおかしいけどトールの強さはもう意味不明よね」
「お姉様は一般の常識で測れる存在ではないのですわ」
「なんの話?」
「お姉様!」
「おわっと!」
音もなく現れたトールに、アリシアは目を輝かせて抱きついた。
その素早さときたらさっきまでのふにゃふにゃ具合が嘘の様に俊敏だ。
「で、なんの話?」
アリシアがトールに抱きついてエネルギーを補給している様はいつ見ても過剰なスキンシップであろう。
しかしトールはそんなアリシアにも動じず、マリーに聞き返していた。慣れとは恐ろしい。
「アリシアのトールへの依存度のお話でしてよ」
「あぁ、それね。まぁ仕方ないんじゃない? 貴族令嬢は嫁に行く運命だし。今のうちだけだよ、僕に懐いてくれてるのは」
遅かれ早かれ散り散りになるとトールは述べる。
それを言われたら身も蓋もないとマリーは引き攣った笑みを浮かべた。
「わたくしお姉様と結婚しますわ!」
「ハイハイ。帝王様が許可してくれたらね?」
「お姉様の素晴らしさを念書に認めて送ります!」
「程々にね?」
トールは妹の暴走を止めることはしない。
無理だというには簡単だが、やらずに無理だと教えたくはなかったのだ。そもそものトールの教えは無理だと思ってるうちは無理と一般常識を覆す理論から始まる。
だからやりたい様にやらせる方針なのである。
やって無理だったら諦めるかな、という狙いもあるのだ。
ちなみにマリーはトールと魔法ありきの勝負をした時、対峙した瞬間に死を覚悟した。
厳密には何回も殺された上で蘇生されたのである。
それによって挑もうという気持ちがポッキリと折れてしまったのだ。
そういう意味では未だに向かい続けるアリシアのガッツが心底羨ましいと思ってる。
「あんたは妹が婚約者でも良いの?」
「ん~~?」
それとなく聞いてみるマリーだったが、トールは満更でもない笑みを返していた。
似たもの姉妹かよ!
マリーが胸中で毒吐いてしまうのも無理からぬことだった。
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お読みいただきありがとうございます。基本的にはほのぼのな作品を描いていきたいです。
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