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RE:錬金先輩のバズレシピ(後輩性癖緩和√)
ⅩⅣ.side大塚晃
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「大塚君、これは一体どう言う事だね?!」
峰くんが俺の代わりに全てのノルマを達成してくれたのを良いことに、俺は日常を取り戻していた。
定時には退社して家族サービス。
そして久々に社長に呼び出されたのでこの間の昇進の話かと思いきや、浴びせられたのは賞賛ではなく怒声だった。
口角泡を飛ばし、執務机を叩く。
「申し訳ありませんが、仰りたい事が分かりません」
「こんなことをしでかしておいてまだわからないと言うのか!」
一際大きく叫ぶと、手前にある書類をまとめて放り投げた。
全く忙しないな。俺は拾い上げてペラペラと書類を捲り上げるとあまりにも衝撃的な内容に顔を青ざめさせた。
どうしてこれがバレた?
まさか槍込のやつが密告しやがったのか?
どうして俺たちのポーションノルマのカラクリが解かれている!?
いや、平静を保て大塚晃。
こうやって反応を見るのが社長の目的か? なら墓穴を掘るのは馬鹿のやることだな。
「なんですか? このデマは。これと俺になんの関係が?」
「問題はそれじゃないよ、こっちだ」
バン、と書面の上に手を置く社長。
それは探索者組合へ卸しているポーションの品質が描かれていた。
品質S。それがどうしたと言うのか?
「君、うちのポーションの品質がSである事をどうして私に言わなかった!」
「品質が高いことには問題がないでしょう? たかがポーションだ」
「君は本当にそう思っているのかね? だとしたら失望ものだよ。同じ錬金術師として軽蔑する!」
何をそんなに興奮しているんだ?
品質が上がった程度で。薬効が上がるわけでもあるまいし。
「いいかい、品質というのは最高到達点だ! 我々錬金術師はその頂きを目指して日々努力をしている。そして品質が高まれば、本来の能力よりも飛び抜けて高い効果を発揮する! それを品質Cと同じ値段で売っていたなんてライバル社に知られたら、私は笑い物だ!」
何かと思えばそんなことか。
どうせ栄養ドリンク程度の効果しかないだろう?
そんなことより俺のエクスポーションの方がもっと大事だ。
槍込の品質Sは、俺のエクスポーションをより輝かせる効果を持ってたんだ。
言って終えば中間素材。
それを作れたからって、どう自慢するというのだ?
「失礼ながら社長、品質Sのポーションと品質Cのエクスポーション。この二つを比べた場合、どちらの方に軍配が上がるでしょう?」
「君は嫌な質問をするね。聞くまでもなく分かっているだろう? エクスポーションの方だ」
「ですよね、ポーションが品質Sだろうと俺のエクスポーションとは比べ物にならない。それが真実ですよ、社長。一体誰にこんなガセネタをつかまされたのかは知りませんが、もう少し冷静に物事を考えてくださいよ」
「む、確かにな。だが次からはポーションの値段は4倍にする。確かにエクスポーションと比べたら劣るが、それでも今までと同じように扱っては気が済まない」
「品質が上がるだけでそこまで価値が変わるものですか?」
「エクスポーションには敵わないが、ハイポーションを上回る。そう思ってくれていい。そうだ、ハイポーションの品質が上がったら言いたまえ。その分の値上げ交渉もするよう営業部に掛け合うよ。もちろん君のエクスポーションもね? 話は以上だ。下がりなさい」
興奮気味だった社長は、俺の説得で冷静さを取り戻した。
一体誰の入れ知恵だったのか。
はっきりさせておかなければな。
「峰君、本日のノルマの方はどうなっている? 品質の向上は見られたか?」
「おかげさまで。なんとかCのラインには到達できそうです」
「そうか。Sに上がるようになれば一言申し出るように。俺が社長に掛け合ってボーナスを勝ち取ってこよう」
研究室に顔を出し、部下の峰くんにそれだけ伝えると会社を後にした。
俺は忙しい身の上だからな。
仕事は部下がなんとかしてくれる。
だから俺があくせく働く必要はないのだ。
「あなた、お帰りなさい」
「おかえり、パパ!」
「ただいま」
最近女性スタッフからのお誘いが一切なくなったのもあり、仕事が終われば自宅に直帰する。息子の秋生は少し見ないうちに立派に成長していた。
俺を倣って錬金術師になるんだ、と夢を語る。
そうか、ならば英才教育をしてやらないとな!
妻の菜緒は医学系に勧めたがっている。
実家が太いからと結婚したが、何かにつけて医療側につけようとするのがうざったい。
一体誰の稼ぎで暮らせているのか、今一度その体に教え込む必要がありそうだな。
今日は寝かさないぞ?
子供の前では尊敬できる父親像を見せつけ、妻の前では一生を捧ぐ夫として厳格に徹した。
そんな日々から数日後。
ダンジョンで事故が起こった。
これはうちの製品が飛ぶように売れるな。
不謹慎だが、怪我人が出なくてはうちの会社は利益が出ない。
たくさん売れてくれと願わずにはいられなかった。
そして社長からの再度の通達。
それは落ち続けるポーションの品質と値上げ交渉で契約打ち切りが続出したという報告だった。
どうも探索者組合は通常ポーションを槍込の品質Sポーションと誤認していたらしく、性能が落ちたせいで本来のスペックが出せずに怪我人が続出したらしい。
自分の弱さを薬のせいにする愚か者の言い分だ。
「社長、どうせポーションを飲むに値しない者達です。切られたら困るのはどちらかわからせてやりましょう。今まで誰のポーションで助けられてきたのか、思い知らせてやればいいんです」
「しかしな、大塚君。我が社の全ての製品の信頼が失墜したのだぞ? 君という成功者がいてもなお契約解消が止まらないのだ。どうすれば良いのだ? このままでは我が社は立ちいかなくなる」
「でしたら広報で宣伝すればいいんです。望月さんが居たでしょう?」
「彼女なら退職したよ」
「なんだって? いつ!」
「君にポーション部署を統括させた数日前だが、聞いていなかったかね?」
どうりで社内で見かけないと思った。
俺がゴタゴタに巻き込まれてる最中に退職してたか。
ではどうする?
彼女以外に適任は……
「そうだ! 君がやりなさい」
「は? いえ、俺はエクスポーションのノルマに忙しく……」
「峰くんという優秀な部下がいるそうじゃないか。いつも適切な指導をされて定時に帰っているそうだね? ならば手は空いてるだろう?」
「しかし俺は配信など門外漢で……」
「頼むよ、もう君しか頼れる存在はいないんだ。我が社の広告等になってくれ! 臨時報酬も弾むから! これくらいでどうだ?」
むむむ。夏のボーナスよりも多い?
しかし場慣れしてないのでもう少し余裕が欲しいな。
「もう一声」
「私の裁量権にも限界があるよ? ここまでが限界だ」
「ではそれで手を打ちましょう」
俺はそう言って社長室を後にする。
さて、あとは暇な社員を探してやって貰うだけだ。
俺は音声データを提供する。
それで十分だろう。
そう思っていたのに、配信期日が近づくというのに誰一人として捕まらなかった。エクスポーションのノルマが達成したらよその部署に手伝いに行っているらしいのだ。
そうやってノルマが回っていると峰君に言われて、ひどく疎外感を感じていた。
「頼む、峰君。君に任せたい」
「あの、では代わりに主任が私のノルマをやって頂けるのですか?」
たった一人で5000個。どうやっても間に合わない。
でも一日くらいならいいじゃないか。そう考えていた。
「大塚主任、お話を聞くにあなたは配信業を舐めすぎです。たった十分の動画を作るのに数時間は拘束されます」
「そんなにかかるのか? では望月さんは?」
「以前我が社に勤めていた人ですね。あの人は日に3本、毎日欠かさず配信されてました。丁寧な受け答えで我が社のイメージも良くなったと評判でしたよね。ですがそれは彼女の生活のほとんどを投げ打って出来上がっていたのです」
「つまり峰君に配信を頼むと?」
「私は一切エクスポーション制作作業に携われなくなりますが、それでもよろしければ請け負います。なんならそっちの方が楽ですし」
本音が漏れた。そうだ、そっちの方が責任は少ない。
ポーションの品質低下は降格につながる。
なら選択肢は一つしかないじゃないか。
「わかった、俺がやる。無理な相談をしてすまなかったな」
「いえ、同じ部署のスタッフとして応援くらいはしておきますよ」
よくわからないがありがとうと礼を言っておく。
こうして俺は後に引けない、茨の道へ自らの足で進んだ。
峰くんが俺の代わりに全てのノルマを達成してくれたのを良いことに、俺は日常を取り戻していた。
定時には退社して家族サービス。
そして久々に社長に呼び出されたのでこの間の昇進の話かと思いきや、浴びせられたのは賞賛ではなく怒声だった。
口角泡を飛ばし、執務机を叩く。
「申し訳ありませんが、仰りたい事が分かりません」
「こんなことをしでかしておいてまだわからないと言うのか!」
一際大きく叫ぶと、手前にある書類をまとめて放り投げた。
全く忙しないな。俺は拾い上げてペラペラと書類を捲り上げるとあまりにも衝撃的な内容に顔を青ざめさせた。
どうしてこれがバレた?
まさか槍込のやつが密告しやがったのか?
どうして俺たちのポーションノルマのカラクリが解かれている!?
いや、平静を保て大塚晃。
こうやって反応を見るのが社長の目的か? なら墓穴を掘るのは馬鹿のやることだな。
「なんですか? このデマは。これと俺になんの関係が?」
「問題はそれじゃないよ、こっちだ」
バン、と書面の上に手を置く社長。
それは探索者組合へ卸しているポーションの品質が描かれていた。
品質S。それがどうしたと言うのか?
「君、うちのポーションの品質がSである事をどうして私に言わなかった!」
「品質が高いことには問題がないでしょう? たかがポーションだ」
「君は本当にそう思っているのかね? だとしたら失望ものだよ。同じ錬金術師として軽蔑する!」
何をそんなに興奮しているんだ?
品質が上がった程度で。薬効が上がるわけでもあるまいし。
「いいかい、品質というのは最高到達点だ! 我々錬金術師はその頂きを目指して日々努力をしている。そして品質が高まれば、本来の能力よりも飛び抜けて高い効果を発揮する! それを品質Cと同じ値段で売っていたなんてライバル社に知られたら、私は笑い物だ!」
何かと思えばそんなことか。
どうせ栄養ドリンク程度の効果しかないだろう?
そんなことより俺のエクスポーションの方がもっと大事だ。
槍込の品質Sは、俺のエクスポーションをより輝かせる効果を持ってたんだ。
言って終えば中間素材。
それを作れたからって、どう自慢するというのだ?
「失礼ながら社長、品質Sのポーションと品質Cのエクスポーション。この二つを比べた場合、どちらの方に軍配が上がるでしょう?」
「君は嫌な質問をするね。聞くまでもなく分かっているだろう? エクスポーションの方だ」
「ですよね、ポーションが品質Sだろうと俺のエクスポーションとは比べ物にならない。それが真実ですよ、社長。一体誰にこんなガセネタをつかまされたのかは知りませんが、もう少し冷静に物事を考えてくださいよ」
「む、確かにな。だが次からはポーションの値段は4倍にする。確かにエクスポーションと比べたら劣るが、それでも今までと同じように扱っては気が済まない」
「品質が上がるだけでそこまで価値が変わるものですか?」
「エクスポーションには敵わないが、ハイポーションを上回る。そう思ってくれていい。そうだ、ハイポーションの品質が上がったら言いたまえ。その分の値上げ交渉もするよう営業部に掛け合うよ。もちろん君のエクスポーションもね? 話は以上だ。下がりなさい」
興奮気味だった社長は、俺の説得で冷静さを取り戻した。
一体誰の入れ知恵だったのか。
はっきりさせておかなければな。
「峰君、本日のノルマの方はどうなっている? 品質の向上は見られたか?」
「おかげさまで。なんとかCのラインには到達できそうです」
「そうか。Sに上がるようになれば一言申し出るように。俺が社長に掛け合ってボーナスを勝ち取ってこよう」
研究室に顔を出し、部下の峰くんにそれだけ伝えると会社を後にした。
俺は忙しい身の上だからな。
仕事は部下がなんとかしてくれる。
だから俺があくせく働く必要はないのだ。
「あなた、お帰りなさい」
「おかえり、パパ!」
「ただいま」
最近女性スタッフからのお誘いが一切なくなったのもあり、仕事が終われば自宅に直帰する。息子の秋生は少し見ないうちに立派に成長していた。
俺を倣って錬金術師になるんだ、と夢を語る。
そうか、ならば英才教育をしてやらないとな!
妻の菜緒は医学系に勧めたがっている。
実家が太いからと結婚したが、何かにつけて医療側につけようとするのがうざったい。
一体誰の稼ぎで暮らせているのか、今一度その体に教え込む必要がありそうだな。
今日は寝かさないぞ?
子供の前では尊敬できる父親像を見せつけ、妻の前では一生を捧ぐ夫として厳格に徹した。
そんな日々から数日後。
ダンジョンで事故が起こった。
これはうちの製品が飛ぶように売れるな。
不謹慎だが、怪我人が出なくてはうちの会社は利益が出ない。
たくさん売れてくれと願わずにはいられなかった。
そして社長からの再度の通達。
それは落ち続けるポーションの品質と値上げ交渉で契約打ち切りが続出したという報告だった。
どうも探索者組合は通常ポーションを槍込の品質Sポーションと誤認していたらしく、性能が落ちたせいで本来のスペックが出せずに怪我人が続出したらしい。
自分の弱さを薬のせいにする愚か者の言い分だ。
「社長、どうせポーションを飲むに値しない者達です。切られたら困るのはどちらかわからせてやりましょう。今まで誰のポーションで助けられてきたのか、思い知らせてやればいいんです」
「しかしな、大塚君。我が社の全ての製品の信頼が失墜したのだぞ? 君という成功者がいてもなお契約解消が止まらないのだ。どうすれば良いのだ? このままでは我が社は立ちいかなくなる」
「でしたら広報で宣伝すればいいんです。望月さんが居たでしょう?」
「彼女なら退職したよ」
「なんだって? いつ!」
「君にポーション部署を統括させた数日前だが、聞いていなかったかね?」
どうりで社内で見かけないと思った。
俺がゴタゴタに巻き込まれてる最中に退職してたか。
ではどうする?
彼女以外に適任は……
「そうだ! 君がやりなさい」
「は? いえ、俺はエクスポーションのノルマに忙しく……」
「峰くんという優秀な部下がいるそうじゃないか。いつも適切な指導をされて定時に帰っているそうだね? ならば手は空いてるだろう?」
「しかし俺は配信など門外漢で……」
「頼むよ、もう君しか頼れる存在はいないんだ。我が社の広告等になってくれ! 臨時報酬も弾むから! これくらいでどうだ?」
むむむ。夏のボーナスよりも多い?
しかし場慣れしてないのでもう少し余裕が欲しいな。
「もう一声」
「私の裁量権にも限界があるよ? ここまでが限界だ」
「ではそれで手を打ちましょう」
俺はそう言って社長室を後にする。
さて、あとは暇な社員を探してやって貰うだけだ。
俺は音声データを提供する。
それで十分だろう。
そう思っていたのに、配信期日が近づくというのに誰一人として捕まらなかった。エクスポーションのノルマが達成したらよその部署に手伝いに行っているらしいのだ。
そうやってノルマが回っていると峰君に言われて、ひどく疎外感を感じていた。
「頼む、峰君。君に任せたい」
「あの、では代わりに主任が私のノルマをやって頂けるのですか?」
たった一人で5000個。どうやっても間に合わない。
でも一日くらいならいいじゃないか。そう考えていた。
「大塚主任、お話を聞くにあなたは配信業を舐めすぎです。たった十分の動画を作るのに数時間は拘束されます」
「そんなにかかるのか? では望月さんは?」
「以前我が社に勤めていた人ですね。あの人は日に3本、毎日欠かさず配信されてました。丁寧な受け答えで我が社のイメージも良くなったと評判でしたよね。ですがそれは彼女の生活のほとんどを投げ打って出来上がっていたのです」
「つまり峰君に配信を頼むと?」
「私は一切エクスポーション制作作業に携われなくなりますが、それでもよろしければ請け負います。なんならそっちの方が楽ですし」
本音が漏れた。そうだ、そっちの方が責任は少ない。
ポーションの品質低下は降格につながる。
なら選択肢は一つしかないじゃないか。
「わかった、俺がやる。無理な相談をしてすまなかったな」
「いえ、同じ部署のスタッフとして応援くらいはしておきますよ」
よくわからないがありがとうと礼を言っておく。
こうして俺は後に引けない、茨の道へ自らの足で進んだ。
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