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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
437.お爺ちゃんとクランメンバーズ10
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「はい、というわけでファイベリオンにやってきました。引き続き討伐の方をやっていくよ」
「はーい!」
「あわよくばテイム! ですね」
「俺はテイムってよくわかんねーけど。古代獣ってマジでテイム出来んの?」
「出来るよ。召喚して見せようか?」
「え、じゃあよろしく」
ケンタ君に唆されて、私はテイムモンスターに移送+風操作で召喚しつつ空に浮かせた。
突如現れた山二つ分の巨体に、ケンタ君が年相応にはしゃいでいる。
「うぉーすっげー!!」
「実際に見ると大きいね?」
「これ、リンドブルムより大きい?」
「うん」
男子中学生の横で、女子中学生達が現実的な問題で議論する。
「いやー、やっぱり男女で感想は変わりますねぇ。ねぇジキンさん?」
「どうしてそこで僕に振るんです?」
「かいちょー、きっとわたくしとのさいをきいているのだとおもいます!」
「成る程な。ケンタとカーシャに対してどう思うか?」
ジキンさんがいつになく回答に窮する。
「別に男の子なんですから大きくて強いものには憧れるでしょ?」
「わたくしはとくには。けれどかいちょーがほしいとおもわれるのなら、わたくしもがんばりますわ!」
「こういう時、女子って現実的なんですよね」
「マスターも子育てで悩んだ口ですか?」
「それは私の口からはとても言えません。娘達の立場もありますからね」
「ちょっとー、じゃあ何で僕には聞いたんです?」
「ジキンさんならポロッと言ってくれると思って」
【草www】
【仲良いなぁこの二人】
「なんだかんだでもう二年ですか? 出会って」
「え、そんなもんでしたっけ?」
【十年来の親友みたいに見えるけどな】
【案外出会ってそんな経ってないんだ?】
「そりゃそうだよ。マリンに誘われて右も左も分からない私が遭遇した同年代と思われたプレイヤーだもの。以前も言ったと思うけど、私のプレイヤーネームって少年時代にハマったコミックの主人公の名前なんですよ。だから知ってる人は高確率で同年代だなって」
【そうやって探し出したんかwww】
【偶然の出会い】
【それで今まで付き合ってるんだから運命だよ】
「なんだかんだこの人放っておけませんからね」
【当時から危険人物扱いやったんや】
「失礼な。私だってまだどのように接していいかわからなかったので探り探りだったんですよ?」
「出会ったのは私達が最初だったよね、ね?」
「うん、最初に出会ったのはマリンとユーノ君だね。それから私にも何かできないか探ってたんだ」
「へへ、いっちばーん」
【マリンちゃんはこの頃からお爺ちゃん子だったか】
【当時アキカゼさんがその祖父だと知らずに突っかかってるやつ多数居たよな】
【いたいた】
【マリンちゃん人気あったし】
【非公式アイドル板もあったし】
【実質ほぼアイドル扱いだったもんな】
「周りが勝手に騒いで迷惑だったアレ?」
【マリンちゃん辛辣~】
【でもご本人からしたら俺ら質の悪いストーカーみたいなもんやし】
【自覚あったんか】
【ゲームだからってどこか他人事だしな】
【そういう意味でマリンちゃんを公式にしたアキカゼさんの手腕は偉大】
「あったなぁ、そんなことも」
「あの時は私も乗り気じゃなかったけど、先生が輝いて見えて。そしてお爺ちゃんからやってみるって誘われて頷いちゃったんだよね」
【先生?】
「スズキさん」
【え???】
【余計混乱さすなwww】
「ここに居るスズキさんとは別人の方だよ」
【名前の同一って可能だっけ?】
【本名別だし、スズキって言ってるのはアキカゼさんだけだし?】
【つまりどういうことだってばよ?】
【孫の真理を突くのが上手い】
【それだ!】
【銀姫ちゃんもそうだけどサブマスさんとの馴れ初めも気になります。ゲーム内フレンドでこうも息ぴったりな人ってあまり見かけませんし】
【あ、それ俺も思ってた】
【フレンドはだいたい同じ強さで固める人が多いもんな】
【攻略基準ならそうだな】
「僕が彼と初めて会ったのはギルドだったなぁ。なんか孫達が見向きもしないミニゲームに夢中になってる人がいて、気の毒になって声を掛けたんだ」
【気の毒www】
【実際、あのミニゲームの意味合いは誰もわからんかったしな】
【やり込み勢は全てアイテムゲットしたのにその使用用途が掴めずに全くの無駄って言い切ったんだっけ?】
【その無駄を繋げたのがアキカゼさんの伝説の第一歩だったっけ?】
「当時は僕もいたんですけど、すっかりこの人だけの功績になってるんですよね」
ジトリとした視線を寄越すジキンさん。
「そう言いつつ、私が助けを求めた時真っ先に裏切りましたよね?」
「はっはっは、何のことかな? 僕のログには何もないよ?」
この人はこうやってトボけるのが上手いんだ。
そして雑談が横に逸れたのを見越して、スズキさんがカンペを持ち上げた。
「早く行きましょう」と書かれている。
何も巻かれてない腕を見せ、さも時計があるように、その場所を指し示す。
時間押してるって事かな?
私もそうだけど、今日のメンツはリスナーの声を拾うタイプの人たちが多いからなぁ。
【リリーちゃんwww】
【ご苦労様、そろそろやりましょう】
【すっかり昔話に花を咲かせてしまいましたね】
【勝手に語り出したので俺らは悪く無い】
【ヨイショしたのは他でも無い俺らだが?】
【コメント返しが多くて助かる】
「そういえば探索パートがあるんだけど」
他の古代獣も同様に相手の弱点になるギミックがいくつかある。しかし既にそれらはやり尽くされて、攻略法は統一化されていた。あとは実力がそこへ至れば問題はない。
どうせベルトが巻かれた以上、もっと過酷な地へ飛ばされるのだし。私があれこれ気に止む必要もないでしょう。
「なくていいんじゃ無いですか? どうせテイムがメインなら」
「じゃ、それで」
【軽いwww】
【そんなに軽く選んでいいの?】
【こっから難度爆上がりなんだよなぁ】
【状態異常耐性ないと詰むって話だけど】
【アキカゼさん、ほぼ能力封印されてて平気?】
「ま、何とかなるでしょ」
「僕は必死に逃げ回りますけどね」
「かいちょー、わたくしも頑張りますわ」
「あわよくば神格召喚に頼っていいよ?」
「そうそう神頼みには頼りませんよ」
その意固地なところが彼の厄介なところだ。
奥さんに焚き付けられても変わらずだもんなぁ。
本当にこの人は尻に火がつかないとやる気を出さない。
常に切り札を出し損ねて何とかやり切ってしまうタイプの人なんだ。
「カーシャ君、ジキンさんのことを頼んだよ?」
「はい、わたくしのかいちょーはいちばんですもの」
彼の幻影も自信に満ち溢れてるタイプか。厄介だな。
「|◉〻◉)ハヤテさん、ハヤテさん! 僕を武器として扱ってもいいですよ?」
そしてこっちの幻影は、孫達のいる前で素っ頓狂な提案を繰り出した。そこまでして出番が欲しいの?
そういえば探偵さんとこのスプンタ君やアンラ君も武器化してたな。けどスズキさんを武器化した時のビジュアルが問題だ。
魚の頭以外が骨で、口から槍の穂が突き出ている。
目はガンギマリで、呪われた武器みたいな見た目をしていた。
「ビジュアルの問題で却下」
「|◎〻◎)ガビーン」
【そのビジュアルについて詳しく】
【SAN値直葬案件なんやろなぁ】
【リリーちゃんドンマイ!】
と、雑談をしすぎてそれこそ時間が押している。
他の参加者がいないのを確認して、私達は何度目かの八岐大蛇に対峙した。
「じゃあダメで元々って感じで」
「そんな場所に連れてこないでくださいよ!」
「あはは、お爺ちゃん達のやりとりおもしろーい」
「実際笑い事じゃありませんけど、やれるだけやりましょう」
「先制攻撃は俺に任せろよな? じぃじは可能なら手伝ってくれると助かる」
「悪いがケンタ、巨大化の策はあれで打ち止めだ」
「そっか」
「だが当然、それ以外も用意している。合図は送る、あとは合わせてくれ」
「おう!」
【動き出したぞ!】
リスナーさんの掛け声で場に緊張が走る。
その強大さゆえに、各自が全く別の首の場所に送られ、スタートした。
会話は以降パーティチャットとコメントのみで語られる。
ケンタ:俺の弱点がわかるのなら、かかってきやがれぇ
どうやら彼は茶首に当たったようだ。
私の方は白首。回復を専念する首で、残しておくのは厄介だった。
【アキカゼさんは白首かぁ】
【さてどうやって対処する?】
【早ってショートワープで距離を詰めて?】
【首が凍りついたーーーwww】
【これって何だっけ?】
【ああーー! 称号スキル! 確かイタクァ討伐の証だ】
【でもアレって消えない炎を消化するタイプのものじゃ?】
憶測は加速する。
けど私が行ったのは全く別のスキル。
氷作製に侵食の効果を打ち込んだものだった。
薄い冷気を纏った掌を直接首の根元に打ち込み、体組織全体を凍りつかせたのだ。
もちろん炎で対処可能だが、そうはさせないよ?
氷作製の真骨頂、とくとごろうじろ。
【何、何!? 突然雪が降り出したぞ?】
【アキカゼさんが何かやってる?】
【わかんない】
【けどあのポージングは何かやってるアピール強い】
【どこまで目立ちたがり屋なんだwww】
【リリーちゃんのご主人様だぞ?】
【納得】
【さすがアキカゼさんだぜ!】
【さすアキ】
マリン:ユーノ、またアレやるよ!
ユーノ:うん、アキカゼさんにばかりいい格好させられないもんね?
マリン:うん! それは私たちの特権だもん!
私の活躍によって火がついた孫たち。
さっきの大技を仕掛ける様だ。
【ああーっと、ここでケンタ選手、首を片結びにしたーー!】
【結べそうだからって結ぶか普通?】
【撮れ高わかってるなぁ、この子】
【金狼の息子らしいし、将来有望よ】
【大会社の息子かぁ、俺もそんな家庭に生まれたかったぜ】
【大きいとこは大きいとこで大変ぽいけどな?】
カーシャ:かいちょーはわたくしのおそばに
ジキン:いいや、カーシャこそ僕の後ろに隠れていなさい状態異常の黒首だ
カーシャ:かいちょーがそう仰るなら
ジキンさんはまだ切り札を隠し持ってたか。
そう言えば、魔導書のマスターとその幻影が一緒なのはわかるけど、マリンとユーノ君はどうやって合流したんだろ?
偶然近くにいたにしては合流が早すぎる気がした。
迫る赤首をタッチしてクトゥルフさんの領域に引っ張り込んで溺れさせ、すいぶんをよくふくんだその首へ再び侵食込みの氷作製を打ち込んだ。
これで二本無効化した。
ジキンさんとケンタ君、マリン達で計5本。
残り三本、何の効果を持つ首かで攻略が分かれるな。
【おお~っと、ここでサブマスさんがダウーン!】
【幼女に泣きつかれて死にゆくご老体のようだーー!】
その場面はありありと想像できる。
けど私たちの世代にはグサッと刺さりすぎるから以降そのコメント禁止ね?
あんなに自信満々だったのに、何をやってるんでしょうか、あの人は。
( ͡° ͜ʖ ͡°)氏のツァトゥグァは状態異常反射をやってのけた。
カーシャ君だって方向性は違うだろうけど似たようなことをやってのけるだろう。
が、そんな彼女を信じずに突っ走った結果がそれですか。
本当に、世話が焼ける人だ。
「はーい!」
「あわよくばテイム! ですね」
「俺はテイムってよくわかんねーけど。古代獣ってマジでテイム出来んの?」
「出来るよ。召喚して見せようか?」
「え、じゃあよろしく」
ケンタ君に唆されて、私はテイムモンスターに移送+風操作で召喚しつつ空に浮かせた。
突如現れた山二つ分の巨体に、ケンタ君が年相応にはしゃいでいる。
「うぉーすっげー!!」
「実際に見ると大きいね?」
「これ、リンドブルムより大きい?」
「うん」
男子中学生の横で、女子中学生達が現実的な問題で議論する。
「いやー、やっぱり男女で感想は変わりますねぇ。ねぇジキンさん?」
「どうしてそこで僕に振るんです?」
「かいちょー、きっとわたくしとのさいをきいているのだとおもいます!」
「成る程な。ケンタとカーシャに対してどう思うか?」
ジキンさんがいつになく回答に窮する。
「別に男の子なんですから大きくて強いものには憧れるでしょ?」
「わたくしはとくには。けれどかいちょーがほしいとおもわれるのなら、わたくしもがんばりますわ!」
「こういう時、女子って現実的なんですよね」
「マスターも子育てで悩んだ口ですか?」
「それは私の口からはとても言えません。娘達の立場もありますからね」
「ちょっとー、じゃあ何で僕には聞いたんです?」
「ジキンさんならポロッと言ってくれると思って」
【草www】
【仲良いなぁこの二人】
「なんだかんだでもう二年ですか? 出会って」
「え、そんなもんでしたっけ?」
【十年来の親友みたいに見えるけどな】
【案外出会ってそんな経ってないんだ?】
「そりゃそうだよ。マリンに誘われて右も左も分からない私が遭遇した同年代と思われたプレイヤーだもの。以前も言ったと思うけど、私のプレイヤーネームって少年時代にハマったコミックの主人公の名前なんですよ。だから知ってる人は高確率で同年代だなって」
【そうやって探し出したんかwww】
【偶然の出会い】
【それで今まで付き合ってるんだから運命だよ】
「なんだかんだこの人放っておけませんからね」
【当時から危険人物扱いやったんや】
「失礼な。私だってまだどのように接していいかわからなかったので探り探りだったんですよ?」
「出会ったのは私達が最初だったよね、ね?」
「うん、最初に出会ったのはマリンとユーノ君だね。それから私にも何かできないか探ってたんだ」
「へへ、いっちばーん」
【マリンちゃんはこの頃からお爺ちゃん子だったか】
【当時アキカゼさんがその祖父だと知らずに突っかかってるやつ多数居たよな】
【いたいた】
【マリンちゃん人気あったし】
【非公式アイドル板もあったし】
【実質ほぼアイドル扱いだったもんな】
「周りが勝手に騒いで迷惑だったアレ?」
【マリンちゃん辛辣~】
【でもご本人からしたら俺ら質の悪いストーカーみたいなもんやし】
【自覚あったんか】
【ゲームだからってどこか他人事だしな】
【そういう意味でマリンちゃんを公式にしたアキカゼさんの手腕は偉大】
「あったなぁ、そんなことも」
「あの時は私も乗り気じゃなかったけど、先生が輝いて見えて。そしてお爺ちゃんからやってみるって誘われて頷いちゃったんだよね」
【先生?】
「スズキさん」
【え???】
【余計混乱さすなwww】
「ここに居るスズキさんとは別人の方だよ」
【名前の同一って可能だっけ?】
【本名別だし、スズキって言ってるのはアキカゼさんだけだし?】
【つまりどういうことだってばよ?】
【孫の真理を突くのが上手い】
【それだ!】
【銀姫ちゃんもそうだけどサブマスさんとの馴れ初めも気になります。ゲーム内フレンドでこうも息ぴったりな人ってあまり見かけませんし】
【あ、それ俺も思ってた】
【フレンドはだいたい同じ強さで固める人が多いもんな】
【攻略基準ならそうだな】
「僕が彼と初めて会ったのはギルドだったなぁ。なんか孫達が見向きもしないミニゲームに夢中になってる人がいて、気の毒になって声を掛けたんだ」
【気の毒www】
【実際、あのミニゲームの意味合いは誰もわからんかったしな】
【やり込み勢は全てアイテムゲットしたのにその使用用途が掴めずに全くの無駄って言い切ったんだっけ?】
【その無駄を繋げたのがアキカゼさんの伝説の第一歩だったっけ?】
「当時は僕もいたんですけど、すっかりこの人だけの功績になってるんですよね」
ジトリとした視線を寄越すジキンさん。
「そう言いつつ、私が助けを求めた時真っ先に裏切りましたよね?」
「はっはっは、何のことかな? 僕のログには何もないよ?」
この人はこうやってトボけるのが上手いんだ。
そして雑談が横に逸れたのを見越して、スズキさんがカンペを持ち上げた。
「早く行きましょう」と書かれている。
何も巻かれてない腕を見せ、さも時計があるように、その場所を指し示す。
時間押してるって事かな?
私もそうだけど、今日のメンツはリスナーの声を拾うタイプの人たちが多いからなぁ。
【リリーちゃんwww】
【ご苦労様、そろそろやりましょう】
【すっかり昔話に花を咲かせてしまいましたね】
【勝手に語り出したので俺らは悪く無い】
【ヨイショしたのは他でも無い俺らだが?】
【コメント返しが多くて助かる】
「そういえば探索パートがあるんだけど」
他の古代獣も同様に相手の弱点になるギミックがいくつかある。しかし既にそれらはやり尽くされて、攻略法は統一化されていた。あとは実力がそこへ至れば問題はない。
どうせベルトが巻かれた以上、もっと過酷な地へ飛ばされるのだし。私があれこれ気に止む必要もないでしょう。
「なくていいんじゃ無いですか? どうせテイムがメインなら」
「じゃ、それで」
【軽いwww】
【そんなに軽く選んでいいの?】
【こっから難度爆上がりなんだよなぁ】
【状態異常耐性ないと詰むって話だけど】
【アキカゼさん、ほぼ能力封印されてて平気?】
「ま、何とかなるでしょ」
「僕は必死に逃げ回りますけどね」
「かいちょー、わたくしも頑張りますわ」
「あわよくば神格召喚に頼っていいよ?」
「そうそう神頼みには頼りませんよ」
その意固地なところが彼の厄介なところだ。
奥さんに焚き付けられても変わらずだもんなぁ。
本当にこの人は尻に火がつかないとやる気を出さない。
常に切り札を出し損ねて何とかやり切ってしまうタイプの人なんだ。
「カーシャ君、ジキンさんのことを頼んだよ?」
「はい、わたくしのかいちょーはいちばんですもの」
彼の幻影も自信に満ち溢れてるタイプか。厄介だな。
「|◉〻◉)ハヤテさん、ハヤテさん! 僕を武器として扱ってもいいですよ?」
そしてこっちの幻影は、孫達のいる前で素っ頓狂な提案を繰り出した。そこまでして出番が欲しいの?
そういえば探偵さんとこのスプンタ君やアンラ君も武器化してたな。けどスズキさんを武器化した時のビジュアルが問題だ。
魚の頭以外が骨で、口から槍の穂が突き出ている。
目はガンギマリで、呪われた武器みたいな見た目をしていた。
「ビジュアルの問題で却下」
「|◎〻◎)ガビーン」
【そのビジュアルについて詳しく】
【SAN値直葬案件なんやろなぁ】
【リリーちゃんドンマイ!】
と、雑談をしすぎてそれこそ時間が押している。
他の参加者がいないのを確認して、私達は何度目かの八岐大蛇に対峙した。
「じゃあダメで元々って感じで」
「そんな場所に連れてこないでくださいよ!」
「あはは、お爺ちゃん達のやりとりおもしろーい」
「実際笑い事じゃありませんけど、やれるだけやりましょう」
「先制攻撃は俺に任せろよな? じぃじは可能なら手伝ってくれると助かる」
「悪いがケンタ、巨大化の策はあれで打ち止めだ」
「そっか」
「だが当然、それ以外も用意している。合図は送る、あとは合わせてくれ」
「おう!」
【動き出したぞ!】
リスナーさんの掛け声で場に緊張が走る。
その強大さゆえに、各自が全く別の首の場所に送られ、スタートした。
会話は以降パーティチャットとコメントのみで語られる。
ケンタ:俺の弱点がわかるのなら、かかってきやがれぇ
どうやら彼は茶首に当たったようだ。
私の方は白首。回復を専念する首で、残しておくのは厄介だった。
【アキカゼさんは白首かぁ】
【さてどうやって対処する?】
【早ってショートワープで距離を詰めて?】
【首が凍りついたーーーwww】
【これって何だっけ?】
【ああーー! 称号スキル! 確かイタクァ討伐の証だ】
【でもアレって消えない炎を消化するタイプのものじゃ?】
憶測は加速する。
けど私が行ったのは全く別のスキル。
氷作製に侵食の効果を打ち込んだものだった。
薄い冷気を纏った掌を直接首の根元に打ち込み、体組織全体を凍りつかせたのだ。
もちろん炎で対処可能だが、そうはさせないよ?
氷作製の真骨頂、とくとごろうじろ。
【何、何!? 突然雪が降り出したぞ?】
【アキカゼさんが何かやってる?】
【わかんない】
【けどあのポージングは何かやってるアピール強い】
【どこまで目立ちたがり屋なんだwww】
【リリーちゃんのご主人様だぞ?】
【納得】
【さすがアキカゼさんだぜ!】
【さすアキ】
マリン:ユーノ、またアレやるよ!
ユーノ:うん、アキカゼさんにばかりいい格好させられないもんね?
マリン:うん! それは私たちの特権だもん!
私の活躍によって火がついた孫たち。
さっきの大技を仕掛ける様だ。
【ああーっと、ここでケンタ選手、首を片結びにしたーー!】
【結べそうだからって結ぶか普通?】
【撮れ高わかってるなぁ、この子】
【金狼の息子らしいし、将来有望よ】
【大会社の息子かぁ、俺もそんな家庭に生まれたかったぜ】
【大きいとこは大きいとこで大変ぽいけどな?】
カーシャ:かいちょーはわたくしのおそばに
ジキン:いいや、カーシャこそ僕の後ろに隠れていなさい状態異常の黒首だ
カーシャ:かいちょーがそう仰るなら
ジキンさんはまだ切り札を隠し持ってたか。
そう言えば、魔導書のマスターとその幻影が一緒なのはわかるけど、マリンとユーノ君はどうやって合流したんだろ?
偶然近くにいたにしては合流が早すぎる気がした。
迫る赤首をタッチしてクトゥルフさんの領域に引っ張り込んで溺れさせ、すいぶんをよくふくんだその首へ再び侵食込みの氷作製を打ち込んだ。
これで二本無効化した。
ジキンさんとケンタ君、マリン達で計5本。
残り三本、何の効果を持つ首かで攻略が分かれるな。
【おお~っと、ここでサブマスさんがダウーン!】
【幼女に泣きつかれて死にゆくご老体のようだーー!】
その場面はありありと想像できる。
けど私たちの世代にはグサッと刺さりすぎるから以降そのコメント禁止ね?
あんなに自信満々だったのに、何をやってるんでしょうか、あの人は。
( ͡° ͜ʖ ͡°)氏のツァトゥグァは状態異常反射をやってのけた。
カーシャ君だって方向性は違うだろうけど似たようなことをやってのけるだろう。
が、そんな彼女を信じずに突っ走った結果がそれですか。
本当に、世話が焼ける人だ。
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