486 / 497
5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
433.お爺ちゃんとクランメンバーズ6
しおりを挟む
「カーチャン、どうだった? オレのステージは」
「及第点、てとこだね。なんで総司君に負けてんのか何にもわかっちゃいない。あんたはツラの良さだけで売れてるが、もうちょっと応援してくれる相手のことを考えないと、カーシャちゃんにさえ抜かれるよ?」
「なにぃ!? オレの何が間違ってるって言うんだ! 全部カーチャンの指示通りだぜ?」
幻影達がアイドル業界で鎬を削りあって1週間が経過した。
そんなある日、クランルームへ赴くとランダさんとその幻影がいがみあっている場に遭遇する。
話の内容から察するに、アイドル活動の問題点の洗い出しといったところか。
別のソファに座り、スズキさんの出してくれたお茶と、妻の手製の菓子を摘みながらその話題に耳を傾ける。
と、そこへ。
ジキンさんとカーシャ君がやりきった顔で戻ってきた。
競い合ってる同士で待合室が同じって問題ない?
私の思惑通り、後ろから背中を負う立場のカーシャ君がナツ君に余裕の笑みを流した。
「おい、お前!」
「なぁに、おれさまげんえい?」
「ちょっと追いついたくらいで勝ったと思うなよ?」
「べつに、あなたにかったくらいでしょうぶにかっただなんて おもってない」
「カーシャ、相手にすることないよ。君の戦略眼は間違ってない。ナツなんて直ぐ追い抜けるさ。でもそうだなぁ、もう少し歌は勉強しようか」
「はい、かいちょう」
一方が鞭オンリーなら、もう一方は飴オンリー。
男に対する時と女に対する時でジキンさんの態度違くない?
カーシャ君もジキンさんの言葉に従順に頷き、何故か私達の席の真向かいに腰掛けた。
「なんでこっち来るんです? ガソリンを撒き散らすのはやめてくださいよ。ただでさえ発火性の高い燃料が近くにあるんだから」
「まぁまぁ良いじゃないですか。あなたプロデューサーなんでしょ? うちのカーシャのダメな点を指摘してってくださいよ。僕はどこも悪くないと思うんだけど、客からの反応がイマイチなのが気になってね」
「|◉〻◉)まぁ、伝えたい思いが固定化されてないうちは難しいんじゃないですかねー。あ、粗茶ですけど要ります?」
「君のお茶はしょっぱいから無理」
「ええ、こんなに美味しいのに」
「このプレイヤーにしてこの幻影ありと言わんばかりの典型だ。結局この子がこうなったのはマスターに問題があったんじゃないですか?」
「失礼な。この子は出会った時からこうだったよ」
「そうなの?」
「|◉〻◉)どうでしょうか。ハヤテさんならなんでも拾ってくれるので素を曝け出しやすくなったのは事実ですよ。僕の本気を受け止めてくれるのはこの人しかいない! そう思ったらこの状態まで真っ逆さまです。まず最初にこの素体に抵抗なかったのが最初の難問でしたけど、わざわざフレンドになりましょうって言ってくれましたし。ね、ハヤテさん?」
「あれ、その馴れ初めってスズキさんのものだったんじゃ?」
「ああ、この子NPCだから。現実には居ないよ」
「え、なんでプレイヤー名乗ってんの? ちゃっかりクランにまで参加してるし!」
「そっちは別のスズキさん。ルリーエが心を通わせたプレイヤーの方だね。今は産休でログインできてない状態なのは知ってるでしょ?」
「|◉〻◉)ふふふ、まんまと僕の戦略にハマりましたね! そう、僕の名はルリーエ! クトゥルフ様復活の足掛かりにプレイヤーと接触し、見事復活を成し遂げたルルイエからの刺客だったのだ!」
「今はもうだいぶ昔の話だよね、それ」
「マスターは真実を知ってもマスターだなぁ。普通そんな誇大妄想信じますか?」
「信じる信じないっていうよりね、この子の頑張りを応援してあげたいと思ったのさ。正体を明かしたときはそれはもうびっくりしたものさ。でも、この子がどこの誰だろうと、今まで付き合ってきた過去が変わるわけでもない。だったら打ち明けてくれた真実に向き合おうと思っただけだよ」
「ウチのカーシャにもそれがあると?」
「さて、どうだろうねぇ」
お茶を一杯啜り、添えられた茶柱を揺らしながら物思いに耽る。
「それはカーシャ君次第だよ。その人になら全てを打ち明けても大丈夫だ。そう認めさせるところから絆は育まれる。君のところにその子が遣わされたのは連綿と繋がれたフレーバーあってこそ。もはや運命と言って差し支えない。私はそう思うんだ」
「そうなのか、カーシャ?」
口にはださず、頷くことで返事をするカーシャ君。
ナツ君だって粗暴な態度を取っていても、ランダさんなら打ちのめされることなく向き合ってくれるだろうから姿を表してくれたと思っている。
そんな事実を聞いて、ランダさんも少し目を細めていた。
ほんの少しだけど素直に感情を表せない事情を察せたようだ。
と、そこへ。
満面の笑みを浮かべた妻が幻影と共に現れる。
ほっこりしていた空気へ特大の火種がぶち込まれた。
「よくやったわ総司。お客さんのハートはがっちり掴めたわね! 母さんも鼻が高いわ!」
「はい、僕なんかでも思いを届けることができるんだって実感しました」
「そりゃできるに決まってるじゃない。君のお姉さんだってできたのよ? 同じ信仰である以上、ルリーエちゃんのファンは総司のファンでもあるのよ。なんてったって信仰が同じだもの」
「それ、凄いのは姉さんのおかげじゃ?」
萎縮する総司君を他所に、負けっぱなしの幻影達の視線が総司君に突き刺さる。
「オイ! その話はマジかよ!」
「ききずてなりませんわ!」
「ほらアキエ、言葉が過ぎるよ」
「あらアナタ。でも本当のことでしょう?」
なんの悪びれもなく私の横に座り、スズキさんから差し出された粗茶をいただく。
すっかり塩気の強いお茶の味にも慣れたように、飲み干してはホッと一息ついていた。
それが事実だとしたら、向かう先は信者獲得の原点。
過去改竄の極北。ド・マリーニの掛け時計を載せた探偵さんの機関車である。
しかし今現在アキカゼランドは閉鎖しており、今は探偵さんが個人所有している。
当然魔導書陣営に貸してくれるかは怪しい。
そもそも君たち過去に渡れるほど神格と思い繋いでないでしょうに。
その為の幻影との絆をつなぐ段階。
勝負に勝ちたいのもわかるけど、急いては事を仕損じるよ?
そんなタイミングを見越してか、偶然にも我がクラン内の聖典メンバーがやってくる。
どちらも既にクリア者の余裕の笑みを讃えてどこか下界を見つめる神様のようなオーラを放っていた。
「何やら君達、僕達に黙って面白いことしてるみたいじゃない?」
「やめろ、探偵の人。俺を巻き込むな」
「良いじゃないかどざえもん氏。これは僕達聖典陣営にだって旨みのある案件だ。そのアイドル勝負、僕達も参加させてもらうよ?」
「待て、ウチの涅槃はまだ参加するなんて一言も言ってないぞ! それに俺はそっちの業界には疎い。なんのアドバイスもしてやれない」
一人否定を繰り返すどざえもんさんへ、それは無理だよと促す探偵さん。
何故ならば、実際にドリームランドをクリアした者の幻影と戦う機会を得た幻影達から力強い意志を感じたからだ。
今まではどうしたって仲間内での歪み合い。
だがそこへ敵陣営が参加した。
ナツ君に至ってはなりふり構ってられない現状である。
「|◉〻◉)じゃあ僕も参加しようかな?」
「ルリーエちゃんはダメ! 普通にアイドルランキング上位じゃない。新人に花を持たせなさい」
「|ー〻ー)ぶえー、アキエさんがいじめるー」
「よしよし、スズキさんは個人的に頑張ろうか。そうだ、マリン達とのコラボ企画をうけとってたよね?」
「|◉〻◉)そう言えば! ウチのメンバーの他にもサイちゃんやセラエちゃんも誘って一大事業にしようって言ってました」
「うんうん、じゃあどっちが注目を集められるか勝負しよっか?」
「|⌒〻⌒)はい!」
そんなやり取りをしてる裏では、クランメンバーが一丸となって突如現れたラスボスに一矢向けるべく作戦を練り合うかつての仲間達がいた。
何さ、そんな急に仲良くなっちゃって。
ナツ君に至っては背に腹は変えられねぇとばかりに聖典と手を組まんとしている。まだ涅槃君も了承してないというのに。
「あなた、全面戦争を仕掛けるとは良い度胸ね? 勿論、ウチの総司だって負けてないわよ」
「頑張ります!」
「戦争だなんて大袈裟な……ねぇジキンさん?」
「良いや、マスター。あなたはそんなつもりはなくてもですね、ウチのカーシャにとって今や超えられない壁となった。その事実は覆せない」
「かちます!」
「やれるね、ナツ?」
「あたぼうよ、目にモノ見せてやるぜ! 俺の本気のライブ、魂を込めるぜ!」
「だ、そうだよ少年?」
作戦通りと言わんばかりの探偵さん。
「吹っ掛けたあなたがなんで偉そうなんですかねぇ?」
「そんなもの、そっちのほうが面白いからに決まってるじゃないか。なぁ、スプンタ、アンラ?」
「それが信仰につながるのなら、我が身耐えて見せましょう!」
「スプンタちゃん、硬ーい」
「なんかそういう事になってしまったが、やれるか? 涅槃」
「マスターの仰せのままに」
「との事だ。俺のログイン率は相変わらずなので誰か指示してくれる人が居たら助かるが……」
「わたくしがうけおいましょう! ひかりとやみがあわさってさいきょうにみえる、とかいちょうがおっしゃっていました」
「ジキンさん……」
「い、良いじゃないですか! 誰だって一人くらいは抱えてるものでしょう?」
「そうだね、探偵さんが体現者だ」
「なんのお話?」
「男のサガって奴さアキエさん」
「いつもの病気ね、気にしない事にするわ」
「なんだか知らないけど面白くなってきたね!」
ランダさんが拳を掌に叩きつけて気合を入れる。
ナツ君が全く同じポーズで気合を入れてるのを見て、やはり幻影はプレイヤーに似るのだなと思った。
チラリとスズキさんを振り返る。
「|◉〻◉)なんです?」
「いや、なんでも」
側から見たらこの子も私にそっくりなのかと思うと、少し考えを改める必要がありそうだ。
クランメンバー達に意図せずやる気を出させてしまった私達は、のほほんと構えて普段通りの活動を続けた。
正直、勝負なんてあってないようなものだ。
負けたからって何かが失われるわけでもないしね。
ゲームなんだし、楽しくやりたいモノだよ。
「及第点、てとこだね。なんで総司君に負けてんのか何にもわかっちゃいない。あんたはツラの良さだけで売れてるが、もうちょっと応援してくれる相手のことを考えないと、カーシャちゃんにさえ抜かれるよ?」
「なにぃ!? オレの何が間違ってるって言うんだ! 全部カーチャンの指示通りだぜ?」
幻影達がアイドル業界で鎬を削りあって1週間が経過した。
そんなある日、クランルームへ赴くとランダさんとその幻影がいがみあっている場に遭遇する。
話の内容から察するに、アイドル活動の問題点の洗い出しといったところか。
別のソファに座り、スズキさんの出してくれたお茶と、妻の手製の菓子を摘みながらその話題に耳を傾ける。
と、そこへ。
ジキンさんとカーシャ君がやりきった顔で戻ってきた。
競い合ってる同士で待合室が同じって問題ない?
私の思惑通り、後ろから背中を負う立場のカーシャ君がナツ君に余裕の笑みを流した。
「おい、お前!」
「なぁに、おれさまげんえい?」
「ちょっと追いついたくらいで勝ったと思うなよ?」
「べつに、あなたにかったくらいでしょうぶにかっただなんて おもってない」
「カーシャ、相手にすることないよ。君の戦略眼は間違ってない。ナツなんて直ぐ追い抜けるさ。でもそうだなぁ、もう少し歌は勉強しようか」
「はい、かいちょう」
一方が鞭オンリーなら、もう一方は飴オンリー。
男に対する時と女に対する時でジキンさんの態度違くない?
カーシャ君もジキンさんの言葉に従順に頷き、何故か私達の席の真向かいに腰掛けた。
「なんでこっち来るんです? ガソリンを撒き散らすのはやめてくださいよ。ただでさえ発火性の高い燃料が近くにあるんだから」
「まぁまぁ良いじゃないですか。あなたプロデューサーなんでしょ? うちのカーシャのダメな点を指摘してってくださいよ。僕はどこも悪くないと思うんだけど、客からの反応がイマイチなのが気になってね」
「|◉〻◉)まぁ、伝えたい思いが固定化されてないうちは難しいんじゃないですかねー。あ、粗茶ですけど要ります?」
「君のお茶はしょっぱいから無理」
「ええ、こんなに美味しいのに」
「このプレイヤーにしてこの幻影ありと言わんばかりの典型だ。結局この子がこうなったのはマスターに問題があったんじゃないですか?」
「失礼な。この子は出会った時からこうだったよ」
「そうなの?」
「|◉〻◉)どうでしょうか。ハヤテさんならなんでも拾ってくれるので素を曝け出しやすくなったのは事実ですよ。僕の本気を受け止めてくれるのはこの人しかいない! そう思ったらこの状態まで真っ逆さまです。まず最初にこの素体に抵抗なかったのが最初の難問でしたけど、わざわざフレンドになりましょうって言ってくれましたし。ね、ハヤテさん?」
「あれ、その馴れ初めってスズキさんのものだったんじゃ?」
「ああ、この子NPCだから。現実には居ないよ」
「え、なんでプレイヤー名乗ってんの? ちゃっかりクランにまで参加してるし!」
「そっちは別のスズキさん。ルリーエが心を通わせたプレイヤーの方だね。今は産休でログインできてない状態なのは知ってるでしょ?」
「|◉〻◉)ふふふ、まんまと僕の戦略にハマりましたね! そう、僕の名はルリーエ! クトゥルフ様復活の足掛かりにプレイヤーと接触し、見事復活を成し遂げたルルイエからの刺客だったのだ!」
「今はもうだいぶ昔の話だよね、それ」
「マスターは真実を知ってもマスターだなぁ。普通そんな誇大妄想信じますか?」
「信じる信じないっていうよりね、この子の頑張りを応援してあげたいと思ったのさ。正体を明かしたときはそれはもうびっくりしたものさ。でも、この子がどこの誰だろうと、今まで付き合ってきた過去が変わるわけでもない。だったら打ち明けてくれた真実に向き合おうと思っただけだよ」
「ウチのカーシャにもそれがあると?」
「さて、どうだろうねぇ」
お茶を一杯啜り、添えられた茶柱を揺らしながら物思いに耽る。
「それはカーシャ君次第だよ。その人になら全てを打ち明けても大丈夫だ。そう認めさせるところから絆は育まれる。君のところにその子が遣わされたのは連綿と繋がれたフレーバーあってこそ。もはや運命と言って差し支えない。私はそう思うんだ」
「そうなのか、カーシャ?」
口にはださず、頷くことで返事をするカーシャ君。
ナツ君だって粗暴な態度を取っていても、ランダさんなら打ちのめされることなく向き合ってくれるだろうから姿を表してくれたと思っている。
そんな事実を聞いて、ランダさんも少し目を細めていた。
ほんの少しだけど素直に感情を表せない事情を察せたようだ。
と、そこへ。
満面の笑みを浮かべた妻が幻影と共に現れる。
ほっこりしていた空気へ特大の火種がぶち込まれた。
「よくやったわ総司。お客さんのハートはがっちり掴めたわね! 母さんも鼻が高いわ!」
「はい、僕なんかでも思いを届けることができるんだって実感しました」
「そりゃできるに決まってるじゃない。君のお姉さんだってできたのよ? 同じ信仰である以上、ルリーエちゃんのファンは総司のファンでもあるのよ。なんてったって信仰が同じだもの」
「それ、凄いのは姉さんのおかげじゃ?」
萎縮する総司君を他所に、負けっぱなしの幻影達の視線が総司君に突き刺さる。
「オイ! その話はマジかよ!」
「ききずてなりませんわ!」
「ほらアキエ、言葉が過ぎるよ」
「あらアナタ。でも本当のことでしょう?」
なんの悪びれもなく私の横に座り、スズキさんから差し出された粗茶をいただく。
すっかり塩気の強いお茶の味にも慣れたように、飲み干してはホッと一息ついていた。
それが事実だとしたら、向かう先は信者獲得の原点。
過去改竄の極北。ド・マリーニの掛け時計を載せた探偵さんの機関車である。
しかし今現在アキカゼランドは閉鎖しており、今は探偵さんが個人所有している。
当然魔導書陣営に貸してくれるかは怪しい。
そもそも君たち過去に渡れるほど神格と思い繋いでないでしょうに。
その為の幻影との絆をつなぐ段階。
勝負に勝ちたいのもわかるけど、急いては事を仕損じるよ?
そんなタイミングを見越してか、偶然にも我がクラン内の聖典メンバーがやってくる。
どちらも既にクリア者の余裕の笑みを讃えてどこか下界を見つめる神様のようなオーラを放っていた。
「何やら君達、僕達に黙って面白いことしてるみたいじゃない?」
「やめろ、探偵の人。俺を巻き込むな」
「良いじゃないかどざえもん氏。これは僕達聖典陣営にだって旨みのある案件だ。そのアイドル勝負、僕達も参加させてもらうよ?」
「待て、ウチの涅槃はまだ参加するなんて一言も言ってないぞ! それに俺はそっちの業界には疎い。なんのアドバイスもしてやれない」
一人否定を繰り返すどざえもんさんへ、それは無理だよと促す探偵さん。
何故ならば、実際にドリームランドをクリアした者の幻影と戦う機会を得た幻影達から力強い意志を感じたからだ。
今まではどうしたって仲間内での歪み合い。
だがそこへ敵陣営が参加した。
ナツ君に至ってはなりふり構ってられない現状である。
「|◉〻◉)じゃあ僕も参加しようかな?」
「ルリーエちゃんはダメ! 普通にアイドルランキング上位じゃない。新人に花を持たせなさい」
「|ー〻ー)ぶえー、アキエさんがいじめるー」
「よしよし、スズキさんは個人的に頑張ろうか。そうだ、マリン達とのコラボ企画をうけとってたよね?」
「|◉〻◉)そう言えば! ウチのメンバーの他にもサイちゃんやセラエちゃんも誘って一大事業にしようって言ってました」
「うんうん、じゃあどっちが注目を集められるか勝負しよっか?」
「|⌒〻⌒)はい!」
そんなやり取りをしてる裏では、クランメンバーが一丸となって突如現れたラスボスに一矢向けるべく作戦を練り合うかつての仲間達がいた。
何さ、そんな急に仲良くなっちゃって。
ナツ君に至っては背に腹は変えられねぇとばかりに聖典と手を組まんとしている。まだ涅槃君も了承してないというのに。
「あなた、全面戦争を仕掛けるとは良い度胸ね? 勿論、ウチの総司だって負けてないわよ」
「頑張ります!」
「戦争だなんて大袈裟な……ねぇジキンさん?」
「良いや、マスター。あなたはそんなつもりはなくてもですね、ウチのカーシャにとって今や超えられない壁となった。その事実は覆せない」
「かちます!」
「やれるね、ナツ?」
「あたぼうよ、目にモノ見せてやるぜ! 俺の本気のライブ、魂を込めるぜ!」
「だ、そうだよ少年?」
作戦通りと言わんばかりの探偵さん。
「吹っ掛けたあなたがなんで偉そうなんですかねぇ?」
「そんなもの、そっちのほうが面白いからに決まってるじゃないか。なぁ、スプンタ、アンラ?」
「それが信仰につながるのなら、我が身耐えて見せましょう!」
「スプンタちゃん、硬ーい」
「なんかそういう事になってしまったが、やれるか? 涅槃」
「マスターの仰せのままに」
「との事だ。俺のログイン率は相変わらずなので誰か指示してくれる人が居たら助かるが……」
「わたくしがうけおいましょう! ひかりとやみがあわさってさいきょうにみえる、とかいちょうがおっしゃっていました」
「ジキンさん……」
「い、良いじゃないですか! 誰だって一人くらいは抱えてるものでしょう?」
「そうだね、探偵さんが体現者だ」
「なんのお話?」
「男のサガって奴さアキエさん」
「いつもの病気ね、気にしない事にするわ」
「なんだか知らないけど面白くなってきたね!」
ランダさんが拳を掌に叩きつけて気合を入れる。
ナツ君が全く同じポーズで気合を入れてるのを見て、やはり幻影はプレイヤーに似るのだなと思った。
チラリとスズキさんを振り返る。
「|◉〻◉)なんです?」
「いや、なんでも」
側から見たらこの子も私にそっくりなのかと思うと、少し考えを改める必要がありそうだ。
クランメンバー達に意図せずやる気を出させてしまった私達は、のほほんと構えて普段通りの活動を続けた。
正直、勝負なんてあってないようなものだ。
負けたからって何かが失われるわけでもないしね。
ゲームなんだし、楽しくやりたいモノだよ。
1
お気に入りに追加
1,988
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下
七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」
死の床で陛下はわたくしに謝りました。
「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」
でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~
黒鴉宙ニ
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」
自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。
全然関係ない第三者がおこなっていく復讐?
そこまでざまぁ要素は強くないです。
最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる