462 / 497
5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
411.お爺ちゃんのドリームランド探訪23
しおりを挟む
「形あるものはいつか朽ちるものと言いますが」
目の前で崩壊していく塔を見つめながら、ふとそんな事を呟いた。
【ツルハシ担いでる人がなんか言ってるで】
【みんな一仕事終えたみたいな顔で塔ぶっ壊してたもんな】
【どざえもんさんの巨大化+ハンマーの一撃がいまだに衝撃】
【あれは凄かった。水中が苦手とか関係ないもんな】
【ムー陣営ズルくね?】
「ずるいと思うならみんなムー陣営に来ればいいだろう? 今手にしているジョブを捨てられるものならな」
【あ、はい】
【正論で殴ってくるのはやめてもろて】
【実際ずるいずるい言ってもじゃあお前もやれで論破だし】
「陣営はいつでも乗り換えをお待ちしていますよ。前の陣営の記憶を失いますけど」
【ちょっと父さん! さっきの何? グラーキが解放されたってアナウンス!】
おっと、身内からの密告で有耶無耶にしていた事実が白日の元に。探偵さんも苦笑いだ。どざえもんに至っては半ば諦めていて、もりもりハンバーグ君も首を横に振って肩をすくめていた。
どのみちバレていたことを今明かされただけ。そう思う事にした。
そしてシェリルの登場で我に帰ったコメント欄が荒れに荒れる。
【詳しく】
【まーたなんかやったんですか?】
【シェリルさん、どういう事です?】
【詳しくはわからないわ。でもさっきワールドアナウンスでグラーキの封印が完全に解けて、通常エリアに徘徊してるそうよ】
【コンブwww】
【おまっ、普段封印されてるから対処出来てたグラーキを通常モンスターにしたんかwww】
【え、じゃあグラーキの襲撃はアキカゼさん特有のイベントじゃなく?】
【普通にエンカウントする様になったわ。全く、あれが居るだけでうちの拠点が幾つ食い物にされるかわかったものじゃない。後で補填をして貰いますからね!】
【シェリルさんめっちゃ怒ってるやん】
【聖典さんは怒っていい】
【これは封印まっしぐらですわ】
【封印方法ってやっぱり?】
「聖典側で手を組んで倒す必要があるね。まぁ倒せるのはいつでもできる。さて、さっき聖典側でアナウンスが走った。まだ何かあるね?」
ふむ? こちらでは聞こえなかったアナウンスに探偵さんやどざえもんさんが気がついた。
ポップアップしたシステムメニューを視界から弾いてわざわざ聞いているのは、リスナーに配慮してのことだろう。
【そっちに通知が入ったのならあなたが言えばいいじゃない】
「タイミング的に君かなと」
【そうね、多分私よ。かいつまんで話すけど、拠点を8つ持った時点で解放されたシステムがあるの。それが陣営内で取引ができる市場ね。基本は物々交換だけど、素材を出して情報をもらうなどのやりとりができるみたいよ。魔道書側のことまでは知らないけど】
【重要情報で草】
【親が親なら子も子の良い例】
「へぇ、じゃあこっちも拠点解放してけば解放されるかな?」
【多分ね】
「早速素材出したよ。そっちで買える?」
探偵さんがメニューを開いて何やら弄っていた。
さっき集めた素材を市場に出したのかもしれないね。
それをシェリルが距離を無視して買えるかどうかの検証らしい。
もしそれが可能なら、わざわざダンジョン組が現地に素材を取りに来なくてもいい様になるね。
ぜひ解放しときたいシステムだ。
【OKありがたい素材を受け取ったわ。どこにあったの?】
「さっきのアナウンスの元凶になった塔の素材だよ。詳しくはこの配信のアーカイブ化を乞うご期待という事で」
【そうね。どうせ話せば長くなるのでしょうからまた後で聞くわ】
「これはそれぞれの分野で動くことができるいいアップデートだな」
ホクホク顔で語るどざえもんさん。
基本探索一辺倒の彼は素材を手に入れても活かしようがないのだ。ドワーフなのに山登りに特化した変わり者。
「そのアップデート、魔道書陣営はまだ来てないんですけどね」
「それは失礼した。しかしアキカゼさんならすぐだろう?」
どざえもんさんは私をなんだと思っているのやら。
まだ拠点は3つ目だと言うのに、もう終わったつもりで話を振ってくる。
それよりも聖典側はすでに拠点化を優先して動き出していたか。
前々回の失敗を前回で挽回した結果のクリアだったか。
これは先駆者だのと余裕ぶっていたらいつの間にか置いていかれるな。
いや、競ってるつもりはないんだけど。
「お義父さん、少しづつがんばりましょう。グラーキが聖典陣営の拠点を潰してる間に増やす方向で」
「ははは、僕が居る限りアレに勝手はさせないさ」
「ですが実際問題、ログイン権を使い切ったら実際手は出せませんよね? グラーキは時間が来たら復活しますし、シェリルさんかあなたが不在の時に襲ってきたらどうしようもないのでは?」
「あっ」
「この人ログイン権のことすっかり忘れてますね」
「それと、これは僕の憶測ですが、こっちの世界、向こうと時間の流れ30倍くらい違いますよ?」
「そう言えばこっちでの一ヶ月、ログイン権一回分で済んだものね」
【草www】
【これは聖典陣営の拠点壊滅待ったなしですわ】
【全員がアレを圧倒する必要があるのか】
【最低限の強さがそのレベルは難易度おかしいやろ】
「正直な話、グラーキ素材はダンジョン運営において初歩の初歩ですからね?」
【グラーキ君涙拭けよ】
【お前の勇姿は見せてもらったぜ】
【もう死んだ事になってて可哀想】
【やめて! グラーキのライフはもう0よ!】
【次回、グラーキ死す!】
「バグ=シャースですらお使いクエストの雑魚扱いだからね。素材がランダムドロップとは言え、10個集める系のアイテムが出てきた時は乾いた笑いが出たよ。この強さでこれか、と」
「あれが雑魚はきついな。グラーキも大概だが、それクラスがゴロゴロ居るのがこっちの世界ということだ」
「そもそもソロでクリアさせて貰える難易度ではないと思いますよ。お義父さんがいないと僕単独じゃどうしようもないですし」
「うむ、俺も今回戦ってみたが探偵の人がいてようやく勝負になる感じだったな。邪魔にはならない様にサポートはしたが、俺はいてもいなくても同じ様な気がした」
「それを言ったら私だってサポートでしたよ。ね、もりもりハンバーグ君?」
「こんな感じで花を持たせてくれるので、僕は頭が上がらなくなるんですよ」
「分かる。俺もハードル上げられまくったな」
「僕は逆に彼を風除けにして好き勝手したけどね」
「みんなはこの人くらいに図太くなっちゃダメですよ? 人のこと言えないくらい無茶やりますから」
「|◉〻◉)ハヤテさん、ブーメランです」
「スズちゃん辛辣!」
「はっはっは、言われてるねぇ少年」
「私のブレーキ役が彼女ですからね。どうしても探索に前のめりになるきらいがある私を引き止めてくれるんだ。さて、雑談はここぐらいにして次に行こうか?」
「次とは?」
「無論リベンジさ。塔にバグ=シャース関連のイベントあったでしょ?」
「ああ、あれね。“闇と共に来るもの”の撃退法だったかな?」
「そう、それ。検証も兼ねて何回かやろうよ」
「そう言って、君はただアイテムが欲しいだけでしょ?」
「確かにそれもあります。ただバグ=シャースに至ってはまだ謎が多いんですよ。あの重量のものがどうやって海中であれほど動き回れるのか? 不思議に思ったことないです?」
「それは確かにそうだね。闇の眷属とは言え、触腕を振るえば海をかき分ける必要がある。しかし闘ってる限りではそれは感じなかった」
「だから実態はそこにはなく、何かを介してこちら側に攻撃を送ってきてるのではないかと予測しています」
「ふむ」
「後相手が闇ならば、多分私の影ふみが通用するのではと思うんですよ」
「けど近づいたら食べられるよ?」
「あいにくと今日は残機が残ってましてね。虎穴にいらずんばと言うでしょう?」
「そこで僕に何をさせるつもり?」
「なーに、九の試練の時と同じ様にしてもらうだけですって」
担いでたツルハシを手渡し、にっこりと笑う。
塔の最上階で手に入れた情報(グラーキの封印解放後)では、バグ=シャースに関する情報が壁画仕立てで記されていた。
グラーキとの戦闘に入る前までは記載されてなかったものが、封印が解かれた後に浮かび上がった。
多分だけど塔とその周辺に配置された神格に何か関わりがあるんじゃないかと思うんだ。
その検証も含めて私達はバグ=シャースの海域へと進路をとる。
「ここですね。ただ、あれからまだ時間がそれほど経ってません」
前回の配信中、バグ=シャースは復活するのに五時間ものリポップ時間を要した。
問題は海底に闇が蓄積するのにそれくらいの時間がかかるのだ。
じゃあ故意に闇を作り出せばリポップは早められるのではと思案する。
「探偵さん、少し試したいことがあるんだけど、協力して貰える?」
「まーたテクニカルなお願い?」
「よく分かったね。ここにさっき祠部分から掠め取ってきた闇の箱があるんだけど」
【草www】
【この人なんでもありだな】
【この人に一番持たせちゃいけない能力なのでは?】
「後で元の場所に返すよ。でも塔の復活にも関係していたこの闇の箱、他のことにも使えそうじゃない?」
「OK、把握した。僕の役割は妖精誘引かな?」
「やってくれる?」
「今度ランダさんに地下世界専用の料理作ってもらう様頼み込んでみるかな? こうも頼られるんじゃ自然回復も億劫だ」
「本当は他に水の契りを高めてくれる人がいればいいんだけど」
「でしたら僕の方で検討しておきます。どうせ地下にも素材を受け取りに行くのでその時にでも」
「お、本当? 助かるよ」
「なら牽引は俺が引き受けよう。あそこは庭みたいなもんだ」
「助かります。お義姉さんに頼もうにも忙しそうにしてますし、途方に暮れてたんですよ」
【どざえもんさんいい人でよかったね】
【流石地下の開拓者様だぜ】
【いや、種族によっちゃ空よりきついぞあそこ】
【初歩:マグマの上を歩こう】
【は?】
【天空は雲の上を歩こうだからどっこいだぞ】
【普通に生活してたらどっちも詰むんだよなぁ】
【あそこは一般人が行く場所じゃないから】
【特にハーフマリナーにとっては近寄り難い】
「|ー〻ー)僕は仮死状態でならいけますよ。干物モードです」
【そこまでしていきたくねーわ】
【リリーちゃん体張りすぎなんだよなぁ】
【流石空陸海を制覇した魚類だ。面構えが違う】
【そう言えばそうやん】
「スズちゃん凄い!」
「流石にあたし空までは飛べねーわ」
「アンラ、そんな珍妙な生き物に張り合う必要ないわ。私たちに必要なものはその都度見極めるから」
「流石スプンタちゃん、ブレねーっす」
ひゅーひゅーとはしゃぐ幻影達を下がらせ、ほんのりと闇の漂う空間に、闇の箱を置いてそこに妖精誘引を発動させる。
どざえもんさん曰く、ここは水の精霊が多く屯しているのもあり、妖精も多く存在する様だ。
ちなみにナビゲートフェアリーをオンにすると頭痛がするレベルでいるらしい。
切っておいて良かった。
そして、闇の箱に妖精が引き寄せられると、急激に中心の闇が濃くなった。
そこで一斉に陽光操作で太陽光を浴びせかけると、案の定バグ=シャースが現れた。
いいな、これ。今度からこれを使わせてもらおう。
「さて、行くよ」
私はショートワープを使ってバグ=シャースに飛びかかった。
目の前で崩壊していく塔を見つめながら、ふとそんな事を呟いた。
【ツルハシ担いでる人がなんか言ってるで】
【みんな一仕事終えたみたいな顔で塔ぶっ壊してたもんな】
【どざえもんさんの巨大化+ハンマーの一撃がいまだに衝撃】
【あれは凄かった。水中が苦手とか関係ないもんな】
【ムー陣営ズルくね?】
「ずるいと思うならみんなムー陣営に来ればいいだろう? 今手にしているジョブを捨てられるものならな」
【あ、はい】
【正論で殴ってくるのはやめてもろて】
【実際ずるいずるい言ってもじゃあお前もやれで論破だし】
「陣営はいつでも乗り換えをお待ちしていますよ。前の陣営の記憶を失いますけど」
【ちょっと父さん! さっきの何? グラーキが解放されたってアナウンス!】
おっと、身内からの密告で有耶無耶にしていた事実が白日の元に。探偵さんも苦笑いだ。どざえもんに至っては半ば諦めていて、もりもりハンバーグ君も首を横に振って肩をすくめていた。
どのみちバレていたことを今明かされただけ。そう思う事にした。
そしてシェリルの登場で我に帰ったコメント欄が荒れに荒れる。
【詳しく】
【まーたなんかやったんですか?】
【シェリルさん、どういう事です?】
【詳しくはわからないわ。でもさっきワールドアナウンスでグラーキの封印が完全に解けて、通常エリアに徘徊してるそうよ】
【コンブwww】
【おまっ、普段封印されてるから対処出来てたグラーキを通常モンスターにしたんかwww】
【え、じゃあグラーキの襲撃はアキカゼさん特有のイベントじゃなく?】
【普通にエンカウントする様になったわ。全く、あれが居るだけでうちの拠点が幾つ食い物にされるかわかったものじゃない。後で補填をして貰いますからね!】
【シェリルさんめっちゃ怒ってるやん】
【聖典さんは怒っていい】
【これは封印まっしぐらですわ】
【封印方法ってやっぱり?】
「聖典側で手を組んで倒す必要があるね。まぁ倒せるのはいつでもできる。さて、さっき聖典側でアナウンスが走った。まだ何かあるね?」
ふむ? こちらでは聞こえなかったアナウンスに探偵さんやどざえもんさんが気がついた。
ポップアップしたシステムメニューを視界から弾いてわざわざ聞いているのは、リスナーに配慮してのことだろう。
【そっちに通知が入ったのならあなたが言えばいいじゃない】
「タイミング的に君かなと」
【そうね、多分私よ。かいつまんで話すけど、拠点を8つ持った時点で解放されたシステムがあるの。それが陣営内で取引ができる市場ね。基本は物々交換だけど、素材を出して情報をもらうなどのやりとりができるみたいよ。魔道書側のことまでは知らないけど】
【重要情報で草】
【親が親なら子も子の良い例】
「へぇ、じゃあこっちも拠点解放してけば解放されるかな?」
【多分ね】
「早速素材出したよ。そっちで買える?」
探偵さんがメニューを開いて何やら弄っていた。
さっき集めた素材を市場に出したのかもしれないね。
それをシェリルが距離を無視して買えるかどうかの検証らしい。
もしそれが可能なら、わざわざダンジョン組が現地に素材を取りに来なくてもいい様になるね。
ぜひ解放しときたいシステムだ。
【OKありがたい素材を受け取ったわ。どこにあったの?】
「さっきのアナウンスの元凶になった塔の素材だよ。詳しくはこの配信のアーカイブ化を乞うご期待という事で」
【そうね。どうせ話せば長くなるのでしょうからまた後で聞くわ】
「これはそれぞれの分野で動くことができるいいアップデートだな」
ホクホク顔で語るどざえもんさん。
基本探索一辺倒の彼は素材を手に入れても活かしようがないのだ。ドワーフなのに山登りに特化した変わり者。
「そのアップデート、魔道書陣営はまだ来てないんですけどね」
「それは失礼した。しかしアキカゼさんならすぐだろう?」
どざえもんさんは私をなんだと思っているのやら。
まだ拠点は3つ目だと言うのに、もう終わったつもりで話を振ってくる。
それよりも聖典側はすでに拠点化を優先して動き出していたか。
前々回の失敗を前回で挽回した結果のクリアだったか。
これは先駆者だのと余裕ぶっていたらいつの間にか置いていかれるな。
いや、競ってるつもりはないんだけど。
「お義父さん、少しづつがんばりましょう。グラーキが聖典陣営の拠点を潰してる間に増やす方向で」
「ははは、僕が居る限りアレに勝手はさせないさ」
「ですが実際問題、ログイン権を使い切ったら実際手は出せませんよね? グラーキは時間が来たら復活しますし、シェリルさんかあなたが不在の時に襲ってきたらどうしようもないのでは?」
「あっ」
「この人ログイン権のことすっかり忘れてますね」
「それと、これは僕の憶測ですが、こっちの世界、向こうと時間の流れ30倍くらい違いますよ?」
「そう言えばこっちでの一ヶ月、ログイン権一回分で済んだものね」
【草www】
【これは聖典陣営の拠点壊滅待ったなしですわ】
【全員がアレを圧倒する必要があるのか】
【最低限の強さがそのレベルは難易度おかしいやろ】
「正直な話、グラーキ素材はダンジョン運営において初歩の初歩ですからね?」
【グラーキ君涙拭けよ】
【お前の勇姿は見せてもらったぜ】
【もう死んだ事になってて可哀想】
【やめて! グラーキのライフはもう0よ!】
【次回、グラーキ死す!】
「バグ=シャースですらお使いクエストの雑魚扱いだからね。素材がランダムドロップとは言え、10個集める系のアイテムが出てきた時は乾いた笑いが出たよ。この強さでこれか、と」
「あれが雑魚はきついな。グラーキも大概だが、それクラスがゴロゴロ居るのがこっちの世界ということだ」
「そもそもソロでクリアさせて貰える難易度ではないと思いますよ。お義父さんがいないと僕単独じゃどうしようもないですし」
「うむ、俺も今回戦ってみたが探偵の人がいてようやく勝負になる感じだったな。邪魔にはならない様にサポートはしたが、俺はいてもいなくても同じ様な気がした」
「それを言ったら私だってサポートでしたよ。ね、もりもりハンバーグ君?」
「こんな感じで花を持たせてくれるので、僕は頭が上がらなくなるんですよ」
「分かる。俺もハードル上げられまくったな」
「僕は逆に彼を風除けにして好き勝手したけどね」
「みんなはこの人くらいに図太くなっちゃダメですよ? 人のこと言えないくらい無茶やりますから」
「|◉〻◉)ハヤテさん、ブーメランです」
「スズちゃん辛辣!」
「はっはっは、言われてるねぇ少年」
「私のブレーキ役が彼女ですからね。どうしても探索に前のめりになるきらいがある私を引き止めてくれるんだ。さて、雑談はここぐらいにして次に行こうか?」
「次とは?」
「無論リベンジさ。塔にバグ=シャース関連のイベントあったでしょ?」
「ああ、あれね。“闇と共に来るもの”の撃退法だったかな?」
「そう、それ。検証も兼ねて何回かやろうよ」
「そう言って、君はただアイテムが欲しいだけでしょ?」
「確かにそれもあります。ただバグ=シャースに至ってはまだ謎が多いんですよ。あの重量のものがどうやって海中であれほど動き回れるのか? 不思議に思ったことないです?」
「それは確かにそうだね。闇の眷属とは言え、触腕を振るえば海をかき分ける必要がある。しかし闘ってる限りではそれは感じなかった」
「だから実態はそこにはなく、何かを介してこちら側に攻撃を送ってきてるのではないかと予測しています」
「ふむ」
「後相手が闇ならば、多分私の影ふみが通用するのではと思うんですよ」
「けど近づいたら食べられるよ?」
「あいにくと今日は残機が残ってましてね。虎穴にいらずんばと言うでしょう?」
「そこで僕に何をさせるつもり?」
「なーに、九の試練の時と同じ様にしてもらうだけですって」
担いでたツルハシを手渡し、にっこりと笑う。
塔の最上階で手に入れた情報(グラーキの封印解放後)では、バグ=シャースに関する情報が壁画仕立てで記されていた。
グラーキとの戦闘に入る前までは記載されてなかったものが、封印が解かれた後に浮かび上がった。
多分だけど塔とその周辺に配置された神格に何か関わりがあるんじゃないかと思うんだ。
その検証も含めて私達はバグ=シャースの海域へと進路をとる。
「ここですね。ただ、あれからまだ時間がそれほど経ってません」
前回の配信中、バグ=シャースは復活するのに五時間ものリポップ時間を要した。
問題は海底に闇が蓄積するのにそれくらいの時間がかかるのだ。
じゃあ故意に闇を作り出せばリポップは早められるのではと思案する。
「探偵さん、少し試したいことがあるんだけど、協力して貰える?」
「まーたテクニカルなお願い?」
「よく分かったね。ここにさっき祠部分から掠め取ってきた闇の箱があるんだけど」
【草www】
【この人なんでもありだな】
【この人に一番持たせちゃいけない能力なのでは?】
「後で元の場所に返すよ。でも塔の復活にも関係していたこの闇の箱、他のことにも使えそうじゃない?」
「OK、把握した。僕の役割は妖精誘引かな?」
「やってくれる?」
「今度ランダさんに地下世界専用の料理作ってもらう様頼み込んでみるかな? こうも頼られるんじゃ自然回復も億劫だ」
「本当は他に水の契りを高めてくれる人がいればいいんだけど」
「でしたら僕の方で検討しておきます。どうせ地下にも素材を受け取りに行くのでその時にでも」
「お、本当? 助かるよ」
「なら牽引は俺が引き受けよう。あそこは庭みたいなもんだ」
「助かります。お義姉さんに頼もうにも忙しそうにしてますし、途方に暮れてたんですよ」
【どざえもんさんいい人でよかったね】
【流石地下の開拓者様だぜ】
【いや、種族によっちゃ空よりきついぞあそこ】
【初歩:マグマの上を歩こう】
【は?】
【天空は雲の上を歩こうだからどっこいだぞ】
【普通に生活してたらどっちも詰むんだよなぁ】
【あそこは一般人が行く場所じゃないから】
【特にハーフマリナーにとっては近寄り難い】
「|ー〻ー)僕は仮死状態でならいけますよ。干物モードです」
【そこまでしていきたくねーわ】
【リリーちゃん体張りすぎなんだよなぁ】
【流石空陸海を制覇した魚類だ。面構えが違う】
【そう言えばそうやん】
「スズちゃん凄い!」
「流石にあたし空までは飛べねーわ」
「アンラ、そんな珍妙な生き物に張り合う必要ないわ。私たちに必要なものはその都度見極めるから」
「流石スプンタちゃん、ブレねーっす」
ひゅーひゅーとはしゃぐ幻影達を下がらせ、ほんのりと闇の漂う空間に、闇の箱を置いてそこに妖精誘引を発動させる。
どざえもんさん曰く、ここは水の精霊が多く屯しているのもあり、妖精も多く存在する様だ。
ちなみにナビゲートフェアリーをオンにすると頭痛がするレベルでいるらしい。
切っておいて良かった。
そして、闇の箱に妖精が引き寄せられると、急激に中心の闇が濃くなった。
そこで一斉に陽光操作で太陽光を浴びせかけると、案の定バグ=シャースが現れた。
いいな、これ。今度からこれを使わせてもらおう。
「さて、行くよ」
私はショートワープを使ってバグ=シャースに飛びかかった。
1
お気に入りに追加
1,988
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下
七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」
死の床で陛下はわたくしに謝りました。
「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」
でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる