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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

403.お爺ちゃんのドリームランド探訪15

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「これは……」

「見つけたのは良いのですが、先ほど以上に難解で」


 言われた通りにスクリーンショットを向ける。
 浮き出てくる文字はない。
 では光を当てつつ、ナビゲートフェアリーをオンにする。
 しかし妖精が反応することもなく。

 ではいっそカメラで被写体を撮ろうとした時、その鉱石と思しきものから影が抜き出てきたではないか。
 それをパシャリと写しとれば、なんとカケラの一つが埋まってしまった。よもやこんなところに隠れていようとは。


「これ、何処にあったの?」

「何かわかりました?」

「うん、一応かけらが埋まったんだけど」

「ああ、やっぱりですか」

「やっぱり?」

【ハンバーグさん、やらかし? やらかし?】
【この人がやらかす側に来たかー】

「実はそれ、その像を削り取ったものなんです。ほら、ここ欠けてるでしょ?」

「ほんとだ。かけてるって言うか、削り取られてるね」


 もりもりハンバーグ君がニコニコしながら、削り取ったであろう道具を今更後ろに隠した。そして素知らぬ顔で口笛を吹く。
 海の中での口笛だ。そのシュールさときたらない。


「それで、ですね」

「うん」

「残りの欠片、わざわざ探さなくてもこれ削って埋めてしまえばいいのでは?」

「えー」

【草】
【とんでもない暴論持ち出したで、この人www】
【まとも枠とはなんだったのか】
【つってももう一回やって欠片埋まるのん?】
【そこはやってみなきゃわかんないよな】
【普通はやらない】
【考えてもみろ、この人アトランティス人にツルハシ打ちつけてる人だぞ?】
【そう言えばそうだった】
【この人に倫理観語る資格なかったわ】
【それwww】


 ちなみに少しづつ削った鉱石で欠片は全部埋まった。
 良いの、これで?


<シークレットクエスト:神格のかけらを集めようをクリアしました>

<続シークレットクエスト:神格を解放しようがスタートしました>


「続シークレットクエストだって?」

「あ、チェーンクエストでしたか。それで内容は?」

「神格を解放せよって」

「その手段とかは?」

「特に何も書いてないね」

「では以前と同様カメラで写し撮った写真を特定人数で見せる方法で?」

「ですかね。それで見せるのってリスナーさんでも大丈夫なのかな?」

「さぁ、そればかりはやってみないことには」


 私ともりもりハンバーグ君は同時にカメラに目を向けた。
 加速するコメント欄。
 今からSAN値チェック入るけど大丈夫か?
 そう目線だけで伝えて、そして例の写真をもりもりハンバーグ君とカメラに見せた。

 すると祠をぶち破ってモヤが広がる。
 そのモヤが肉塊を思わせるように蠢いたかと思うと、それが収縮して懐かしいグラーキの姿をその場に留めた。


<続シークレットクエスト:神格を解放せよがクリアされました>

<続々シークレットクエスト:神格に力を認められよを開始します>


 クエスト開始と同時に、その頭の上から伸びた目玉がこちらをぎょろっと見定めた。


「これ、戦うパターンですかね?」


 もりもりハンバーグ君がファイティングポーズを取る。
 私もハンチング帽を抑えながら「そのようだ」と腰に提げたブーメランを手に取った。


【これ、実際にどのくらい強いの?】
【一度倒してる実績あるから】
【でもアレ陸上じゃなかった?】
【ハッ、今回は海中か】
【確かグラーキって海中が得意じゃなかったっけ?】
【やばいじゃん】


 コメント欄は騒ぎ立てるが、そうはならない。
 海が得意なのはグラーキのみでなく、私も、もりもりハンバーグ君でさえも得意である。
 そしてあの時のグラーキは欠片の一つ。
 100%のグラーキがあの程度の力だとは思わないほうがいい。
 とはいえ……

 水を得た魚の如く、水中でのグラーキは活き活きとしていた。が、それはこちらも同じである。
 しかも今度は攻撃特化のもりもりハンバーグ君も居る。
 こちらが負ける要素はないに等しい。

 だから少し遊びを入れる。
 あまりに圧勝してしまっては撮れ高にはならないからね。


「さてもりもりハンバーグ君、君ならどう攻める?」

「お義父さんのお手並み拝見、と行きたいですが。ここは僕に一つ試してみたい手があります」

「ほぅ? 配信受けする奴なら尚嬉しいね」

「そこまでは期待しないで頂けると嬉しいです。ヤディス、例のやつをやるよ」

「分かった!」


 もりもりハンバーグ君の前でヤディス君が頷いて、その姿が漆黒の弓矢になった。
 それを触手で番て、そして放つ。
 その矢は真っ直ぐにグラーキに到達し、そしてその矢が肉の芽としてグラーキの内側に侵食を開始する。
 えぐいなぁ、ついに飛び道具を入手してしまったか?


「もりもりハンバーグ君、それは?」

「ええ、前回の配信で例の賞金首がやっていた手法をですね、自分にもできないか練習をしたんです」

「ああ、探偵さんの必殺技をパクったんだ?」

【言い方www】
【まぁあの人やってる事はアレだけど、実力は確かだからな】
【見様見真似でパクれるもんなのか】
【パクれるこの人も大概だぞ?】
【アキカゼさんは?】

「|◉〻◉)え、僕もやった方がいい流れですか?」

「君はネタに走るからダメ。私の格好がつかなくなるからやりません」

「|◉〻◉)チェー」

【草】
【見抜かれてますやん】
【リリーちゃん、スキルの半分くらい宴会芸だもんな】
【ちょっと待て、幻影ってスキル使えるのか?】

「|◉〻◉)内緒です」

【これは使えるな】
【でも実際使ってるスキルってめっちゃ微妙なやつじゃね?】
【むしろそんなスキル見た事ないって言うか】
【え、本当にスキルなん?】
【怪しいな】

「お義父さん、どうやら肉の芽一つじゃ相手は動じないようです」

「まぁそうだろうね。近距離で打ってこそ光る技だし」

「あ、それは抜かりありませんよ。触手の一本を地中から向こうの足元で掴んでから撃ってますから」

「そこはしっかりしてるのね。なら次は私の番か」


 そもそも彼に弓の心得があるかどうかも怪しいからね。
 弓矢がヤディス君なら、多少軌道修正は出来るものの、相手は海中で動き回るグラーキ。
 いくらヤディス君であろうとも命中させるのは至難の技。
 そこを彼は過保護なまでに相手を拘束して補助したわけだ。
 なんだかんだと幻影に甘い。
 とは言え、失敗を経験させるよりは全然いいか。


「スズキさん、羽交い締めだ!」

「|◉〻◉)>アイアイサー」

【行けるかリリーちゃん?】
【いや、無理だろ体格差考えろ】
【まーた無理難題ふっかけて】
【リリーちゃん健気に頑張ってる姿見るのも良いけどさ】
【つって、アキカゼさんブーメラン用意してるんだけど】
【これ、うまいこと羽交い締めにできても諸共消し飛ばすんじゃね?】

「|◉〻◉)!」

【あ、リリーちゃん今頃自分の状況に気付いた】
【めっちゃあたふたしてる】
【ここでアキカゼさんブーメランを投擲だー】
【唸る唸るブーメラン唸る!】
【どんだけ力込めたらこうなるんだwww】
【本当にえぐってるじゃないですかーやだー】
【破壊力抜群だッピ】

「|◉〻◉)ハヤテさん! 僕死ぬところでしたよ!」

「生きてるじゃない? 次も投げるからもう一回行ってくれる?」

「|◉〻◉)!!」

【なんだこのスパルタ指導】
【ハンバーグさんところを見習えや】
【リリーちゃん可哀想】
【アキカゼさんの鬼!】

「次見事注意を引き受けてくれたら、次のライブは大々的に観客を集めようかな。そうだ、1万人のコンサートを約束しよう」

「|◉〻◉)やるます!」

【そういえばこの人プロデューサーも兼ねてた】
【やる事がえぐいぞアキカゼさん!】
【それに釣られるリリーちゃんもリリーちゃんや】
【って、さっきの動きよりめっちゃ機敏!】
【やる気の出させ方がうまいな】
【って言うか、さっきまで本気出してすらなかったのな】
【サボり癖付きすぎじゃない?】
【これはアキカゼさんが呆れるのも無理ないですわ】
【そして狙い澄ましたように投擲だーーー!!!】
【避ける避ける、圧倒的回避力!!】
【リリーちゃんも本気出すと凄くない?】
【さっきまでのが全部茶番だとか誰が思うだろうか】

「なんだかんだ、あの人クトゥルフさんのつがいだから。弱いわけがないんだよね。普段おちゃらけてるからみんな騙されてるんだよ」

「|◉〻◉)だってー、僕が本気出したら一瞬ですよ?」

【なお、まだピンピンしてる模様】
【こいつ再生持ちかよ、えぐいなぁ】

「眷属召喚してこないだけマシですよ。それとダメージは目に見えてないだけで、深刻なのが今も進行中ですよ?」


 私の攻撃してる横で、もりもりハンバーグ君も矢を番て打ち出している。相手が怯んでる隙に、その撒き散らした肉塊の中心を穿つように肉の芽を侵食させていた。
 いくら再生能力が高かうと、ガタトノーアの侵食力を上回る存在はなかなかいないからね。
 そして向こうの動きが鈍くなれば鈍くなるほど、スズキさんの煽り芸コミコミのヘイト取りが炸裂する。
 そこへ私のブーメランが一定ダメージを与えていけば、回復速度を上回るスリップダメージでやがてグラーキは動かなくなった。


 システムが言っていたのは力を認めさせる事。
 決して討伐ではない。だから耐久ゲージをある程度削る事が正解だと思った。過剰攻撃はしていない。
 程よいダメージ源としてロイガーを選んだのは正解だったようだ。

 そしてそれは当たりだったようにグラーキの肉体が光り輝く。
 私はブーメランをベルトにくくりつけ、もりもりハンバーグ君にも攻撃を止めるように呼びかけた。

 さぁ、これからは対話の時間だ。


<続々シークレットクエスト:神格に力を認められよをクリアしました>

<神格グラーキがアキカゼ・ハヤテ、もりもりハンバーグに降伏しています。仲間に入れますか?>


 おっと、力を認めさせればそのまま仲間に入れられるパターンか。しかし仲間とは?


<神格:グラーキは召喚タイプのエネミーとして用いる事ができます。また、条件を満たせばダンジョンボスとしての役目も果たせます>


 おっと、これは朗報だ。神格だけど、野良だから拠点には置けないと思っていたのだが、これは上手く使えば拠点運営も捗るぞ。


「お義父さんは仲間に引き入れましたか?」

「もちろん。その様子だともりもりハンバーグ君もかな?」

「ええ、どうやらその時組んでたパーティメンバー全員に召喚権利が得られるようですね。でもこれって、この腕輪と似たような奴でしょうか?」


 もりもりハンバーグ君が輝くトラペゾヘドロンを掲げてみせる。それはナイアルラトホテプを召喚する腕輪だ。
 これは誰がが召喚している場合、他の誰かが呼びかけても召喚に応じてくれないものだったりする。
 彼はもしかしなくてもグラーキもそうなのでは? と考えているようだ。


「わからないからそれはこれから検証していこう」

「ですね。取り敢えず砕けた祠の破片は持ち帰りましょうか」

「呼ぶ場所は考えるべきだったね」

「はい。でも済んでしまった事ですので。なのでどれがダンジョン素材なのかはお義父さんのスクリーンショット頼みとなります」


 にっこりと、重労働を押し付けてくるあたりは抜け目がない。
 しかし彼にはそれができないからこそ私頼みだ。
 ここは一肌脱いでやるかとそれから数時間かけて小石集めに終始した。
 そのつまらない作業の間は、スズキさんとヤディス君が歌って踊って場を持たせてくれていた。
 早くもコンサートに向けて気が逸っているようだ。
 明確な期日は伝えてないのにね。
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