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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

334.お爺ちゃんと古代獣慣らし②

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 さて、慣らしといっても今更1~3をやったところで二番煎じだ。
 他のベルト持ちのペット化で多少は成長したのもあるだろうが、それを掠め取るのも悪い気がする。
 私は別に意地悪したいわけではないんだよ。
 九尾君の他にペット化して回るのも彼に悪いだろうし。

 そこでペット化されてない古代獣はどこだろうと視聴者に向けて質問する。
 今のところ1~6は埋まっていて、7はギリギリペット化されてないと言うことだった。

 ペット化自体はされてるのだが、どうも陣営の影響力によってペット化できる古代獣の上限数が決まってるらしく、他の古代獣をペット化すると同時に契約が解除されてしまうらしい。
 その点私は現環境の支配者という形。皆からの視線が強まっている。


「で、検証も兼ねて私がどれだけ古代獣を手懐けられるか挑戦しようってことだね。確かにこれなら他のベルト持ちにも有用な情報になるね」

「他の人達からより手に追えなくなったって思われないと良いですね!」

「そこは祈るしかないね」

【他人事で草】
【実際他人事だしな】
【それでも先頭走ってる人がこうやって検証してくれるのはありがたくない?】
【ベルト持ってない俺らは高みの見物】
【ベルト入手の条件が曖昧だからね】
【フレンドの話だとある日突然現れるらしいで】
【多分一定の関連フレーバー抜いてる順で、SAN値を一抜けしてった順でフレーバー少ないやつにもチャンスが回ってくるのかも】
【不定の狂気に陥るとベルト維持できないのは草だよな】
【それで回ってくる時点で俺らには良い迷惑】
【そういう意味では深海系フレーバー持ってる俺は安心して見てられるわ】
【アキカゼさんがポシャッたら次お前だぞ?】
【アキカゼさんなら大丈夫だって信じてるぜ。 え、大丈夫ですよね?】

「私なら侵食率150%超えて未だに正気度70%あるよ」

【つよい】
【嘘やろ? どうやってそんなに正気度維持できるの】

「以前にも言いましたけど、きちんとペット化した古代獣と絆を結んでれば正気度を減らせずに侵食度を上げられるよ。重要なのは相手に自らの神格の信仰度をあげるつもりで接することだね。私はその神格に選ばれたからこそ力を得た。次は君の番だよと導いてやるんだ。そのためには神格について詳しい情報を得る必要があるけどね」

【それ自体が正気度ロール案件やんけ】
【草】
【美味い話なんてなかった】

 久しぶりにこういったやりとりをするけど彼らは変わらないね。でも相手をしてると時間の経過が気にならない点はありがたかった。

 ナインテイルズを後にして、セブンテイルズへとやってくる。
 そう言えば1~6の街までは来たことあるけど改めて7や8の街に来たことがなかったね。

 ナインとセブンで同じテイルズを冠しているけど、古代獣にそういった特徴があるわけでもないらしいし。
 よくわかんないけど行こう。
 どうせ勝っても負けても気にしない人たちだから。

 
「ここの古代獣はなんて言ったっけ?」

【ティアマットですよ、アキカゼさん】

「ありがとう。確か大きなドラゴンだったよね? 蛇っぽい山田家とは違って4本足で立ってるんだっけ?」

【それは神話の方。古代獣は違うぞ】



 はて? 神話と古代獣での相違点か。
 確かに似ているようで違うんだよなぁ。
 そもそも古代に作られてるのに、その後に起きた神話の存在の影響を大きく受けているのが引っかかる。
 本当に古代獣は謎が多い。


【探索パートまる無視して進むの草】
【アキカゼさんらしくない】

「え、もう誰かギミック解明してるんじゃないの?」


 私の返答に、視聴者のコメントの勢いがぴたりと止まる。


【判明してるっちゃしてるけど、精巧超人さんなので、何やってるかさっぱりって感じです】


 ああ、把握した。


「うちの情報班はなんて?」

「さぁ? 僕は何も聞いてないですね」

「こういう時に探偵さんが役に立つんだけどね」

【そうやって君は何でもかんでも他人頼りなんだから】

「そう言いつつ自己アピールしてくれる探偵さんは頼れる相棒だと思ってますよ」

「あ、相棒なら僕だけで間に合ってるじゃないですかー!」


 そこで何故かスズキさんもライバル意識を出して張り合ってくる。なんだろうね、反抗期?
 らしくない行動に困り果てつつ、それでも成長かと受け止める。
 探偵さんも食ってかかるスズキさんをあしらいながら情報をくれた。
 要はドラゴンでありながら水棲系生物であるらしい。
 うん、じゃあ特に苦労しないなという確信があった。


「行くよ、スズキさん。今回は変身を使わないでどれだけ戦えるかを見てみよう」

「えー、使ってくれないんですか!? かっこいいのに!」

「うーん、どうも加減が分からなくてね。変身する前とした後の差を知りたいんだよ。それと手に入れたこれも使ってみたいし」


 ベルトにくくりつけておいたロイガーを手に取る。
 これはきっと変身後に使うことで本領を発揮するタイプのものだ。
 けど珍しいものを見たと視聴者達も騒ぎ出す。


【なんですか、それ?】
【ブーメランですか。またマイナーなものを】

「あー、これ。イベントアイテムっぽくてさ。受け取ったら侵食率が30も増えたんだよね」

【ふぁっ!?】
【やばいやばいやばい、きっとやばい奴だ】
【それ使って大丈夫? 触れると手が腐り落ちたりしない?】
【まさか、魔導書じゃないんだし】

「ロイガーって名前なんだけど知ってる?」

【あっ(察し)】
【風の神様やんけ】
【ハスターさんと相性良さそう】
【クトゥルフ神話の方の神様な】
【あー、ハスターはアンブロシウスだっけ?】


 そう言えば過去に行った時はまだ喧嘩する前だったけど、仲直りしたんだろうか?


[その点は心配して貰わずとも良い。アレは傲慢な余に思うところがあっただけだ。生き方を変えた余には逆らわなかったのが良い証拠だ。あの頃より関係は良好したと思ってもらって良いぞ]


 おっと、ご本人が直接報告してくれた。
 やはり神様のことは神様に任せておくのが良いね。
 下々の物が仲裁に入るとどこに転ぶか分からない。


[要らぬ心配よ。配下に面倒ごとをさせる余ではない。過去に戻る前の余には少し効くものもあるがな]


 やや苦笑しながらの声が頭に響く。
 過去を変えたとは言え、当時の自分に思うところがあったのだろう。なんにせよ私がどうこういう話ではないね。
 あとはご本人が頑張る話だ。


「アンブロシウス氏とはアレ以来合ってないね。今頃図書館探しだろうか」

「セラエちゃん元気かなー」

【魚の人は知り合いだっけ?】
【そういえば途中参加した回あったな】
【謎の砂嵐でほぼ何も見えなかった回な】
【アレ結局何だったの?】
【まさかの正気度ロール案件だったとか?】
【あり得そう】

「そう言えばセラエ君もいましたね。でも彼は古代獣のペット化に興味がなさそうだったし」


 そこまで言いかけた時にティアマットの領域内に先客の気配があった。そこに居たのは噂の二人組で。


「む、こんな場所で出会うとは。アキカゼさんもティアマットを?」

「成り行きで。別にどうしても欲しいってわけじゃないのでそちらにお譲りしますよ?」

「いや、私達もそこまで急務ではない。うちのドーターが探索領域に懐かしい気配があるからと寄ってみただけだ」

「ほう? では古代獣の方に要はないと」

「はい。私達は既に侵食率が100%を超えてますので」

「流石アンブロシウスさんだ」

「何を仰る。アキカゼさんの提示してくれた情報によって安定して底上げができたのだよ。他の所有者も同じく、貴方には世話になりっぱなしだろうな」

【おいおい言われてるで?】
【俺ら部外者だし?】
【僕は少年とは親友だからね。ありがたく利用させて貰ってるよ】
【一人開き直ってるのがいるぞ!】
【草】
【親友とはいったい……】

「探偵さんとは持ちつ持たれつなので気にしてないよ」

【流石心の友だ】

「なのでティアマットの情報をチャチャッと出しちゃってください。それがあなたの仕事でしょ?」

【やっぱりさっきの発言は取り消そうと思う】
【熱い手のひら返し!】
【殴り合いの友情なんやなって】
【逆にアキカゼさんの親友はこれぐらいじゃないとやっていけない説】
【こいつは一本取られたね】
【誰もうまいこと言ってないんだよなぁ】


 そんな茶番はさておき。
 既に過去で友情イベントを発生させた兄弟の神格同士で手を組む。


「私もペット化はついでなのでお供しますよ? 知られたらまずい情報は勝手に砂嵐が出てくれると思うので」

 
 チラリとスズキさんを見ると、親指をグッと立ててくれた。


「それならばお願いしよう」


 私達は再び手を取り合った。
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