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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
332.お爺ちゃんとクトゥルフさん③
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「あれ、こっちにも居るんだ」
「なんの話です?」
場所をクランホームへと変えると、当たり前のようにクラメンに囲まれてスズキさんがお茶を啜っていた。
その事を不思議に思ってると、プールから上がったジキンさんが体をブルブル震わせながら私に問いかけてきた。
犬かきの練習でもしてたんでしょうか?
聞くと怒られそうなので喉まで出かけた言葉を飲み込む。
「あ、ハヤテさーん。無事に合流出来たみたいですね」
「はい。それより道中でスズキさんによく似た人をいっぱい見ましたよ」
「ああ、アレは妹です」
「妹なんだ。姉妹がいるとは知らなかった」
「出来たんですよ。その子達とはどこで出会ったんです?」
言ってなかったではなく、出来たと言っちゃうあたり、彼女も隠すつもりもないようだ。
「ファストリアでコンサートしてましたね」
「じゃあそれはイトウですね」
「妹なのに苗字が変わるんですか……」
私とスズキさんの会話にジキンさんが野暮なツッコミを入れる。
「そもそも僕のスズキも別に苗字じゃないんですけどね? これだからじぃじは頭が硬くて困ります」
「他にも妹さんが居るんだ?」
「ええ、他にはサトウ、タナカ、イノウエ等々」
「それが名前の妹とか嫌だなぁ」
「ジキンさんには言われたくはないですよねぇ?」
「ねぇ?」
同調するように顔を見合わせて首を傾げた。
その光景にジキンさんが憤る。
いつもの風景だ。
「そういえば探偵さんは? いつもならここら辺でクダを巻いてるのに」
ソファで格好をつけながら情報収集と称して掲示板を読み込む姿を思い出す。
「ああ、知らないんでしたっけ? あの人ならあなたの娘さんと一緒に過去の栄光を取り戻しに行ってますよ」
「ああ、聖典陣営ですもんね、あの人」
そう言えばパープルが出掛けに何か言っていたものね。
「どこかの誰かさんが世界をこんなふうに変えてしまいましたからね?」
「アレは事故だよ。私は悪くない」
「ハヤテさんもお茶如何です?」
「頂こう」
相変わらず塩の香りが強い海のように青いお茶を受け取り、口に含む。
でも不思議と美味しいんだよね。お腹に染み渡るというか。
うん、慣れてしまえばこの味わいこそが心地よい。
「お茶入れるの上手になったよね?」
「それを美味しそうに飲めるのはマスターだけですよ? 僕はしょっぱいやら潮っ辛いやらで舌が死にます」
「じぃじは味覚がおかしいんですー! あれからハヤテさん好みに練習しましたからね!」
「僕に魚人の味覚を求めないでくださいよ」
「でも世界は魚人が我が物顔で闊歩してるよね? ジキンさんもこっち側くれば良いのに」
「僕は犬かきするのでやっとですよ」
「その姿を想像してちょっと吹き出しそうになりました」
スズキさんも同じようにお腹を抱えて笑っていた。
「それはさておきクランイベントの方はあれからどうです?」
「ああ、それなんですけどね。手のひらを返したようにひっきりなしに人が押し寄せてますよ。何を言ったんですか? いや、情報はこっちでも拾ったんですけど」
「好評なようで何より。でも探偵さんの乗り物無しでよく稼働できるね?」
「オートドライビングシステムが有りますからね。本人がその場にいなくても良いようですね」
「でも過去を変えると消えたりしないですか?」
「僕達プレイヤーはこの世界の歴史に影響を受けない存在ですからね。与える可能性がある事はマスターのやらかしで判明しましたが」
「だからあれは事故ですって」
「それよりも古代獣討伐令がリセットされてないことの方が驚きだよ」
頑なに私の意見を聞こうとしない番犬に憤りを覚えつつ、そう言えば九尾くんの存在を思い出す。
私が侵食率を100%まで注いで育成した彼は元気でやってるだろうか?
「九尾くんは元気だろうか? 聖典側に奪われて居ないだろうか?」
「ああ、マスターの娘さんが諦めてから誰も対戦しなくなったって話だね。実質無理でしょう、元の5倍は強くなってるって話じゃないの」
「なんだい、じゃあ誰も遊び相手もなく暇してるのか。少し顔を出してこよう。今の私がどのくらいなのかも見ておきたいしね」
「君の持ってる神格ってかの御大でしょ? そして今の世界の支配者もまたその御大だ」
「うん、まぁね。って言うかクトゥルフさんは今私と一緒にいるよ?」
「……冗談はさておき、今後どうするんです?」
あ、この人話をスルーしたな?
「今後というと?」
「ギルドとしての方針ですね。イベントはこのまま続けるとして、世界が変わったからと言ってあなたのスタンスが変わるとは思えません。クランメンバー一同は割と好き勝手生きてますけど、トップが指針を打ち立てねばそれについてきているメンバーは戸惑いますから」
「ああ、なるほど概ね把握しました。取り敢えずやりたい事優先で。お金はこっちが持ちます」
「全く、それじゃ何をして良いか分からない孫達が居るんですよ。皆が皆、我々のように自主的に生きてないでしょ? よもや忘れたとは言いませんが」
「あー、はいはい。じゃあアイドルプロデュースの継続と配信活動はやっていきますよ。じゃあアレだ。配信復活一号は九尾くんとの手合わせで良いかな?」
「それ絶対閲覧注意の奴じゃないですか」
「何を言ってるの? 見るかどうかは視聴者の自己責任だよ?」
「そうですよ、そこに人気配信者かどうかは関係ないんです」
棚をごそごそと漁っていたスズキさんが羽織るようにリードを着込み、その先を私に手渡してきた。
どうやらついてくる気満々のようだ。
「と、いうわけで急かされてるので行ってきます。留守番はお願いしますね?」
「はいはい。どうせ僕も水泳スキルの派生狙いで泳ぎの練習中です。クランには居ますので何か用向きがあれば聞きますよ」
そう言いながら絶対に居留守使いそうだなこの人と思いながら私はスズキさんを率いてクランを後にした。
まずはナインテイルに赴いて、それから九尾君のお世話か。
と、その前に配信の準備をしないとね。
「なんの話です?」
場所をクランホームへと変えると、当たり前のようにクラメンに囲まれてスズキさんがお茶を啜っていた。
その事を不思議に思ってると、プールから上がったジキンさんが体をブルブル震わせながら私に問いかけてきた。
犬かきの練習でもしてたんでしょうか?
聞くと怒られそうなので喉まで出かけた言葉を飲み込む。
「あ、ハヤテさーん。無事に合流出来たみたいですね」
「はい。それより道中でスズキさんによく似た人をいっぱい見ましたよ」
「ああ、アレは妹です」
「妹なんだ。姉妹がいるとは知らなかった」
「出来たんですよ。その子達とはどこで出会ったんです?」
言ってなかったではなく、出来たと言っちゃうあたり、彼女も隠すつもりもないようだ。
「ファストリアでコンサートしてましたね」
「じゃあそれはイトウですね」
「妹なのに苗字が変わるんですか……」
私とスズキさんの会話にジキンさんが野暮なツッコミを入れる。
「そもそも僕のスズキも別に苗字じゃないんですけどね? これだからじぃじは頭が硬くて困ります」
「他にも妹さんが居るんだ?」
「ええ、他にはサトウ、タナカ、イノウエ等々」
「それが名前の妹とか嫌だなぁ」
「ジキンさんには言われたくはないですよねぇ?」
「ねぇ?」
同調するように顔を見合わせて首を傾げた。
その光景にジキンさんが憤る。
いつもの風景だ。
「そういえば探偵さんは? いつもならここら辺でクダを巻いてるのに」
ソファで格好をつけながら情報収集と称して掲示板を読み込む姿を思い出す。
「ああ、知らないんでしたっけ? あの人ならあなたの娘さんと一緒に過去の栄光を取り戻しに行ってますよ」
「ああ、聖典陣営ですもんね、あの人」
そう言えばパープルが出掛けに何か言っていたものね。
「どこかの誰かさんが世界をこんなふうに変えてしまいましたからね?」
「アレは事故だよ。私は悪くない」
「ハヤテさんもお茶如何です?」
「頂こう」
相変わらず塩の香りが強い海のように青いお茶を受け取り、口に含む。
でも不思議と美味しいんだよね。お腹に染み渡るというか。
うん、慣れてしまえばこの味わいこそが心地よい。
「お茶入れるの上手になったよね?」
「それを美味しそうに飲めるのはマスターだけですよ? 僕はしょっぱいやら潮っ辛いやらで舌が死にます」
「じぃじは味覚がおかしいんですー! あれからハヤテさん好みに練習しましたからね!」
「僕に魚人の味覚を求めないでくださいよ」
「でも世界は魚人が我が物顔で闊歩してるよね? ジキンさんもこっち側くれば良いのに」
「僕は犬かきするのでやっとですよ」
「その姿を想像してちょっと吹き出しそうになりました」
スズキさんも同じようにお腹を抱えて笑っていた。
「それはさておきクランイベントの方はあれからどうです?」
「ああ、それなんですけどね。手のひらを返したようにひっきりなしに人が押し寄せてますよ。何を言ったんですか? いや、情報はこっちでも拾ったんですけど」
「好評なようで何より。でも探偵さんの乗り物無しでよく稼働できるね?」
「オートドライビングシステムが有りますからね。本人がその場にいなくても良いようですね」
「でも過去を変えると消えたりしないですか?」
「僕達プレイヤーはこの世界の歴史に影響を受けない存在ですからね。与える可能性がある事はマスターのやらかしで判明しましたが」
「だからあれは事故ですって」
「それよりも古代獣討伐令がリセットされてないことの方が驚きだよ」
頑なに私の意見を聞こうとしない番犬に憤りを覚えつつ、そう言えば九尾くんの存在を思い出す。
私が侵食率を100%まで注いで育成した彼は元気でやってるだろうか?
「九尾くんは元気だろうか? 聖典側に奪われて居ないだろうか?」
「ああ、マスターの娘さんが諦めてから誰も対戦しなくなったって話だね。実質無理でしょう、元の5倍は強くなってるって話じゃないの」
「なんだい、じゃあ誰も遊び相手もなく暇してるのか。少し顔を出してこよう。今の私がどのくらいなのかも見ておきたいしね」
「君の持ってる神格ってかの御大でしょ? そして今の世界の支配者もまたその御大だ」
「うん、まぁね。って言うかクトゥルフさんは今私と一緒にいるよ?」
「……冗談はさておき、今後どうするんです?」
あ、この人話をスルーしたな?
「今後というと?」
「ギルドとしての方針ですね。イベントはこのまま続けるとして、世界が変わったからと言ってあなたのスタンスが変わるとは思えません。クランメンバー一同は割と好き勝手生きてますけど、トップが指針を打ち立てねばそれについてきているメンバーは戸惑いますから」
「ああ、なるほど概ね把握しました。取り敢えずやりたい事優先で。お金はこっちが持ちます」
「全く、それじゃ何をして良いか分からない孫達が居るんですよ。皆が皆、我々のように自主的に生きてないでしょ? よもや忘れたとは言いませんが」
「あー、はいはい。じゃあアイドルプロデュースの継続と配信活動はやっていきますよ。じゃあアレだ。配信復活一号は九尾くんとの手合わせで良いかな?」
「それ絶対閲覧注意の奴じゃないですか」
「何を言ってるの? 見るかどうかは視聴者の自己責任だよ?」
「そうですよ、そこに人気配信者かどうかは関係ないんです」
棚をごそごそと漁っていたスズキさんが羽織るようにリードを着込み、その先を私に手渡してきた。
どうやらついてくる気満々のようだ。
「と、いうわけで急かされてるので行ってきます。留守番はお願いしますね?」
「はいはい。どうせ僕も水泳スキルの派生狙いで泳ぎの練習中です。クランには居ますので何か用向きがあれば聞きますよ」
そう言いながら絶対に居留守使いそうだなこの人と思いながら私はスズキさんを率いてクランを後にした。
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