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4章 お爺ちゃんと生配信

307.お爺ちゃんと古代獣討伐スレ民_15

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 上空に突き上げられた私は、なんとかロストすることなく上空で体勢を整えた。食事を取り、LPを回復させる。
 マリンがLP用のポーションとやらを用意しておく理由が今になってわかるあたり、私は本当の意味で戦闘に巻き込まれたのだと知った。

 なまじ今までの攻撃は受けたら即死なモノが多かったのでこのように半端なダメージを与えてくることがないのもまた事実であるが逸れた思考を一旦端に寄せ、襟を締め直した。

 眼下では( ^ω^ )氏がスタミナ切れで這いつくばった四尾に特攻している姿が見て取れる。
 ベストショットを取れる位置までショートワープで移動して、影からニュルッと出てきたスズキさんも自爆特攻をしながら状態異常の重ねがけをしていた。

 後から聞いた話だけど、彼女の自爆は耐久を削るだけに止まらず、一定確率で恐慌状態に陥らせることがあるんだって。
 そういえばサクラ君が直前で爆発四散したスズキさんを見てトラウマを負っていたよね。
 あれは乱数を引いちゃった結果らしい。


【魚の人ーー!?】
【アキカゼさんの影からニュルッと出てきた!?】
【そういや( ゚д゚)の使い魔も影から出てきたよな?】
【やっぱり魚の人魔導書じゃないのか?】

「|◉〻◉)あれは僕のユニークスキルです」

【お前まで顔文字合戦に参加するな】
【なんだかんだでこの人も謎スキル持ちだよな】
【地上で呼吸できてるあたりでもう謎】
【アキカゼさんも影を踏み固めるスキルあったし、それ系だろ】
【だったらありうるのか?】

『ちなみにそれ、他の幻影も普通にできるんでしょ?』

『みんな持ってる通常行動ですねー。でもユニークといっておいた方が誤解がなくていいんです。まだプレイヤー気分を味わいたいので』

「|◉〻◉)派生先は、なんと魚人になるだけ! これを機にぜひ青いドリンクの愛飲をご検討お願いします!」

【ゴリ押し草】
【愛飲してるけど、生えてこないよ?】

「|◉〻◉)それはまだ愛飲が足りない証拠ですね。僕みたいに魚人のまま地上活動が出来るようになれば、自ずと生えてきますよ!」

【言ってる事無茶苦茶じゃねーか!】
【土台から設定狂ってねーか?】
【え? もしかして鰓呼吸→肺呼吸からの派生な訳?】
【アキカゼさん、お宅のクラメンがゴリ押ししてきます!】

「私に言われてもねぇ。個人的に解釈の仕方が違うモノだし、派生スキルをこうして教えてくれるだけでもありがたい事じゃないの? ちなみに私のスキルの派生条件を教えても君たちは同じ態度を取るよね?」

【そういやこの人の派生先も大概だった】
【つまり影の中から移動するにはスタートが魚人の必要があるわけか】
【キャラ作り直してまで欲しくはねーな】

「|◉〻◉)だから種族を無理矢理魚人に変えられる青いドリンクをおすすめしてるのに~」

【そういう意味か。それって要するに元の種族の個性を捨てるって意味だろ?】
【新しく派生させるにも条件厳しすぎない?】
【アキカゼさんの持ってるスキルも同じくらい大変だからすぐにはどうこうできんやろ】

「|◉〻◉)そんな事より状況が動きましたよ」

「おっと、カメラは固定だったけど見逃した」

【おいカメラマン!】
【大事な場面で雑談してる場合じゃなかった】
【どっちみち蛮族が善良な狐を襲ってるだけの絵面だぞ】
【あれだけの破壊活動をしてた奴が善良は草】

「|◉〻◉)しれっと合流しましょう!」

「勿論だとも」

【この人達……】
【場慣れしてやがる】



 一体どんな攻撃をすれば四尾がここまで地面に這いつくばれるのだろうか?
 駆けつけた私たちが見た風景はとても異常だった。
 スタミナが切れているとはいえ、攻撃ができないわけでもないだろうに、こうも一方的にやられるのは6ch連合の戦略が確かだからか、はたまたその絵面から察するに身動きのできなくなった相手に殴る蹴るの暴行を加えたからだろうか?
 味方のはずなのに加害者意識に誘導されるのはやはり見た目に引っ張られるからだろうか?
 おっといかん。私まで( ^ω^ )氏の策略にハマるところだった。危ない危ない。


「( ^ω^ )氏!」

「( ͡° ͜ʖ ͡°)おう、生きてたか」

「( ゚д゚)さすがタフネスを売りにしてるライダーなだけある」

「( ´Д`)y━・~~言ったろ? この人なら切り抜けられるって。普通じゃこうはいかん」

「( ^ω^ )さて本番はここからだぞ。五尾のお出ましだ」

「|◉〻◉)ワクワクしますね」






 ──その瞳は黄金、けれど真紅に燃ゆる。

 ──その体躯は繊細、けれど強靭な体感によって支えられる。

 ──凍える大地、死せる森。

 ──そして重力までもを支配する。

 ──その世界の全てを掌握した獣は、三日月のような笑みを讃えて己の前に立ちはだかる存在を称賛した。


[────────────────!!]


 人の聴覚では拾えない叫びが辺りにこだまする。
 不意に浮き上がる肉体。
 まるで大地から重力の鎖が切れたみたいに私達の舞台は空へと移行した。
 まるでパーティメンバーへ輸送スキルを付与し、風操作で浮かせたような状態。

 そういえばジキンさんが言っていたな。
 移動の権利を他人に譲るなと。
 これはつまり、古代獣が我々の行動権を握るということか。


「( ^ω^ )ここから攻撃を避けながらのカウンター合戦だ。アキカゼさんは回避に専念してくれ」

「( ͡° ͜ʖ ͡°)なーにショートワープ持ちだ、心配することはない」

「( ゚д゚)だな。ウチのサイも気に入ったようだ。俺以外に懐かない子が懐いたのは癪だが、まぁ頼らせてもらうぜ」

「( ´Д`)y━・~~じゃあここからは各自が自由行動で一尾づつ潰していくぞ。なお八尾までこんな状態がずっと続き、九尾になった途端、一尾から八尾を入れ替えて攻撃してくる。その全ての耐久を削り切れば俺たちの勝利だ」


 さらっと肝心な情報がもたらされた。
 え、なに? そもそも作戦もなにもないの?

 各自検討を祈ると言われ、( ´Д`)y━・~~氏はその場から消えた。テレポーターだからと逃げた訳じゃなさそうだ。

 明後日の方向からビームが飛んでくるが、白銀に光る体毛はビームすら弾いてみせる。
 今までの形態より明らかにタフになってるのが窺えた。


【ファーー!?】
【重力縛りかよ!】
【つまり移動は相手に制御されてのカウンター合戦か】
【そこに誘うカメラマンは確かにアキカゼさんしか出来ませんわ】
【四尾あたりでも結構強力だったのにこれキツくね?】

「これ、私も戦った方がいいって事なのかな?」

【自分の身は自分で守れっていう意味でならそうじゃないか?】
【これ、完全に戦力に数えられてますね】
【逆に言えば攻撃するだけで状態異常にかけられるのがアキカゼさんぐらいしか思いつかなかったとか?】
【その上でカメラマンも兼ね備えてるとなると】
【向こうにとっては一石二鳥?】
【おまけに討伐映像も取れて知名度も上昇か?】
【いや、クラン上位陣だぞ6ch連合。格好が奇抜なだけで】
【やってる事も奇抜なんだよなぁ】
【ナインテイルズが世紀末に陥った元凶があのクランだぞ、騙されるな】
【クランメンバー全員モヒカンなのノルマなんですか?】

「( ͡° ͜ʖ ͡°)恰好いいだろ?」

【アッハイ】
【草】
【解釈違いです】


 そして私達の体はまるで嵐に巻き込まれる枯れ葉の如く、重力を無視して攪拌された。
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