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4章 お爺ちゃんと生配信

267.お爺ちゃんと寄せ集め連合⑤

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【村正ちゃんかわいい】
【村正ちゃんがんばえー】
【実際にやってる事地雷よ、この子?】
【分かってねーな、そこが良いんだろう?】
【見る分には愉快痛快だし人気が出るのは仕方ない】


 コメント欄は相変わらず特定の誰かを賑やかしている。
 その中でも目立つ動きをしてるのが村正君とオメガキャノン君だろう。彼は本名(?)ではなくマッドドクターという二つ名で呼ばれることが多かった。
 

【あいつの大砲の中身本当に謎だよな】
【マジックスクロールを装填してんのに、何故かスプリット弾が出てくる不思議】
【スプリット弾のマジックスクロール?】
【そんなスクロールねーから! 錬金なめんな】
【どう見ても魔法じゃなくて物理攻撃だよ、あれ】
【それを言ったら陸ルートの謎魔法も相当頭おかしい】
【あれ全部付与魔法だろう? 何故か前衛で剣振ってる謎ビルド】
【ビルドのおかしさで言えばアキカゼさんも大概だけどな】
【つまりみんなおかしい?】
【モーバは普通だろう?】
【パスカルも普通だな】
【パスカルはともかくモーバが普通か? あいつ弓とトラップ使いなのに前衛でタンクするぞ? 弓でパリイしてるの見たことあるし】
【パスカルは名前聞いたことないけど普通に有能だろ? ハーフビーストって戦闘特化のイメージ強いけどこの人は全く逆を行く探索特化型だ。身体能力の高さで壁とか平気で登るしな】

「はいはい。人のビルドをあれこれ言う前に五体目のゴーレムの登場ですよ」


 コメント欄が寄せ集め連合のキャラの個性をあーだこーだ言ってるところで、徘徊していた五体目のゴーレムとエンカウントする。胸に金色の石を嵌め込み、今までのとは少しだけ特別感がありそうだ。


「色違い?」

「にしては両手が鈍器から刺突武器に変更されてる?」

「ボス、あれはドリルです」

「捕まったら厄介か。村正、スタミナは?」

「70%ってところじゃの」

「なら突撃は抑えろ」

「御意」

「モーバ、陸ルートと連携して物理か魔法のダメージ計算を頼む」

「お安い御用だ!」

「分かった」

「村正はアキカゼさんとパスカルと共に後方待機! オメガキャノンは適当に援護してくれ」

「オッケーボス」

【これは戦犯の笑み】
【何かやらかしそうな気配】
【見れるか、ドリルvsドリル!】
【やめろ、本当にやりそうで怖い】

「さて村正君、君はスタミナをとてもよく使うそうだね?」

「速度特化ゆえ、仕方のないことでござる」

「そんな君に良い提案がある。調理アイテムなんだけど、実はこれ食べると一時間スタミナとエネルギーが減らない仕組みなんだ」

「そんな夢のような食料があるでござるか?」

「あるんだよ。とあるレストランで販売中だ」

【あ、これ】
【お義父さん、それってもしかして?】
【今朝あたしにお願いしてたのってそう言うことなのね】
【おっと精錬の騎士が揃ってエントリーしたぞ?】
【つまり?】
【その料理、一つおいくら?】
【wwwどのランクの調理師に作らせた】

「娘が腕によりをかけて作ってくれた料理だよ? 材料と調味料の天井はつけないでやってもらった。値段はプライスレスさ」

「ぬぉおお!! すごい!! 力がみなぎるでござる!! あとなんかバフが5個乗ったでござる!!!!」

【あっ(察し)】
【バフ5個は一級調理師だっけ】

「疾きこと風の如く!! 某は一迅の風となろう、新陰流走術、疾風迅雷!!!!」

【いけー村正ちゃん!!】
【がんばえー】
【名前は厨二っぽいのに縮地ばりの間の詰め方だったぞ?】
【スピード型ってあそこまで早くなれんの?】
【あれって霊装?】
【霊装だったらなんか紋様が浮かび上がるからスキルのみだぞ】
【師父さんの縮地と言い、俺たちのまだ見ぬスキルがあるのか】
【アキカゼさんのショートワープとかな】
【そこまで行くと派生が謎すぎるんだよなー】
【先生~、重力無視がいまだに生えないんですけど?】

「知らないよ。登山でもしたら?」

【返しが辛辣で草】
【そりゃ戦闘中に話しかけたらそうなる】
【アキカゼさん戦闘に参加してないけどな】
【スクリーンショット撮ってるだけだから実際邪魔?】
【バカ、今までの配信見てないのか? あれはゴーレムの弱点探ってんだよ。あと遺跡の中の怪しいポイントも見つけてる。あの人ほどスクリーンショット使いこなしてる人もいないって】
【悪い】

「え、私がなんだって? 村正君の勇姿を画像に収めるのに夢中になってて見てなかったよ」

【おい! せっかく良い感じにフォローしたのに!】
【解析ニキドンマイ】
【視聴者の期待を裏切る配信者】


 とはいえ、同時に情報も探っている。
 物理ダメージの効きはあまり良くない、魔法もダメージソースにはなり得ないだろう。
 

「アキカゼさん、頼みます」


 ジャスミンさんの言葉に頷き、懐からレムリアの器を取り出してビームを連射する。
 一発目は良い感じにダメージを与えたものの、続く二射目は何かの壁に遮られた。


「電磁シールドか!?」

「逆に物理は効くかもしれん。村正!」

「合点承知! 新陰流奥義! 月落とし!!!!」


 村正君の残像を残すほどの速度での間合い詰め。
 突き刺した刃を軸に下から上にグルンと周り、空歩で空間を蹴って着地する。
 剣閃が円を描く様は満月を例えて居るのだろう。
 そして石が青くなってからは物理に弱くなったかのように村正君の一撃で持ってゴーレムのボディは左右に両断された……中央に嵌め込まれていた石ごと。


「まずは良くやった、と言いたいところだが」


 ジャスミンさんはにこやかに村正君に頬笑みかける。掌に砕けた青い石を持って。


「かたじけぬでござる」

「まぁギミックは割れたから良しとしよう。オメガキャノン、直せるだろうか?」

「そうですねぇ、生まれ変わらせることならできますが、直すとなると、高くつきますぜ?」

【おい、こいつ絶対その石悪用するぞ!】
【高くついた費用の使い道も分からないのに渡すわけないだろ】
【素材の名前もわかんないのに直せるかどうかわかるの?】
【上位錬金なら素材を見ただけでアイテム名はわかるよ。直せるかどうかは一度手に持ってハンマーで叩けば難易度が出てくる】
【へぇ】
【じゃあ叩かずに査定したオメガキャノンて?】
【まず間違いなく詐欺だね】

「ちょっとちょっと精錬の騎士さん、横から入ってきてなんなんですか? こっちは低い技術で重要アイテムを直してくれって言われてるんです。成功を求められたら準備だってありますよね? その分の道具だって錬金やってれば安くないって分かってますよね? それを詐欺だなんてあんまりだ」

「で、本音は?」

「失敗しても元を取ろうと思って……て、あ! 酷いなぁアキカゼさん」

「冗談だよ。君もそんなふうに騙し取らなくても言えばあげるのに。ひとまずアトランティス鋼で手を打たないか?」

【でた! 買値二億の値がついた素材!】
【二億はやばい】
【それって単価での話?】
【そうだぞ。なんせ99%でビームソードが作れるからな。未だに供給が安定しなくて値上がりし続けてる】

「それは流石に緊張で手が震えそうなんで辞めときます」

「そうか、ならば天鋼シルファーはどうだ?」

【でてくる素材がさっきからやばいのしかない件】
【シルファーってなんだっけ?】
【天空の八の試練を突破するのに必要な素材。1%の確率で装飾アイテムが作れて、効果が魔法反射】
【お値段は?】
【あれは確か安いぞ。数打たないと完成しないからな。それでも1個2000万はする】

「ッスーーー。心臓に悪いものばかり出さないでくださいよ」

「なら龍鋼ドラグノフでどうだ?」

【なんで地下ルートの素材持ち歩いてるのこの人?】
【ヒント:クラメンが地下ルート踏破者だから】
【手元に置いてる素材が異次元すぎる】
【新人錬金術師にはもはやイジメだろ。難易度的にも】

「別に売り払ってお金にしても良いんだよ? 私は持ってても使わないからね。それにお金にも困ってない。だからこれは少ないけど君にあげるよ」

【優しさに見せかけた在庫処理で草】
【本当にこの素材は持ってるだけで身の危険を感じるからな】
【これを断ると大損し、貰えば命を狙われると】
【何その行くも地獄、戻るも地獄】
【職人にとって素材はそれくらいの価値があるんだよ^ ^】
【単品でも言い値で買う人いるよ。本当に手元に転がってこないし、それ】

「分かりました。アトランティス鋼だけいただいて良いですか?」

「もちろん。どうぞどうぞ」


 トレードでアトランティス鋼を差し出し、トレードが成立する。


「ボス、直せるかどうか分からないですけど挑戦してみて良いですか?」

「信じて良いのか?」

「これ以上ないってくらいの担保を貰っちゃったんで、今更嘘なんてつきませんよ」

「分かった。なら頼む。この石は今回の探索で重要な役目を持ってると思うんだ」

「ですよね。これだけ今までの意思と構造が違いますからね」


 オメガキャノン氏は手に石を持ってハンマーでコツンと叩く。


「うわ、難易度120か。でも俺なら……少し時間をください。集中しないと無理そうなんで」

「分かった。そんなに真剣なお前を初めて見る。警戒は任せてくれ。その代わり」

「期待には応えて見せますよ。初代マッドドクターの技術って奴を、ね」

【マッドドクターって何者なんだ?】
【変わり者の変人プレイヤーだぞ】
【確か錬金の深淵を覗いたとかで一時期ログインしなかった】
【何を見ちゃったんだよ】
【で、新しく一からやり直して今に至る】
【一からやり直しても変人なのは?】
【こいつが正気だった時がない】
【把握】


 コメント欄からの言葉は彼の噂を拾い集めたものだった。
 どれも眉唾で信憑性がなく、なぜ一度やめたのにもう一度戻ってきたのか具体性がなかった。
 しかし通常プレイではなくこんな偏屈なプレイをしている理由も見えてこない。


「出来た。ボス、お納めください」


 時間にして十数分。一時間かからないくらいでオメガキャノン氏の手元には砕ける前の石がぴたりとくっついて黄金色の輝きを放っていた。


「良くやった、オメガキャノン。見直したよ」

「そこは流石天才科学者と称えるところでは?」

「言ってろ」


 ジャスミンさんとオメガキャノン氏はいつものように悪態を吐きながらも笑った。
 やっと仲直りというより、互いに一歩近づけたような感じだね。やっぱりパーティ内がギスギスしてると嫌じゃない。
 私は頑張れば出来る子を応援していきたいんだ。


「はてさて、その石は何に使われる石だろうね?」

「わかりません。けれどただの扉を開けるだけにしては大掛かりでしたから。もっと重要なものに使われると思うんです」

「俺が思うに、レーザーガンの動力だと思うな。さっきのゴーレム戦でも、ビームを吸収してバリアを展開したじゃない?」

「つまりアトランティスのメカニックのビームディスチャージを備えてると?」

「多分ですけど、触ってみた感じこの石はビームを吸収する仕組みがある。ただ必要なのはこれだけではなく、もう何個か必要みたいでしたけど」

「ふむふむ、道が見えてきたんじゃないか、ジャスミンさん?」

「そうだな。たまにはオメガキャノンも役に立つ」

「ひでーぜボス」

【こいつどの口で自分が役に立ってるっていうつもりだ?】
【手口が詐欺師のそれなんだよなぁ】
【活躍はしてるけど、終わり良ければって感じでゴリ押しだから】
【それは村正も一緒だろ?】
【そうだった】
【寄せ集めでもこれだけ問題児が揃うと大惨事になる良い例】
【配信者が大惨事の申し子だから】
【草】
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