286 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信
250.お爺ちゃん達と古代獣の謎②
しおりを挟む
「確か、B3で妖精誘引だったよね」
「はい。場所は私が伝えますから探偵さんは誘引お願いしますね」
「任された」
海底ダンジョンに入って、エンカウントするモンスターを薙ぎ払いながら進む。戦闘にも慣れたもので、会話しながらでも討伐は可能になった。
ここ数戦、過酷な戦いをし過ぎていたからね。
エネミーの攻撃が手ぬるく感じてしまったほどだ。
「って、B2の時点で水場になってるな。これ、このまま精霊を降ろしても良いんだろうか?」
海底ダンジョンB2。そこは既にB3へ至る道は水場の奥側へと移され、B1に上がる階段とその足場以外は水に覆われていた。
「取り敢えず水の中に入って、B3にきちんと妖精が集まってるか確認してから進みましょう」
「それもそうか。ここで先に進んでやっぱり妖精を誘引する必要があると戻る方が二度手間だしな」
「確認は大事だよね」
それぞれが言葉を浮かべて入水する。
ただしどざえもんさんは体重の制限を制御してないから、ドプン、と大きな飛沫を上げながら沈んでいった。
それを見ながら私と探偵さんは重力操作で自分のウェイトを上げていく。
B3の階段までの道のりは探偵さんのメモに記されている。
それを見ればすぐに辿り着いた。
辿り着いたけど、どざえもんさんが重すぎて浮かばないので足元に氷作成で足場を生やし、それを登ってもらう事でなんとか階段まで辿り着く。
そしてB3の暗闇の支配する場所までたどり着いて一言。
「杞憂だったね」
そう、あの暗闇はかつて探偵さんが導いた妖精誘引でこれでもかと妖精がぎゅうぎゅう詰めにされていた。
しかしここでもう一つのことが気になった。
「ここがこの通りとなると、逆に変化させたB6がどうなってるか非常に気になるよね」
当時頭痛に苛まれてナビゲートフェアリーを満足にONにできなかった場所だ。
「寄り道ついでに寄ってく?」
「良いの?」
「どうせここにテイムの秘密があるかどうかも賭けなんでしょ? だったら謎は徹底的に解明しなきゃ。この三人が集まれる日は次はいつになるかわからないしね」
それもそうだ。
私は毎日のようにログイン出来ているが、どざえもんさんは社会人。ログインはまばらで今日はたまたまログインしていたのを声をかけただけなのだ。
「それじゃあお手数ですがよろしくお願いします」
「おう」
「少年はナビゲートフェアリーをONにしておいてね?」
「……それとこれとは話が」
「言い出しっぺでしょ? 僕たちはそれに付き合ってあげるんだから。感謝してよね」
全く。感謝していればすぐこれだ。
揚げ足取りが上手なんだから。
B4は特に変化なし。元々一本道というのもあって、それほど入り組んでいる様子も見せない。
B5も同じく。
そしてB6で、私は階下に降りた瞬間足元に蹲った。
「ぐっ」
「反応は?」
「あの時よりはマシだけど、キツいのはキツいね」
「ふむ、まだ発動していないギミックがある?」
「逆に向こうを発動させることによって、こっちの扉も見えてくるとかなら良いが」
「ナビゲートフェアリー一旦切って良い?」
「そうだね。スクリーンショットに悪影響が出そうならカットして良いよ」
なにそれ。影響出なかったらそのままやれってこと?
酷いんだ。
「なんというか、探偵さんとアキカゼさんは本当に仲が良いんだな」
「「どこが?」」
二人して同じタイミングで振り向いて、苦笑いした。
私は探偵さんほど変人じゃないと自負しているけど、もしかしたらあの人も私を変な人だと思っていたのだろうか?
だとしたら心外だ。
まぁ仲が良いと呼ばれる分には良い。
昔から気が合うし、話していて楽しいのは本当だ。
「そう言うところとかそっくりだよ。なんていうか友達というより兄弟みたいな距離感を感じるんだよな」
「そこまで仲良かったっけ?」
「僕が君に振り回された回数なら残念ながら両手で数えてそれからは覚えてないね」
「なに言ってるんですかね。私だって同じくらい振り回された覚えがありますよ?」
そう言うと探偵さんは無言でペロッと舌を出した。
それじゃあ誤魔化されてあげませんからね。
「それで馴れ合える関係は築けてるだろ? 俺の世代じゃそうもいかん。特に幼少期からVR漬けだとリアルでの距離感の取り方がどうも下手くそでな」
「なるほど。どざえもんさんはVRに入り込んだのはいくつの時ですか?」
「生まれた時には身の回りにVRはあった。だからそこでの生活が当たり前だったな」
「そうですか。私は25の時ですね。リアルでどれくらい育ったかでそんな弊害が出るなんて思いもしなかったな。ね、探偵さん?」
「そうだねぇ、そう思えばうちの息子も距離の取り方が下手くそだ」
「親譲りじゃないんですか?」
「また君はそうやって揚げ足を取る」
探偵さんにやられた様にペロッと舌を出して誤魔化した。
彼は苦虫を噛みつぶすように表情を顰め、これ以上争っても平行線だと理解してどざえもんさんとの会話に戻った。
「まぁたしかに距離の取り方は僕たち世代に比べたら下手くそかもしれないね。でもそれってそんなに大事?」
「…………今の勤務先の上司を見てると俺もあんな風に上手くなりたいとは思ってる。だが、生まれた世代では俺のような奴が多く、上の代の真似をすると返って笑われたりするんだ。その板挟みでさ」
「でもどざえもん君はどざえもん君でしょ? 無理して他人のようになる必要はあるの? 別に距離感の取り方が上手くなくたって良いじゃないの。それも含めてどざえもん君だよ。うちの息子も下手くそなりに自分という個性を大事にしてるからね。僕はそんな彼を立派だと思うよ?」
「そうか。なんかすまん、急に変なこと言って。俺、このままでいいのかって悩んでたんだ」
「生きてる限り壁にぶつかるよね。分かるよ」
「特に少年は育児放棄で昭恵さんから干されてたからね。うちの妻にも愚痴が来てたよ」
「ワーーーッ」
いきなりなにを言い出すんですかこの人は!
プライバシーの侵害ですよ!?
まったくもう。
私もカネミツ君のことを出しましたけど、彼は人の家庭の事情を持ち上げてくるんですから。
ブレーキ壊れてるんじゃないんですか!?
本当に油断できない。
これだから同級生の友達は厄介だ。
妻とも面識があるからこそ、ぽろっと爆弾発言をしてくるんだもの。
「ははは、流石のアキカゼさんもこの人には負けるって感じか?」
「この人は昔から言っていいことと悪いことのブレーキが壊れてるんですよ。そうやって無駄な事言ってクラスメイトから空気が読めないと言われてました」
「君には言われたくないな」
「ふふふ、なんかこんな風に気を許せる友達が居ないからよくわからないけど、俺にもこんな友達がいたらこんなに悩まなくてもいいのかなって思えてきたよ」
「なに言ってるんですか。私は前からどざえもんさんの友達のつもりですよ?」
「それってゲーム内フレンドって意味じゃ?」
「すっかりリアルよりこっちがメインの活動場になってますから。こっちでフレンドってことはそう言うことです。それは足りませんかね?」
「どざえもん君も覚悟を決めたほうがいい。これからどんどん巻き込んでじゃんじゃん振り回してくるからね」
「負けじと振り回し返す人が何か言ってますが無視していいですよ?」
「ははは、用心はしておくよ」
軽く雑談でお茶を濁したが、緊張がほぐれたようにどざえもんさんは笑みをこぼした。
そして今の環境なら音の精霊を呼び出せそうだと呟く。
「音?」
「裏ルートでは火だったよね?」
「なんて言ったらいいか、上手い言葉が出てこないんだが、ここのエリアは向こう側に比べて小さいだろう?」
「ええ」
「ああ、反響か。密室の中で声が響くと言うやつかな? それで条件が揃ったわけだ。面白いね。そんな些細な環境一つで呼び出せる精霊が変わってくるとは」
「多分そうだと思う。俺の言いたいことをピタリと言ってくれた。すごい助かるな、ありがとう」
「昔から人の言いたいことをピタリと言い当てるのを得意技としてるからね」
「それで目立ちたがり屋だと思われてしまった節がある」
「え、わざとじゃなかったんだ?」
君、目立ちたがり屋でしょ?
「わざとなものか。ただ想像力は誰よりも豊かだと自負している。だからニュアンスを伝えてくれるだけで勝手にそれを補って形にしてるだけだよ」
「もういっそその特技を仕事に生かせばいいのに」
「だから今ライトノベルを書いてるんだろう? それにヒーローショーの売り上げも上々だ。君はもう少し僕の才能を認めてくれ給えよ」
「中学の頃の印象が強くて無理です」
「お陰で俺はすっかりムーリアン帝国の怪人で顔を覚えられてしまいましたよ」
意外にもどざえもんさんは表の顔よりヒーローショーの顔の方で知られてしまったらしい。町を歩くたびに指をさされるようだ。
「いやいや、意外にもハマり役だったよね。友情出演どころか正規で役者にならない? と言ってもアキカゼランドが開演中に限りだけど」
「普通にクランからの申請を普段から世話になってるお礼に参加させてもらってるだけだよ。別に報酬目当てじゃない」
「そっかー。くま君とかも一度敵役に当てたんだけど子供が泣いちゃってさ。それじゃあダメだって事で降りてもらったんだ。他にいい人がいないか今も探してるんだよね」
「暇な時なら手伝うのでコールください。毎日は無理ですけど」
「オッケー。そう言うことならバンバンスケジュール組むから」
「今から怖いな」
恐々としながらも仕事をこなし、音で作られた方向に私達は導かれていく。
そこは行き止まりの場所だったが、なんと隠し通路が存在しており、壁を通り抜けることができた。
以前では発掘できない類だったのだが、これも向こう側を変化させた影響かもしれないね。
そこの奥には下り階段があり、私達は降りて行くことにした。
その先で私たちを待つのは、一枚の壁画だった。
「ここに居たか、ヤマタノオロチ」
10本の首をはやし、それと対峙するレムリア人の姿が描かれた壁画である。
まさかのレムリア関連に驚きを隠しきれない。
アトランティスの穏健派が関わっていると強く期待していた。しかしかのGMが暗躍していた通り、表立って行動はしなかったのだろう。
「少年」
探偵さんの呼びかけ。そして突き出していたレムリアの器。
きっとその壁画をレムリアの器で読み取ってみろと言うのだろう。
私は倣って壁画をレムリアの器で読み取った途端、流れてくる情報の渦に飲み込まれるのだった。
「はい。場所は私が伝えますから探偵さんは誘引お願いしますね」
「任された」
海底ダンジョンに入って、エンカウントするモンスターを薙ぎ払いながら進む。戦闘にも慣れたもので、会話しながらでも討伐は可能になった。
ここ数戦、過酷な戦いをし過ぎていたからね。
エネミーの攻撃が手ぬるく感じてしまったほどだ。
「って、B2の時点で水場になってるな。これ、このまま精霊を降ろしても良いんだろうか?」
海底ダンジョンB2。そこは既にB3へ至る道は水場の奥側へと移され、B1に上がる階段とその足場以外は水に覆われていた。
「取り敢えず水の中に入って、B3にきちんと妖精が集まってるか確認してから進みましょう」
「それもそうか。ここで先に進んでやっぱり妖精を誘引する必要があると戻る方が二度手間だしな」
「確認は大事だよね」
それぞれが言葉を浮かべて入水する。
ただしどざえもんさんは体重の制限を制御してないから、ドプン、と大きな飛沫を上げながら沈んでいった。
それを見ながら私と探偵さんは重力操作で自分のウェイトを上げていく。
B3の階段までの道のりは探偵さんのメモに記されている。
それを見ればすぐに辿り着いた。
辿り着いたけど、どざえもんさんが重すぎて浮かばないので足元に氷作成で足場を生やし、それを登ってもらう事でなんとか階段まで辿り着く。
そしてB3の暗闇の支配する場所までたどり着いて一言。
「杞憂だったね」
そう、あの暗闇はかつて探偵さんが導いた妖精誘引でこれでもかと妖精がぎゅうぎゅう詰めにされていた。
しかしここでもう一つのことが気になった。
「ここがこの通りとなると、逆に変化させたB6がどうなってるか非常に気になるよね」
当時頭痛に苛まれてナビゲートフェアリーを満足にONにできなかった場所だ。
「寄り道ついでに寄ってく?」
「良いの?」
「どうせここにテイムの秘密があるかどうかも賭けなんでしょ? だったら謎は徹底的に解明しなきゃ。この三人が集まれる日は次はいつになるかわからないしね」
それもそうだ。
私は毎日のようにログイン出来ているが、どざえもんさんは社会人。ログインはまばらで今日はたまたまログインしていたのを声をかけただけなのだ。
「それじゃあお手数ですがよろしくお願いします」
「おう」
「少年はナビゲートフェアリーをONにしておいてね?」
「……それとこれとは話が」
「言い出しっぺでしょ? 僕たちはそれに付き合ってあげるんだから。感謝してよね」
全く。感謝していればすぐこれだ。
揚げ足取りが上手なんだから。
B4は特に変化なし。元々一本道というのもあって、それほど入り組んでいる様子も見せない。
B5も同じく。
そしてB6で、私は階下に降りた瞬間足元に蹲った。
「ぐっ」
「反応は?」
「あの時よりはマシだけど、キツいのはキツいね」
「ふむ、まだ発動していないギミックがある?」
「逆に向こうを発動させることによって、こっちの扉も見えてくるとかなら良いが」
「ナビゲートフェアリー一旦切って良い?」
「そうだね。スクリーンショットに悪影響が出そうならカットして良いよ」
なにそれ。影響出なかったらそのままやれってこと?
酷いんだ。
「なんというか、探偵さんとアキカゼさんは本当に仲が良いんだな」
「「どこが?」」
二人して同じタイミングで振り向いて、苦笑いした。
私は探偵さんほど変人じゃないと自負しているけど、もしかしたらあの人も私を変な人だと思っていたのだろうか?
だとしたら心外だ。
まぁ仲が良いと呼ばれる分には良い。
昔から気が合うし、話していて楽しいのは本当だ。
「そう言うところとかそっくりだよ。なんていうか友達というより兄弟みたいな距離感を感じるんだよな」
「そこまで仲良かったっけ?」
「僕が君に振り回された回数なら残念ながら両手で数えてそれからは覚えてないね」
「なに言ってるんですかね。私だって同じくらい振り回された覚えがありますよ?」
そう言うと探偵さんは無言でペロッと舌を出した。
それじゃあ誤魔化されてあげませんからね。
「それで馴れ合える関係は築けてるだろ? 俺の世代じゃそうもいかん。特に幼少期からVR漬けだとリアルでの距離感の取り方がどうも下手くそでな」
「なるほど。どざえもんさんはVRに入り込んだのはいくつの時ですか?」
「生まれた時には身の回りにVRはあった。だからそこでの生活が当たり前だったな」
「そうですか。私は25の時ですね。リアルでどれくらい育ったかでそんな弊害が出るなんて思いもしなかったな。ね、探偵さん?」
「そうだねぇ、そう思えばうちの息子も距離の取り方が下手くそだ」
「親譲りじゃないんですか?」
「また君はそうやって揚げ足を取る」
探偵さんにやられた様にペロッと舌を出して誤魔化した。
彼は苦虫を噛みつぶすように表情を顰め、これ以上争っても平行線だと理解してどざえもんさんとの会話に戻った。
「まぁたしかに距離の取り方は僕たち世代に比べたら下手くそかもしれないね。でもそれってそんなに大事?」
「…………今の勤務先の上司を見てると俺もあんな風に上手くなりたいとは思ってる。だが、生まれた世代では俺のような奴が多く、上の代の真似をすると返って笑われたりするんだ。その板挟みでさ」
「でもどざえもん君はどざえもん君でしょ? 無理して他人のようになる必要はあるの? 別に距離感の取り方が上手くなくたって良いじゃないの。それも含めてどざえもん君だよ。うちの息子も下手くそなりに自分という個性を大事にしてるからね。僕はそんな彼を立派だと思うよ?」
「そうか。なんかすまん、急に変なこと言って。俺、このままでいいのかって悩んでたんだ」
「生きてる限り壁にぶつかるよね。分かるよ」
「特に少年は育児放棄で昭恵さんから干されてたからね。うちの妻にも愚痴が来てたよ」
「ワーーーッ」
いきなりなにを言い出すんですかこの人は!
プライバシーの侵害ですよ!?
まったくもう。
私もカネミツ君のことを出しましたけど、彼は人の家庭の事情を持ち上げてくるんですから。
ブレーキ壊れてるんじゃないんですか!?
本当に油断できない。
これだから同級生の友達は厄介だ。
妻とも面識があるからこそ、ぽろっと爆弾発言をしてくるんだもの。
「ははは、流石のアキカゼさんもこの人には負けるって感じか?」
「この人は昔から言っていいことと悪いことのブレーキが壊れてるんですよ。そうやって無駄な事言ってクラスメイトから空気が読めないと言われてました」
「君には言われたくないな」
「ふふふ、なんかこんな風に気を許せる友達が居ないからよくわからないけど、俺にもこんな友達がいたらこんなに悩まなくてもいいのかなって思えてきたよ」
「なに言ってるんですか。私は前からどざえもんさんの友達のつもりですよ?」
「それってゲーム内フレンドって意味じゃ?」
「すっかりリアルよりこっちがメインの活動場になってますから。こっちでフレンドってことはそう言うことです。それは足りませんかね?」
「どざえもん君も覚悟を決めたほうがいい。これからどんどん巻き込んでじゃんじゃん振り回してくるからね」
「負けじと振り回し返す人が何か言ってますが無視していいですよ?」
「ははは、用心はしておくよ」
軽く雑談でお茶を濁したが、緊張がほぐれたようにどざえもんさんは笑みをこぼした。
そして今の環境なら音の精霊を呼び出せそうだと呟く。
「音?」
「裏ルートでは火だったよね?」
「なんて言ったらいいか、上手い言葉が出てこないんだが、ここのエリアは向こう側に比べて小さいだろう?」
「ええ」
「ああ、反響か。密室の中で声が響くと言うやつかな? それで条件が揃ったわけだ。面白いね。そんな些細な環境一つで呼び出せる精霊が変わってくるとは」
「多分そうだと思う。俺の言いたいことをピタリと言ってくれた。すごい助かるな、ありがとう」
「昔から人の言いたいことをピタリと言い当てるのを得意技としてるからね」
「それで目立ちたがり屋だと思われてしまった節がある」
「え、わざとじゃなかったんだ?」
君、目立ちたがり屋でしょ?
「わざとなものか。ただ想像力は誰よりも豊かだと自負している。だからニュアンスを伝えてくれるだけで勝手にそれを補って形にしてるだけだよ」
「もういっそその特技を仕事に生かせばいいのに」
「だから今ライトノベルを書いてるんだろう? それにヒーローショーの売り上げも上々だ。君はもう少し僕の才能を認めてくれ給えよ」
「中学の頃の印象が強くて無理です」
「お陰で俺はすっかりムーリアン帝国の怪人で顔を覚えられてしまいましたよ」
意外にもどざえもんさんは表の顔よりヒーローショーの顔の方で知られてしまったらしい。町を歩くたびに指をさされるようだ。
「いやいや、意外にもハマり役だったよね。友情出演どころか正規で役者にならない? と言ってもアキカゼランドが開演中に限りだけど」
「普通にクランからの申請を普段から世話になってるお礼に参加させてもらってるだけだよ。別に報酬目当てじゃない」
「そっかー。くま君とかも一度敵役に当てたんだけど子供が泣いちゃってさ。それじゃあダメだって事で降りてもらったんだ。他にいい人がいないか今も探してるんだよね」
「暇な時なら手伝うのでコールください。毎日は無理ですけど」
「オッケー。そう言うことならバンバンスケジュール組むから」
「今から怖いな」
恐々としながらも仕事をこなし、音で作られた方向に私達は導かれていく。
そこは行き止まりの場所だったが、なんと隠し通路が存在しており、壁を通り抜けることができた。
以前では発掘できない類だったのだが、これも向こう側を変化させた影響かもしれないね。
そこの奥には下り階段があり、私達は降りて行くことにした。
その先で私たちを待つのは、一枚の壁画だった。
「ここに居たか、ヤマタノオロチ」
10本の首をはやし、それと対峙するレムリア人の姿が描かれた壁画である。
まさかのレムリア関連に驚きを隠しきれない。
アトランティスの穏健派が関わっていると強く期待していた。しかしかのGMが暗躍していた通り、表立って行動はしなかったのだろう。
「少年」
探偵さんの呼びかけ。そして突き出していたレムリアの器。
きっとその壁画をレムリアの器で読み取ってみろと言うのだろう。
私は倣って壁画をレムリアの器で読み取った途端、流れてくる情報の渦に飲み込まれるのだった。
0
お気に入りに追加
1,986
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる