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4章 お爺ちゃんと生配信

249.お爺ちゃん達と古代獣の謎①

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「やぁ、悪いね。急に呼んじゃって」

「別にいいけど。見てたよ、配信。一応はクリアおめでとうと言っておこうか」

「なにそれ、嫌味?」


 今回の探索はとても個人的な集まりなので配信もしないし孫も呼ばない。

 ただあの時の続きが非常に気になっていた。
 全9層からなるダンジョンで、8層止まり。
 むしろ突然のアナウンスでそこで謎が終わりだと思ってしまった。

 そんなはずはない。
 私の勘はその奥にこそ隠すべき本当の秘密が眠っていると疑っている。

 今回は急に呼び寄せた形だけど、探偵さんはメカを持ち出さなければ意外とフリーな人である。
 流石にイベント中はずっとアキカゼランドに居ろとはプレイヤーも言えないわけで、自分が好きでやってる分にはいいが、自由時間は多くもらえていた。
 そんな探偵さんは、ログインさえしてればメカを動かせる。
 本当は探偵さん以外にも乗り物勢が増えてくれればいいんだけど、探偵さん程精密に娯楽を作ってくれるマニアは今のところいないので彼に頼んでいるのだ。

 ダグラスさん?
 あの人は変に凝りすぎてむしろメカ用の武器を製造してるよ。
 自分はメカを作らずにさ。
 本末転倒だけど本人は楽しんでいるからいいんじゃないかな?
 人のやりたい事にあれこれケチをつけられないよ、私は。
 だって私が一番好きなことをしてるって自覚してるからね。
 だからクラメンにも好きにやらせてあげるんだ。
 流石に損害は自己負担でやってもらいたい限りだけど。
 
 
「ははは。そんなふうに邪険にしないでよ。結局僕を呼んだのは妖精誘引のためでしょ?」

「ええ。メカはあれば便利ですけど、そこまで必要かと言われたらね? 孫達はありがたがってましたけど、私達には必要ないでしょ?」

「だね。まぁ半分以上は自慢だったからいいんだ。満足したし」


 それに付き合わされたのがあの配信だったわけだ。
 まぁ別にいいけどさ。


「すまん遅れた。俺が最後か?」


 探偵さんと雑談をしているところにどざえもんさんがやってくる。


「いやいや。急に呼んだのにも関わらず来てもらってありがとうね。実はあの時アナウンスで意識が逸れちゃったダンジョンの続きあったでしょ? あの先が気になっちゃってさ。その先の確認のためにもどざえもんさんが必要でお呼びしたんだよ」

「なるほど。やはりヤマタノオロチは一筋縄ではいかない感じなのか?」

「それはそれ。実はこんなものを見つけまして」


 私は一人で入った遺跡の壁画をスクリーショットで写した内容を二人にメール送信しながら情報の共有を図る。


「へぇ、正気を失っている……ね」

「だからテイムできないと?」

「そう考えてます」

「でもこれ、この前の配信で出てないよね? いつ撮ったの?」

「配信を終えてからですね。多分ですが負けた回数に応じてて隠し通路のありかをナビゲートフェアリー越しに教えてくれるものだと思ってます」

「じゃあこっちの遺跡自体にはなにもない可能性もあるんだ?」


 探偵さんはすぐにそうやって道を塞ぐフレーズを言う。
 ダメですよ、こっちのやる気を削ぐ様な真似しちゃ。
 集まった以上付き合ってもらいますからね!


「ないとも言い切れないんですよね。あの時はワールドアナウンスで有耶無耶になってしまった。それ以上の情報はないと思い込んでしまった。けれど実際に戦ってみればヤマタノオロチは謎だらけだ。文献とは違う生態系に、なぜ正気を失っているか。そこも良くわかってない」

「確かに。何度見ても暴走状態のヤマタノオロチをテイムするのは至難の業だ。白首の回復率がとても厄介で、あれが一匹出るだけでテイム判定が遠のく。だがそれはそれとして、君は目の前に転がったままの謎が気になって仕方ないと、そんなところだろうか?」


 全くもってその通りだ。
 テイムできない理由はこの際横に置いておくとして、そもそも私達は古代獣を知らなすぎた。

 ただのイベントボスにしてはやけにバックボーンが深く設定されてるし、そしてファストリアのヨルムンガンド然り、アトランティスから送られてきた侵略兵器の類なら、なにを狙って送り込まれたのも良くわかってない。

 ファストリアの時は古代人をムー人と決めつけていた。
 そもそもあの大陸がムーの遺跡であるとしたら、色々符合しないことが多すぎる。

 それが今陣営として解放されてるムーでのジョブだ。
 まさに蛮族! と言わんばかりのスタイルに、あの科学力が一致しない。
 むしろあれはレムリアかアトランティス側の技術。
 しかしレムリアは精神生命体。
 こちら側へのボディがあれだと仮定したら、やはりあの遺跡の古代人はアトランティス人と言う事になる。

 しかしGMでの言葉を鵜呑みにするならアトランティス人は内部分裂していた。
 保守派と穏健派だ。

 もし古代獣がアトランティス、過激派の尖兵だった場合、同じアトランティスの何かを奪おうと派遣した?
 つまり同じ科学文明を疎んで攻撃したと仮定すれば自ずと見えてくるのかもしれない。


「封印……」

「封印とは?」

「いや、私が発見したイベント。ヨルムンガンドは封印されていたんだよ」

「そう言えば古代獣は発見するまで封印されてるって話だよな?」

「僕はその時まだ参加してなかったから知らないけど、その封印が解かれた後、古代獣は街を襲ったんだよね?」

「うん。街にある何かを狙ってね」

「掲示板でムーの遺産と呼ばれてるアレだな。だが生憎と掲示板で言われてるムーの遺産と俺の知ってるムーの遺産は別物なんだけどな」

「でしょうね。私が思うに、あの技術はアトランティスのものだ。ムー人は電磁バリアやレーザーを使わない……ですよね?」

「アキカゼさんの言う通り。俺が知ってる、龍人の巫女から教えてもらった遺産は細胞レベルで浸透してる伸縮自在の宝玉とされている。ムー人に取っての心臓部分だ」

「ちょっと待って! じゃあアトランティス人は同じアトランティス人の遺跡を襲撃したの!? 何のために?」

「探偵さんはGMを直接見たでしょう?」

「ええ」


 GMという言葉を聞き、どざえもんさんは表情を顰めた。
 無理もない。ゲームマスターがプレイヤーの前に出てきたことなど未だかつてないのだから。
 しかし今はそれはどうでもいいと話を続ける。


「彼は古代アトランティス語で私にこう言いました。私は穏健派だ。過激派の連中には手を焼いた、と」

「つまり穏健派の遺跡を過激派が襲撃した?」

「そう考えると辻褄は合うんですよ」

「なら穏健派はムーと通じていた?」

「多分ですが七の試練でレムリアと連絡を取っていたのも穏健派なら……?」

「ああ、そうなると古代獣は過激派が穏健派ごとムーやレムリアを葬るために放ってきた刺客というわけか。道理でアトランティス陣営のメカニックにもメタ張ってくるわけだ」

「どういう事だ?」

「もしこのゲームのボスが居るなら、間違いなく過激派がそれに当たるという事ですよ。けれどそれは思想の問題だ。アトランティス全部が過激派だったわけではない」

「よく分からんが、これから向かう遺跡の奥にその秘密が隠されてるんだろ?」

「そうであってほしいとは思ってます」

「ダメで元々さ。基本的に探索なんてものは怪しかったら実りがなくても行動を起こすものだろう?」

「付き合わされる方はたまったもんじゃないがな」

「それでも私のわがままに付き合ってくれるどざえもんさんと探偵さんには感謝してますよ」

「なに、それについては僕は暇しなくていいからね。君と一緒にいるとハプニングが向こうからやってくる」

「違いない」


 やや諦め切った風に言わないでほしいなぁ。
 そう言いながらも状況を二人とも楽しんでいるでしょ?
 頼りにしてますよ。

 足取りは軽く、されど慎重に私達3人はファイべリオンの海底ダンジョンへと侵入した。
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