【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴|◉〻◉)

文字の大きさ
上 下
265 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

231.お爺ちゃん達とvsヨルムンガンド②

しおりを挟む
「いやー、おっきいね。全長が見えないよ」


 ヨルムンガンドの領域に入ってすぐ、山のように大きな巨体が目に入る。多分これがヨルムンガンドのボディだろう。
 叩くなら頭かな? しかしそれらしい場所は見つからない。


【余裕ブッこいてて草】
【そんなところ突っ立ってると、レーザー飛んできますよ?】

 
 はて……レーザー?
 コメント欄の内容を訝しんでると、ヨルムンガンドと思われる山頂がピカッと光った。

 ミ゛ョゥン!
 不思議な音を発しながら、レーザー光線が周囲を一薙する。
 私は即座に飛び退いて事なきを得たが、ジキンさんは光線の軌道に巻き込まれていた。


【早速1乙ですか】
【安定のキル】
【みんなが通る道】
【アキカゼさん避けてるのはさすが】

「ミラージュ★がなかったら危なかった。何あれ? 理不尽極まりないんだけど?」


 幽体離脱状態で起き上がり、一緒に私の横を並走するジキンさん。


「基本的にレイドボスですからね。ファストリアのイベントではよくこれに立ち向かおうと思えましたね、大したものです」

「ねぇ、なんで二人でいけるって思ったんですか!?」

【草】
【とんでもねぇ無茶振りだ】
【俺そんな誘い受けたら断る自信あるわ】
【これ絶対行き先事後承諾だろ】


 ガチギレするジキンさんに悪ノリするコメント欄。
 しかし転んでもタダじゃ起きない。
 ジキンさんは、何かを思いついた顔で提案した。


「あ、この状態ってもしかしてあれかも?」

「どうしました?」

「ちょっと考えついたんですが……」

「いいじゃないですか、失敗上等、どんどん挑戦しましょう」

「はい。では転身!」


 ジキンさんの掛け声と共に、天から光が舞い降りる。
 光がジキンさんと一体化すると、それは巨大化し、お座りをする犬型のロボットになった。


「お、行けました。名付けて幽体離脱コンバートとかどうです?」

「30点。ネーミングセンスが古い」

「はいはい、どうせ僕は古い人間ですよッと!」


 今度はレーザーの動きに対応し、それをジャンプして回避する。
 私は滞空中のジキンさんの肩にショートワープ。
 一緒に古代獣の全体図を見下ろした。


「おー、こうやって上から見ても大きいね。どうやって攻めようか?」

「取り敢えず殴ります」


 犬型のロボは、アバターと同じように背中に装備した棍棒を取り出し、レーザーを掻い潜りながら接敵する。


「よい、しょお!」


 バグン!
 山全体が揺れるような衝撃。
 山と同じサイズの犬型ロボットですからね、それが自分の背丈と同じサイズの棍棒を振り回すので、私なんて簡単に振り落とされますよ。


「ねぇ、このロボットって最初に見た時より大きくない?」

「大きいですよ。サイズ違いが3体あります。これが一番大きいですね。その分打撃力もトップクラスです」

「脳筋じゃないですか」

【やはり血筋】
【父ちゃん頑張るくまー】
【じぃじ! がんばれー!】
【脳筋の身内も大熱狂】
【大丈夫、戦闘特化は大体脳筋だから】


 怪獣大戦争はジキンさんに任せて、私の方も仕掛けるとしよう。


「おいで、タワー!」

[──────────!!]


 領域の主のヨルムンガンドに加え、同規格の犬型ロボット。
 それより頭一つ小さい『シャドウ強化型/タワー』
 どうすればダメージを与えられるかわからない以上、こちらも高い防御力を誇るタワーで対応だ。
 まさか時を巻き戻しては来まいと高を括り、近くの木に設置しながら再びジキンさんの肩にショートワープで戻った。


【いやいやいやいや!】
【出た! 七の試練の強化エネミー!】
【あれをテイムしてるのって実際アキカゼさんを除くと何人いる?】
【なるべく戦闘を避けるような相手だぞ? まずテイムするって発想がない】
【できちゃってるんだよなぁ……】


「おっと、ハヤテさんも仕掛けましたか。ではこっちも!新武装を出す時ですね」


 ジキンさんは棍棒を腰だめに構え、その棍棒の先端が四つに開く。仕込み銃である。
 流石はアトランティス製。
 ダサい見た目からは想像もできない光景が目の前で展開された。

 棍棒の中で光が収束し、目の前に大きなボールを作り上げる。
 しかし収束した光はいつまで経っても発射されず、その場にふわふわと浮いていた。

 あ、これ銃じゃないですね。
 ただボールをその場に作り上げるだけだ。
 しかし演出が派手なのもあり、完全にコメント欄に俺の想像していたのと違うというコメントが流れていく。


 ジキンさんはその場で振りかぶり、豪快なスイングでボールの真芯を捉え、ヨルムンガンドに直撃した。
 悪質なデッドボールでレッドカードをもらっても言い逃れ出来ないマナー違反。
 しかしここは球場でもなければ野球の試合中でもない。
 ルール無用の古代獣の領域である。

 体をくの字に曲げながら吹っ飛ぶヨルムンガンドの姿は圧巻。
 一体何をしてるんですかね、この人は。怪獣大戦争よりひどい絵面だ。


「ハッハッハ。ハイメガ粒子砲クラスの直撃は痛いでしょう? ちなみにこのボール、ホーミングします。もう一発行きますよー、そーれ!」


 ガキン!
 ドグボォオッ!

 棍棒ならぬバットを振り回す二足歩行する犬は、まごう事なきジキンさんその人だ。メカに乗ってもそのスタイルを変えないのは流石としか言いようがない。

 バットに当たった瞬間にマッハを越えてヨルムンガンドに突き刺さるエネルギーボールでいい感じに耐久を削ってますね。
 いやはや、これ私の出番ありますかね?

 ジキンさんのバッティング練習でサンドバッグになってるヨルムンガンドに同情しつつ、タワーでSTとSPを吸収していく。
 しかし耐久が三割を削りかけた時、ヨルムンガンドの行動が一変した。


「キシャァアアアア!」

 
 咆哮、そして巨大な身体を使って領域全体を暴れ回る。
 これが噂の全体攻撃か。
 しかし空を飛べる私の敵では……ってちょっと、上空に向けてビームの乱射はやめなさい!
 ふぅ、ミラージュ★がなかったらキルされてましたよ。
 危なかった。
 これを掻い潜れるテレポーターは凄まじいですね。


「あ、これ直撃くらいますね。転送!」


 ミョミョミョミョミョ……
 再びジキンさんのボディが光に包まれ、そこには見慣れたジキンさんの姿が出てくる。
 どうやら大破する前にアトランティスの格納庫に戻したようです。せっかくの攻撃手段をどうするんですか。


【判断が早いwww】
【メカニックってあんな芸当出来たっけ?】
【知らん。やってる人は見た事ない】
【この人たち自由すぎるだろ!】
【ねぇ、巨大ロボットに乗ってまで野球する人がいたことに驚き】
【そこじゃねーよ!】


「と、言うわけで。後2回くらいわざとキルされてメカ呼びますね。それまで逃げ回ります」

「ゾンビアタックですか?」

「違いますよ、幽体離脱コンバートです。間違えないでください」

「気に入ってるんですか、そのネーム」

「ええ。人にとやかく言われようと僕は僕の道を突き進むって決めましたからね。言いたい人には言わせておけばいい。この言葉はハヤテさんに教わったんですよ?」

「そうだったっけ?」

「この人自分の都合の悪いことはすぐ忘れるんで気をつけてくださいね。年寄りはボケを武器に使います」

【うちの親父も使うわ、そのテクニック】
【テクニックなのか?】
【ただの痴呆症だろ】
【急な年寄りアピールやめろ】
しおりを挟む
お読みいただきありがとうございます。ツギクルバナー
感想 1,316

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...