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4章 お爺ちゃんと生配信

224.お爺ちゃんと配信⑥

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 B6は広大なマップだった。
 しかし以前降りたB6はここまで広大ではなかったような?


「シグレ君。以前降りたB6に比べてここのマップってどう?」

「とても広いと思います。過去のデータと見合わせてみても差は歴然。全体マップの3/4ぐらいってところじゃないですか?」


 つまり以前降りた時は全体の1/4しかなかったわけか。
 それは広く感じるわけだ。

 しかしこのエリアは非常に暑い。
 前と同じダンジョンとは思えないくらいの変化だ。
 しかし火山地帯のマグマに比べればまだ優しい。
 纏わりつくような熱気もなく、マグマも吹き出してないからね。
 しかし苦手とする種族も少なくない。


「ケンタ君、炎に耐性は?」

「多少持ってるが長期間は厳しいな。じぃじだって大変だろ?」

「ジキンさんは火の契りを6まで持ってるからマグマの海で泳げるよ」

「やべー!」


 ケンタ君は目を輝かせながら自分の祖父に尊敬の念を送っている。可能と言うだけでやる意味はないのだが、そこはあえて言わない。ケンタ君と組む関係上、ジキンさんに悪口ばかりも言ってられないからね。


「ルリ。君の探索スキルで鉱脈を見つけたなら自由に動いてくれて良い。ただでさえ手探りの探索だ。何かおかしい点があればどんどん意見を出してくれ」

「良いの? 邪魔にならない?」

「ルリは優秀だとフィールも褒めてたよ。それにマリンやユーノ君ともうまく連携が取れている。邪魔になんてならないさ。でもここは未知の探索地域だ。くれぐれも無理はしすぎないように」


 コクと頭を下げるルリ。
 騒がしいマリンと違って大人しい分、こうと決めたら頑固のようだ。


「ルリちゃん、一緒に頑張ろうね」

「うん。マリンちゃんにも教えてあげる」

「私も」

「もちろんユーノも一緒だよ!」


 マリンは誰の中にも入っていける。ユーノ君は優秀だけれど引っ込み思案なところがあるからね。だからマリンのことが心配な反面羨ましいのだろう。

 さて、探索の方向性は決まった。
 あとはどざえもんさんと探偵さんと打ち合わせをする。
 シグレ君は私の付き人のように継いて回ってくれるのでパフォーマンスがしやすくて助かるよ。


「どざえもんさん、進捗は如何ですか?」

「精霊は降ろせたが、俺のランクは未だにⅢ止まりでな。一~三の焔では探知系のスキルがなくて困り果てていた」

「へぇ。それってランク毎に全属性解放されるんだ。効果はどうやって調べるの?」

「ぶっつけ本番だが? あとは言葉の意味も調べて取り敢えず使って覚える感じだ。ここは精霊使いのスキルを育てるのに最適だな。エリアによって降ろせる精霊は変わるが、普段はこんなにぽんぽん呼び出せんからな。今日は誘ってくれて助かった」

「ほうほう。それは視聴者さんにも朗報ですね」

【それ以前にこの人以外に精霊使いが居ない件】
【そんなこと言ったらテイマーの人数も少ないけどな】
【テイマーになってもアキカゼさんになれるわけじゃねーし】
【それは言えてる】

「別に私になる必要はないんじゃないの? 自分で言うのもなんだけど、私は戦うことを放棄してる人間だからね」

【知ってた】
【えっ】
【さっきまでの戦闘で活躍してた人がそれを言う?】
【戦闘が苦手な人の戦い方じゃないのよなぁ】
【むしろ今回の配信を見て設置型のエグさを知ったのですが?】


 捉え方は人それぞれだしね。
 私の感覚をその他大勢に理解してもらう必要はないか。


「じゃあこのエリアは探偵さんがしらみ潰しに……」

「またそうやって無茶振りする!」

「お爺ちゃんはいつもする側の人間だもんね」

「シグレ……」

「ほらほら。私達で怪しいところ見つけてあげますから。その場所にちょちょいと妖精誘引を、ね?」

「君の頼みは受けるけどね? あっちもこっちもと言うのは辞めてくれよ? ただでさえEPの回復は遅いんだ。さっきの風精霊のところでも8割減ったんだからね? ちょっと、背中を押さないでよ」

「はいはい、分かってますって」

【この人絶対わかってないぞ!】
【いや、分かってて強制連行してるんだ】
【口調は柔らかいのに無理矢理押し通す姿勢は見習いたくないな】
【クランマスターって割とこういう人多いぞ? もう既に決まってることだからグダグダ言わずにやれって事だよ】
【身も蓋もねーな】
【この人でさえアキカゼさんにとってこういうポジションなのが】
【いや、この人シェリルにもこの姿勢だぞ? 自分でできることはなんでもするけど、その人にしかできないことがあったら仕事でしょって言ってやらせてる】
【上司に欲しくないな】

「酷いな。私は探偵さんならやってくれると思ってるから仕事を任せてるんだよ? 出来もしない人にやらせないよ、こんな事」

【物は言いようだな】
【実際に孫達には何も任せてないもんな】
【信用されてないってこと?】

「違うよ。マリン達は経験が足りないんだ。探偵さんは経験が豊富でね。それを活かしてもらいたいと思ってる。もちろん私だって探索するし、どざえもんさんだって居る。探偵さんにだけやれなんて言ってないよ?」

【ああ、そう言う】
【そもそも初見のエリアで方向性決めるのは大事だよ。自分が何するか分からずに行動する方が危険だし】

「爺ちゃん、俺は?」

「ケンタ君はマリン達が困っているときに手を貸してあげてほしい。重いものを持つとか、彼女達では出来ないことをしてあげてほしい」

「それぐらいなら、任してくれ!」

「若い子って真っ直ぐで良いですよね。皆さんも見習ってください」

【これはナイス誘導】
【名采配ですわ】
【下手するとスキルの有無で無能扱いされるもんな】
【アキカゼさんはそういう事あまりしないから安心して見れる】
【最後の一言は余計だけどな】


 さっきと今で言ってることが違う。
 君達手のひらドリルでできてるんじゃない?
 その内掌を地面に置いただけで土を掘れるかもね。

 なんて事はさておき、どざえもんさんの検証結果が出る。
 B6はところどころ暑いものの、B3と同様にエネミーが徘徊していない。
 そんな事もあって安全に検証ができたようだ。


 一の焔〝炎煙誘導〟スモークソナー

 何かがある方向へ煙が誘ってくれる。
 ちなみに周囲から似たような煙が出るエリアだと、混ざって見えなくなるので効果が発揮してないように思うらしい。
 今までなんの意味があると思っていたが、探知系だと知れてようやく理解したらしい。

 ちなみに右の横文字はどざえもんさんが勝手に言ってるだけだ。本来の呼び名は漢字のみであり、詳細説明すらない。
 自分で試せと言わんばかりの仕様でこれには相当苦労しているらしい。なのでそれっぽい効果を名前を聞いてみんなにわかるようにして情報を乗せてるようだ。
 

 二の焔〝衝撃炎弾〟スプレッドインパクト

 これは純粋に面制圧してくる弾丸だ。
 周囲10メートルに炎属性の岩盤を打ち出すというもの。
 因みに目を鍛えてないと目視できないので発動したらまず必中らしい事。


 三の焔〝回転炎舞〟サークルフレア

 これはどちらかと言えば防御系らしい。
 自身の周囲に設置された炎が、誘引し、引火する仕組みで、自分からぶつかりに行っても引火するあたり使い勝手がいいようだ。効果は自身の周りに限るが、一歩も動かなければ火種が消えるまで有効らしい。
 しかし炎の精霊を降ろせる場所のエネミーは炎属性に高い耐性があるのが多く、有効打を与えられることが少ないとか。
 完全に死にスキルでは?
 そう思ったが、攻撃手段の少ないどざえもんさんにとっては火傷のようなスリップダメージも必要とのことだ。


「一の焔、探知系でしたか」

「どう考えてもそれっぽいのだが一つ問題があってな」

「どんな問題です?」

「周囲の熱気が強すぎてせっかくのソナーが背景に混ざる点だ」

「周囲を氷結させれば良いんじゃないですか? そういうのは探偵さんが得意だよ」

「少年……少しは自分でやりなよ」

【言われてるぞアキカゼさん!】
【ぶっちゃけ働かせすぎなんだよなぁ】
【見てて可哀想に思うもん】

「はいはい。後で自分でやればよかったと文句言わないでくださいね? では水操作★ からの~氷作成★……どんな感じです?」

【なんで足場凍った、今?】
【あれは二の試練の称号スキルだぞ。クリアすれば誰でも使える】
【へー、天空の試練か】
【つーて氷のブロック作るのと薄く氷張るのでは熟練度がものを言うけどな】
【誰でも使えるは語弊があるわ】

「探偵さんだと水を薄く展開してこれぐらいの大きさの箱を作ったりしてくれて、水操作と言えば探偵さんに任せておけば間違い無いんだよ。私はその手の操作が大雑把でね。それでも上手くいって良かったよ」

【多分初見でやれって言っても無理だと思いますよ】

「そういえばシグレも持ってたよね、水操作★」

「お爺ちゃん、ここであたしに振るのやめてよね。プレッシャーが凄いんだけど?」


 そのあとシグレ君の拙い水操作と氷作成★を堪能し、私の要求がいかに高いことを知れた視聴者達は落ち込むシグレ君に励ましのコメントを送っていた。


 一の焔で煙に誘われてマップを進むと、そこでは偶然戦闘中のマリン達と遭遇する。
 少し大きめなエネミーがおり、スピードタイプ二人じゃ攻め兼ねていた。
 その上でエネミーはスモーク型という見たことのないタイプ。
 あれ、スモーク?

 私と探偵さんは同時にどざえもんさんを見つめていた。


「なんだ? 二人して俺を見て」

「いや、この術でスモークを炊いた先で孫達がスモーク型のエネミーと戦ってましたので、あれが現れた原因はそれかなって」

「別にどざえもんさんのせいではないよ。ただ少年は些か言葉が足りな過ぎる。ここは言い方を変えよう。このエリアでは特定の場所で何か行動を起こすとエネミーとして襲ってくる。そんな仕掛けを思いついたのさ」

「ふむ。その特定の行動が煙を焚くことに繋がったか」

【この人鋭いな】
【探偵のロールプレイヤーやってるだけあるわ】
【アキカゼさんの采配は間違ってなかったか】
【優秀すぎて仕事まかせすぎだけどな】

「だから言ってるじゃない。この人は放っておいても勝手に考察するよ。彼の息子がうちのクランにいるカネミツ君だからね」

【えっ】
【えっ】
【えっ】
【カエルの子はカエルってヤツか】
【まさかワンマン検証班のカネミツのお父さんだったとは!】
【通りで色々気づくわけだ】
【本当に謎の人脈だな】
【じゃあシグレちゃんはあいつの娘ってことか】

「まあ、あたしは記者だしね。前いたクランはお父さん以外は目立たない仕組みだから。そういう意味ではここでもお父さんが目立たないけどね」

「その節はうちの息子が世話になったね。僕は彼と違って自分の好きなことしかしないから、その点はよろしく頼むよ」

「この人はただの中学の同級生なんだけどね」

【ダグラス師ですら幼馴染で片付けるからな】
【そんなこと言ったらシェリルだって娘だぞ?】
【銀姫ちゃんも孫だしな】

「そんなにおかしいかね? 私はただありのままを語っているのだけど」

【気にしないで。ただの妬みだから】
【草】
【それを本人の前で言う勇気】
【蛮勇なのか愚行なのか】

「それより手助けするんでしょ?」


 探偵さんは眼前で戦闘中の孫達を指さして促す。


「一応聞くだけ聞いてみるよ。あの子達も私たちに頼ってばかりじゃいけないとは思ってるだろうし」

「それが良い。俺としては実戦で精霊使いがどれだけ戦えるか検証したいが、別に今じゃなくて良いしな」

「ではいつでも参加できるように準備をしておこうか。手始めに食事でも、どうかな?」


 アイテムバッグから木製のテーブルとチェアを取り出した探偵さんは、視聴者が見守る中、自由に食事をはじめていた。
 そのあまりの自由さに視聴者から総ツッコミが入ったのは言うまでもないだろう。
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