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4章 お爺ちゃんと生配信
209.お爺ちゃんと陣営散歩②
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休憩を終えて私達は再度登る。全員が登るのを見て声をかけた。
「どう、食事バフ乗ると結構楽でしょ?」
「「「「「…………」」」」」
【マナの木をスキップしながら聞くな】
【コレが無自覚な煽りというやつか】
【スキップVS匍匐前進】
【一人自力で羽ばたいてるだろ、いい加減にしろ!】
【平衡感覚どうなってんだ?】
【パーティー組んだ人かわいそう】
【今日仕事で良かったぜ】
おやおや、さっきまではパーティーメンバーを羨ましがってたのに、この手のひら返しの速さは何事です?
「まぁ、冗談はともかく。輸送あるとないとじゃだいぶ違うでしょ?」
「まぁな。初回は三合目も怪しかったが、これのお陰で余裕を持って三合目も超えられた。そして食事バフでスタミナが減る要素も失せた。あとは煽りがなけりゃもう少し気分良く進めたんだが」
時短君が溜息を吐きながらこちらを見やる。
煽り? なんともけしからんことをする奴もいるもんだ。
私は周囲をきょろきょろ見回して下手人を探した。
【お前だよ!】
【後ろにゃ誰も居ねーよ!】
【居たとしても空飛べるプレイヤーのみ】
【現状アキカゼさんぐらいだろ】
【空飛べるプレイヤーは基本的にここに居ないんだよな】
【どうして?】
【混むって分かってるところ来るか?】
【確かに】
おっと私でしたか、失敬。
この程度でげんなりしてたらスズキさんのテンションについていけないよ?
あの子は普段からジキンさんと探偵さんを振り回してるからね。
「さて、そろそろ地上1000メートル地点だよ。休憩を挟むかい?」
「もう少し行きましょう。少しづつ慣れてきました」
この中ではスタミナの燃費が一番悪いランディス君が声をあげる。
「他のみんなはどうかな?」
「余裕だぜ」
「食事バフが効いてるうちに進んでしまいましょう」
「さんせー!」
「俺もそれでいいぜ」
時短君、ハーノス君、キウイさん、ギン君が順に声を上げた。
「ならば少しお手伝いしてあげよう」
「手伝いだぁ?」
「そう。もし手を滑らせても真下から追い風を打って元の場所に戻してあげるよ」
「それを移動に使うって手は?」
「ズルはダメだよ?」
それをしていいのは一の試練を乗り越えた者だけだ。
なんだったら赤の禁忌でオクト君からスクロールを買う方が早いまである。
【優しいんだか厳しいんだか】
【十分優しいだろ】
【落ちたらLP全損を考えたら優しいよ】
【そっか、落ちると即死なんだっけ】
【地上1000メートルから落下することを想定しないもんな】
【でも輸送使ってる限り重力無視なんだろ?】
【そもそも重力無視が何かさえわかってないんだが】
「重力無視は落下ダメージ無視、風の影響大のパッシヴスキルだね」
【ちょ、ズルじゃん!】
【落ちても死なない件】
【待てよ、距離の関係がある!】
【あ、そうか。距離が離れると落ちるのか】
【上手い話ばっかじゃねーのな】
「ちなみに移送は単体向けだけどスキル複合で二人までなら同時にかけられるよ。こっちは距離が関係なくて、私のスタミナが切れるまで永続的にかかるね」
【輸送もそうだけど移送の重ねがけもヤバいな】
【あれ? もしかして輸送を重ねがけすれば2パーティー行けたんじゃない?】
【天才か!】
【その手があったか!】
「それは無理でしょ。私くらいスタミナ軽減を重ねがけしてても五分で半分になるんだよ? 現実的じゃない」
【輸送だけでもスタミナ消費がアホみたいにかかるのか】
【それは流石にお願いできないな】
【妄想だけで適当言ってすいません】
「良いんだよ。一見してすごそうに聞こえるけど、使い勝手はあまり良くないからね」
そもそもスタミナゲージそのものがないことは明かさないほうがいいかな。
それくらいこのゲームにおけるスタミナの維持は重要だ。
そして頂上まで登り切ると大きな分岐点が見えてくる。
パーティーメンバーは休まずに頂上にたどり着き、いくつかのスキルが変化を遂げ、又は新しい派生先が生まれたことを表情で物語っていた。
「ここが、頂上……本当に雲しかないんですね」
「見晴らしのいい場所だろう?」
「コレがマスターやムッコロさんの見た景色……感動しました!」
「スキルの派生を確認したわ。呼吸系、確かに」
「お、俺も生えたわ」
「残念、俺は生えなかった。けど変化したスキルがいくつかある。コレがスタミナ系ってやつか」
どうやら時短君はスキル派生がなかったらしい。
ただ景色を堪能しているランディス君にキウイさん。
スキルの確認をしたハーノス君にギン君。
それぞれがそれぞれの目的を持って雲の先を見た。
「じゃあ先に青の禁忌に行くよ。着いておいで」
「え、このまま最後まで連れていってくれるんですか?」
ランディス君が雲の足場を前に怖気付く。
「そもそも今回の配信がそういう企画だからね。君たちは運が良い。ぜひ最後まで付き合ってくれ」
「俺はありがたくその話に乗らせてもらうぜ」
「私も先行視察のためにもお供いたします」
「私はムッコロ先輩のお誘いでレムリアに行くつもりでーす」
「僕はどうしようかな、取り敢えず行き先は保留で。あ、でも最後までお付き合いします」
「ま、こんな上手い話断る訳ないよな」
「ギン君は自力で行きなよ。金狼君が拗ねるよ?」
「いいのいいの、兄貴は兄貴で俺は俺。兄貴のやり方だけが正解でもないんだわ。それはそれとしてクランとして偵察はしておきたいんだよ。下の連中が情報仕入れろって煩くてな。そいつらを纏めるのもサブマスの仕事なんだよ。兄貴ほど自由にゃできないのさ」
ギン君は片手をブラブラさせながら話をまとめる。
金狼君が生真面目系なら、彼は不真面目系だね。
長男と次男でこうまで変わるか。
まぁウチの長女と次女も気難しい性格してるからね。
人の家族のことまでは口出しできないか。
「取り敢えず最初はおっかなびっくりするけど大丈夫だから体を乗せてみて」
「うっおぉ……なんか不思議な弾力があるな」
「ですね。歩きづらさはありますが、あとは慣れでしょう」
その場で雲に足を取られる時短君。
ジャンプしつつ、最適な動きを見定めるハーノス君。
プレイヤーが変われば行動も変わって見ていて飽きない。
「わぁ、ふわふわのお布団みたいです」
「わっふー、ポヨンポヨンしておもしろーい!」
ランディス君が膝立ちで弾力を確かめ、キウイさんが体全体でポヨンポヨン跳ねていた。
緩みすぎだね、この子は。
ほんの少しだけスズキさんと似たような波動を感じ取ったよ。
そしてそれを遠目で眺めるギン君にそっと近づく。
「なんだよ?」
「いや、ギン君もあの子達に混ざってきたら?」
「嫌だよ。しかもコレ配信してんだろ? 一応サブマスの面目もあるし」
「……本音は?」
「……娘がアキカゼさんのファンでよ、多分試聴するだろうから格好悪いところは見せられないんだよ」
「今頃学校でしょ?」
「これって後でまとめてアーカイブ化されるだろ?」
「されますね」
「なら尚更バカな真似は出来ねぇよ」
「親バカじゃないですか」
「放っとけ。娘は息子と違って目の中に入れても痛くないくらいに可愛いの!」
「わかります。うちも娘が三人居ますからね」
【これ、なんの話?】
【アキカゼさんとこは三姉妹だと?】
【パープルさんにシェリル、あと誰だ?】
「内緒です。あまり有名どころではないクランですからね。本人も恥ずかしがり屋で意地っ張りなので自分から言い出さないうちは私からは明かしません」
【いやいや、アキカゼさん本人が嫌でも有名人だよ】
【別に特定したからって何するわけでもないけどな】
【そりゃそうか】
【でもパープルさんもシェリルも美形だよな? 嫌でも期待が高まるんだが】
「そういうのは私が居ないところでやりなさい。親からしたらみんな可愛い娘ですよ。シェリルは私に似て気難しい性格になってしまいましたが、それでも親からしてみたら自慢の娘なんです」
【さーせん】
【調子に乗りました】
【でも気になる】
【えっ シェリルがアキカゼさん似?】
【似てる場所ある?】
【ストイックなところは似てるといえば似てるのか?】
「それよりも青の禁忌がやって来たよ。先に進んでしまおうか。ちなみに青の禁忌はマナの大木を自力到達した者の前じゃなきゃ姿を見せないから注意ね」
【なるほど】
【そういう仕掛けか】
【助かる】
青の禁忌が到着し、その背から一人飛び立って私たちの前に着地した。その美しい翼を持つ彼女は天空の巫女様だ。
「また貴方か」
「やぁ、天使さん。今日は新しい人を五人連れて来たよ。空導石はあれから順調かい?」
「うむ。其方の導きに感謝してもし足りぬくらいよ。それで、導きの船は出すか?」
「そうしてもらえると助かるな。生憎とあの時に比べて空に不慣れな人が多くてさ」
「船もなく飛んできたのは後にも先にも其方が最初で最後よ」
【天使様美しす】
【同意】
【同意】
【天使様に会いに行くだけでも青の禁忌に需要あるな】
【誰かマナの大木で定期的に店開いてくんねーかな】
【そのうち誰かがやるだろ】
【アキカゼさん以外でやれるようなクランってある?】
【うーん……】
そんなに悩むことだろうか?
どこかで飛空挺を仕入れればそういうことできそうではあるよね。元手が取れるかどうかは別として。
ウチはもう赤の禁忌に店を構えてるからね。今更マナの大木周辺でやるつもりはないよ。
私以外の五人は船に乗り込み、船は不思議な力で上へ上へと羽ばたいていく。
私はそれに着いて行くように空歩を使って空を蹴り上げた。
【アキカゼさん普通に空を飛んでる件】
【何言ってんだ? さっきから飛んでたろ?】
【地上2000メートル一切木に触れずに飛んでたんだよなぁ】
【普通に空を飛んでるのと近くに木があるのとじゃ視覚差がやばい】
【終始おふざけしてたからすっかり忘れてた】
【よくスタミナ持つよな】
【スキルの半分以上がスタミナ軽減系らしいからな】
【パッシヴ極なればこそできる芸当か】
【ツッコミどころは未だに50切ってるところだけどな】
【そういえばそうだった!】
「さて、コレが空導石です。順番にタッチしていってください」
「お、なんかゲージ増えた」
「それが天空ルートで必要不可欠なAPですね。ほぼ称号スキルの為のものですけど、重力無視を覚えたら試練を調整してみるのもいいかもしれませんね」
【APってなんなん?】
【AIR、風の力とか? よくわかんね】
【空ならSkyでSPじゃね?】
【それだとskillのSPと被るだろ】
【それもそうか】
「では天使様、一緒に赤の禁忌まで同伴お願いしますね」
【えっ天使様連れてくの?】
【NPCって動かせるんか】
「うむ。其方の事だから理由があるのであろう?」
「実はウチの妻が新しい洋服を作ったそうで。そのお披露目で呼んできてほしいと頼まれてまして」
「う、む。新作か?」
【めっちゃ目元揺らいでる】
【新作って聞いてから天使様の瞬き多くない?】
【アキカゼさんの奥様って何者?】
【只者じゃないことは確か】
「ええ、天使様に着て貰えたら彼女も喜びますし、天空人にも一目置かれましょう」
「むむ、そうか。あいわかった。姉上にも報告があった故、ついでに賛同しようぞ」
【ええっ】
【めっちゃ個人的理由で動いたぞ、この人】
【それでいいのかNPC】
【絶対お姉さんへの報告はでっち上げだろ】
【ありえる】
「では彼らにも着いて来てもらうので船の準備をお願いします」
「うむ」
【天使様めっちゃソワソワしてる】
【無表情だけど口元緩んでるの可愛い】
【可愛い】
【可愛い】
【可愛い】
「どう、食事バフ乗ると結構楽でしょ?」
「「「「「…………」」」」」
【マナの木をスキップしながら聞くな】
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【スキップVS匍匐前進】
【一人自力で羽ばたいてるだろ、いい加減にしろ!】
【平衡感覚どうなってんだ?】
【パーティー組んだ人かわいそう】
【今日仕事で良かったぜ】
おやおや、さっきまではパーティーメンバーを羨ましがってたのに、この手のひら返しの速さは何事です?
「まぁ、冗談はともかく。輸送あるとないとじゃだいぶ違うでしょ?」
「まぁな。初回は三合目も怪しかったが、これのお陰で余裕を持って三合目も超えられた。そして食事バフでスタミナが減る要素も失せた。あとは煽りがなけりゃもう少し気分良く進めたんだが」
時短君が溜息を吐きながらこちらを見やる。
煽り? なんともけしからんことをする奴もいるもんだ。
私は周囲をきょろきょろ見回して下手人を探した。
【お前だよ!】
【後ろにゃ誰も居ねーよ!】
【居たとしても空飛べるプレイヤーのみ】
【現状アキカゼさんぐらいだろ】
【空飛べるプレイヤーは基本的にここに居ないんだよな】
【どうして?】
【混むって分かってるところ来るか?】
【確かに】
おっと私でしたか、失敬。
この程度でげんなりしてたらスズキさんのテンションについていけないよ?
あの子は普段からジキンさんと探偵さんを振り回してるからね。
「さて、そろそろ地上1000メートル地点だよ。休憩を挟むかい?」
「もう少し行きましょう。少しづつ慣れてきました」
この中ではスタミナの燃費が一番悪いランディス君が声をあげる。
「他のみんなはどうかな?」
「余裕だぜ」
「食事バフが効いてるうちに進んでしまいましょう」
「さんせー!」
「俺もそれでいいぜ」
時短君、ハーノス君、キウイさん、ギン君が順に声を上げた。
「ならば少しお手伝いしてあげよう」
「手伝いだぁ?」
「そう。もし手を滑らせても真下から追い風を打って元の場所に戻してあげるよ」
「それを移動に使うって手は?」
「ズルはダメだよ?」
それをしていいのは一の試練を乗り越えた者だけだ。
なんだったら赤の禁忌でオクト君からスクロールを買う方が早いまである。
【優しいんだか厳しいんだか】
【十分優しいだろ】
【落ちたらLP全損を考えたら優しいよ】
【そっか、落ちると即死なんだっけ】
【地上1000メートルから落下することを想定しないもんな】
【でも輸送使ってる限り重力無視なんだろ?】
【そもそも重力無視が何かさえわかってないんだが】
「重力無視は落下ダメージ無視、風の影響大のパッシヴスキルだね」
【ちょ、ズルじゃん!】
【落ちても死なない件】
【待てよ、距離の関係がある!】
【あ、そうか。距離が離れると落ちるのか】
【上手い話ばっかじゃねーのな】
「ちなみに移送は単体向けだけどスキル複合で二人までなら同時にかけられるよ。こっちは距離が関係なくて、私のスタミナが切れるまで永続的にかかるね」
【輸送もそうだけど移送の重ねがけもヤバいな】
【あれ? もしかして輸送を重ねがけすれば2パーティー行けたんじゃない?】
【天才か!】
【その手があったか!】
「それは無理でしょ。私くらいスタミナ軽減を重ねがけしてても五分で半分になるんだよ? 現実的じゃない」
【輸送だけでもスタミナ消費がアホみたいにかかるのか】
【それは流石にお願いできないな】
【妄想だけで適当言ってすいません】
「良いんだよ。一見してすごそうに聞こえるけど、使い勝手はあまり良くないからね」
そもそもスタミナゲージそのものがないことは明かさないほうがいいかな。
それくらいこのゲームにおけるスタミナの維持は重要だ。
そして頂上まで登り切ると大きな分岐点が見えてくる。
パーティーメンバーは休まずに頂上にたどり着き、いくつかのスキルが変化を遂げ、又は新しい派生先が生まれたことを表情で物語っていた。
「ここが、頂上……本当に雲しかないんですね」
「見晴らしのいい場所だろう?」
「コレがマスターやムッコロさんの見た景色……感動しました!」
「スキルの派生を確認したわ。呼吸系、確かに」
「お、俺も生えたわ」
「残念、俺は生えなかった。けど変化したスキルがいくつかある。コレがスタミナ系ってやつか」
どうやら時短君はスキル派生がなかったらしい。
ただ景色を堪能しているランディス君にキウイさん。
スキルの確認をしたハーノス君にギン君。
それぞれがそれぞれの目的を持って雲の先を見た。
「じゃあ先に青の禁忌に行くよ。着いておいで」
「え、このまま最後まで連れていってくれるんですか?」
ランディス君が雲の足場を前に怖気付く。
「そもそも今回の配信がそういう企画だからね。君たちは運が良い。ぜひ最後まで付き合ってくれ」
「俺はありがたくその話に乗らせてもらうぜ」
「私も先行視察のためにもお供いたします」
「私はムッコロ先輩のお誘いでレムリアに行くつもりでーす」
「僕はどうしようかな、取り敢えず行き先は保留で。あ、でも最後までお付き合いします」
「ま、こんな上手い話断る訳ないよな」
「ギン君は自力で行きなよ。金狼君が拗ねるよ?」
「いいのいいの、兄貴は兄貴で俺は俺。兄貴のやり方だけが正解でもないんだわ。それはそれとしてクランとして偵察はしておきたいんだよ。下の連中が情報仕入れろって煩くてな。そいつらを纏めるのもサブマスの仕事なんだよ。兄貴ほど自由にゃできないのさ」
ギン君は片手をブラブラさせながら話をまとめる。
金狼君が生真面目系なら、彼は不真面目系だね。
長男と次男でこうまで変わるか。
まぁウチの長女と次女も気難しい性格してるからね。
人の家族のことまでは口出しできないか。
「取り敢えず最初はおっかなびっくりするけど大丈夫だから体を乗せてみて」
「うっおぉ……なんか不思議な弾力があるな」
「ですね。歩きづらさはありますが、あとは慣れでしょう」
その場で雲に足を取られる時短君。
ジャンプしつつ、最適な動きを見定めるハーノス君。
プレイヤーが変われば行動も変わって見ていて飽きない。
「わぁ、ふわふわのお布団みたいです」
「わっふー、ポヨンポヨンしておもしろーい!」
ランディス君が膝立ちで弾力を確かめ、キウイさんが体全体でポヨンポヨン跳ねていた。
緩みすぎだね、この子は。
ほんの少しだけスズキさんと似たような波動を感じ取ったよ。
そしてそれを遠目で眺めるギン君にそっと近づく。
「なんだよ?」
「いや、ギン君もあの子達に混ざってきたら?」
「嫌だよ。しかもコレ配信してんだろ? 一応サブマスの面目もあるし」
「……本音は?」
「……娘がアキカゼさんのファンでよ、多分試聴するだろうから格好悪いところは見せられないんだよ」
「今頃学校でしょ?」
「これって後でまとめてアーカイブ化されるだろ?」
「されますね」
「なら尚更バカな真似は出来ねぇよ」
「親バカじゃないですか」
「放っとけ。娘は息子と違って目の中に入れても痛くないくらいに可愛いの!」
「わかります。うちも娘が三人居ますからね」
【これ、なんの話?】
【アキカゼさんとこは三姉妹だと?】
【パープルさんにシェリル、あと誰だ?】
「内緒です。あまり有名どころではないクランですからね。本人も恥ずかしがり屋で意地っ張りなので自分から言い出さないうちは私からは明かしません」
【いやいや、アキカゼさん本人が嫌でも有名人だよ】
【別に特定したからって何するわけでもないけどな】
【そりゃそうか】
【でもパープルさんもシェリルも美形だよな? 嫌でも期待が高まるんだが】
「そういうのは私が居ないところでやりなさい。親からしたらみんな可愛い娘ですよ。シェリルは私に似て気難しい性格になってしまいましたが、それでも親からしてみたら自慢の娘なんです」
【さーせん】
【調子に乗りました】
【でも気になる】
【えっ シェリルがアキカゼさん似?】
【似てる場所ある?】
【ストイックなところは似てるといえば似てるのか?】
「それよりも青の禁忌がやって来たよ。先に進んでしまおうか。ちなみに青の禁忌はマナの大木を自力到達した者の前じゃなきゃ姿を見せないから注意ね」
【なるほど】
【そういう仕掛けか】
【助かる】
青の禁忌が到着し、その背から一人飛び立って私たちの前に着地した。その美しい翼を持つ彼女は天空の巫女様だ。
「また貴方か」
「やぁ、天使さん。今日は新しい人を五人連れて来たよ。空導石はあれから順調かい?」
「うむ。其方の導きに感謝してもし足りぬくらいよ。それで、導きの船は出すか?」
「そうしてもらえると助かるな。生憎とあの時に比べて空に不慣れな人が多くてさ」
「船もなく飛んできたのは後にも先にも其方が最初で最後よ」
【天使様美しす】
【同意】
【同意】
【天使様に会いに行くだけでも青の禁忌に需要あるな】
【誰かマナの大木で定期的に店開いてくんねーかな】
【そのうち誰かがやるだろ】
【アキカゼさん以外でやれるようなクランってある?】
【うーん……】
そんなに悩むことだろうか?
どこかで飛空挺を仕入れればそういうことできそうではあるよね。元手が取れるかどうかは別として。
ウチはもう赤の禁忌に店を構えてるからね。今更マナの大木周辺でやるつもりはないよ。
私以外の五人は船に乗り込み、船は不思議な力で上へ上へと羽ばたいていく。
私はそれに着いて行くように空歩を使って空を蹴り上げた。
【アキカゼさん普通に空を飛んでる件】
【何言ってんだ? さっきから飛んでたろ?】
【地上2000メートル一切木に触れずに飛んでたんだよなぁ】
【普通に空を飛んでるのと近くに木があるのとじゃ視覚差がやばい】
【終始おふざけしてたからすっかり忘れてた】
【よくスタミナ持つよな】
【スキルの半分以上がスタミナ軽減系らしいからな】
【パッシヴ極なればこそできる芸当か】
【ツッコミどころは未だに50切ってるところだけどな】
【そういえばそうだった!】
「さて、コレが空導石です。順番にタッチしていってください」
「お、なんかゲージ増えた」
「それが天空ルートで必要不可欠なAPですね。ほぼ称号スキルの為のものですけど、重力無視を覚えたら試練を調整してみるのもいいかもしれませんね」
【APってなんなん?】
【AIR、風の力とか? よくわかんね】
【空ならSkyでSPじゃね?】
【それだとskillのSPと被るだろ】
【それもそうか】
「では天使様、一緒に赤の禁忌まで同伴お願いしますね」
【えっ天使様連れてくの?】
【NPCって動かせるんか】
「うむ。其方の事だから理由があるのであろう?」
「実はウチの妻が新しい洋服を作ったそうで。そのお披露目で呼んできてほしいと頼まれてまして」
「う、む。新作か?」
【めっちゃ目元揺らいでる】
【新作って聞いてから天使様の瞬き多くない?】
【アキカゼさんの奥様って何者?】
【只者じゃないことは確か】
「ええ、天使様に着て貰えたら彼女も喜びますし、天空人にも一目置かれましょう」
「むむ、そうか。あいわかった。姉上にも報告があった故、ついでに賛同しようぞ」
【ええっ】
【めっちゃ個人的理由で動いたぞ、この人】
【それでいいのかNPC】
【絶対お姉さんへの報告はでっち上げだろ】
【ありえる】
「では彼らにも着いて来てもらうので船の準備をお願いします」
「うむ」
【天使様めっちゃソワソワしてる】
【無表情だけど口元緩んでるの可愛い】
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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