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3章 お爺ちゃんと古代の導き

204.お爺ちゃん達と[九の試練]⑥

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 何をしてもダメージが通らない。
 その特性は七の試練での[シャドウ強化型/タワー]に似通っていた。

 引き続き囮要員のスズキさんがヘイトを惹きつけてくれている。
 そこへ[シャドウ強化型/タワー]に最も効果の高い加工品『戻り草の天麩羅』を消費してみる。
 使用法はこうだ。まず各自アイテムを用意し、レムリアの器に情報を読み込ませる。

 全ての情報を読み込んだら、いつも通りに射出。
 光線として発射できる回数は決まっているので、出尽くすまで打つ。これの繰り返しである。

 ただこの戦法、相手に効いてるか判断がつかないんだよね。
 だから今も攻撃を仕掛けている三人からの連絡待ちだ。

 槍でヒットアンドアウェイを続けるスズキさん。
 無防備な頭を狙うだけのジキンさん。
 二人の援護をする探偵さん。

 この三人だけで今アトランティスの民を封殺している。
 後はその隙を狙って遠距離組に私と女性陣がレムリアの器で攻撃する。元々そのやり方だっただけに、スムーズに各自が自分のポジションを模索し始めた。
 そこでスズキさんが手応えを感じて声を上げる。


「あ、物理通りました」


 やはり『戻り草』で弱体化したか!
 それとも時間軸を戻す事によって強化された肉体が巻き戻ったのか? 何はともあれ無敵のガードが剥がれて万々歳である。


「追撃のホームラン!」


 砕く様な快音がアトランティスの民の首へクリーンヒットする。
 しかし防御が剥げても元のフィジカルが高いのか、不動のままアトランティスの民はギロリとジキンさんを睨んだ。
 咄嗟に距離を取るがもう遅い!
 伸ばされた手がジキンさんの後頭部を掴み……


「はい、足元がお留守ですよー」


 完全に意識の外からの足払いで綺麗に尻餅をついた。
 本当に気配を消すのが上手いんだから探偵さんこの人
 ジキンさんとスズキさんの離脱を確認しつつ追撃する。


「ほらほら、攻撃チャンスだよ!」


 行動で示しながらヘイトを一身に受け、下手を打ったサブマスターを完全サポート。空いた射線に別方向から光線を浴びせつつ、探偵さんの退路も取る。まさに一石二鳥。
 確実にレムリアの器ありきの攻略難易度だよね、これ。
 もしかしたらレムリアの器を持たない人用の別ルートもあるのかもしれないね。どちらにせよ今は攻撃の手を止めてる暇はないわけで。
 

「あ、ライフゲージ出てきましたね!」


 スズキさんの指摘通り、今まで見えなかったアトランティスの民の体力ゲージが現れる。
 ムーの民は最初から見えていたのにも関わらず、アトランティスの民とレムリアの民は一切出てないのが気になってたんだよね。
 レムリアの民はともかくとして、やはりアトランティスの民もギミック的なクッションがあったか。
 ゲージが見えないより、終わりの見えない戦いの方がキツいもんね。


「でも今の攻撃ですらまるで削れてる気配がないんだよね」


 探偵さんがスズキさんに相槌を打った。


「単純にダメージ与える攻撃が物理と魔法に関係してないやつじゃないですか?」


 ジキンさんが顎を擦りながら考察した。


「それか別のアイテムが必要って事だろうね。アタシらはまた守り固められない様に『戻り草』を打つから、あんた達はいろいろやってみな!」

「それしかないか」


 ランダさんの檄を受けて戦闘グループが頷いた。
 今までの行動を思い返してみても、全くヒントは隠されてない。そこで私は探偵さんにみんなに内緒であることをやってくれないかと個人コールでお願いしてみた。


『少年……正気か?』

『八の試練を思い出してみてくださいよ。あの生きてる壁も採掘できたでしょ? もしアレらがアトランティスの技術だとしたら……可能性はあります』

『まぁ一理あるか。それにもしそれがアタリならば面白そうだ』


 そんなこんなで探偵さんはレムリアの器に『採掘』を載せて貰うことにした。
 試してすぐに返事が来る。


『ビンゴだ。アトランティス鋼と言うものが手に入った』


 やはり。
 即座にその情報を妻に通達する。
 素材を生かすのはクラフターの仕事だ。


『アキエさん、アトランティスの民は採掘可能だそうだ』

『……唐突に何を言っているの?』


 本気で心配された。
 しかし諦めることなく説得する。
 意思を伝えなければいつもでも堂々巡りだ。


『まぁまぁ考えてもみてよ、八の試練のダンジョンの復元する壁は未知の素材だったでしょ? だから私は考えた。アトランティスの民の細胞も似た様な何かだったのではないかと。科学的にそれらを用いた人工細胞は私たちの生活にも取り込まれているでしょ?』

『そうね。だとしても人形生命体相手に採掘しようとする?』

『光線で打ち込めば絵面は酷くならない』


 したり顔で言ってやる。
 ついには諦める様にして妻の方が折れてくれた。


『それはそうだけど……一応ランダさんに応援頼んでみるわ。絶対驚かれると思うけど』

『うん、それで採掘出来るだけして。可能だったら錬金術か鍛治でクラフトして欲しいんだ』

『また無茶振りして来たわね。でもそれも一つの可能性というわけね?』

『時間稼ぎはこちらでする。ダメ元でいいからお願いね』

『分かったわ』


 通話を切り、ライフゲージを見ると少しだが削れていた。
 探偵さんが採掘を仕掛けた光線が当たった時のみゲージが減少している。そこで採掘回数がダメージ減少につながっているのならばと近くに寄って来たジキンさんへと声をかけた。


「ジキンさん、ツルハシ持ってる?」

「こんな時に何を言ってるんだろうこの人は……ありますけど」

「今度からそれで攻撃してみて」

「なんでそんなこと言い出したか知りませんけど、何か考えがあるんですね?」

「あ、僕もありますよ!」


 鋼鉄製のバットを背中に担ぎ、アイテムバッグからツルハシを取り出す。それをみたスズキさんもツルハシを持ち出した。
 こういう時のノリは良いよね。
 探偵さんもどこか楽しそうだ。

 
「あ、ライフゲージ削れますね!」

「しかしひどい絵面だ。訴えられたら負ける自信あるよ?」

「これ、直接打ち込むと行動阻害もするみたいです! うわははは!」


 スキルと違って成功率は悪いが、ヘイトコントロールは意外と優秀なツルハシ組。
 スズキさんが楽しそうで何よりだ。
 そこで待ちかねた情報が入ってくる。


『あなた、クラフトすると99%でビームソードが出来るんだけど、これは必要かしら?』


 99%!? それはまた高いね。
 今までの成功率の逆バージョンだ。
 名前の響きは気になるけど、まず罠だろう。


『ダメ元で1%狙いで』

『そう言うと思ったわ。一応生産は続けるからヘイトコントロールは引き続きお任せするわね』

『了解』


 さて、楽しい採掘ゲームの始まりだ。
 アトランティスの民のライフゲージはみるみる減っていくけど、減る量が少なすぎて未だに20%も切ってない。
 こうなれば回数で勝負だと私も参戦する。


「私も混ざるよ」

「生産組はなんて?」

「99%でビームソードが出来るって」

「またなんともハズレ臭い確率だ」


 だよね。探偵さんもそう思うか。
 何せ今までが1%とかだし。


「なので1%に掛けて貰ってます」

「そうだね。しかし重量のある武器だと持てる数に限度がある。案外そう言う目論見かもね?」

「つまり?」

「重量オーバー狙い」

「持てなくなったらどうなるんですか?」

「そりゃ廃棄……その場で不法投棄さ。武器職人とかも野良は売り物にもならない武器を不法投棄する輩は多いよ」

「もしそうなったら何か起こりそうですね」

「そうだね。ここは向こう側の支配下だ。削ったLPで作った武器を取り込むことぐらいはしてくるかもしれないし、一応警戒しておこう。サブマスターとスズキ君には僕から連絡をする。また女性陣から連絡が来たら教えて」

「わかりました」


 まさかまさかの可能性に、ただの採掘ゲームとは行かなくなった。その可能性も踏まえて妻に報告すると、そうなのねと重苦しい答えが返ってくる。
 流石にその可能性は予想外だったそうだ。

 ちなみに二人ともアイテムバッグは限界まで課金して重さの容量を増やしているらしい。

 ただ最悪を待つよりも、前に突き進む方がいくらかマシか。
 私は妻からトレードしてもらったビームソードをレムリアの器に読み込み、実験を開始した。

 この方法ならなんと素材が消失する代わりに効果を光線に乗せることができるのだ。
 もし相手が素材を取り込むタイプならば。
 この方法が効くかもしれない。
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