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3章 お爺ちゃんと古代の導き

201.お爺ちゃん達と[九の試練]④

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 さて困ったぞ。
 何に困ったのかといえば、数度戦っては負けてを繰り返してるうちに、戦闘がランダム且一回勝った程度じゃ終わらないことが分かったという事。


「どうすればいいと思う?」

「普通に手詰まり感出てるよね」


 だよなぁ。ここに来てガチガチの戦闘だ。
 どうしたものかと考えて、そういえば漆黒の帝と乱気流のみんなはどうしていただろうとコールしてみる。


『まだ他の試練クリアしてないから無理だ。爺さん達の攻略が早すぎるって自覚持った方がいいぜ?』

『ワシらもせめて六までは終わらしときたいの』


 との事だ。
 ついでに戦闘のプロである上位クラン勢であるシェリルに連絡を取ってみたところ。


『難しいわね』

『どうしてまた?』

『だってまだうちの一軍は全員が安定して空を飛べないもの。話を聞く限り、足場がある場所まで距離があるんでしょ?』

『あるね』

『その上真っ暗闇。方向感覚が狂うくらいの漆黒なんて未体験よ。恐慌状態に陥ってもおかしくないわ』


 それは確かにそうだ。


『でもスクロールとかでフラッシュ焚くこともできるだろう?』

『何秒持つのよそれ。アイテムは重量制限があるからそんなにたくさん持ち込めないわよ? 連続でバトルするなら奥の手で持っておきたいし、そこにばかり使えないわ』


 なんだ、頼りないね。


『人に頼むなら、むしろ父さんからアクション取るか交通手段確保するなりしたほうがいいわ』

『アクションてどんなの?』

『そうね。ゲーム配信なんてどうかしら? パープル辺りが詳しく知ってるわよ。宣伝ぐらいは協力するから、準備ができたらまた連絡頂戴』


 言うだけ言ってシェリルはコールを切ってしまった。
 ゲーム配信か。聞いた事ないな。
 早速パープルに連絡を取り入れる。


『え、ゲーム配信? 確かに知ってるけど、お父さんが配信に興味持つなんて珍しいわね』

『実は戦闘に詰まってシェリルに頼ったら見てみないことには分からないことと、交通手段の確保ができてないことを指摘されてしまってね。そこで配信してみたらどうかと提案されたんだよ』

『なるほどね。今配信はVRゲームの新しい形として初心者からプロまで多岐にわたって扱われてるわ』


 へぇ、プロとかいるんだ。ゲームなのに。

 そのあと一旦合流して説明を受けた。
 配信自体はゲームシステムにアクセスしてカメラ機能をオンにして、普通に遊べばいいようだ。あとは私を追うようにカメラが自動撮影してくれるようだ。
 プロともなると視聴者を意識した呼びかけをしたりするらしいけど、今回はちょっとした情報公開だ。
 
 そして日を開けて再び私は飛空挺に乗って九の試練へ向かった。カメラをオンにして呼びかけする。
 反応が全くなかったらどうしようかと思ったが、シェリルの宣伝もあってかコメントがいくつか見受けられた。
 コメントは視界の端に下から上に向けて流れる仕組みだ。
 少し視界が狭まるけど、今日は倒す目的じゃないからいいか。


「はい、見えていますかね? 初めましての方は初めまして。アキカゼ・ハヤテです」

【初見】
【初見】
【誰?】
【アキカゼさん生配信してるwwwどこだ、ここ?】
【なんかのイベント?】
【お爺ちゃん、バッチリ見えてるよ!:マリン】
【相変わらずメンバーが濃い】
【視聴者に銀姫ちゃんおる】


 マリンのコメントを確認して、言葉を繋げる。
 今回なぜこのような形で配信をしたのかを。


「私達は天空ルートの九の試練に来てます。何度か通ってるんですが、やはり勝てませんね~。そこで今回は配信を通して皆様にアドバイスをしていただければと思ってこんなチャンネルを開拓しました。色々ネタバレも写ってしまいますが、そこら辺はお察しください」

【ネタバレ把握】
【おけおけ】
【九の試練て何?】
【天空ルートの最深部】
【情報出てたっけ?】
【この人達が初めてやぞ】
【天空に行ける配信者自体が少ないからな】
【むしろアキカゼさんが配信するとは思わなかった】
【いつも応援してます】
【初配信でファンがいるのがアキカゼさんらしい】


 いつものメンバーを巻きで紹介しつつ、九の試練へと入っていく。


「足元はないので飛んでください。それでは早速いきましょう」

【しれっと無茶振りしてきて草】
【プレイヤーって飛べるん?】
【空では常識なんだよな】
【足場に雲すらないのか、きついな】
【他のメンバーも当たり前のように飛んでるw】
【一人ホラー演出してて腹筋痛い】
【マジで真っ暗闇だな】
【これ放送事故じゃねーの?】
【先生~、お腹痛い:マリン】


 スズキさんの視聴者サービスが好評のようです。
 30分の映像にアテレコを入れつつ説明。
 何度も見てればセリフも覚えます。特にスズキさんと探偵さんがノリノリでしたね。


【俺たちは一体何を見せられていたんだ?】
【宇宙人のラブコメ?】
【誰得なん、それ?】
【古代人らしいわよ:シェリル】
【誰が誰だか分からんが:リーガル】


 シェリル達も早速見てくれているようだ。
 フレンドさんは名前が出るので誰のコメントかいち早くわかるのがいいね。たまに配信してみるのもいいのかもしれない。


「さて、本題はここからです。バトルが始まるので、自分ならこうするってアイディアがあったら教えてくださいねー」


 各自が戦闘準備をする中、スクリーンでムー人が選ばれた。


「はい、初戦はムーの民です。パターンはあるけどよそ見厳禁なので注意です」

【お、見た事ないエネミーだ】
【いきなり巨大化してて草】
【カメラが配信者の姿追えてないんやけど?】
【アキカゼさん動かないで】
【霊装? にしてはエフェクト見えないけどまさかスキル?】
【ワープするスキルってあったっけ?】


 相手より私のスキルに驚きの声が多く上がる。
 ムーの民は『拡大⇆縮小』を使って体の一部を巨大化させたり、小さくなって姿をくらますことがある。
 でかくなる分には的が大きくなるだけなんだけど、小さすぎると見失うんだよね。厄介といえばそこが厄介だ。


「危ないぞ、少年」


 私に向かって振り上げられた手刀が巨大化して襲ってくる。
 そこへ割って入った探偵さんが受け流しで軌道を逸らし、私の真横の地面を巨大化した手が通り抜けた。
 間一髪と言ったところか。
 コメントに意識が散って注意力が散漫になっていたな。危ない危ない。


「助かりました」

「キーマンは君なんだ。先に潰れてくれるなよ?」

【全員回避上手いな】
【一人カンフーアクションしてるw】
【おい、直撃食らった魚人が爆破四散したぞ! あんな死にエフェクトあるっけ?】
【汚ねぇ花火だ】
【汚ねぇ花火だ】
【汚ねぇ花火だ】
【↑お前ら仲良いな】


 スズキさんが早速ファンサービスをしているようだ。
 しかしあのスキルはただ飛び散るだけのものじゃない。
 蘇生までのクールタイム中、その場所にヘイトが止まり続ける効果を持っていた。
 これを私達は囮アタックと呼ぶ。
 ムーの民がスズキさんの死体殴りをしてる間、私達はレムリアの器を取り出して一斉攻撃を仕掛けた。

 単体ならなんとかなるんだよ、ムーの民は。
 ちなみにだけど、初戦の相手は本来より弱体化されている。
 二戦目は通常、三戦目は全盛期の強さとなっており、どれが三つ目になるかでも勝率が変わってくる。

 ちなみにレムリアの民には当たったら負けてる。
 上位NPC特有の強さかと思われたアレは、レムリアの民の標準兵装だったと思い知る。
 当たれば即死、こちらの攻撃は武器破壊。
 理不尽の権化ここに極まれりだ。
 唯一のダメージソースがレムリアの器。その中でも私の持つver.βでの与ダメージが肝になっている。

 それでもまだ攻め足りない。防御の方は四つの指輪で作る電磁バリアが対抗手段だ。
 しかし専用フィールドがミラーコーティングしてあるのか、光線が乱反射してくるので一射で屠られかねない超強敵なのだ。

 それに比べればムーの民は攻撃パターンさえ覚えてしまえば楽ちんだ。それもこれもスズキさんの囮あってこそ。


「はい、倒しました。次ですね」


 地に倒れ伏すムーの民は、その場で砂のように崩れ去ってバトルフィールドが取り払われる。


【よく勝てたな】
【次もあるのか】
【ムーの民やべーな。地上で戦っても勝てるかわからねーわ】
【アキカゼさん、アレでパッシヴ極とか詐欺だろ】
【他の人達も普通に強くない?】
【それな。普通に戦えてる】
【なんだかんだ先駆者なのよな、この人】
【なんでクランランク未だに低いの?】
【今世紀最大の謎】


 コメント欄が最高潮に盛り上がっている所で現れたのは、レムリアの民だった。
 そのあと流れた戦闘は私達の虐殺シーンであり、戦闘開始5分も持たず全滅した。

 やっぱりレムリアの民は強敵だったよ。
 二戦目はアトランティスの民でもきついのに。
 そりゃムーの民から毛嫌いされるわけだ。
 戦ってわかるレムリアの民の理不尽さ。

 彼らはどうしてムーの民に負けたのか本気で気になった。
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