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3章 お爺ちゃんと古代の導き

195.お爺ちゃん達と龍神族の暮らし②

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「ふむ、ふむ。多くの者が徳を積んできたようじゃの。ようこそ我らが郷へ。もてなそう」

 首から紫色の石を下げた『音』の巫女は私達を同志であると認めた上で奥の座敷へ案内してくれた。

 そこで聞いた会話はどれも出回ってるものばかり。
 聴覚強化に関する物と精霊の住処に関わる物だ。
 私が欲してるものはそれじゃない。
 けれど向こう側はそれ以外の何を語る? と取り付く島もなかった。


「ところで巫女様のお召し物は素敵なデザインですね。少し拝見してもよろしいでしょうか?」


 ここで妻が仕掛けた。


「これは先代の音の巫女より色石と共に授かったものだ。あまり粗雑にしてくれるなよ?」


 向こうの態度は一定。怒った風もなく、ただちょっと嬉しそうな雰囲気をそれこそ音で感じ取る。
 まるで精霊が喜んでいるようだ。
 ここで唐突に探偵さんから個人コールが入る。


『少年、精霊のざわめきと共に妖精が集まってきてる。ちょっと試してみて良いかな?』


 試すと聞いて、何を? と思ったけどそう言えば彼には妖精誘引を与えていたっけ。GOサインを出すと探偵さんは仕掛け始める。
 私はナビゲートフェアリーを介して妖精の集う場所を見た。
 最初は巫女さんに集めているのかと思いきや、中心地は意外な事に色石の方だった。
 無言で探偵さんの方へ振り返ると、ウィンクで返された。
 これはきっと何かを察して仕掛けたな?
 
 彼は彼で独自の解釈を持つ人だから。
 個人コールで『終わったよ』とだけ返ってくる。
 巫女様が少し震えたような気がする。

 巫女服を調べていた妻からの個人コールが入った。


『あなた、どうやらビンゴみたい。この服に使われてる繊維は地上と天空のどれにも共通しない独自のものが使われてるわ』

『つまり?』

『地下独自、または古代文明が関わってるとみて間違いないわね』

『ナイスだ。交渉の要にして探ろう』

『巫女服はそうでも、巫女がどこまで知ってるかは定かじゃないと思うから慎重にね? 例えばそうね、先代様がどのような素晴らしい人かを聞いてみるとかでも良いんじゃない?』


 ここら辺まではきっとシェリルも探りを入れてるだろう。
 あとは妖精誘引で何を引けたか。


「今、先代様の記憶が降りてきました」


 ほう?
 精霊の巫女は代を変えると妖精になるのか?
 それは面白いことを聞けた。

 しかしなるほど、これはシェリルが是が非でも色んな精霊を集めたがるわけだ。
 きっと自分の効率優先で契った精霊でドツボにハマったのだな?


「どのような記憶かお尋ねしても」

「構わない。我らの祖先と天空の民が結んだ協定の一部を思い出したのだ」

「天空にもここのような文明があると?」


 いけしゃあしゃあと宣う。
 自分達こそが天空からの使者と自称しつつも、地下ルートしか知らぬと吹いて聞かせる。


「うむ、あるようじゃ。そして天の祖は我らの祖と利害関係が一致しておったそうじゃ。友好の証としてこの石を授かったと聞いている。この石と天空の祖は通じ合う、そう聞いた」

『これ、どっちのアトランティス人だと思う?』


 話を聞き、パーティーコールで全員に聞く。聞き逃してもログは残るので一安心だ。


『穏健派は精神生命体でしょ? じゃあ過激派?』

『それはないと思うわ。主人の話を鵜呑みにするならば、過激派はムー憎しで動いてるらしいし』


 探偵さんの仮定を妻がバッサリと切る。あと鵜呑みにするならばってひどくない? いや、私のも仮説だから鵜呑みにしすぎるのも危険だけどさ。言い方って者があるじゃないのさ。


『アタシは穏健派だと思うわ。アタシ達とコミュニケーション取るためにお世辞にも器用とは思えない姿で現れたでしょ?』

『不器用宣言!』

『スズキ君、久しぶりだね。そっちはどう?』

『普通ですよ。ドキドキもワクワクもなく、水上にぷかぷか浮かんでます』

『死んだ魚のような目だけは画像添付で送ってこなくて良いですよ?』

『チィッ』


 すごい舌打ちが聞こえたような気がするけど、気にしないでおこう。

 確かに過激派と龍神族の祖が手を組むなんて聞いたことがない。精霊がエネミー扱いの時点で穏健派の仕業と見て間違いない。あれ? これってもしかして彼のあの時の謎の行動はこれを見越して持たされた?


『みんな、ちょっと聞いてくれる?』

『なんですか? その全滅前に思いついちゃった! みたいな聞き方』

『まさかレムリアの器を出すつもりじゃないでしょうね?』

『ああ、そういうこと。良いんじゃないのかしら?』


 男衆からは総スカン。けれど妻からはGOサインを頂いた。
 流石、私という人間をよくわかってる。


『ちょちょちょ、アキエさんがそれ言うんですか?』

『知らなかったんですか? この人がこう聞いてきた時、だいたいやりたくて仕方がない時なんです。それに私たちの持つバージョンアップされてない方は敵対行為に当たるのでしょうけど、この人の持つバージョンβは精霊からも攻撃されてない。つまりはそういうことでしょ?』

『どういうこと?』

『精霊の存在すら、穏健派の仕業じゃないかってことです。実際私は精霊から敵対視されてませんから』
 
『少年はそういう情報こそをなんでもないことみたいに秘匿するよね?』

『こういう状況を左右しかねない情報は表に出しづらいじゃないですか』

『そりゃそうだ。僕だって秘匿する。自分の目で確かめて確信してからこうだっていうね。全く君というやつは。どれほどの情報を隠し持ってるんだろうね?』

『まぁ、そういう事でキルされる可能性が上がりますけど大丈夫ですか?』


 全員からの回答は渋々ながらといった感じでどこか諦観の念を感じた。もしこれが失敗したらずっと揶揄われるんだろうなと思いながら私はレムリアの器ver.βを取り出した。


「それは……祖先の仇の武器!!! お前は、何者だ!!?」


 巫女様は先程までの穏やかな表情を一変させ、瞳孔をかっ開きながら尋ねてきた。敵意を剥き出しにして。
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