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3章 お爺ちゃんと古代の導き

184.お爺ちゃん達と[八の試練]④

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 酷い扱いを受けた、と恨みがましそうな顔でこちらを見つめる犬獣人を他所に、私達はなんとか加工が出来ないか試している。
 基本的に徘徊型のボール型としか出会わないのでレムリアの器でパパッと処理。
 光線だから深い闇でも切り裂くし、どんなに高いところにあっても届くのでとても扱いやすく戦果を上げていた。
 お陰で冒険ランクがメキメキ上がっていくよ。
 スキルを載せれると言うことは、熟練度も上がると言うことだ。
 流石に自ら動かないのでスキル派生はしないが、それでも回数を行使する億劫さは消えた。


「よし、成功!」


 迎え撃つこと30体ほど。それと同時にランダさんから手応えありの反応が返ってきた。
 妻は失敗続きで申し訳なさそうにジキンさんに頭を下げている。良いですよ、そんな人に頭を下げなくても。


「それで、何が出来上がったのかな?」


 ウチの奥さんは凄いだろうとドヤ顔のジキンさん。
 ほら、すぐ調子に乗るんだから。


「どうも靴の様だよ。まだまだ品質は低いけど、靴にしようとすると明らかに難易度が変動したのよ。成功率はたったの1%だけどね、0%よりまだ救いがあるね」

「靴……どんな効果があるんです?」

「自分の前に魔法を反射するミラーシールドを展開する様だね。今は低品質ですぐに耐久低いけど、熟練度を上げていけば可能性はあるよ」


 つまり素材はまだまだ必要であると言っている。

 探偵さんはメモを取りつつ、私はニコニコ微笑んだ。
 ジキンさんは引き攣った笑みを浮かべながら分かりましたよ! と声を荒げた。

 移動は錬金術に夢中で動けない妻達を氷で作った床の上にクッションを敷き詰めて炬燵を敷き、その下に水の道を作ってスズキさんが牽引している。
 犬役のジキンさんを先頭に、敵が現れたら私と探偵さんが素早く排除。
 たまにスズキさんも加わってチェインアタックを繋いで冒険ポイントを荒稼ぎしまくった。

 二度目の休憩を挟み、大の字で床に寝ているジキンさんを尻目に今度は妻が声を上げる。
 同じ錬金術をしているようでも系統が異なるのだろう。
 妻が作り上げたのはブローチだった。


「私も漸く1%が引けました」

「お、やるねぇ。流石はアキ」


 ランダさんの妻に向ける信頼は厚い。

 あ、スズキさんがジキンさんを椅子にして座ってる。
 尾鰭を折り曲げて足を曲げているけど、未だにあの体型でどうやって座っているのかさっぱりわからない。
 その上で寝転がったりとやりたい放題だ。しかしジキンさんも反撃に出たようだ。
 道中迫ってくるエネミーには見事なコンビネーションで撃ち抜いていたが、すぐに喧嘩に戻るあたり仲がいいのか悪いのかよく分からない。きっと仲は良いんだろうなぁ。スズキさんは私に対してそこまで過剰に戯れてこないので少し寂しかったりするが、それはそっと懐にしまっておく。
 娘くらいの年齢の女性にじゃれつかれたいなんていったらおかしな目で見られるからね。

 そして今回は謎が多いこともあり、一旦引き上げることにした。どのように魔法を反射させるのかがわからないというのもある。
 こういう材料は好きな人に任せれば良い。
 探偵さんのメモを通って入り口までも取り、私達は船で八の試練を後にした。



「それで、僕のところに持ってきた訳と?」


 赤の禁忌に辿り着き、最寄りの生産クランに顔を出すと開口一番溜息を吐かれた。
 私=新素材と辺りを付けていたのだろう。
 白状すると良い加減にしてほしいという顔をされた。
 酷いな。新素材を優先的に回せと言ったのは君だろう?

 とは言えオクト君のお叱りの声は尤もだ。
 なんせ見つけてくるスパンが短すぎる。
 オリハルコン発見から1週間も経ってない。
 未だ採掘が難航している側から新素材だ。
 もう新素材と聞くだけでノイローゼにかかってしまったような顔色をしている。

 しかし見つかってしまったものは仕方がない。
 暫くは素材採取に専念するよと言ったら「そうしてくださればありがたいです」と胸を撫で下ろしていた。

 続けて素材の特性について話し込む。
 ウチの技術者でも成功確率1%と溢したら、物凄く嫌そうな顔をされた。
 ダグラスさんにも相談する事を提案したら「もうなんでも良いのでお願いします」と泣きそうになっている。

 素材は独占したいけど、オクト君一人に任せきりだとパンクしてしまいそうだ。ここはシェリルやフィールと話し合って地下の攻略に役立てる見積もりで動いたほうがいいだろう。


「そういえばオクト君は地下で出土した素材は知ってる?」

「名前くらいなら聞きますけど、それがどうされました?」

「もし可能ならこっちの素材と交換できないかなって思ってさ。ちなみにさっき言ってた成功率1%の装備もあるんだよね。それを交渉材料にしてみるつもりだ」

「それを先に僕に見せてくださいよ」

「うーん、見せても良いけど、また頭抱えちゃわない?」

「そ、それは……」


 少し考えた後、何かの衝動に堪えるようにしながらオクト君は喉奥から言葉を捻り出す。


「技術者の一人として、その立ち合いの席に参加を希望します」

「そりゃ家族の一員だし呼ぶよ。他にもいろんな人の意見も聞きたいな。ダグラスさんのとこのお子さんも呼ぼうか」

「なんだか大ごとになってきましたね」

「オクト君が一人で抱え込みすぎて押し潰されそうだったからね」

「誰のせいだと思ってるんですか?」


 オクト君の語気が強まる。


「ははは、それよりもこの誰の手にも余る素材の使い道を一般公開してメンバーを募って攻略させた方がいいと思わないか? それに発見しただけじゃ価値って生まれないじゃない?」

「未知数って意味では価値ありますけど、加工できる前提ですね」


 だろうね。加工できなきゃ価値は生まれない。
 難易度の高すぎる素材は技術者殺しの一面も兼ねている。
 

「と、言うわけでそのように話を進めておくよ。連絡はパープルに伝えるから君はオリハルコンの加工を頑張ってくれたまえ」

「お義父さんのせいで仕事に手がつけられなくなりそうですが、はい」


 曖昧な返事で返しつつ、オクト君は奥の部屋へと戻っていく。
 さてシェリルはすぐに連絡に応じてくれないから先にフィールを当たるか。私は表情を引き締め、娘に儲け話に乗らないかと口車を回す準備を始めた。
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