【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴|◉〻◉)

文字の大きさ
上 下
212 / 497
3章 お爺ちゃんと古代の導き

184.お爺ちゃん達と[八の試練]④

しおりを挟む
 酷い扱いを受けた、と恨みがましそうな顔でこちらを見つめる犬獣人を他所に、私達はなんとか加工が出来ないか試している。
 基本的に徘徊型のボール型としか出会わないのでレムリアの器でパパッと処理。
 光線だから深い闇でも切り裂くし、どんなに高いところにあっても届くのでとても扱いやすく戦果を上げていた。
 お陰で冒険ランクがメキメキ上がっていくよ。
 スキルを載せれると言うことは、熟練度も上がると言うことだ。
 流石に自ら動かないのでスキル派生はしないが、それでも回数を行使する億劫さは消えた。


「よし、成功!」


 迎え撃つこと30体ほど。それと同時にランダさんから手応えありの反応が返ってきた。
 妻は失敗続きで申し訳なさそうにジキンさんに頭を下げている。良いですよ、そんな人に頭を下げなくても。


「それで、何が出来上がったのかな?」


 ウチの奥さんは凄いだろうとドヤ顔のジキンさん。
 ほら、すぐ調子に乗るんだから。


「どうも靴の様だよ。まだまだ品質は低いけど、靴にしようとすると明らかに難易度が変動したのよ。成功率はたったの1%だけどね、0%よりまだ救いがあるね」

「靴……どんな効果があるんです?」

「自分の前に魔法を反射するミラーシールドを展開する様だね。今は低品質ですぐに耐久低いけど、熟練度を上げていけば可能性はあるよ」


 つまり素材はまだまだ必要であると言っている。

 探偵さんはメモを取りつつ、私はニコニコ微笑んだ。
 ジキンさんは引き攣った笑みを浮かべながら分かりましたよ! と声を荒げた。

 移動は錬金術に夢中で動けない妻達を氷で作った床の上にクッションを敷き詰めて炬燵を敷き、その下に水の道を作ってスズキさんが牽引している。
 犬役のジキンさんを先頭に、敵が現れたら私と探偵さんが素早く排除。
 たまにスズキさんも加わってチェインアタックを繋いで冒険ポイントを荒稼ぎしまくった。

 二度目の休憩を挟み、大の字で床に寝ているジキンさんを尻目に今度は妻が声を上げる。
 同じ錬金術をしているようでも系統が異なるのだろう。
 妻が作り上げたのはブローチだった。


「私も漸く1%が引けました」

「お、やるねぇ。流石はアキ」


 ランダさんの妻に向ける信頼は厚い。

 あ、スズキさんがジキンさんを椅子にして座ってる。
 尾鰭を折り曲げて足を曲げているけど、未だにあの体型でどうやって座っているのかさっぱりわからない。
 その上で寝転がったりとやりたい放題だ。しかしジキンさんも反撃に出たようだ。
 道中迫ってくるエネミーには見事なコンビネーションで撃ち抜いていたが、すぐに喧嘩に戻るあたり仲がいいのか悪いのかよく分からない。きっと仲は良いんだろうなぁ。スズキさんは私に対してそこまで過剰に戯れてこないので少し寂しかったりするが、それはそっと懐にしまっておく。
 娘くらいの年齢の女性にじゃれつかれたいなんていったらおかしな目で見られるからね。

 そして今回は謎が多いこともあり、一旦引き上げることにした。どのように魔法を反射させるのかがわからないというのもある。
 こういう材料は好きな人に任せれば良い。
 探偵さんのメモを通って入り口までも取り、私達は船で八の試練を後にした。



「それで、僕のところに持ってきた訳と?」


 赤の禁忌に辿り着き、最寄りの生産クランに顔を出すと開口一番溜息を吐かれた。
 私=新素材と辺りを付けていたのだろう。
 白状すると良い加減にしてほしいという顔をされた。
 酷いな。新素材を優先的に回せと言ったのは君だろう?

 とは言えオクト君のお叱りの声は尤もだ。
 なんせ見つけてくるスパンが短すぎる。
 オリハルコン発見から1週間も経ってない。
 未だ採掘が難航している側から新素材だ。
 もう新素材と聞くだけでノイローゼにかかってしまったような顔色をしている。

 しかし見つかってしまったものは仕方がない。
 暫くは素材採取に専念するよと言ったら「そうしてくださればありがたいです」と胸を撫で下ろしていた。

 続けて素材の特性について話し込む。
 ウチの技術者でも成功確率1%と溢したら、物凄く嫌そうな顔をされた。
 ダグラスさんにも相談する事を提案したら「もうなんでも良いのでお願いします」と泣きそうになっている。

 素材は独占したいけど、オクト君一人に任せきりだとパンクしてしまいそうだ。ここはシェリルやフィールと話し合って地下の攻略に役立てる見積もりで動いたほうがいいだろう。


「そういえばオクト君は地下で出土した素材は知ってる?」

「名前くらいなら聞きますけど、それがどうされました?」

「もし可能ならこっちの素材と交換できないかなって思ってさ。ちなみにさっき言ってた成功率1%の装備もあるんだよね。それを交渉材料にしてみるつもりだ」

「それを先に僕に見せてくださいよ」

「うーん、見せても良いけど、また頭抱えちゃわない?」

「そ、それは……」


 少し考えた後、何かの衝動に堪えるようにしながらオクト君は喉奥から言葉を捻り出す。


「技術者の一人として、その立ち合いの席に参加を希望します」

「そりゃ家族の一員だし呼ぶよ。他にもいろんな人の意見も聞きたいな。ダグラスさんのとこのお子さんも呼ぼうか」

「なんだか大ごとになってきましたね」

「オクト君が一人で抱え込みすぎて押し潰されそうだったからね」

「誰のせいだと思ってるんですか?」


 オクト君の語気が強まる。


「ははは、それよりもこの誰の手にも余る素材の使い道を一般公開してメンバーを募って攻略させた方がいいと思わないか? それに発見しただけじゃ価値って生まれないじゃない?」

「未知数って意味では価値ありますけど、加工できる前提ですね」


 だろうね。加工できなきゃ価値は生まれない。
 難易度の高すぎる素材は技術者殺しの一面も兼ねている。
 

「と、言うわけでそのように話を進めておくよ。連絡はパープルに伝えるから君はオリハルコンの加工を頑張ってくれたまえ」

「お義父さんのせいで仕事に手がつけられなくなりそうですが、はい」


 曖昧な返事で返しつつ、オクト君は奥の部屋へと戻っていく。
 さてシェリルはすぐに連絡に応じてくれないから先にフィールを当たるか。私は表情を引き締め、娘に儲け話に乗らないかと口車を回す準備を始めた。
しおりを挟む
お読みいただきありがとうございます。ツギクルバナー
感想 1,316

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...