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3章 お爺ちゃんと古代の導き

163.お爺ちゃん達と[六の試練]⑤

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「これは……!」


 天井、4面の壁、床から発見した暗号が出揃う。揃うが……


「何か判明しましたか!?」

「ああ、いや。まだだ。丁度6つの暗号を発掘したところなんだ」

「6つ? それって今までの試練と同数って事ですか?」

「私もそう思っている。今そちらに画像データを送ろう。みんなの知恵を貸して欲しい」


 掘り起こしたデータを並べていく。
『銀』『銅』『鉄』『鋼』『金』『土』
 
 方向性は鉱石関連か?
 いや、もしかしてヒントは地下ルートに合ったりするのか?
 なんて事だ。


「これは一体何を指し示しているのかですよね?」


 ジキンさんの指摘に頷く。


「パッと見れば金属の総称にも見える。順番としては土、銅、鉄、銀、金、鋼が一般的な見解だね」


 探偵さんの指摘は少し的が外れているように思う。
 それはレアリティ順に並べただけだ。
 もっと違う何かが関係しているように思った。


「うーん、まず字面で考えるのを止めることから始めて見てはどうです? 例えばなぞなぞの様に、この中から一つ仲間外れを探せ……とか?」


 スズキさんの鋭い指摘。
 迷宮入りした思考に広がるモヤが晴れ渡る様な心地になる。


「クイズ……そうか、クイズなのか。だが出題すらないのにどう答えるんだい?」

「そこまでは分かりません。ハヤテさん、他に何か発見出来ませんでした?」

「これ以外は何も……」

「本当に? 出し惜しみなしで?」


 スズキさんがこれでもかと私に迫ってくる。
 こんなに真剣な瞳を向けてきたのはあの時、真・シークレットクエストを共にしていた時くらいか。普段はおちゃらけているのに、根は真面目なんだよなぁこの人。

 そこで私は突然思い出した。
 真・シークレットクエストの出現先がどこだったかを。
 そしてそこに至るまでに何を入手していたかを。
 なまじON/OFFに出来るものだからずっと切っていたのだ。
 それが仇になっていた辺り我ながら情けない。


「探偵さん、フラッシュの巻物の予備は……」

「残り僅かだけど……その様子だと何かに気がついた様だね?」

「はい。今一度私にチャンスをください」

「付き合おう」


 探偵さんの後に続けてスクリーンショットを構える。
 ナビゲートフェアリーを起動して、網膜内に映し出された映像を写し込んでいく。
 順番に『銀』『銅』『鉄』『鋼』『金』まで写し込むが、まるで反応が見られない。
 だが最後の『土』にフェアリーの残滓がこれでもかと写りこんた。つまりこれこそが本当のキーワードなのか?


「答えは土だ!」

「土? 光と何の関係があるの?」

「土だけ鉱物じゃないってことなら……ああ、もしかして反射?」

「反射か……確かに鉱石は光を反射する。土は光を吸収こそすれ反射はしないよね。ならば土のある場所がゴールか。だが今までの風景に土のある部屋なんてあった?」

「でもこの部屋は氷でできてるよね?」

「外の光でも溶かしきれない氷ですもんね」

「いや、多分ここは雲の中だ。だから光が届かなくなってるかもしれないぞ?」

「ならば溶かして見ましょう」

「どうやって?」

「それは勿論、持ち上げるんですよ、フィールド毎」


 スズキさんはいい笑顔で言った。
 その結果……



<六の試練をクリアしました>

<称号極光の支配者を獲得しました>

<特殊スキル:陽光操作を獲得しました>

<真・シークレットクエストが進行しました2/4>

<システム:スキル複合が解放されました>

<詳しくは各町の冒険者ギルドにて説明されます>


「やったーー!!」


 スズキさんの発想の勝利というか、提案した内容は突拍子もないものだったけど、運良く一度の挑戦でゴールまで辿り着けました。


「まさかあの謎掛けの部屋自体がゴールだったとは」

「風操作でフィールド毎雲の上に押し上げるとかとんでもない力技でしたけどね」

「ハヤテさんが昔教えてくれたんですよ。使えるスキルは全部使って、それでも諦めなかった人が前に進めるんだって」


 そんなセリフ言ったかなぁ?
 まるで記憶がない。捏造とかしてないよね?


「なんかついでみたいにとんでもないシステムが解放されたけど、少年は概要知ってる?」

「知るわけないじゃないですか。ただ、複合という様に、一度の使用で異なるスキルが同時に使える様になるとかそういうのじゃないんですか?」

「つまりこの先にはそれが当たり前の難易度が待ってると」

「勘弁してください。この試練だけでもひーこら言ってるのに」

「でも使って見ないとどんなシステムかわからないですよね」

「そうですねー」


 私達は浮島よろしく浮き上がった大地を自分達で操作しながら鯨君の鼻先に出た。そこで記念撮影していくと、光に反射する様に浮かび上がるキーワードを発見。これで通算で7つ目の暗号を手に入れた。

[我は鍵にして門。天空の]赤の禁忌遺跡内で。
[お膝元、かの大地エルメ]一の試練で。
[ロイの中央に座する、暗黒]二の試練で。
[球。全ての鍵を手にし、封印されし]三の試練で。
[扉を開き導く。かの古代都市アトラ]四の試練で。
[ンティスこそ我らが故郷]五の試練で。
[そこに辿り着きし者よ、努々]六の試練で。


 まだ続きがあるか。当たり前だがこれで終わりではない。
 前半は居場所、そしてこの書き方から後半は忠告と言ったところか。


「また何か見つけたって顔して。さっさと共有してください。どうせ巻き込まれるんなら早いほうがいいです」

「酷いんだ。まぁ、巻き込む気で入るんだけどね。一度走り出した車は急に止まれない様に、この真・シークレットクエストも途中下車させません」

「出来ないじゃなくてさせない辺りが君らしい」

「ハヤテさんてやっぱり昔からそうだったんですか?」

「そうだとも。こっちがその気がなくても延々と語ってその気にさせるんだ。おかげで僕はすっかり少年探偵アキカゼマニアさ」

「えー、私はただ趣味を語っただけで、君はその時既に目をキラキラさせてたじゃない。その気がなかったとかよくそんな嘘つけるね?」

「この人は平気で他人を巻き込むくせに、すぐ自分がやらかした事を綺麗さっぱり忘れるんですよ。もう常習犯だとしか思えない」

「言われてるよ、少年?」

「言わせておけばいいんです。この人だって暗躍してなきゃ嫌でも目立つ功績立ててるくせして常に私の後ろに立とうとするんですよ?」

「犬のじぃじって何か凄いことしてたっけ?」

「普段からしてるじゃないですか。私が取り付けてきたクランの仕事の人材手配は全部この人がやってるし、経理から資金の調達、情報の管理は全部この人が勝手にやってます」

「あなたがサボるからこっちに回ってくるんでしょう?」

「えー、酷い言いがかりだ。それにそれぞれ好きに動いて良いって方針にOK出したのはサブマスターでしょ?」

「だからってマスターが率先切ってどうするんですか!」


 ジキンさんがいつもの喧嘩口調で言ってくるので挑発に乗るように迎え撃つ。
 お互い如何に優秀なのかを褒めて伸ばしつつ、合間に悪口を交えて言葉で殴り合う。高度な舌戦を繰り広げていく。


「結局この二人って……」

「似た者同士なんだよなぁ」

「やっぱり」


 後方では他人の振りをしながら探偵さんとスズキさんが浮島をコントロールして赤の禁忌の背中へと着陸する。
 突然の期間に驚かれつつ、出てきたのが私達だと知るなり囲まれた。その原因はシステムの解放のことだろう。
 輪の中からオクト君が現れ、その場を収束させると、ありがとうございますと何度も頭を下げられた。
 どうやらこのシステムは今までのスキルどころか称号スキルすら合わせることができる様で、一般プレイヤーが天空ルートに赴く際の大きな足がかりとなることが判明した。

 そしてオクト君の錬金にも新しい道が開かれた瞬間だった。
 
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