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3章 お爺ちゃんと古代の導き
156.お爺ちゃん達と[五の試練]⑤
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私達が太陽光で出来上がった地下への通路に興奮している最中、何かに気がついたもりもりハンバーグ氏が叫ぶ。
「いけない、フィールド全体が溶けかかってる! 急いで降下を」
私達はそれに倣って重力操作と水操作でフィールドを安全圏に避難させ、事なきを得ることになった。
「危ない所を助けていただきありがとうございます」
私に見せたことのない直角なお辞儀を見せるサブマスター。
なんだい、君も彼のことをすっかり気に入ってしまってるじゃないか。私の見つけたプレイヤーだと言うのに、すっかり仲間気分だ。
「ナイスな采配でした。ハンバーグ氏」
「うん、あのまま浮かれてたらせっかくの苦労がそれこそ水の泡になってたよ。ありがとうね」
「いえ、私なんかが恐れ多い」
スズキさんや探偵さんにもすっかり懐かれて困り果てるもりもりハンバーグ氏。やはり人柄の良さが彼の取り柄なのだろう。
名前とのギャップが果てしないが、それはスズキさんにも、私にも言えることだ。
「さて、この先にはどんな未知がが待っているやら」
「ここまで来て行き止まりはないでしょう」
「ワクワクしますね!」
「さぁ、少年! 進むぞぉ!」
逸る私達を他所に、申し訳なさそうな声を上げるもりもりハンバーグ氏。
「私はここに残りますね」
「遠慮しなくても良いんだよ? 一緒に行こうよ」
「十分、ご一緒させて頂きました。それと、ここのフィールドを維持する為には見張りも必要だ。私なら重力操作でそれが可能と考えました。だから、ご一緒出来ません」
そこまで考えてくれてたのか。確かに今まで注意深く上を見上げてそれを管理していた。ならば確かに全員揃って地下へ行くとそこら辺の管理が不足する。そこに即座に気付けた当たり流石考古学者。いや、もりもりハンバーグ氏の推察力の賜物か。
「それではお願いしていただいて良いですか? これはお詫びとして受け取っていただけたらありがたいです」
残りの調理アイテムを手渡しながら話をまとめていく。僕も、とごっそりダークマターを手渡すジキンさん。流石にその量は頭おかしいです。どんだけ気に入ったんですか。
「そんな、悪いですよ。でもこれはありがたく受け取っておきます。アキカゼさんの道筋に幸あらんことを」
「必ず当たりを引いてきますよ。さぁ、みんな行くよ!」
もりもりハンバーグ氏をフィールドに置いて私達は階段を下った。その先にあったのは向こうが透けて見えるほど薄い氷で覆われた逆にしたドーム型。私は早速スクリーンショットを構え、そこに浮かび上がった文字を閲覧していく。
「ふむ」
「何か分かりましたか?」
「どうやらここがゴールのようだ。暗号が出てきました。しかし赤の禁忌のボディはどこにも見えないのにどうやって?」
「きっとあの眩し過ぎる太陽が鯨くんの体に反射して、暗号をこの場所に落とし込んでるのではないかな?」
「ええ?」
「見た目がいかに海洋生物とは言え、人造兵器。それにあれほどの極光に晒されていれば嫌でもその一部がここにたどり着いてもおかしくはない。それにその方がロマンがあると思うが、どうだろう?」
結局はこじつけじゃ無いですか。
自信満々に言い切る探偵さんを他所に、私は切り落としたデータをパーティーメンバー全員へと送った。
「やっぱりアトランティスだったか。しかし大陸ごと空に上がったのか?」
考え込む探偵さん。
「逆に考えて海の中に陸を作ったんじゃ無いですか? ほら、古代人て僕らにも理解不能な超技術を持ってるらしいですし」
いつになく真面目モードなスズキさん。
「こんな所で考えてたって落ち着きませんよ。早く上に上がってハンバーグさんと合流しましょう」
高所恐怖症なのか、膝を笑わせながら考察を打ち切る宣言をしたサブマスター。
「それもそうですね。彼には今回とても世話になってます。フレンドになっても良いよって方は居ますか?」
全員が手を挙げた。満場一致というのも珍しい。
「ならば個人個人で繋がりを持ちましょうか。それと彼はどうも他人のような気がしない。どこかで知り合ってたか、どうも知ってる人っぽいんだよなぁ。誰だったかな?」
「また謎の人脈の出番ですか? ハヤテさんは一体どこでそんな御仁と知り合えるんです?」
スズキさんが腹を探るように問いかけた。
そんなんじゃないですよと言いつつも、私もどこかで引っかかっている。
「それに奇妙な縁といえば、スズキさんもそうだし、ジキンさんや探偵さんもそうだ。どこで知り合ったのって聞かれてもおかしくないメンツでしょ?」
「貴方の行動範囲が無駄に広すぎるだけでは?」
「そう言いつつも毎度付き合ってくれるじゃないですか」
「何故か放っておけないんですよね。いつの間にか目で追っていたというか。本当は本人に自覚を持っていただいた方がいいんでしょうけど」
「あ、それ分かります。僕も気づけば陸に上がってまでハヤテさんを探してましたもん」
「少年、モテモテじゃないか」
「私に全くそのつもりはないんだけどね。何故かみんなに心配されてしまっている。娘にまで言われてしまって、なんだか自信がなくなってしまうよ」
「あなたの場合は自業自得です。ほら、フレンド登録するんでしょ、元気出して」
ドン、と背中を小突かれ、危うく転びそうになった。
登り階段だから良かったものの、何してくれてるんですか、この人は!
喧嘩になりそうな所をもりもりハンバーグ氏に出迎えられ、私達は一路赤の禁忌へと戻っていく。
オクト君の店に彼を連れていくと、どうも知り合いっぽかった。
やっぱり何処かで知り合っていた?
でも何処で……?
さっぱりわからぬまま、私は妻の元へと帰った。
◆もりもりハンバーグ視点
私は今回のミッションに確かな手応えを感じて、仕入れた新規素材をクランマスターに提示した。
「お疲れ様。どう、売れそうな素材は手に入った?」
「わからないけど、オクト君は喜んでたよ」
「それなら良かったわ。後で報酬を弾まないとね」
クランマスターは少し安堵し、砕けた調子で話しを続ける。
「それで、妹からお父さんに会ったって聞いたけど?」
「うん。あの人は結婚式にきてくれた当時のままだったよ。妙に人懐っこくて、初めて会ったばかりの私にあれこれとよくしてくれた。名前と行為に関してもお咎めなしだ。このゲームをしていて初めての事だよ」
「そう、相変わらずお人好しなのね」
「君もいい加減素直になったらどうだ? 学生の頃に仲が悪いことくらい、親と娘なら誰だって身に覚えがある事だろう」
諭す私にクランマスター、妻は表情を強張らせて硬く拳を握っりこみ、強くテーブルを叩きつけながら感情を爆発させた。
「ダメなのよ、どうしても本人を前にしちゃうと!」
「難儀だなぁ。本当はお義父さん大好きな癖に」
「うるさい。あんまりこの事に言及するならボーナスは無かった事にするわよ?」
「はいはい、もう言いませんよ」
両手を上げて降参のポーズ。
そこで娘のルリがマスタールームへと入ってくるなり状況を把握。そそくさと私の元にやってきて、舌ったらずな口調で尋ねてくる。
「ママ、不機嫌?」
「ちょっとね。それよりもルリは新素材どうだった?」
「さっぱり。難し過ぎるよこのマップ。お金ジャブジャブ使うし、やっぱり私達にはまだ早いかなって」
「じゃあ今度パパと一緒に探検しに行こうか? 実は今回お爺ちゃんからあるプレゼントを貰ったんだ。これがあればルリだって楽しくなると思うぞー?」
「ほんと!? でもお爺ちゃんて?」
はて、と首を傾げる娘に私は苦笑した。
妻が頑なに実家に帰る事を拒んだ結果、彼女は私の母しか知らない。早くに病気で亡くなった父とは会っておらず、お爺ちゃんは居ないよ? と本気で心配された。
この子のためにも早く妻にはお義父さんと仲良くなってほしいものだ。
「ママにだってお婆ちゃんやお爺ちゃんが居るんだよ。ママは強情だからなかなか里帰りしたがらないけど」
「よくわかんない」
「ゆっくり理解していけば良いさ。きっとルリも気にいると思うし」
「うん……」
妻の不機嫌はいったいいつまで続くやら。そんな風に考えながら私はダークマターを摘んで口の中に放り込んだ。
異様な物質を摂取する私を見てどこか心配するような瞳を投げかけてくる娘に手渡す。
「食べる?」
「要らない。パパは平気なの?」
どうもこの外見があまりに食べ物からかけ離れすぎてて食べ物と認識されてなかったようだ。美味しいのになぁ。
「いけない、フィールド全体が溶けかかってる! 急いで降下を」
私達はそれに倣って重力操作と水操作でフィールドを安全圏に避難させ、事なきを得ることになった。
「危ない所を助けていただきありがとうございます」
私に見せたことのない直角なお辞儀を見せるサブマスター。
なんだい、君も彼のことをすっかり気に入ってしまってるじゃないか。私の見つけたプレイヤーだと言うのに、すっかり仲間気分だ。
「ナイスな采配でした。ハンバーグ氏」
「うん、あのまま浮かれてたらせっかくの苦労がそれこそ水の泡になってたよ。ありがとうね」
「いえ、私なんかが恐れ多い」
スズキさんや探偵さんにもすっかり懐かれて困り果てるもりもりハンバーグ氏。やはり人柄の良さが彼の取り柄なのだろう。
名前とのギャップが果てしないが、それはスズキさんにも、私にも言えることだ。
「さて、この先にはどんな未知がが待っているやら」
「ここまで来て行き止まりはないでしょう」
「ワクワクしますね!」
「さぁ、少年! 進むぞぉ!」
逸る私達を他所に、申し訳なさそうな声を上げるもりもりハンバーグ氏。
「私はここに残りますね」
「遠慮しなくても良いんだよ? 一緒に行こうよ」
「十分、ご一緒させて頂きました。それと、ここのフィールドを維持する為には見張りも必要だ。私なら重力操作でそれが可能と考えました。だから、ご一緒出来ません」
そこまで考えてくれてたのか。確かに今まで注意深く上を見上げてそれを管理していた。ならば確かに全員揃って地下へ行くとそこら辺の管理が不足する。そこに即座に気付けた当たり流石考古学者。いや、もりもりハンバーグ氏の推察力の賜物か。
「それではお願いしていただいて良いですか? これはお詫びとして受け取っていただけたらありがたいです」
残りの調理アイテムを手渡しながら話をまとめていく。僕も、とごっそりダークマターを手渡すジキンさん。流石にその量は頭おかしいです。どんだけ気に入ったんですか。
「そんな、悪いですよ。でもこれはありがたく受け取っておきます。アキカゼさんの道筋に幸あらんことを」
「必ず当たりを引いてきますよ。さぁ、みんな行くよ!」
もりもりハンバーグ氏をフィールドに置いて私達は階段を下った。その先にあったのは向こうが透けて見えるほど薄い氷で覆われた逆にしたドーム型。私は早速スクリーンショットを構え、そこに浮かび上がった文字を閲覧していく。
「ふむ」
「何か分かりましたか?」
「どうやらここがゴールのようだ。暗号が出てきました。しかし赤の禁忌のボディはどこにも見えないのにどうやって?」
「きっとあの眩し過ぎる太陽が鯨くんの体に反射して、暗号をこの場所に落とし込んでるのではないかな?」
「ええ?」
「見た目がいかに海洋生物とは言え、人造兵器。それにあれほどの極光に晒されていれば嫌でもその一部がここにたどり着いてもおかしくはない。それにその方がロマンがあると思うが、どうだろう?」
結局はこじつけじゃ無いですか。
自信満々に言い切る探偵さんを他所に、私は切り落としたデータをパーティーメンバー全員へと送った。
「やっぱりアトランティスだったか。しかし大陸ごと空に上がったのか?」
考え込む探偵さん。
「逆に考えて海の中に陸を作ったんじゃ無いですか? ほら、古代人て僕らにも理解不能な超技術を持ってるらしいですし」
いつになく真面目モードなスズキさん。
「こんな所で考えてたって落ち着きませんよ。早く上に上がってハンバーグさんと合流しましょう」
高所恐怖症なのか、膝を笑わせながら考察を打ち切る宣言をしたサブマスター。
「それもそうですね。彼には今回とても世話になってます。フレンドになっても良いよって方は居ますか?」
全員が手を挙げた。満場一致というのも珍しい。
「ならば個人個人で繋がりを持ちましょうか。それと彼はどうも他人のような気がしない。どこかで知り合ってたか、どうも知ってる人っぽいんだよなぁ。誰だったかな?」
「また謎の人脈の出番ですか? ハヤテさんは一体どこでそんな御仁と知り合えるんです?」
スズキさんが腹を探るように問いかけた。
そんなんじゃないですよと言いつつも、私もどこかで引っかかっている。
「それに奇妙な縁といえば、スズキさんもそうだし、ジキンさんや探偵さんもそうだ。どこで知り合ったのって聞かれてもおかしくないメンツでしょ?」
「貴方の行動範囲が無駄に広すぎるだけでは?」
「そう言いつつも毎度付き合ってくれるじゃないですか」
「何故か放っておけないんですよね。いつの間にか目で追っていたというか。本当は本人に自覚を持っていただいた方がいいんでしょうけど」
「あ、それ分かります。僕も気づけば陸に上がってまでハヤテさんを探してましたもん」
「少年、モテモテじゃないか」
「私に全くそのつもりはないんだけどね。何故かみんなに心配されてしまっている。娘にまで言われてしまって、なんだか自信がなくなってしまうよ」
「あなたの場合は自業自得です。ほら、フレンド登録するんでしょ、元気出して」
ドン、と背中を小突かれ、危うく転びそうになった。
登り階段だから良かったものの、何してくれてるんですか、この人は!
喧嘩になりそうな所をもりもりハンバーグ氏に出迎えられ、私達は一路赤の禁忌へと戻っていく。
オクト君の店に彼を連れていくと、どうも知り合いっぽかった。
やっぱり何処かで知り合っていた?
でも何処で……?
さっぱりわからぬまま、私は妻の元へと帰った。
◆もりもりハンバーグ視点
私は今回のミッションに確かな手応えを感じて、仕入れた新規素材をクランマスターに提示した。
「お疲れ様。どう、売れそうな素材は手に入った?」
「わからないけど、オクト君は喜んでたよ」
「それなら良かったわ。後で報酬を弾まないとね」
クランマスターは少し安堵し、砕けた調子で話しを続ける。
「それで、妹からお父さんに会ったって聞いたけど?」
「うん。あの人は結婚式にきてくれた当時のままだったよ。妙に人懐っこくて、初めて会ったばかりの私にあれこれとよくしてくれた。名前と行為に関してもお咎めなしだ。このゲームをしていて初めての事だよ」
「そう、相変わらずお人好しなのね」
「君もいい加減素直になったらどうだ? 学生の頃に仲が悪いことくらい、親と娘なら誰だって身に覚えがある事だろう」
諭す私にクランマスター、妻は表情を強張らせて硬く拳を握っりこみ、強くテーブルを叩きつけながら感情を爆発させた。
「ダメなのよ、どうしても本人を前にしちゃうと!」
「難儀だなぁ。本当はお義父さん大好きな癖に」
「うるさい。あんまりこの事に言及するならボーナスは無かった事にするわよ?」
「はいはい、もう言いませんよ」
両手を上げて降参のポーズ。
そこで娘のルリがマスタールームへと入ってくるなり状況を把握。そそくさと私の元にやってきて、舌ったらずな口調で尋ねてくる。
「ママ、不機嫌?」
「ちょっとね。それよりもルリは新素材どうだった?」
「さっぱり。難し過ぎるよこのマップ。お金ジャブジャブ使うし、やっぱり私達にはまだ早いかなって」
「じゃあ今度パパと一緒に探検しに行こうか? 実は今回お爺ちゃんからあるプレゼントを貰ったんだ。これがあればルリだって楽しくなると思うぞー?」
「ほんと!? でもお爺ちゃんて?」
はて、と首を傾げる娘に私は苦笑した。
妻が頑なに実家に帰る事を拒んだ結果、彼女は私の母しか知らない。早くに病気で亡くなった父とは会っておらず、お爺ちゃんは居ないよ? と本気で心配された。
この子のためにも早く妻にはお義父さんと仲良くなってほしいものだ。
「ママにだってお婆ちゃんやお爺ちゃんが居るんだよ。ママは強情だからなかなか里帰りしたがらないけど」
「よくわかんない」
「ゆっくり理解していけば良いさ。きっとルリも気にいると思うし」
「うん……」
妻の不機嫌はいったいいつまで続くやら。そんな風に考えながら私はダークマターを摘んで口の中に放り込んだ。
異様な物質を摂取する私を見てどこか心配するような瞳を投げかけてくる娘に手渡す。
「食べる?」
「要らない。パパは平気なの?」
どうもこの外見があまりに食べ物からかけ離れすぎてて食べ物と認識されてなかったようだ。美味しいのになぁ。
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