166 / 497
3章 お爺ちゃんと古代の導き
143.お爺ちゃん達と[四の試練]③
しおりを挟む探偵さんと合流してから早速称号だけ貰いに行くと、そこで同じ試練に参加する挑戦者と遭遇した。
「おや師父氏。これからチャレンジですか?」
「はい。アキカゼさんに抜かされてばかりなのでここいらで追い越していこうかと弟子達と共に」
「押忍、我ら同門はアキカゼさんに多大なる恩を受けました。なので試練突破こそがその恩義に報いる手段だと師から聞かされています」
「ふむ、いいね。そうこなくちゃ。四の試練は水と氷の二面性を持つ試練だ。そして見える全てが本当ではない。ちなみにここまでは古代語で入場前に知らされるテキストだ。クリアした目線から言えば嘘は言ってないなと思うよ?」
「同時にそれだけでもないと、聞こえますが?」
「さてどうでしょうか。それをどう捉え、どう答えを出すかは個人差によります。乱気流の皆さんがどんな答えを導くか、楽しみに待っていますね」
「その期待に応えてみせよう」
師父氏は片手を上げて門下生と共に乗り込んでいき、そのまま落下した。
うん、知ってた。
「いい感じの出発だったのに、初っ端でくじけませんかね?」
探偵さんが落ちていく彼らを見送りながらそんな言葉を溢した。
「逆にああいう人たちは常日頃から逆境に身をおいてきた人たちだから、あれぐらいでくじけることはないと思うけどなぁ。それに一度の失敗でくじけるような人を私が誘うとでも?」
「いいや。なんだかんだ君の人を見る目は確かだからね」
そうこうしてる間に戻って来ました。
落下中にログアウトして再度ログインして登って来たんだろうね。手際がいい。でもどうやって四の試練まで来たんだろうと思いきや、うちの飛空挺がちょうどオクトくんと合流して出航するところに便乗したらしいです。一応協力関係という事で載せて貰ったようですね。
そして何食わぬ顔で挨拶して来ました。
この人相当面の皮厚いですよ。
「おはよう御座いますアキカゼさん。本日はいいお日和で」
「そうですね」
やっぱり。この人さっきの事を記憶から消しましたよ。
仕方ないので同じ会話を繰り返して見送りました。
今度は危なげなく水操作を使っていきましたね。
飛空挺が地上に無い事でこれ以上の失敗はできないと覚悟が完了してるみたいです。
それにしてもすごいのが師父氏だけでなく、門下生達も使える事でしょうか。
あの人の野望は誰にでも扱える統一流派だと語っていましたから。
「さて、僕たちも行きますか?」
探偵さんが血気盛んにこちらに目を向ける。
ちなみに私とジキンさんはあまり乗り気ではない。
ただでさえミラージュ★を回数分使い切っているのもあり、非常に気が重いのである。
フェイク★に至っては使うまもなく圧殺されたと言って過言ではない。シャドウ型の数が異様に多く、普段あの数をお目にかかることはない。過去に一度対面したことがあるとすれば、ファストリアの大型レイドボス討伐戦以来か。
だから怖いんだよなぁ。
そこがあのイベントと繋がってそうで。
◇
「これがフェイクか★。なるほど、面白いな」
「わーい、僕にもフェイク★生えましたー」
わざと落ちて天井の氷に沿ってゴールへたどり着く。
相変わらず鯨の体はこちら側からでは観測できない。
やっぱり上のルートもクリアする必要があるのか。
「さて、検証の乗り込みますよ」
「のりこめー^ ^」
ハイなテンションではしゃぐ探偵さんとスズキさん。
馬が合うと言うか、結構似てるところがあるんですよね、あの二人。
▽▽▽▽▽▽▽
検証と銘打っているように、今回はそれぞれが役割を与えられて行動している。私はスクリーンショットと古代語の読み取り。
スズキさんは気配察知。そして探偵さんは過去情報とのすり合わせだ。本人が直接掲示板を見なくとも、優秀な部活(ミチザネ氏)が欲しい情報を纏めてくれるのでそれと見合わせているらしい。楽してるよね、君も。
「これ、僕ここに居る意味ありますか?」
ジキンさんがクゥンと鳴いた。
そうは言いますけど、連れてかないと貴方拗ねるじゃないですか。
一応この中で一番攻撃力高いんだから居てくださいよ。
どうせ暇でしょ?
目でそう訴えると仕方ないですねと呆れたように肩をすくめる。全く素直じゃないんだから。
「シャドウ型は物理は効かないのでジキンさんにはこれを渡しておきますね」
そう言って探偵さんは未来的なおもちゃのハンドガンを手渡している。楕円形にとってがついており、銃身は先端が丸くなっている。
「なんですか、その奇抜なデザインのアイテムは」
「探偵七つ道具の一つ。自動スクロール読み取り機だ。銃の上が丁度スクロールの台座になっていて、セットして引き金を引くとスクロールが開く。銃口からスクロールの効果が絞って射出される優れものさ」
「なにそれ私も欲しい!」
「ダメダメ、少年には違う役割があるでしょ?」
「羨ましいですか?」
フフフとここに来て自慢するジキンさん。
その顔ときたら憎たらしさ120%で横面を引っ叩きたくなってしまうほどです。
「別に。今回は貴方にお譲りするだけです。私には役目がありますからね!」
「それ、一応僕のなんだけどなぁ」
勝者と敗者のすぐ横で、所有者の力なき声が呟く。
「敵影5。こっちに来ます」
そこでスズキさんの凛とした声が響いた。
ジキンさんが凄腕のガンマンの如き面構えで銃を構えていますが、絵面が酷いですね、これ。
是非スクリーンショットに収めてブログで取り上げてやりましょう。
私がそんな妄想で苦笑してる隙に戦闘は始まっていた。
1
お気に入りに追加
1,988
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下
七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」
死の床で陛下はわたくしに謝りました。
「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」
でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~
黒鴉宙ニ
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」
自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。
全然関係ない第三者がおこなっていく復讐?
そこまでざまぁ要素は強くないです。
最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる