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3章 お爺ちゃんと古代の導き
132.お爺ちゃん達と[三の試練]⑤
しおりを挟むまっすぐ歩いて行くと十字路に出た。
あれ? こんな場所あったっけ?
「どうみます?」
「僕たちは確かT字路を左に来たはずです。なので右に行けば入り口に戻るはず」
「なら左に行けば?」
「もしかしたらそこが新しいルートなのかもしれません」
探偵さんが顎に手を添えながら答える。
だよね、普通はそう考える。
でも僕たちは結構迷った。まったくもって同じ場所に戻ってきたと言う確証はない。ゴールよりも先にスタートを見つけるのが急務なのだ。
「しかし時間やアイテムのストック的には余裕がある。右がゴールと決まったわけでもない。左にも進んでみよう」
「あ、急に帰り道が確定したからってこの人欲を出しましたよ?」
ジキンさんお得意の揚げ足だ。
しかし私はそれに取り合わない。
「まだスタート地点に戻れる確証もないのに、この人は何をイキっているのでしょうか。私達が進むべき道かどうかの確認をするだけですよ。一応画像を残しておきますね。太陽の位置で場所を確認させます」
「賢い選択だ。仮に十字路だったとしても、自分たちの北方向がそれでわかるからね」
「その通り。エネミーに関しては任せますのでよろしくお願いしますね」
「はーい」
元気のいいスズキさんの返事だけがその場で帰ってきた。
他の人たちは言われるまでもないと言いたげに肩を竦める。
「そう言えばアキ、気付いた?」
「何がです?」
「太陽を隠したルートで拾った素材は色が変わってることに」
「そう言えば……妙に白っぽいなとは思っていました」
「これは味覚や食感にも変化あると見ていいかもね?」
「なるほど。面白くなってきましたね」
「そうだよ、調理っていうのは奥深いんだ」
「アキエさーん、そろそろ戦闘入りまーす。準備、準備を」
端っこの方で食材談義をしていた奥様方達に、ワタワタとスズキさんが駆け寄って「水を出してくださーい」催促しに行く。
さっきあれだけ元気よく答えていたのに、やっぱり安定した足場がないと能力の半分も出せないのは彼女の一番の問題点だね。
その様子を見守りながら、私達は行き止まりに辿り着く。
「あら、ハズレ?」
「いや、どうかな?」
私は確信にも似た言葉を思い浮かべた。
だって雲で覆った景色の先に、例の鯨さんがいたからだ。
何故か体の尾鰭のあたりが写っていたのでここがゴールで違いない。
スクリーンショットで撮影し、浮かび上がった言葉を全員にメール送信した。
[球。全ての鍵を手にし、封印されし__]
これを順番に並べると、どこかで見たワードが出てきた。
[我は鍵にして門。天空のお膝元、かの大地エルメロイの中央に座する、暗黒球。全ての鍵を手にし、封印されし]
どう考えても赤の聖獣様のことだよね、これ?
暗黒球とか遺跡の奥にあったあのブラックホールだとしか思えないし。やはりあそこが門だったか。って言うか大地?
聖獣様はまぁ大地と言えば大地なのか?
それともまったく別の場所にこれと同じものがある?
うーん、わからん。
「ここはゴールではないという暗示かな? でもたどり着くだけじゃスキルは手に入らない?」
「かもしれません。もっと他の場所を探す必要がありますね」
「でも今日は一旦帰りましょう。暗号も獲得できましたし、女性陣は素材を早く使ってみたくてしかたなさそうです」
「ですねー。暗号以外は案外なんとか他のプレイヤーでもなんとかなりそうですし」
「はい」
帰りは鯨さんに沿って浮上して行くだけで楽チンだった。
オババ様に帰宅の案内を済ませ、それぞれが自分たちのやりたいことをし始める。
私は入手した情報をうちの情報統括を兼ねてるミチザネ氏を通して協力体制を敷いたクランに連絡させた。
どうも私は知ってる前提で話すので彼らに三割も話が通じないとのことで、彼を通して話してもらってる。
やはり同じ世代というのもあって話が弾むようだった。
ちなみにその手の情報を欲してるのは基本的にオクト君と金狼氏くらいで、他の人たちはそこまででもないらしい。
まぁ山本氏は飛行機さえ作れる環境にあれば他はどうでも良かったりするしね。
イスカ氏はもう空でやりたいことは終わったろうし、師父氏は空導力の研鑽を積むのが楽しくて仕方がないと言った感じだ。
今は空導力を完璧にマスターしたそうにしてたし、今余計な情報を入れて混乱させても申し訳ないしね。
その日はランダさんの新作をオババ様と競うように突きながら、ログアウトするまで過ごした。
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