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3章 お爺ちゃんと古代の導き

124.お爺ちゃん、ボートで木に登る

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 取り敢えずパーティを組んで真・シークレットクエストを始める。各自にアナウンスが入ったらしく、みんなギョッとしながらこっちをみていた。何、その顔?


「ちょっとマスター。今聞き捨てならないアナウンスが聞こえてきたんですが?」

「わー、懐かしいですね。これってハヤテさんと例の場所に行った時に出た奴だ」

「ちょっとスズちゃん、その話詳しく」

「えーと……」


 何やら意味深なスズキさんの言葉が飛び火して無駄にヘイトを取ってしまったようだ。視線で助け舟を出されたので訳を説明したら、何とか納得してくれた。


「だったら普通に仰ってください。そんな風に濁されたら勘ぐってしまいます」

「だって、スズキさん」

「だって古代遺跡関連て秘匿情報の類じゃないですか。僕が勝手に喋って良いものか判断がつかないのでああした感じです」


 確かに彼女からすれば発見したのは私だ。
 それを彼女は私に悪いと思って口を閉ざしてくれたのだな。
 まぁ、知れたところで行ける人達は限られているので教えてしまっても良いような気がするんだけどね。


「それであなた。行くのは良いんですけど、私達木登りは得意ではありませんよ?」


 妻の言葉に全員が項垂れるように首を下げた。
 一応そこら辺は考えてあるよ。


「そうだね、前回使った『移送』をパワーアップさせた『輸送』というのがある。これを使ってみんなの重力をゼロにし、特殊スキル『水操作★』でプールを作る。みんなはそこを泳いで行ってくれ」


 私の発言に探偵さんが挙手をする。


「少年、ツッコミところ満載のところ悪いが服は濡れないのかい?」

「ゲームなんだから濡れる訳ないでしょ。海底神殿に行った時も特に濡れなかったよ」

「ならば良いけど。しかし水泳か、卒業してからとんとご無沙汰してたが泳げるかな?」

「私のスキルで下から上に流してるから勝手に前に進むよ。その上重力は無いから勝手に体は浮くんだ。みんなは手を動かすぐらいで良いと思うよ」

「なるほど、それならば多少はいけるな」


 探偵さんはうまく丸め込めた。
 スズキさんはもとより水の中は得意分野。
 妻達は少し困ったように眉を下げている。
 きっと乗り物とかが有れば良いんだろうな。

 私は方々に連絡を入れ、ボートとオールをオクトくん経由で入手することに成功した。
 単独でマナの大木の麓まで来てもらい、トレードで引き取る。「何に使うんですか?」と尋ねられたけど、次のブログの目玉だよと言ったら納得してくれた。


「よし!」

「よし! じゃありませんよ。今何を精錬の騎士さんとトレードしてたんですか?」


 鋭いツッコミがジキンさんの口から放たれる。
 私は言わせないでよと言いたげに木の頂上に向かって表面より数センチ浮かせた場所に水の道を作り、二台のボートを浮かべた。
 妻とランダさん、ジキンさんと探偵さんにオールを手渡してニッコリ微笑む。


「さぁ、これで問題は解決だな!」

「ハヤテさーん、僕のは?」

「スズキさんは泳げるじゃないですか」

「そうですけど、ボートに乗りたかったなーって」

「じゃあ帰りに乗ってみます?」

「良いんですか?」

「はい。何だったら雲の上でボートに乗っても良いですし」

「それはそれで何だか恥ずかしいので遠慮します」

「それは残念だ」


 苦笑しながら嫌がる二人組の背中を押してボートに乗り込ませ、オールを動かすように促した。
 こうすれば自力到達になるだろう。

 途中でプレイヤーに遭遇したので水操作で二方向に分散させてプレイヤーさんを避けて、だれもいないのを確認しながら合流させる。スズキさんはその後を追うようにゆっくり泳いで着いてきていた。

 APが尽きてきたので中腹で休憩する。
 それぞれが手持ちの調理アイテムを消費して、ゲージ回復に努めていた。後は私のAP回復待ちだ。
 常に出しっぱなしだから消費が激しくて仕方がない。
 早くAP回復が可能な調理アイテムが出て欲しいものだ。


「どうですか、船の旅は?」

「まさかそれで木登りするとは思いもしませんでしたけどね。これ絶対掲示板で噂される奴ですよ?」

「いいじゃないですか、それくらい。そのスキルが欲しいと思わせたら勝ちです。今度ブログにも載せるので、事前の拡散は望むところだよ」

「わざとやってたんですか! 呆れるなぁ」

「まぁ少年らしいといえばらしいな。宣伝してくれと頼むより、見せた方が人の興味を惹きやすいものだ」

「私達は楽しかったけど、他の方からしてみれば楽してるみたいで悪いわ。もっとどうにかならなかったの?」

「生憎と手持ちのスキルじゃこれが精一杯です。それに木登りの不得手と水泳の弊害を持ち出したのは誰でしたっけ?」

「それはそうだけど……」


 おや、落ち込んでしまったようだ。
 これじゃあ私が悪者だ。


「悪いね、もっとみんなの意見を聞いてから進めるべきだった」

「いえ、相談されても最適解は出せなかったわ。我儘言ってごめんなさい」

「そうだね。確かに木登りを必死にしてる人達にとってあたし達は楽をしてるように見えた。でもアキは何にも悪くないよ。馬鹿正直に木登りに拘ってたプレイヤーが悪いんだ。ウチのマスターはそう言ってるのさ」

「そうなの?」

「それも一理あるよ。私は木登りしたけど、スキルを使うなり得意分野で楽するなりもっとやり方はあると思うんだ。それで自力到達さえすれば、妖精達は歓迎してくれる。それを教える伝手が残念だが私にはこれしか浮かばなかった」

「そういう意味なのね。分かったわ今度は私達でもう少し考えてみましょうか。水ならば私も出せるもの。あなたばかりに頼る訳にもいかないわ」

「SPは間に合うの?」

「ずっとは無理よ。あ、これはずっと張ってるという意味なのね? ごめんなさい、私達はそれを知らずに結構無理をさせてたみたいね」

「いやいや、私は得意なことを率先してるだけだよ。逆にいえばこれしか出来ないんだ。今は私にやらせてくれ。君のスキルはエネミーが出てきた時にでも用立ててくれれば良いさ」

「そうさせてもらいます」


 少し気落ちしたように見えたけど、すぐに笑顔を見せてくれた。ジキンさんは奥さんの手料理に舌鼓を打っている。
 探偵さんは珍しくスズキさんに話しかけていた。
 前までは毛嫌いしていた様に見えたのに、いつの間に仲良くなったんだろう?

 まぁ、喧嘩されるよりはいいか。
 APが回復次第水面を張り、私達はボートを使って無事に頂上まで到達した。

 みんなの顔を見れば何かスキルに変化があったのがわかる。
 

「それじゃあ行こうか?」


 私の掛け声に元気いっぱい返事をして雲の上を相変わらずボートでついてくる4名。スズキさんは歩いて来てるのに、君たちときたら……
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