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3章 お爺ちゃんと古代の導き

104.お爺ちゃんと孫⑥

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「来るぞ!」


 いち早く声をあげたのは金狼。次に自らの祖父からのメッセージに気づいたマリンだった。
 纏め上げられた闇が拳の形を用いて大地へと降り注ぐ。
 数は4つ。
 二つをマリンとケンタが弾き、残るは二つを金狼が睨みつける。今ここで動けば霊装が無駄になる。
 だがそこで思ったよりも早く、待ち侘びた声が届いた。


「出来た。下がって──『フラッシュバン』の巻物!」


 声と同時に横に飛び退いた金狼の肌を、想像以上の熱量が襲う。確かに光形の巻物を頼んだが、出来上がった品は自分が望んだものより二つ三つ格上だった。
 それをたった三分で……いや、それよりも早く作り上げたかつてのライバルに生唾を飲み込む。
 オクト。
 格下だと、自分が守ってやらなければいけない存在だと思っていた相手が自分と肩を並べて歩ける存在だと金狼は認識を改める。


「助かった」

「まだ初撃を防いだだけで大袈裟な」


 そう言ってオクトは金狼へと巻物を三つ手渡した。
 自分に手渡されたものを確認して再度目を顰める。
 そこにあったのは今し方使われたものと同じ巻物……光系等最上位攻撃魔法『フラッシュバン』のそれだった。


「なんです、変な顔をして。いつ僕がたった一個のものを作るのに三分もかけると言いました?」

「いや、俺がお前の存在を随分と下に見ていたのだと再認識させられただけだ」

「ああ、まあそれは生産職のサガって奴です。戦闘面ではなんの役には立ちませんからね」


 返す言葉は皮肉。
 そんな事はないと取り消そうと金狼は言葉を被せようと思ったが、直ぐに首を横に振った。今の彼にお世辞を言っても無駄だと悟ったからだ。だから自らが誇れる言葉で飾って示す。


「謙遜のしすぎは損だぞ?」

「そうですか。覚えておきます」


 影の攻撃に少し遅れて待ち人が降り立つ。事前に上へと登っていたアキカゼ・ハヤテだ。


「……良かった。初撃は防いでくれた様だね」

「爺さん。俺が今のでくたばると思ったのか?」

「まさか。私が気にしているのはいつだって孫の心配だよ」

「そうかよ」


 金狼が不遜げに笑う。
 立ち変わる様にオクトが言葉を送った。


「お義父さん、ご無事で」

「やぁ、オクト君」

「お爺ちゃん!」

「ハヤテさん!」


 連続で声をかけられ、アキカゼ・ハヤテは返事代わりに微笑んだ。


「さて、反撃といこうか」


 不適に笑う少年の言葉に、その場にいるパーティメンバーは面を喰らった様に凝視した。


「攻略法はあんのかよ?」


 金狼の言葉にハヤテは確信ありと頷いた。


「私のスキルには、数秒その場に影を踏み固めるものがある。これがきっと攻略の鍵だ」

「相変わらずだね、お爺ちゃん。そんなスキル、霊装系でも見た事ないよ?」

「流石に全てとはいかないがね。まぁすぐに手本を見せよう」


 マリンの言葉になんでもないかの様に返すと共に向き直り、今もなお天に巣食う影の一部が降り立った方へと視線を送る。


「さぁ、古代からのメッセンジャーよ。君は私達の何を試すのかな?」

『──VOHOLOOOOLOOOHOOO!』

 両手を広げ、我はここにありと叫ぶアキカゼ・ハヤテに対し漆黒の化物は唸る様に声を上げた。



 ◆



 捉えた!
 私のスクリーンショットは化物の声を素早く拾い上げ、その言葉を翻訳する。


『我は執行者。禁忌の地へと赴く愚か者へと罰を与える者』

「ふむ。欲しい答えとは違うな」


 もっと叩かねば出ては来ないか?


「今ので何か分かったのですか?」

「うん、取り敢えず彼はひどく不機嫌な様だ。彼の気にいる結果を御所望の様だね」

「つまり?」

「力を示せ、と」

「そう言うのは得意分野だぜ、なあ親父? じいじ?」


 私の言葉に質問してきたオクト君に意味を教えてやると、押し黙っていたケンタ君がようやく口を開いた。
 やっと自分でも話に参加できる話題が出てきて嬉しいのだろう。彼の瞳は爛々と輝いている。しかし今まであった慢心はどこにもない。少し私が席を外している内に何かあった様だね。
 マリンに目配せすると、首を横に振って肩を竦める。
 彼女の采配だと言う事は勘付いていたが、特に彼女からの返答はない様だ。
 

「さて、次の攻撃に備えようか」
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