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3章 お爺ちゃんと古代の導き
102.お爺ちゃんと孫④
しおりを挟む戦闘フィールドに入った瞬間、上空から風を感じた。
フィールドの広さ自体は前と変わらないものの、エネミーの姿はそこになく、マリンは見上げるように上空を見つめている。
すぐに異変に気づいた金狼氏が声を上げた。
「嬢ちゃん、今すぐに既知の情報との差異を教えろ! 出来るだけ細かく」
戦闘態勢を取りながらも同じように上を見据えて唸り声を上げる。ケンタ君は不安顔。対してジキンさんはキョトン顔だ。
ちょっと、そこ。余裕持ちすぎですよ?
「う、うん。まず私の知ってる情報では、エネミーのタイプはスワンプマン型だったの。だからフィールドに入った時点で眼前に居た。でも、今はいない。それが今回一番大きな差異」
「天井の高さは?」
「ここまで高くなかった」
「チッ、空が実装されてフィールドもそちら側に寄せられたか? 爺さん、空に登って敵状視察は可能か?」
「ああ、そう言うのは任せてくれ」
「現状で空に登れるのはあんただけだ。それと“精錬の”ッ、後方サポートは任せて良いんだよな?」
「勿論さ。僕は今回脳筋だらけの君たちに合わせてヒーラーとして来ている。冷めてしまったが妻の調理も潤沢にある。素材も豊富に持ってきた。足りない分はその場で錬金して見せよう。生産だけで派生させた“85”のスキル群、特とお見せしようじゃないか」
「そりゃ心強いぜ。うちらの戦闘スタイルは基本的にLP、SP、STをバカ喰いする。根っこのEN回復は最優先事項だから俺も息子も道具袋は調理系しか入れてない」
「私は?」
「ケンタと一緒に臨機応変。削りは俺がやる。親父! 止めは任せるぞッ!」
「お前ら、僕に接待プレイをさせる気か?」
「バーカ、親父がそんなので喜ぶわけないことなんて俺ら息子連中は全員が“よく知っている”だから俺らは前座だ。締めはビシッと頼むぜ? いつものようにガツンと一発キツイの決めてくれや」
金狼氏がニヤリと笑いながらジキンさんに話しかける。
ジキンさんも嬉しいのだろう。悪態をつきながらもそれに応じた。
「バカ息子供が。無理だけはするなよ?」
「そう言うのは経験則でカバーする。ケンタはここで今すぐに成長しろ。嬢ちゃんもだ! 爺さんは敵の形状と行動パターンを教えてくれるだけで良い。周囲への指示はこっちで回す」
「分かった」
やはりリーダーだな。
生産のリーダーと戦闘のリーダーでは状況判断力が大きく違うが、どちらも同じように頼もしい。
ジキンさんもどこか緊張を押し殺した面持ちで武器を構えている。では私も仕事をしますか。
情報収集はお家芸だからね。
「では私は上空へ行ってくる」
「お爺ちゃん、無理だけはしないで!」
「ああ、状況に応じて引き返すよ。マリンも周囲の大人を頼りなさい。オクト君は勿論だが、戦闘においては金狼氏も頼りになる。スタイルの違いこそあるが、得るものはあるはずだ」
「うん!」
孫娘は難しいよと否定顔をしつつも、言葉だけは従ってくれた。すぐにオクト君の元に近寄ると、守るように前に立ちはだかる。それからチラチラとジキン一家に目配せをしていた。
「お前ら、気合い入れて行けよぉ! 霊装発動! 『金の咆哮』!」
WAHOOOOOOOON!
真上に向かって全力ブレス。咆哮による振動でこちらまで震え上がりそうだ。
察するにエネミーにも通用する威圧スキルだろう。
細かい事までは把握しきれないが、初手に打ち込んだということはそう言う意味合いを持ちそうだ。
しかも“霊装”。戦闘補助での最上位。それを惜しげもなく使ってくれたことへの感謝を忘れては行けない.
「時は稼いだ! 爺さん、状況を頼んだ」
「任された!」
至れり尽くせりの状況に、道を覗き込もうとするワクワクを増加させる。私の足は空気を踏み込み、空へと駆け上がっていった。
そこで私が確認したものは……
大きなカラスを模した、薄い影の様なエネミーだった。
瞳の様な器官は無く、中央に位置する赤黒いコアの様なものが、あちこちに移動しながらこちらを“見た”。
拙い!
すぐに下に向けて加速したのと同時、取り込もうとその影が一斉に襲いかかって来た。
その場にとどまる影と、襲う影はどうやら別物の様で。
つまりはあの赤いコアが影の群体を率いてるのだと察する。
ここでスクリーンショットで場所を特定されるのは拙いな。
私は素早くパーティチャットを使うと、作戦本部に概要を伝えた。
『敵は影の群体。取り込んで操る可能性を秘めた物理無効の影の存在だ!』
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