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3章 お爺ちゃんと古代の導き
100.お爺ちゃんと孫②
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まずは今回の趣旨をこのイジケムシに思い出させるのが最優先。
「ほら、そんなところに座ってないで起きてくださいよジキンさん。お孫さんにじいじすげーって言われたいんじゃなかったんですか?」
「ちょっと、大きな声でそれを言わないでくださいよ! 孫に聞こえたらどうするんですか!」
ちょっと大きめなヒソヒソ声。
でも大丈夫。
今回はマリンが体を張ってケンタ君を足止めしてくれてますから。積極的に歩み寄って話しかけてるだけですけどね。
「じいじなんか言ったー?」
「そんな事よりケンタ君。あそこの岩場とか怪しくない?」
「そうかなぁ? なんの変哲もない場所だと思うけど」
「ふっふっふー。ここではそんな常識では測れないことが起きちゃうのよ」
「まじかよスッゲー!」
だからオクト君の気が気じゃないっておまけ付き。
「ぐぬぬぬ、あの小僧! うちの娘とちょっと距離近すぎないですかね? ね? 金狼氏」
「はっはっは。君も随分と難儀な性格をしているようだなオクト氏。子供の内ですから見守ってやりましょうよ」
「そりゃ分かってはいますが、いけませんね。僕は娘のこととなるとどうにも沸点が低くなるようだ」
「義父上とはもう和解されたので?」
「ええ。もう敵わないくらい掌ですよ」
「ウチもそうなんだ」
「あれで?」
オクト君の指がいじけて丸まったジキンさんを指す。
ほら、はなまる書いてないで立ち上がってくださいよ。
みっともないったらありゃしない。
「改めて聞かれると非常に頭が痛い案件ではある。見なかった事にしてくれないか?」
「貸し1つで手を打ちましょうか」
「精錬の騎士に貸し1つ、か。手加減してくれよ?」
「いや、ははは。個人的にですよ。僕が個人的に困ってる時に名前使わせてもらっていいですか?」
「む、それはリアルでのか?」
「ええ、そうです。ダメでしょうか?」
「出張ってこいと言うのなら断るところだが、名前を貸すぐらいなら構わないな」
「では交渉成立という事で」
「もしかして俺からこの言葉を引き出すために娘をダシに使ったのか?」
オクト君は眼鏡をかけ直す動作をとる。
「さてはてなんのことやら。ただし実際に手を出したらぶっ殺しにいくのでそのお覚悟だけはしておいてくださいね?」
「穏やかじゃないな。その時は貸しは消失するが?」
「『娘の貞操』と『ちょっと使える貸し』。娘を持つ父親ならどちらを優先するかお分かりでしょう?」
「ウチも今から『精錬』のを敵に回したくない。息子には強く言って聞かせよう」
「正しい判断です」
えーと、何が何やらどうしてこうなってしまったのでしょうか?
本当はジキンさんのイメージアップ大作戦だったのに、息子たちは場外戦術始めるし、孫たちはのんびりしてるし。
変に色気付いてソワソワしてるのはケンタ君くらいで、マリンは色気より食い気の方が優ってますもんね。
きっと今頃お昼ご飯何かなーぐらいしか考えてませんよ、あの顔。
こんなメンツで何を緊張するっていうんでしょうか。
いっそ蹴っ飛ばしてやりましょうかね。
蹴っ飛ばしました。
「よーし、じゃあ今回のダンジョン探索についてだが、すでにクリア済みの二人にはアドバイザーとして立ち回ってもらう以外に口出しはしてもらわない方針だ」
「えー、なんでだよじいじ。知ってるなら教えてもらったほうが早く済むのに」
「ぐ……うむ、ケンタの言いたいことはもっともだが、それじゃあもし僕たちがそういった未発見の場所に遭遇した時に知識不足で見逃してしまう事だってあるんだぞ? 多くの先達がそうであったように、チャンスを一回失うんだ。それは非常にもったいないだろう?」
「そりゃもったいねーな。んで、それと教えてもらえない理由はどう繋がんの?」
ジキンさんは早くも追い詰められている。
そこで父親の金狼氏が参戦。息子の頭にくしゃりと手を置く。
「あんまりじいじをいじめんな。格好悪いぞ?」
「親父……だって、じいじの言ってることって周りくどくてよくわかんねーんだもん」
「それだけ簡単にはひっぺがせない真実ってこった。そういうことだろう、アキカゼ・ハヤテさん?」
おっとこっちにも流れ弾が。
「ですねぇ。君たちの戦闘に重きを置くスタイルも悪くない。オクト君のようにそれを裏から支えるサポートも重要だ。でも……」
「「「「でも?」」」」
真実を知らない4人の声が被る。
「それが全てじゃない。それだけじゃあまるで足りない。もう一つの真実をひっぺがすのに我々の世代が必要だった。それがファストリアであり、セカンドルナだった」
ケンタ君のジキンさんを見る瞳がようやく輝きだす。
疑り、絶望し、濁っていた瞳に光が宿った。
信用していいのか? という光だ。
「それってじいじにも出来るの?」
「もちろん。なんせはじめて私と友達になってくれて、裏からいろいろと手を回してくれたんだから」
ケンタ君の瞳の輝きが臨界点にまで達しそうだ。
あとはあなたの頑張り次第ですよ、ジキンさん。
不思議と彼の手にかけた掌に熱を感じた。
さっきまで冷え切ってブルブル震えていたというのにゲンキンなんだから。
「そんな時もありましたねぇ」
「今回のダンジョンもあの時と似たようなパズル形式の謎解きですよ。得意でしょ、そういうの」
「むしろ得意分野ですよ。ですが僕一人じゃ出てこない答えもあると思う。そういう時はハヤテさんのお力をお貸りしても?」
「もちろん。友達じゃないですか。でも頼るのは私ばかりじゃなく、息子さんやケンタ君にもですね。せっかく一緒に来てるんですから、いっぱい悩んでもらいましょう」
「ははは、ハヤテさんらしいなぁ。僕はそれで結構な無茶振りをさせられた。そういうわけでお前たちも覚悟しておくように」
続く言葉はどこか疲れたような気怠げな返事だった。
ジキンさんはワクワクしだすときっと私以上に周囲を振り回すんだろうなぁ。
「ほら、そんなところに座ってないで起きてくださいよジキンさん。お孫さんにじいじすげーって言われたいんじゃなかったんですか?」
「ちょっと、大きな声でそれを言わないでくださいよ! 孫に聞こえたらどうするんですか!」
ちょっと大きめなヒソヒソ声。
でも大丈夫。
今回はマリンが体を張ってケンタ君を足止めしてくれてますから。積極的に歩み寄って話しかけてるだけですけどね。
「じいじなんか言ったー?」
「そんな事よりケンタ君。あそこの岩場とか怪しくない?」
「そうかなぁ? なんの変哲もない場所だと思うけど」
「ふっふっふー。ここではそんな常識では測れないことが起きちゃうのよ」
「まじかよスッゲー!」
だからオクト君の気が気じゃないっておまけ付き。
「ぐぬぬぬ、あの小僧! うちの娘とちょっと距離近すぎないですかね? ね? 金狼氏」
「はっはっは。君も随分と難儀な性格をしているようだなオクト氏。子供の内ですから見守ってやりましょうよ」
「そりゃ分かってはいますが、いけませんね。僕は娘のこととなるとどうにも沸点が低くなるようだ」
「義父上とはもう和解されたので?」
「ええ。もう敵わないくらい掌ですよ」
「ウチもそうなんだ」
「あれで?」
オクト君の指がいじけて丸まったジキンさんを指す。
ほら、はなまる書いてないで立ち上がってくださいよ。
みっともないったらありゃしない。
「改めて聞かれると非常に頭が痛い案件ではある。見なかった事にしてくれないか?」
「貸し1つで手を打ちましょうか」
「精錬の騎士に貸し1つ、か。手加減してくれよ?」
「いや、ははは。個人的にですよ。僕が個人的に困ってる時に名前使わせてもらっていいですか?」
「む、それはリアルでのか?」
「ええ、そうです。ダメでしょうか?」
「出張ってこいと言うのなら断るところだが、名前を貸すぐらいなら構わないな」
「では交渉成立という事で」
「もしかして俺からこの言葉を引き出すために娘をダシに使ったのか?」
オクト君は眼鏡をかけ直す動作をとる。
「さてはてなんのことやら。ただし実際に手を出したらぶっ殺しにいくのでそのお覚悟だけはしておいてくださいね?」
「穏やかじゃないな。その時は貸しは消失するが?」
「『娘の貞操』と『ちょっと使える貸し』。娘を持つ父親ならどちらを優先するかお分かりでしょう?」
「ウチも今から『精錬』のを敵に回したくない。息子には強く言って聞かせよう」
「正しい判断です」
えーと、何が何やらどうしてこうなってしまったのでしょうか?
本当はジキンさんのイメージアップ大作戦だったのに、息子たちは場外戦術始めるし、孫たちはのんびりしてるし。
変に色気付いてソワソワしてるのはケンタ君くらいで、マリンは色気より食い気の方が優ってますもんね。
きっと今頃お昼ご飯何かなーぐらいしか考えてませんよ、あの顔。
こんなメンツで何を緊張するっていうんでしょうか。
いっそ蹴っ飛ばしてやりましょうかね。
蹴っ飛ばしました。
「よーし、じゃあ今回のダンジョン探索についてだが、すでにクリア済みの二人にはアドバイザーとして立ち回ってもらう以外に口出しはしてもらわない方針だ」
「えー、なんでだよじいじ。知ってるなら教えてもらったほうが早く済むのに」
「ぐ……うむ、ケンタの言いたいことはもっともだが、それじゃあもし僕たちがそういった未発見の場所に遭遇した時に知識不足で見逃してしまう事だってあるんだぞ? 多くの先達がそうであったように、チャンスを一回失うんだ。それは非常にもったいないだろう?」
「そりゃもったいねーな。んで、それと教えてもらえない理由はどう繋がんの?」
ジキンさんは早くも追い詰められている。
そこで父親の金狼氏が参戦。息子の頭にくしゃりと手を置く。
「あんまりじいじをいじめんな。格好悪いぞ?」
「親父……だって、じいじの言ってることって周りくどくてよくわかんねーんだもん」
「それだけ簡単にはひっぺがせない真実ってこった。そういうことだろう、アキカゼ・ハヤテさん?」
おっとこっちにも流れ弾が。
「ですねぇ。君たちの戦闘に重きを置くスタイルも悪くない。オクト君のようにそれを裏から支えるサポートも重要だ。でも……」
「「「「でも?」」」」
真実を知らない4人の声が被る。
「それが全てじゃない。それだけじゃあまるで足りない。もう一つの真実をひっぺがすのに我々の世代が必要だった。それがファストリアであり、セカンドルナだった」
ケンタ君のジキンさんを見る瞳がようやく輝きだす。
疑り、絶望し、濁っていた瞳に光が宿った。
信用していいのか? という光だ。
「それってじいじにも出来るの?」
「もちろん。なんせはじめて私と友達になってくれて、裏からいろいろと手を回してくれたんだから」
ケンタ君の瞳の輝きが臨界点にまで達しそうだ。
あとはあなたの頑張り次第ですよ、ジキンさん。
不思議と彼の手にかけた掌に熱を感じた。
さっきまで冷え切ってブルブル震えていたというのにゲンキンなんだから。
「そんな時もありましたねぇ」
「今回のダンジョンもあの時と似たようなパズル形式の謎解きですよ。得意でしょ、そういうの」
「むしろ得意分野ですよ。ですが僕一人じゃ出てこない答えもあると思う。そういう時はハヤテさんのお力をお貸りしても?」
「もちろん。友達じゃないですか。でも頼るのは私ばかりじゃなく、息子さんやケンタ君にもですね。せっかく一緒に来てるんですから、いっぱい悩んでもらいましょう」
「ははは、ハヤテさんらしいなぁ。僕はそれで結構な無茶振りをさせられた。そういうわけでお前たちも覚悟しておくように」
続く言葉はどこか疲れたような気怠げな返事だった。
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