90 / 497
2章 お爺ちゃんとクラン
076.お爺ちゃんは孫達を導きたい
しおりを挟む「お爺ちゃん、どうする? 今日はもうおしまいにする?」
「いいや、マリン。探索はここからが面白いんだよ。先にも言ったろう? 答えは一つではないと。あの時は情報を『怪しげな風』しか持っていなかったから思考がそこだけに向いていた。でも今は違う情報がある。例えば風の順番によって現れる『エネミー』それらからドロップする『鉱石』とかね?」
「そっか。でも鉱石の声ってどんなのだろう?」
「音を鳴らしてみればわかるかも!」
「早速やってみましょう」
私が疑問を口にすれば今まで検索ばかりを頼りにしていた子供達は乗り気で実行に移してくれる様になっていた。
やはり大人が導き手となって問いかけ、あれこれ挑戦させてやるのが一番効果的だ。
私の子供の頃は大人達が率先してやらせてくれたが、今の時代は違うのだろうか?
それ以前に私が大人の時に子供にあれこれ教えてやっただろうかと思い出すが、仕事を理由にあまり接触していないことに思い至った。
自身の余裕のなさが今の時代を作ってしまったのかと反省に至る。
そんな折、マリンがアイテムバッグから取り出した鉱石。
どうみても石ころの様にしか見えないが、不純物を取り除けば銅や銀になると言うのだから面白い。そこに生憎と興味は向かないが、それに熱中する層は確かに居る。私は専門外だが、その人達が頑張っているおかげでこの世に武器が回っているんだ。
何事も一つのことを突き詰めた人が歴史を作る。それを私はこの探索を通じて教えてやりたいと思っている。
今回は特に私が見つけるんじゃなく、彼らに考えさせて攻略させたい。
早速音を聴こう、マリンがそうと思ったところで問題が発生する。
「あ、でも私、音鳴らすための道具とか持ってないや」
ふと溢した言葉に、私はそう考えるかとおもった。
普通ならば鉱石同士を打ち鳴らすと思うからだ。しかし彼女にその発想はないのだろう。ここはなぜその発想に至ったかを自分の中で解してやるか。
「ふむ。まず前提としてマリンはなぜそれが必要だと思ったのかな?」
「なぜって……うーん、あ! きっと鳴らすという行為に楽器を連想したからだと思う。じゃあ鳴らすもの自体はなんでもいいの?」
「私はそう思うよ。私達が子供の頃、歴史の授業で火打ち石なるものが大昔に使用されていたという情報を教えてもらったことがある。それは石同士を打ち付けて、火花を散らして燃えやすいものへ火種を作るという原始的な行為だった。だから音を鳴らすのならそれ同士をぶつけて鳴らすという考えを持っている。しかしマリンにその発想はなかった」
「うん。だって火を起こすのにそんなもの必要ないじゃない」
「そうだね。これらは今はできて当たり前のことだ。しかしそれを当時不便だとおもった人がいたから、そしてどうやれば便利になるだろうと考えついたから今があるんだよ。私達が今の時代を生きていけるのはそういった誰かの頑張りのおかげなんだ。だから興味なくてもそれを知ることで自分の中の可能性を広げることができるんだ」
「そんな風に考えたことなかったです。僕はどうも今必要な知識だけ選りすぐって選択してしまいますね」
「私もです。それにこっちでは魔法が一般的だし、鳴らすという行為に魔法を使うこともできそうです」
マリンの疑問に私が答えると、それにサクラ君とユーノ君が続く。
「さて一度この考えは思考の端に寄せておこう。答えが出ないということは、この出題自体がまだ完成してないからだと考えることもできる。出題の意図が掴めなければ答えることだってできないだろう?」
「じゃあ鉱石はこのまま?」
「うん。申し訳ないけどね。でも全く使わないというわけでもないし、後で出番があるかもしれないんだ。大事に持っててくれるかな?」
「分かった」
先ほどまではどこか不安そうな顔だったマリンだけど、私のフォローですっかり不安を晴らせた様だ。誰でも無駄なことをさせられたと思えば嫌な気分になるからね。
「さて、ではB1とB2の謎は置いといて、残りの謎の探索に赴こうか。マリン、残りの謎がいくつあるかわかるかな」
「えーと、ちょっと待ってね?」
「……3つですね」
マリンは早速検索項目からブログに目を移し、しかしすでにそれらを終わらせていたユーノ君が代わりに答えてくれた。
マリンとユーノ君の視線が交錯する。
「ちょっとユーノ? それ今私が言おうと思ってた奴!」
「マリンちゃんがいつまで経っても答えないからサポートしてあげたのに」
「むーっ」
「うん、やはり三つか。全部で五階層。五つの出題。もしかしてこれにも正しい順番があるんじゃないか?」
「階層順じゃないって事ですか?」
「まだハッキリとはわからないけど、この場合B1の質問とB2の謎は一致しない。ならば他の問題と組み合わせた時ではどうかというところに考えを移した。そもそもの話、質問と謎の数があってないことから、これらの謎は合わせて一つなのかもしれないんだ。そこで出題を2個しか揃えていない現状で答えを出すのは早計だと思った。だから先に全ての出題を回収してから考えることにしよう」
「そうだね、頭を使うのは一番最後。それに私は身体を動かす方が得意だもん!」
「それじゃあ次の階層に進んでしまいましょうか。マリンちゃんは飛ばしすぎない様に」
「はーい。サクラ君も気をつけて」
「うん」
「それじゃあ案内お願いするよ」
マリンは考えるより身体を動かしてる方が元気になるね。
そのかわりをユーノ君が務めてくれている。いいコンビじゃないか。
今のところサクラ君はマリンの言葉に従うばかりだ。惚れた弱みというのもあるけどもう少し自主性を持ってほしいな。
あの子はグイグイ引っ張っていくタイプに見えるけど結構寂しがり屋なんだ。人生の相棒足り得るには確固たる信念が必要だと私は思うな。
[ダンジョン・枯れた金鉱山B3]
そこは一本道だった。
緩いスロープでゆっくり下に向かって螺旋階段の様にぐねぐねと回って降りていく形だ。
脇道はなく、もし上から道と同じ幅の玉を落とされようものならぺしゃんこにされてしまうことだろう。
そんなことを呟いたら子供達からは考えすぎだって言われてしまう。
過去にそんなことは一度としてなく、これからもないそうだ。
なんでそう言い切れるのか不思議ではあるが、彼女達のゲーム経験則は私より上。だからここは口を噤んで従う。
「ここだよ、ちょうどこの真上にある謎の文字。これってB1の壁画にそっくりな文字。お爺ちゃん、読める?」
「少し距離があるな。何か台か梯子があればいいが」
「梯子はないけどこれなら」
孫が取り出したのは椅子だった。どうしてこんなものがあるのか詳しくは聞かないが、ありがたく使わせてもらう。
高さは少し足りないが、フラッシュを焚いて天井を照らして撮影する。そこにあったのはB1にあった様な質問文。
あの時と同じ様に子供達にメール添付して送信した。
[石の──を読み取れ]
「またなんか出たね」
「でも石って特定されてる。これが鉱石関係?」
「わからないけどね。まだ答えを出すべきではないよ。次に行こう」
私達はエネミーからの襲撃を一切受けることなく[ダンジョン・枯れた金鉱山B4]へと向かった。
2
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる