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1章 お爺ちゃんとVR
022.お爺ちゃん、スキルを獲得する
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昼まで暇だとブログを漁っているところでフレンドコールが入る。
[スズキ:今お暇でしょうか?]
そんな短い本文に対し、ええとこれまた短い本文で返した。
やることがあるといっても優先順位はそれほど高くない。
フレンドが私に用があると言えばそちらを優先するくらいには心に余裕を持っているつもりだ。
彼の待つ用水路まで徒歩で歩き、フレンドコールを鳴らすとスズキさんが水面から顔を上げた。相変わらずの魚類フェイスだけどなんとなく愛嬌のある顔立ちをしている。
慣れてしまえばそれほど刺激的でもないよね。
「すいません、急に呼び出してしまって」
「いえいえ。こちらも暇してましたので」
「ホッ」
あまりアポイントメントをとったことのないような反応で、彼は良ければまたあの場所に向かいませんかと誘って来た。
やけに周囲を気にしているようだし落ち着かないのだろう。
私は彼と共に例の遺跡近くまで泳いで行った。
「申し訳ありません。やっぱりまだたくさんの人の前だとあがっちゃうので」
「私の前では平気なんですか?」
「不思議と」
「それは良かった」
友達冥利に尽きる。それに対してジキンさんと来たら人の姿を見て笑うんですよ? 笑われるような行動をしていた私も私ですけどね。
まさかあんなところで遭遇するなんて思ってもみませんでした。
登ろうとしたときはいなかったんですよ。登り始めたときに出て来たんです。全くあの人も間が悪い。
「それで、要件とは?」
「はい。ブログを拝見しまして」
「おお、どうでした?」
「正直に申し上げて」
「うん」
「感動しました」
「おおっ、どこら辺を気に入ってくれたんだろう。気になるなぁ」
見たこともない娘のクランメンバーに絶賛されてると言われるより、たった一人のフレンドに喜ばれる方が何倍も嬉しく思う。
本当、このために書き出したといっても過言じゃないよ。
だって、ねぇ?
私の文や写真じゃなく、スキルのかけらを得て感謝されてもよくわからないじゃない。
だったら本文と写真を好きといってくれた方が何倍もありがたい。まさしくファンと言える存在だと私は思う。
「どこ、と言われても困りますけど。ハヤテさんの人となりがよくわかる文体でこのゲームに参加したきっかけとか、そういうのがよくわかったというか。後はそうですね。不思議とこの人と一緒なら僕も楽しめそうだなって思いました」
「そうですか。それは良かった」
「あと僕の後ろ姿って普段自分では見れないので始めてみました。あんな風になってたんですねー。ちょっとおかしかったです」
「ふふ、そうですか」
「はい。魚人に限らず人間だって自分の後ろ側って見れないじゃないですか。だから貴重なものが見れたなって」
「それは私のファンになってくれたと思って良いですかね?」
「はい。お気に入りに登録しました。また投稿してくれるんですよね?」
「もちろんですよ。ああ、そういえばスズキさんはこの世界のスキルについて詳しいですか?」
「常識的には知ってますけど、具体的にはよくわかってません」
「では色々と私の検証に付き合ってくれませんか?」
「はい。僕なんかで良ければ」
彼からの許可を取り、古代遺跡を巡っていく。
途中途中で彼のお気に入りスポットを教えてもらい、そこを撮影していく。
「こんなところまで撮影しなくても」
「何言ってるんですか。せっかく教えてもらった場所ですよ。こうして写真に収めておけばいつでも見返せますし、今見てよく分からなくても、あとで良さに気づくことだってあるんです」
「なるほど。それで検証って具体的にはどんなことをするんです?」
「ええっとですね。私に泳ぎを教えてもらえませんか」
「はい? 僕のですか」
「はい」
私の質問に対しスズキさんは意味がわからないという顔をした。
そもそもの話、彼は泳ぐときに自分の動きを意識したことがないのだと言う。そこで私は彼の泳ぎを真似していたことを正直に話し、そこで生えて来たスキルについてを教える。
それとこの世界の理屈を添えて検証の仕方を教えた。
「なるほど。それがきっかけだったわけですか。ならば頑張ってみます。でも僕自分の泳ぎを意識した事もないですし、ましてやそれを誰かに教えたこともないのでうまくできるか分かりませんけど」
「こちらで勝手に真似しますので、真っ直ぐ泳いでみてください。方向転換するときに一度声をかけてもらえれば大丈夫ですよ」
「そういうことでしたらわかりました」
だいたい時間にして十数分。泳ぎ回った結果ついにスキルのロックが外れた。
[スキル:水中呼吸を獲得しました]
そっちか! と思わなくもないけど、これで息継ぎに回す必要が無くなったかな?
どちらにせよ必要なスキルであることは喜ばしいので喜んでおく。
「どうしました? 急に動かなくなったのでびっくりしました」
「ああ、さっきスキルを獲得しまして」
「おお! おめでとうございます」
「生憎と狙っていたスキルではなかったのですが、水中呼吸をモノにしました。これであとスズキさんの泳法まで手に入れば文句はないですね」
「ではそれを覚えるまでお付き合いしますよ。それがあれば次のクエストは最後までいけると思います。僕としてもあの景色はハヤテさんにみていただきたいですし」
「ほぅ、スズキさんの推す景色ですか。それは是非とも獲得して拝みたいモノですね」
「次のブログのメイン間違いなしですね。僕としましてもあれを一人占めする気はなかったんです。でも自分で拡散する勇気もなくて」
「うん。その気持ちだけでも嬉しいです。スズキさんの気持ちも私のブログに反映させて見せますよ」
「ではそのためにも覚えられるように頑張りましょうか」
「ええ、よろしくお願いします!」
水中呼吸を覚えてからの私の動きは目覚ましいものがあった。
それでも古代泳法を獲得するのに数時間。
お昼を過ぎるほどかかってしまうあたり、奥の深いモノだったのだと思い知る。
スズキさんとはお昼にクエストを受ける約束をして別れた。
【パッシブ:7】
◎持久力UP
┗持久力UP・中[2/4]
◎木登り補正
┃┗壁上り補正[1/4]
┗ ???[4/10]
◎水泳補正
┣潜水[3/4]
┗◎古代泳法 new!
◎低酸素内活動
┗◎水中呼吸 new!
◎命中率UP
┗必中[3/5]
[スズキ:今お暇でしょうか?]
そんな短い本文に対し、ええとこれまた短い本文で返した。
やることがあるといっても優先順位はそれほど高くない。
フレンドが私に用があると言えばそちらを優先するくらいには心に余裕を持っているつもりだ。
彼の待つ用水路まで徒歩で歩き、フレンドコールを鳴らすとスズキさんが水面から顔を上げた。相変わらずの魚類フェイスだけどなんとなく愛嬌のある顔立ちをしている。
慣れてしまえばそれほど刺激的でもないよね。
「すいません、急に呼び出してしまって」
「いえいえ。こちらも暇してましたので」
「ホッ」
あまりアポイントメントをとったことのないような反応で、彼は良ければまたあの場所に向かいませんかと誘って来た。
やけに周囲を気にしているようだし落ち着かないのだろう。
私は彼と共に例の遺跡近くまで泳いで行った。
「申し訳ありません。やっぱりまだたくさんの人の前だとあがっちゃうので」
「私の前では平気なんですか?」
「不思議と」
「それは良かった」
友達冥利に尽きる。それに対してジキンさんと来たら人の姿を見て笑うんですよ? 笑われるような行動をしていた私も私ですけどね。
まさかあんなところで遭遇するなんて思ってもみませんでした。
登ろうとしたときはいなかったんですよ。登り始めたときに出て来たんです。全くあの人も間が悪い。
「それで、要件とは?」
「はい。ブログを拝見しまして」
「おお、どうでした?」
「正直に申し上げて」
「うん」
「感動しました」
「おおっ、どこら辺を気に入ってくれたんだろう。気になるなぁ」
見たこともない娘のクランメンバーに絶賛されてると言われるより、たった一人のフレンドに喜ばれる方が何倍も嬉しく思う。
本当、このために書き出したといっても過言じゃないよ。
だって、ねぇ?
私の文や写真じゃなく、スキルのかけらを得て感謝されてもよくわからないじゃない。
だったら本文と写真を好きといってくれた方が何倍もありがたい。まさしくファンと言える存在だと私は思う。
「どこ、と言われても困りますけど。ハヤテさんの人となりがよくわかる文体でこのゲームに参加したきっかけとか、そういうのがよくわかったというか。後はそうですね。不思議とこの人と一緒なら僕も楽しめそうだなって思いました」
「そうですか。それは良かった」
「あと僕の後ろ姿って普段自分では見れないので始めてみました。あんな風になってたんですねー。ちょっとおかしかったです」
「ふふ、そうですか」
「はい。魚人に限らず人間だって自分の後ろ側って見れないじゃないですか。だから貴重なものが見れたなって」
「それは私のファンになってくれたと思って良いですかね?」
「はい。お気に入りに登録しました。また投稿してくれるんですよね?」
「もちろんですよ。ああ、そういえばスズキさんはこの世界のスキルについて詳しいですか?」
「常識的には知ってますけど、具体的にはよくわかってません」
「では色々と私の検証に付き合ってくれませんか?」
「はい。僕なんかで良ければ」
彼からの許可を取り、古代遺跡を巡っていく。
途中途中で彼のお気に入りスポットを教えてもらい、そこを撮影していく。
「こんなところまで撮影しなくても」
「何言ってるんですか。せっかく教えてもらった場所ですよ。こうして写真に収めておけばいつでも見返せますし、今見てよく分からなくても、あとで良さに気づくことだってあるんです」
「なるほど。それで検証って具体的にはどんなことをするんです?」
「ええっとですね。私に泳ぎを教えてもらえませんか」
「はい? 僕のですか」
「はい」
私の質問に対しスズキさんは意味がわからないという顔をした。
そもそもの話、彼は泳ぐときに自分の動きを意識したことがないのだと言う。そこで私は彼の泳ぎを真似していたことを正直に話し、そこで生えて来たスキルについてを教える。
それとこの世界の理屈を添えて検証の仕方を教えた。
「なるほど。それがきっかけだったわけですか。ならば頑張ってみます。でも僕自分の泳ぎを意識した事もないですし、ましてやそれを誰かに教えたこともないのでうまくできるか分かりませんけど」
「こちらで勝手に真似しますので、真っ直ぐ泳いでみてください。方向転換するときに一度声をかけてもらえれば大丈夫ですよ」
「そういうことでしたらわかりました」
だいたい時間にして十数分。泳ぎ回った結果ついにスキルのロックが外れた。
[スキル:水中呼吸を獲得しました]
そっちか! と思わなくもないけど、これで息継ぎに回す必要が無くなったかな?
どちらにせよ必要なスキルであることは喜ばしいので喜んでおく。
「どうしました? 急に動かなくなったのでびっくりしました」
「ああ、さっきスキルを獲得しまして」
「おお! おめでとうございます」
「生憎と狙っていたスキルではなかったのですが、水中呼吸をモノにしました。これであとスズキさんの泳法まで手に入れば文句はないですね」
「ではそれを覚えるまでお付き合いしますよ。それがあれば次のクエストは最後までいけると思います。僕としてもあの景色はハヤテさんにみていただきたいですし」
「ほぅ、スズキさんの推す景色ですか。それは是非とも獲得して拝みたいモノですね」
「次のブログのメイン間違いなしですね。僕としましてもあれを一人占めする気はなかったんです。でも自分で拡散する勇気もなくて」
「うん。その気持ちだけでも嬉しいです。スズキさんの気持ちも私のブログに反映させて見せますよ」
「ではそのためにも覚えられるように頑張りましょうか」
「ええ、よろしくお願いします!」
水中呼吸を覚えてからの私の動きは目覚ましいものがあった。
それでも古代泳法を獲得するのに数時間。
お昼を過ぎるほどかかってしまうあたり、奥の深いモノだったのだと思い知る。
スズキさんとはお昼にクエストを受ける約束をして別れた。
【パッシブ:7】
◎持久力UP
┗持久力UP・中[2/4]
◎木登り補正
┃┗壁上り補正[1/4]
┗ ???[4/10]
◎水泳補正
┣潜水[3/4]
┗◎古代泳法 new!
◎低酸素内活動
┗◎水中呼吸 new!
◎命中率UP
┗必中[3/5]
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