23 / 497
1章 お爺ちゃんとVR
019.お爺ちゃんは娘に甘い
しおりを挟む
翌朝、またしても機嫌の良い娘から私の好きなメニューで彩られた朝食が出される。何か申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらもそれをいただく。今日は煮魚だ。こうも連続して魚が続くとスズキさんに悪い気がしてしまうな。
「ところで由香里、向こうの方は少し進展あったのかい?」
「そうね、イベントの影響か近隣モンスターが強化されたみたいなの。今まで通用していた武器の強度じゃ全然歯が立たなくなってきているわね」
それは問題じゃないのか?
「でもその先の武器はもう発見されてるし対抗手段はあるから安心して。ただここを拠点としてるプレイヤーには少し手の届かないお値段にはなるけど」
ダメじゃないか。
「あ、ダメじゃないかって顔してる。大丈夫よ。私達が拠点にしているのはもっと先。五番目の町ファイヴェリオンよ。そこに至るまでに発見された武器やそのバージョンアップの系統があるわ」
「なるほど。昨日からの余裕の表情はそれがあるからか」
「うん。でも油断はしてない」
「それが昨日話してた三番目の町……確かサードウィルのことかい?」
「うん。あの街があそこまで追い詰められたのは完全に油断しきっていたからなの。その当時、武器は4番目の町のさらにグレードアップ版まで至っていた。でも……」
「通用しなかった?」
「うん。きっとどこかにヒントがあったのかも。それを頑なに開示しなかったクランが悪いとは言わない。だってイベントが発生したのは午前中。一般人なら会社か学校に通ってる時間帯。その時間に街は襲撃された」
「だから今回は準備のしようがあると?」
「そうだね。それとお父さんがアップした昨日のブログにヒントがあったの。それを使用した武器で攻撃してもらったら、今まで通り倒せたそうよ。あの素材の精錬方法を知らなかったら今頃もっと苦労してたかも。だからありがとう」
「へぇ」
ブログにねぇ。思えばこのイベントの始まりもブログがきっかけだった。もしかしなくても、このゲーム内ではスクリーンショットが大きな意味を持つのかもしれない。
「薄々察しているとは思うけど」
「うん?」
「お父さんのブログってお宝の山だからね?」
「そうなのかい?」
「あ、自覚なかったんだ」
あるわけがない。だって好き勝手書いているんだもの。しかもフレンドにこんな場所に行ってきたんだよって自慢をしたくてスクリーンショットを撮ってきている。そこにそんな仕掛けがあるなんて知るものか。
「実はあのゲームにブログなんて時代錯誤の代物が残ってるのはお年寄りに親しみやすくするためじゃないの」
「別の目的があると?」
「うん。スキルってね、成長したり増えたりするの。そのヒントは実際に見てみるか、そのヒントが隠されたスクリーンショットによって伝達する。このゲームはそうやって公開していく事で発展し、前に進んでいくの」
「そうなんだ。それは知らなかった」
「特に今回の記事は未知の情報の山よ。なんせ獣人は水の中を嫌うもの。ドブさらいなんてなんの意味があるかと思ってた。このゲームの解析班は優秀だけど、事前に設定したスキルビルドは覆せない設計上、パーフェクトを達成してもその先を公開できなかった。
そこにあったのが身体的スペック差とスキルの差。スキルの設定はキャラクタークリエイト時にしかできないし、キャラクターをリセットするには少なからずお金がかかるし再度登録するには30日期間を開けなければならないため、そこから先の情報ってそれだけで価値があったのよ」
「ふむ、つまり私の無駄とされたスキル群が評価される場面もあるということか」
「そうだね、お父さんだからこそできるスクリーンショットだよ。それとお父さんにできた新しいお友達」
「スズキさんのことかな?」
「へぇ、スズキさんていうのね。ねね、その人もブログに誘ってもらえないかな? お父さんから声かければ絶対OKしてくれると思うの」
「ダメだぞ」
娘の企みを理解し、その意味を知る。だから私は反対した。
「どうせお宝映像をたくさん持ってるとかそういう期待を込めてだろう? だからダメだ」
「ちぇー」
「彼はどちらかと言えばあの場所でゆっくりしてたいだけなんだ。それでも誰かと接したいと思ってギルドにクエストをしに行ってる。けど彼の姿は少々刺激的でね、彼は心を病んでしまっている。そんな人に無理やりはダメだ。なんだったら私がフレンドを解消されてしまうよ」
「そっか。じゃあお父さんに引き続き頼んでもいい?」
「そういうことは自分達でしなさい」
「ふーん、そんなこと言っちゃうんだ。そもそも、これって誰が起こしたイベントだったかな~? 私達はいつでも手を引いてもいいんだけどな~?」
「ぐ、むぅ。仕方ない。なるべくそれっぽいのを見つけたら撮ってくるから。あまり意地悪な事を言わないでくれ」
「へへ、やったー」
娘の鋭い返しに、私は仕方なく首を縦に振らざるを得なかった。
それを聞いて喜ぶ娘は歳を感じさせない笑顔を見せた。
「ところで由香里、向こうの方は少し進展あったのかい?」
「そうね、イベントの影響か近隣モンスターが強化されたみたいなの。今まで通用していた武器の強度じゃ全然歯が立たなくなってきているわね」
それは問題じゃないのか?
「でもその先の武器はもう発見されてるし対抗手段はあるから安心して。ただここを拠点としてるプレイヤーには少し手の届かないお値段にはなるけど」
ダメじゃないか。
「あ、ダメじゃないかって顔してる。大丈夫よ。私達が拠点にしているのはもっと先。五番目の町ファイヴェリオンよ。そこに至るまでに発見された武器やそのバージョンアップの系統があるわ」
「なるほど。昨日からの余裕の表情はそれがあるからか」
「うん。でも油断はしてない」
「それが昨日話してた三番目の町……確かサードウィルのことかい?」
「うん。あの街があそこまで追い詰められたのは完全に油断しきっていたからなの。その当時、武器は4番目の町のさらにグレードアップ版まで至っていた。でも……」
「通用しなかった?」
「うん。きっとどこかにヒントがあったのかも。それを頑なに開示しなかったクランが悪いとは言わない。だってイベントが発生したのは午前中。一般人なら会社か学校に通ってる時間帯。その時間に街は襲撃された」
「だから今回は準備のしようがあると?」
「そうだね。それとお父さんがアップした昨日のブログにヒントがあったの。それを使用した武器で攻撃してもらったら、今まで通り倒せたそうよ。あの素材の精錬方法を知らなかったら今頃もっと苦労してたかも。だからありがとう」
「へぇ」
ブログにねぇ。思えばこのイベントの始まりもブログがきっかけだった。もしかしなくても、このゲーム内ではスクリーンショットが大きな意味を持つのかもしれない。
「薄々察しているとは思うけど」
「うん?」
「お父さんのブログってお宝の山だからね?」
「そうなのかい?」
「あ、自覚なかったんだ」
あるわけがない。だって好き勝手書いているんだもの。しかもフレンドにこんな場所に行ってきたんだよって自慢をしたくてスクリーンショットを撮ってきている。そこにそんな仕掛けがあるなんて知るものか。
「実はあのゲームにブログなんて時代錯誤の代物が残ってるのはお年寄りに親しみやすくするためじゃないの」
「別の目的があると?」
「うん。スキルってね、成長したり増えたりするの。そのヒントは実際に見てみるか、そのヒントが隠されたスクリーンショットによって伝達する。このゲームはそうやって公開していく事で発展し、前に進んでいくの」
「そうなんだ。それは知らなかった」
「特に今回の記事は未知の情報の山よ。なんせ獣人は水の中を嫌うもの。ドブさらいなんてなんの意味があるかと思ってた。このゲームの解析班は優秀だけど、事前に設定したスキルビルドは覆せない設計上、パーフェクトを達成してもその先を公開できなかった。
そこにあったのが身体的スペック差とスキルの差。スキルの設定はキャラクタークリエイト時にしかできないし、キャラクターをリセットするには少なからずお金がかかるし再度登録するには30日期間を開けなければならないため、そこから先の情報ってそれだけで価値があったのよ」
「ふむ、つまり私の無駄とされたスキル群が評価される場面もあるということか」
「そうだね、お父さんだからこそできるスクリーンショットだよ。それとお父さんにできた新しいお友達」
「スズキさんのことかな?」
「へぇ、スズキさんていうのね。ねね、その人もブログに誘ってもらえないかな? お父さんから声かければ絶対OKしてくれると思うの」
「ダメだぞ」
娘の企みを理解し、その意味を知る。だから私は反対した。
「どうせお宝映像をたくさん持ってるとかそういう期待を込めてだろう? だからダメだ」
「ちぇー」
「彼はどちらかと言えばあの場所でゆっくりしてたいだけなんだ。それでも誰かと接したいと思ってギルドにクエストをしに行ってる。けど彼の姿は少々刺激的でね、彼は心を病んでしまっている。そんな人に無理やりはダメだ。なんだったら私がフレンドを解消されてしまうよ」
「そっか。じゃあお父さんに引き続き頼んでもいい?」
「そういうことは自分達でしなさい」
「ふーん、そんなこと言っちゃうんだ。そもそも、これって誰が起こしたイベントだったかな~? 私達はいつでも手を引いてもいいんだけどな~?」
「ぐ、むぅ。仕方ない。なるべくそれっぽいのを見つけたら撮ってくるから。あまり意地悪な事を言わないでくれ」
「へへ、やったー」
娘の鋭い返しに、私は仕方なく首を縦に振らざるを得なかった。
それを聞いて喜ぶ娘は歳を感じさせない笑顔を見せた。
2
お気に入りに追加
1,988
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる