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1章 お爺ちゃんとVR
003.お爺ちゃんとスクリーンショット
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孫からの一言に、私は特に困った様子も見せずにそうだよと頷く。
孫は、そんな私の様子にとても困り果てているようだった。
どうやら彼女は私と一緒に肩を並べて冒険の旅に出たかったらしい。
「そう逸るモノではないよ。このゲームはなにも冒険だけを売りにしているわけでもないのだろう?」
「うぅ、そうだけどぉ」
その表情から察するに、その冒険の果てに見せたい場所があったのだろう。言いたいけどここではいえない何かをその気持ちの奥に秘めていると言ったところか。
さて、それよりも美咲はいつになったら隣に座る子を紹介してくれるのだろうか。一緒についてきた時点でお友達だとは思うのだけど、私から尋ねるのも違うし、こういう事は彼女から言って欲しいものだ。
ちらりと視線を彼女に投げかけると、ただでさえ小さな体を萎縮させたように小さくさせてしまう。
私の顔が怖かったのだろうか? あまり自覚した事はないが、気をつけよう。孫弄りも度が過ぎると疎遠されてしまうからな。
「マリンちゃん」
「えっとなに?」
「そろそろ紹介して。私、どのタイミングで話に入っていいか分かんないから」
「ああっとごめん、忘れてた」
「酷いよぉ」
半泣きする少女に快活に笑う孫娘。
これだけで普段の立場がわかってしまう。
「えっとね、お爺ちゃん。この子はユーノ。私の小学校時代からの友達なの。こっちでも続投してコンビ組んでるんだ」
「そうでしたか。ユーノさん、いつもうちの孫が世話をかけているようだ。これからも仲良くしてくれるかな?」
「はい」
「ちょっとお爺ちゃん!? それじゃあ私が迷惑かけるのが当たり前みたいになってる」
「違うのかね?」
「うぅ……違わないけど」
「冗談だよ。マリンはいい子だ。それにきちんと相手を思いやる気持ちも持っている。久しぶりにあって成長してるなと実感した」
「うん」
少ししんみりとした表情の彼女の頭を撫でてやると、すっかりと機嫌を直したらしい。昔からこの子はお爺ちゃん子。
つまり私に懐いていた。
頭撫で撫では向こうからせがんでくるのだ。
ちょうどいい場所に頭が迫ってくるから私はその場所へ手を置く。
少しデレすぎてるのではないかと思ったが見なかったことにしよう。
「少し話を戻そうか。スキルについてだ」
「うん」
「はい」
私の言葉に二人の少女が返事をする。
「まず私はこのゲームに闘いを求めていない。そこはいいかな?」
「納得いかないけど、とりあえずは」
「それならば何をしに?」
孫娘は頬を膨らまし、お友達はその理由を追求してくる。
相棒というだけあってまとまりがある。
マリンが引っ張っているようで、ユーノにひっぱられてる風に見えなくもない。
仲もいいし一先ずは安心だな。
娘は心配性だが、この子がいる限り危険なことには首を突っ込まないだろう。
そういう危険に対する察知能力が高そうだ。
「私は趣味で風景写真の撮影をしていてね。リアルでは体を壊して無理が利かず、ここでその続きをしようと思っていたんだ」
「あ、だから持久力UPなんですね!」
聡いな。それだけでスキル構成の一つを言い当てた。
「どういう事、ユーノ? 持久力って要はスタミナのことでしょ? ああいうのは動き続けながら攻撃する人たちのものだと思ってた」
その指摘も間違いではない。即ち休息を挟まずに体を酷使し続ける環境下に身を置くことだ。
写真とはその一枚のために寒い気候の山頂に登ったり、何だったら危険な森の奥。秘境での動植物を撮影して感動を呼び覚ますものだ。
私が写真に嵌ったのは旅行がきっかけだが、それが縁で世界の写真の魅力に取り憑かれた。
だからこそ、ゲーム内でも今を逃したら普段見れない一枚を撮るために妥協を許さない構成なのである。
「そうだね、彼女の言う通り。私のスキル構成は全てベストショットを撮る為の構成だ。
想像してご覧、切り立った崖の上、見下ろすのはそこにたどり着くまでに通った密林。
踏み越えてきた障害物の数々。それを写真に納めるのも良いが、まだ見ぬ世界をそこから覗き込むことだってできる」
「うん、わかる。でも写真って言ってもスクリーンショットだよね? ゲーム内に保存はできるけど、現実には持っていけないよ」
「なに、そうなのか!?」
孫娘からの一言に私は目を剥く。そして同時に納得した。
そうだよなぁ、考えてみればそうだ。コールでリアルと連絡を取れると言ってもそれはゲーム側が承認しているからだ。
ゲーム内の肖像権、ましてや映像はゲーム会社のものだ。私一人で取り扱う事はできない。残念だ。
「──あ、でも」
そこで付け足したお友達の言葉が私を救ってくれる。
要は情報を提供する場はゲーム内であれば作れるらしいとのこと。
詳しくは冒険者ギルドで聞けるらしい。
情報は整った。私は詳しいスクリーンショットの取り方を教えてもらい、フレンド登録を済ませる。
奢ると言った手前、代金が足りませんでは立つ瀬がなかったが、ギリギリ間に合った。いや、ギリギリになるように抑えてくれたのだろう。みれば孫娘の前にしか皿は置かれてなかった。本当に助かる。
「今日はありがとう。ユーノさん、うちのマリンをよろしく頼む」
「ちょっとお爺ちゃん!?」
「マリンも、レディなんだからお淑やかにしろとは言わない。君はその明るさが魅力の一つだ。けれど引くべきところは引いたほうがいい。特にここはいろんな人の目があるからね」
喫茶店の外。どこからか街に入ってきた者、何処かへ行く者達でごった返す。そんな通行人が孫娘達の様子を何となしに見ていた。
すぐに興味を亡くして去っていくが、こう言った見たという記憶が物事を動かすきっかけになるのを私は知っている。
あの時の子が実は……
そんな眉唾で人は簡単に騙され、謂れのない罪を受ける事だってある。背中で孫達の姿を隠しながらいい含める。
「うん……」
頭を撫でたら随分とおとなしくなったマリンに向けてスクリーンショットの構えをとる。
「ではここで会った記念に一枚いいかな?」
「私達がお爺ちゃんの被写体第一号?」
「そうだよ。後でブログに書き記しておこう。その際に乗せても大丈夫かな?」
「恥ずかしいですけど、はい」
お友達の子にも確認を取り、許可してもらった。
被写体を中心に収めるように親指と人差し指で「 」の字を作り、右瞼を瞑るとカシャッと音が鳴り画像が保存される。
これらは網膜内のシステムからいつでも取り出して読み込むことができるとのことだ。ゲーム内とはいえ、技術の進歩に舌を巻く。
「うん、ベストショット。出来上がりを楽しみにしてくれたまえ」
「はーい! お爺ちゃんも困ったことがあったら私に連絡してね」
「ああ、もちろん頼らせてもらうよ」
「それでは私達はこれで」
「うん、いってらっしゃい」
片手を上げてその場で別れる。
私を置いて旅立っていく孫娘達の姿をパシャリ。
そこには楽しそうに今後を語らう彼女達の姿が映り込んだ。
「これは流石に載せられないよなぁ」
確認をとったのはあくまで最初の一枚のみだ。
しかし個人的に楽しむ分には問題ないだろう。
フォルダ名をお気に入りと銘打ってその画像をその場所へと保存した。
孫は、そんな私の様子にとても困り果てているようだった。
どうやら彼女は私と一緒に肩を並べて冒険の旅に出たかったらしい。
「そう逸るモノではないよ。このゲームはなにも冒険だけを売りにしているわけでもないのだろう?」
「うぅ、そうだけどぉ」
その表情から察するに、その冒険の果てに見せたい場所があったのだろう。言いたいけどここではいえない何かをその気持ちの奥に秘めていると言ったところか。
さて、それよりも美咲はいつになったら隣に座る子を紹介してくれるのだろうか。一緒についてきた時点でお友達だとは思うのだけど、私から尋ねるのも違うし、こういう事は彼女から言って欲しいものだ。
ちらりと視線を彼女に投げかけると、ただでさえ小さな体を萎縮させたように小さくさせてしまう。
私の顔が怖かったのだろうか? あまり自覚した事はないが、気をつけよう。孫弄りも度が過ぎると疎遠されてしまうからな。
「マリンちゃん」
「えっとなに?」
「そろそろ紹介して。私、どのタイミングで話に入っていいか分かんないから」
「ああっとごめん、忘れてた」
「酷いよぉ」
半泣きする少女に快活に笑う孫娘。
これだけで普段の立場がわかってしまう。
「えっとね、お爺ちゃん。この子はユーノ。私の小学校時代からの友達なの。こっちでも続投してコンビ組んでるんだ」
「そうでしたか。ユーノさん、いつもうちの孫が世話をかけているようだ。これからも仲良くしてくれるかな?」
「はい」
「ちょっとお爺ちゃん!? それじゃあ私が迷惑かけるのが当たり前みたいになってる」
「違うのかね?」
「うぅ……違わないけど」
「冗談だよ。マリンはいい子だ。それにきちんと相手を思いやる気持ちも持っている。久しぶりにあって成長してるなと実感した」
「うん」
少ししんみりとした表情の彼女の頭を撫でてやると、すっかりと機嫌を直したらしい。昔からこの子はお爺ちゃん子。
つまり私に懐いていた。
頭撫で撫では向こうからせがんでくるのだ。
ちょうどいい場所に頭が迫ってくるから私はその場所へ手を置く。
少しデレすぎてるのではないかと思ったが見なかったことにしよう。
「少し話を戻そうか。スキルについてだ」
「うん」
「はい」
私の言葉に二人の少女が返事をする。
「まず私はこのゲームに闘いを求めていない。そこはいいかな?」
「納得いかないけど、とりあえずは」
「それならば何をしに?」
孫娘は頬を膨らまし、お友達はその理由を追求してくる。
相棒というだけあってまとまりがある。
マリンが引っ張っているようで、ユーノにひっぱられてる風に見えなくもない。
仲もいいし一先ずは安心だな。
娘は心配性だが、この子がいる限り危険なことには首を突っ込まないだろう。
そういう危険に対する察知能力が高そうだ。
「私は趣味で風景写真の撮影をしていてね。リアルでは体を壊して無理が利かず、ここでその続きをしようと思っていたんだ」
「あ、だから持久力UPなんですね!」
聡いな。それだけでスキル構成の一つを言い当てた。
「どういう事、ユーノ? 持久力って要はスタミナのことでしょ? ああいうのは動き続けながら攻撃する人たちのものだと思ってた」
その指摘も間違いではない。即ち休息を挟まずに体を酷使し続ける環境下に身を置くことだ。
写真とはその一枚のために寒い気候の山頂に登ったり、何だったら危険な森の奥。秘境での動植物を撮影して感動を呼び覚ますものだ。
私が写真に嵌ったのは旅行がきっかけだが、それが縁で世界の写真の魅力に取り憑かれた。
だからこそ、ゲーム内でも今を逃したら普段見れない一枚を撮るために妥協を許さない構成なのである。
「そうだね、彼女の言う通り。私のスキル構成は全てベストショットを撮る為の構成だ。
想像してご覧、切り立った崖の上、見下ろすのはそこにたどり着くまでに通った密林。
踏み越えてきた障害物の数々。それを写真に納めるのも良いが、まだ見ぬ世界をそこから覗き込むことだってできる」
「うん、わかる。でも写真って言ってもスクリーンショットだよね? ゲーム内に保存はできるけど、現実には持っていけないよ」
「なに、そうなのか!?」
孫娘からの一言に私は目を剥く。そして同時に納得した。
そうだよなぁ、考えてみればそうだ。コールでリアルと連絡を取れると言ってもそれはゲーム側が承認しているからだ。
ゲーム内の肖像権、ましてや映像はゲーム会社のものだ。私一人で取り扱う事はできない。残念だ。
「──あ、でも」
そこで付け足したお友達の言葉が私を救ってくれる。
要は情報を提供する場はゲーム内であれば作れるらしいとのこと。
詳しくは冒険者ギルドで聞けるらしい。
情報は整った。私は詳しいスクリーンショットの取り方を教えてもらい、フレンド登録を済ませる。
奢ると言った手前、代金が足りませんでは立つ瀬がなかったが、ギリギリ間に合った。いや、ギリギリになるように抑えてくれたのだろう。みれば孫娘の前にしか皿は置かれてなかった。本当に助かる。
「今日はありがとう。ユーノさん、うちのマリンをよろしく頼む」
「ちょっとお爺ちゃん!?」
「マリンも、レディなんだからお淑やかにしろとは言わない。君はその明るさが魅力の一つだ。けれど引くべきところは引いたほうがいい。特にここはいろんな人の目があるからね」
喫茶店の外。どこからか街に入ってきた者、何処かへ行く者達でごった返す。そんな通行人が孫娘達の様子を何となしに見ていた。
すぐに興味を亡くして去っていくが、こう言った見たという記憶が物事を動かすきっかけになるのを私は知っている。
あの時の子が実は……
そんな眉唾で人は簡単に騙され、謂れのない罪を受ける事だってある。背中で孫達の姿を隠しながらいい含める。
「うん……」
頭を撫でたら随分とおとなしくなったマリンに向けてスクリーンショットの構えをとる。
「ではここで会った記念に一枚いいかな?」
「私達がお爺ちゃんの被写体第一号?」
「そうだよ。後でブログに書き記しておこう。その際に乗せても大丈夫かな?」
「恥ずかしいですけど、はい」
お友達の子にも確認を取り、許可してもらった。
被写体を中心に収めるように親指と人差し指で「 」の字を作り、右瞼を瞑るとカシャッと音が鳴り画像が保存される。
これらは網膜内のシステムからいつでも取り出して読み込むことができるとのことだ。ゲーム内とはいえ、技術の進歩に舌を巻く。
「うん、ベストショット。出来上がりを楽しみにしてくれたまえ」
「はーい! お爺ちゃんも困ったことがあったら私に連絡してね」
「ああ、もちろん頼らせてもらうよ」
「それでは私達はこれで」
「うん、いってらっしゃい」
片手を上げてその場で別れる。
私を置いて旅立っていく孫娘達の姿をパシャリ。
そこには楽しそうに今後を語らう彼女達の姿が映り込んだ。
「これは流石に載せられないよなぁ」
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