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三章
(2)カニクリームコロッケパニック
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エラールがサーバマグを襲撃して一週間。
アリエルと同様経過観察として俺たちの元へと預けられた。
そんな訳で冒険者登録。
猫耳受付嬢がエラールのステータスを看破してSランク認定を従ってるのを薫が脅してFランクにした。
猫耳受付嬢は渋々従ってライセンスを発行した。
正直ね、ステータスだけで優遇してたら先任者はいい顔しないわけよ。
そして最低ランクから始めさせた狙いは別にある。
「Fランクって何?」
「下っぱって意味よ」
「下っぱ……私序列十位に入ったのに?」
「あたしだって元序列十位。でもね、この世界で生きていく上でステータスの強みだけでは敵わない奴が居るのよ。それにあたしもほら」
アリエルがライセンスを取り出す。そこにはFの数字がデカデカと記されている。
「おんなじ」
「そう、お揃いよ」
「お揃い!」
死んだ魚の様なエラールの瞳が、輝き出す。
ドラグネス皇国や、元の世界ではこういった馴れ合いすらも御法度。生きていくのに仲間は不要。足を引っ張る要因になりうるって考え方、俺はあんまり好きじゃないんだよね。
と、世間の厳しさをアリエルやエラールに教えてる時、王宮にサーバマグ全滅の報が入る。
エラールの件が遅れて入ってきたのかと思いきや、全くの別件であることが判明した。
連絡を受けた兵士に聞けば、襲ってきたのはドラゴンの大群とのこと。
「あたしじゃないわよ?」
アリエルはずっと一緒にいたから疑っちゃいないが、真っ先に疑われると思ってたのか、すぐに信じた俺たちに驚いた様な反応を示していた。
「お姉ちゃん、信用されてる。すごい」
「ふふん、あたしくらいになれば当然よ」
エラールとはすっかり姉妹の様なやりとり。
生まれ育った環境が似ていて、年も近い。
衣食住さえ整えば、本来なら争わずに済む関係でもあった。
仲良くなるのは意外と早かった。
アウェイの中で唯一の知り合いっていう立場は強いもんな。
「そう言えばサーバマグにはシグルドさん居なかったっけ?」
「ドラゴンの群れには勝てなかったんだろう」
「対人戦では強いけど、数の暴力には弱いんだろうな」
「あのオッサン、実は酔ってたんじゃね?」
「あり得るの」
王宮のご意見版として住み着いてたノヴァが呆れた様にこぼす。育ての親がまたもよそ様に迷惑をかけていたとシリスもいい加減うんざりしていた様だ。
本当、同情しかない。
サーバマグに駆けつけた俺たちは、シグルドのオッサンと合流してドラゴンの迎撃に努める。
ドラゴン退治は慣れたもんよ。
どんなに硬い皮膚だろうが、ガチャ製の薬品をぶっかければあっという間にお陀仏。
あとは死体を回収すればゴミは減るって寸法だ。
しかしその場所で生きていく者達からすれば、全てをきれいに掃除されるのは困るとのこと。
恨みをぶつける先としてドラゴンの死体を一つ融通してくれと頼みこまれた。
事件は解決だー、と俺以外の全員が王宮に帰還する。
正直ここに至ってやれることは少ない。
街は地図上から消え去り、その場所で生活していた者達は仕事や生きがいまでも奪われて途方に暮れていた。
脅威を始末した後も、また日常に戻れるほど人は強くない。
そんな人たちの手助けを俺はしたかった。
「ちっと付き合え」
シグルドのオッサンに導かれた先には街が一望できる丘があった。雑に埋葬された墓の数は三つ。
街がこれだけ破壊されても、多くの人が生き延びられたのはすぐに逃げに徹したシグルドのオッサンの指示があったからだという。
「なぁ坊主。飯は出せるか?」
「出せますけど」
「こういう時はなぁ、少しでも日常と同じ生活をさせてさっさと忘れるに限るんだ。今から人を集める、だから坊主は飯を頼む。最近の方はこの街が復興してからでいいか?」
俺は初めて戦争で家を失った人たちの現状を目の当たりにした。生き延びても、そこから先に進むための気力が尽きたら何もできない。もし俺がその当人だったら実際やる気をなくしていただろう。
シグルドのオッサンはそれでも立ち上がって前を向く。
こういう事は何度でも体験してきた。だから手を差し伸べることができるんだ。
だったら俺も、今までクラスメイトのためだけと育ててきたメシの力を貸すことにした。
まぁガチャを回すだけだが。
そしたらなんとも新しいガチャが生えた。
そこからの再建は早かったな。
素材さえあれば俺のガチャはチートを極める。
なんと俺は新しく建物を建築する能力を獲得して、たった3日でサーバマグを以前と同じ状況に戻した。
いやぁ、成し遂げたぜ!
シグルドのオッサンは改めてこいつやべーなって俺を見てた。
もっと褒めてくれてもいいんだぜ?
なお、魔素が枯渇した。
だから王宮に帰った時にあんな事態に遭遇するとは思ってもみなかったんだ。
俺にサプライズで国民にカニクリームコロッケを振る舞うと聞いた時は頭が痛くなる思いだった。
魔素が尽きた時に一番聞きたくない言葉だぜ。
アリエルと同様経過観察として俺たちの元へと預けられた。
そんな訳で冒険者登録。
猫耳受付嬢がエラールのステータスを看破してSランク認定を従ってるのを薫が脅してFランクにした。
猫耳受付嬢は渋々従ってライセンスを発行した。
正直ね、ステータスだけで優遇してたら先任者はいい顔しないわけよ。
そして最低ランクから始めさせた狙いは別にある。
「Fランクって何?」
「下っぱって意味よ」
「下っぱ……私序列十位に入ったのに?」
「あたしだって元序列十位。でもね、この世界で生きていく上でステータスの強みだけでは敵わない奴が居るのよ。それにあたしもほら」
アリエルがライセンスを取り出す。そこにはFの数字がデカデカと記されている。
「おんなじ」
「そう、お揃いよ」
「お揃い!」
死んだ魚の様なエラールの瞳が、輝き出す。
ドラグネス皇国や、元の世界ではこういった馴れ合いすらも御法度。生きていくのに仲間は不要。足を引っ張る要因になりうるって考え方、俺はあんまり好きじゃないんだよね。
と、世間の厳しさをアリエルやエラールに教えてる時、王宮にサーバマグ全滅の報が入る。
エラールの件が遅れて入ってきたのかと思いきや、全くの別件であることが判明した。
連絡を受けた兵士に聞けば、襲ってきたのはドラゴンの大群とのこと。
「あたしじゃないわよ?」
アリエルはずっと一緒にいたから疑っちゃいないが、真っ先に疑われると思ってたのか、すぐに信じた俺たちに驚いた様な反応を示していた。
「お姉ちゃん、信用されてる。すごい」
「ふふん、あたしくらいになれば当然よ」
エラールとはすっかり姉妹の様なやりとり。
生まれ育った環境が似ていて、年も近い。
衣食住さえ整えば、本来なら争わずに済む関係でもあった。
仲良くなるのは意外と早かった。
アウェイの中で唯一の知り合いっていう立場は強いもんな。
「そう言えばサーバマグにはシグルドさん居なかったっけ?」
「ドラゴンの群れには勝てなかったんだろう」
「対人戦では強いけど、数の暴力には弱いんだろうな」
「あのオッサン、実は酔ってたんじゃね?」
「あり得るの」
王宮のご意見版として住み着いてたノヴァが呆れた様にこぼす。育ての親がまたもよそ様に迷惑をかけていたとシリスもいい加減うんざりしていた様だ。
本当、同情しかない。
サーバマグに駆けつけた俺たちは、シグルドのオッサンと合流してドラゴンの迎撃に努める。
ドラゴン退治は慣れたもんよ。
どんなに硬い皮膚だろうが、ガチャ製の薬品をぶっかければあっという間にお陀仏。
あとは死体を回収すればゴミは減るって寸法だ。
しかしその場所で生きていく者達からすれば、全てをきれいに掃除されるのは困るとのこと。
恨みをぶつける先としてドラゴンの死体を一つ融通してくれと頼みこまれた。
事件は解決だー、と俺以外の全員が王宮に帰還する。
正直ここに至ってやれることは少ない。
街は地図上から消え去り、その場所で生活していた者達は仕事や生きがいまでも奪われて途方に暮れていた。
脅威を始末した後も、また日常に戻れるほど人は強くない。
そんな人たちの手助けを俺はしたかった。
「ちっと付き合え」
シグルドのオッサンに導かれた先には街が一望できる丘があった。雑に埋葬された墓の数は三つ。
街がこれだけ破壊されても、多くの人が生き延びられたのはすぐに逃げに徹したシグルドのオッサンの指示があったからだという。
「なぁ坊主。飯は出せるか?」
「出せますけど」
「こういう時はなぁ、少しでも日常と同じ生活をさせてさっさと忘れるに限るんだ。今から人を集める、だから坊主は飯を頼む。最近の方はこの街が復興してからでいいか?」
俺は初めて戦争で家を失った人たちの現状を目の当たりにした。生き延びても、そこから先に進むための気力が尽きたら何もできない。もし俺がその当人だったら実際やる気をなくしていただろう。
シグルドのオッサンはそれでも立ち上がって前を向く。
こういう事は何度でも体験してきた。だから手を差し伸べることができるんだ。
だったら俺も、今までクラスメイトのためだけと育ててきたメシの力を貸すことにした。
まぁガチャを回すだけだが。
そしたらなんとも新しいガチャが生えた。
そこからの再建は早かったな。
素材さえあれば俺のガチャはチートを極める。
なんと俺は新しく建物を建築する能力を獲得して、たった3日でサーバマグを以前と同じ状況に戻した。
いやぁ、成し遂げたぜ!
シグルドのオッサンは改めてこいつやべーなって俺を見てた。
もっと褒めてくれてもいいんだぜ?
なお、魔素が枯渇した。
だから王宮に帰った時にあんな事態に遭遇するとは思ってもみなかったんだ。
俺にサプライズで国民にカニクリームコロッケを振る舞うと聞いた時は頭が痛くなる思いだった。
魔素が尽きた時に一番聞きたくない言葉だぜ。
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